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番外編

決着 5

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 うぅ……、ソワソワする。
 アルファルドはまだ帰って来ない。
 
 私は皇宮の庭園に続く廊下の前で、腕組んでずっとアルファルドが戻って来るのを待ってた。

 途中、通りすがる皇宮の人間達が挨拶してくるのを適当に手をあげてやり過ごしてる。
 
 大丈夫かな……レグルス様は腹黒だから、アルファルドがまた傷付かないといいけど……。
 あぁ見えて、アルファルドって繊細で傷付きやすいんだよね。

 私が不機嫌そうにしてるから、遠巻きに見てる輩もいるけど、気にしてる場合じゃない。
 本当は今すぐ見に行きたいけど、いくらレグルス様でも男同士の話し合いに水を差すのは無粋だし、何となく嫌だからやめといた。
 
 とりあえず殺気とかは察知できてないから、喧嘩みたいな感じにはなってないっぽいけど。

 しばらく待ってたらアルファルドが何となく怒りながら、私の方に向かって歩いて来た。

「アルファルドッ!」
 
 私はとにかく、アルファルドが無事に戻って来てくれたことが嬉しくて……。
 そのままアルファルドの元に走って、すぐに抱きついた。

「…アトリクス」

 アルファルドも私を抱き留めてくれて……周りで傍観してる人達も結構いたけど、気にせずアルファルドにぎゅっと抱きついた。

「大丈夫か!? 何もされてないか?!」
「…俺はなんともない」
「本当か?」
「…あぁ」

 声は不機嫌そうだけど、