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番外編
決着 4(アルファルド視点)
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しばらく歩いて着いた場所は、昔レグルスと遊んでいた秘密の庭だった。
「ここなら誰にも邪魔されないだろう」
木々が生い茂る場所でレグルスは振り返り、俺と向き合った。
「アル。私は……君が嫌いだっ!」
突然、俺を睨みつけて放った言葉は、意外なほど単純なものだった。
「君は昔からそうだッ!私より何でも持っていて……私より初めに魔法も発現して……剣術もっ、魔法もっ、勉学もッ!……君は、様々な事に長けていたのに、それを自慢もしなければ、当たり前のように涼しい顔をして澄ましていたッ!!」
いつもの堂々とした皇太子の顔ではなく、そこには一人の人間として妬みのような感情を表した、ただの男がいた。
「ようやく、君が落ちぶれて……私が一番になるはずだったんだ!それなのに君はまた何の努力もせずっ、私を簡単に追い抜いて行こうとする!アルはいつでも私より下にいなくてはならないんだッ……なのに、何故君はまた、全てを手に入れて、私を蹴落とそうするんだッッ!?」
レグルスの話す言葉に、俺は二の次が継げなかった。
こいつは、何を言ってるんだ?
俺が何でも持っている??
どういう事だか、理解することができない。
昔の俺はレグルスを友だと思っていた。確かに俺はレグルスより先に魔法を発現したが……その後レグルスも魔法を発現して、特に気にしている素振りも見せていなかった。
それに、剣術も勉学も……俺がこいつより秀でているなどと思った事など、一度もない。
だが……レグルスは、そんな俺が気に入らなかった、という事か?
「…お前の言い分はおかしい。…俺はお前を見くだす事も、蹴落とす事もしていない。…被害妄想もいいところだ」
レグルスはまだ俺を鋭く睨みながら、俺の言葉にさらに顔を憎しみに歪めていた。
「ッ!!その態度だよッ!君のその態度、口調、雰囲気!全部が私を馬鹿にしているんだっ!アトリクスが居なければ、今でも君は落ちぶれたままだった!幸運にも彼女を手に入れたから、君はこうして様々なものを得る事ができたんだ!!わかるか?!君が努力して手に入れたものじゃないッ!!」
人が変わったかのように、レグルスは言いたい事を言葉にしている。よほど俺が嫌なんだろうな。
皇太子とも思えない幼稚な言い様に、思わずため息が漏れた。
「…確かに、お前の言う通りだ。俺はアトリクスが居なければ、今、ここにはいないだろう。あいつには心から感謝している。……だが、アトリクスが何者であろうと、俺にとってはどうでも良かった。あいつが男のままでも……天才児や英雄じゃなく、ただの平民でも。俺は、あいつしか選ばない」
俺もレグルスを睨みつけて、正直な気持ちを話す。
言葉通り、ミラが男だろうと平民だろうと……俺の気持ちは一つも変わらない。
あいつは俺を救い、何もない俺を受け入れ愛してくれた。
それだけで俺は十分だった。
だが、レグルスは俺が何を言っても気に入らないのか、睨んでいた顔を下に向け、ブツブツと呟いている。
「クッ……!やはり私は、君が嫌いだッ!……何故いつも、いつでもっ、君が選ばれる?!君がッ!……皇太子の私ではなく、アルがッ……」
一体どう言えば、こいつが納得するのか俺にはわからない。そもそもこの話し合いに、意味すらない気がしてならない。
「…お前が、俺を気に入らないというのも、嫌いな事もよくわかった。…これからは、お前と顔を合わす事も無くなるだろう。…良かったな」
これ以上の話し合いは無駄だと思い、そのままその場を去ろうと踵を返した。
「――アルッ!!」
去ろうとした俺に、レグルスは声を荒げて引き止めた。
足を止めたが、振り返る気にならなかった。
「私はっ……君と、常に対等で、ありたかった!……アルが私を、気にもかけず……どうでもいいと、思っている事が……一番、嫌だったんだ……」
レグルスの言葉に思わず俺は振り返った。
「…………はっ?」
レグルスの話している意味が、ついに全く理解できなくなった。
俺と対等でいたいから、今まで俺を苦しめ見くだしていたのか?だが先程は、俺が自分の下にいなくてはならないと言っていたが……。
一体、どういう事だ?言っていることが支離滅裂だ……これも、こいつの策略なのか?
苦痛に顔を歪めて項垂れているレグルスからは、それがでまかせで言ってるとは思えなかった。
だからといって、理解することもできないが……。
「…お前の話は、理にかなっていない。言っている内容もめちゃくちゃで、訳が分からない……」
「そうだ!君には、わからないッ!……何でも、恵まれている君にはっ!」
「…いい加減にしろ、レグルス。結局お前は、何が言いたいっ!」
「アル。君は、私の事など……どうでもいいのだろう?!だが、私は君が嫌いだっ!大嫌いなんだッ!!」
自分勝手な意見を次々と話してるこいつに、フツフツと怒りが湧いてくる。
お前の方が、何でも持っているだろうがっ!さっきから聞いていれば、何を勝手にベラベラと!
「…いいか。俺もお前など嫌いだ!金輪際、俺に構うな!お前の顔など、見たくもないッ!!」
「――そうか……。私も君が嫌いだ。これで、私達の意見は一致したな」
睨んでる俺に向かい、先ほどまで苦痛に歪んでいたレグルスの顔は、何故だかすっきりとした顔に変わっていた。
「…それがどうしたッ!」
「いや。それでいい」
「…………」
何に満足したのか、さっぱりわからない。何がしたかったのか、今の会話の中にこいつを納得させる何かがあったのか……全く理解ができない。
ただ、わかったことは、こいつとわかり合える日など、永遠に来ないということだけだ。
俺は苛ついたまま、何一つもすっきりしなかったが、これ以上の話し合いは無駄だと悟り、今度こそ、その場から立ち去った。
「アル。……ようやく私を、認めたか……」
去り際のレグルスの呟きなど、聞こえる事もなかった。
しばらく歩いて着いた場所は、昔レグルスと遊んでいた秘密の庭だった。
「ここなら誰にも邪魔されないだろう」
木々が生い茂る場所でレグルスは振り返り、俺と向き合った。
「アル。私は……君が嫌いだっ!」
突然、俺を睨みつけて放った言葉は、意外なほど単純なものだった。
「君は昔からそうだッ!私より何でも持っていて……私より初めに魔法も発現して……剣術もっ、魔法もっ、勉学もッ!……君は、様々な事に長けていたのに、それを自慢もしなければ、当たり前のように涼しい顔をして澄ましていたッ!!」
いつもの堂々とした皇太子の顔ではなく、そこには一人の人間として妬みのような感情を表した、ただの男がいた。
「ようやく、君が落ちぶれて……私が一番になるはずだったんだ!それなのに君はまた何の努力もせずっ、私を簡単に追い抜いて行こうとする!アルはいつでも私より下にいなくてはならないんだッ……なのに、何故君はまた、全てを手に入れて、私を蹴落とそうするんだッッ!?」
レグルスの話す言葉に、俺は二の次が継げなかった。
こいつは、何を言ってるんだ?
俺が何でも持っている??
どういう事だか、理解することができない。
昔の俺はレグルスを友だと思っていた。確かに俺はレグルスより先に魔法を発現したが……その後レグルスも魔法を発現して、特に気にしている素振りも見せていなかった。
それに、剣術も勉学も……俺がこいつより秀でているなどと思った事など、一度もない。
だが……レグルスは、そんな俺が気に入らなかった、という事か?
「…お前の言い分はおかしい。…俺はお前を見くだす事も、蹴落とす事もしていない。…被害妄想もいいところだ」
レグルスはまだ俺を鋭く睨みながら、俺の言葉にさらに顔を憎しみに歪めていた。
「ッ!!その態度だよッ!君のその態度、口調、雰囲気!全部が私を馬鹿にしているんだっ!アトリクスが居なければ、今でも君は落ちぶれたままだった!幸運にも彼女を手に入れたから、君はこうして様々なものを得る事ができたんだ!!わかるか?!君が努力して手に入れたものじゃないッ!!」
人が変わったかのように、レグルスは言いたい事を言葉にしている。よほど俺が嫌なんだろうな。
皇太子とも思えない幼稚な言い様に、思わずため息が漏れた。
「…確かに、お前の言う通りだ。俺はアトリクスが居なければ、今、ここにはいないだろう。あいつには心から感謝している。……だが、アトリクスが何者であろうと、俺にとってはどうでも良かった。あいつが男のままでも……天才児や英雄じゃなく、ただの平民でも。俺は、あいつしか選ばない」
俺もレグルスを睨みつけて、正直な気持ちを話す。
言葉通り、ミラが男だろうと平民だろうと……俺の気持ちは一つも変わらない。
あいつは俺を救い、何もない俺を受け入れ愛してくれた。
それだけで俺は十分だった。
だが、レグルスは俺が何を言っても気に入らないのか、睨んでいた顔を下に向け、ブツブツと呟いている。
「クッ……!やはり私は、君が嫌いだッ!……何故いつも、いつでもっ、君が選ばれる?!君がッ!……皇太子の私ではなく、アルがッ……」
一体どう言えば、こいつが納得するのか俺にはわからない。そもそもこの話し合いに、意味すらない気がしてならない。
「…お前が、俺を気に入らないというのも、嫌いな事もよくわかった。…これからは、お前と顔を合わす事も無くなるだろう。…良かったな」
これ以上の話し合いは無駄だと思い、そのままその場を去ろうと踵を返した。
「――アルッ!!」
去ろうとした俺に、レグルスは声を荒げて引き止めた。
足を止めたが、振り返る気にならなかった。
「私はっ……君と、常に対等で、ありたかった!……アルが私を、気にもかけず……どうでもいいと、思っている事が……一番、嫌だったんだ……」
レグルスの言葉に思わず俺は振り返った。
「…………はっ?」
レグルスの話している意味が、ついに全く理解できなくなった。
俺と対等でいたいから、今まで俺を苦しめ見くだしていたのか?だが先程は、俺が自分の下にいなくてはならないと言っていたが……。
一体、どういう事だ?言っていることが支離滅裂だ……これも、こいつの策略なのか?
苦痛に顔を歪めて項垂れているレグルスからは、それがでまかせで言ってるとは思えなかった。
だからといって、理解することもできないが……。
「…お前の話は、理にかなっていない。言っている内容もめちゃくちゃで、訳が分からない……」
「そうだ!君には、わからないッ!……何でも、恵まれている君にはっ!」
「…いい加減にしろ、レグルス。結局お前は、何が言いたいっ!」
「アル。君は、私の事など……どうでもいいのだろう?!だが、私は君が嫌いだっ!大嫌いなんだッ!!」
自分勝手な意見を次々と話してるこいつに、フツフツと怒りが湧いてくる。
お前の方が、何でも持っているだろうがっ!さっきから聞いていれば、何を勝手にベラベラと!
「…いいか。俺もお前など嫌いだ!金輪際、俺に構うな!お前の顔など、見たくもないッ!!」
「――そうか……。私も君が嫌いだ。これで、私達の意見は一致したな」
睨んでる俺に向かい、先ほどまで苦痛に歪んでいたレグルスの顔は、何故だかすっきりとした顔に変わっていた。
「…それがどうしたッ!」
「いや。それでいい」
「…………」
何に満足したのか、さっぱりわからない。何がしたかったのか、今の会話の中にこいつを納得させる何かがあったのか……全く理解ができない。
ただ、わかったことは、こいつとわかり合える日など、永遠に来ないということだけだ。
俺は苛ついたまま、何一つもすっきりしなかったが、これ以上の話し合いは無駄だと悟り、今度こそ、その場から立ち去った。
「アル。……ようやく私を、認めたか……」
去り際のレグルスの呟きなど、聞こえる事もなかった。
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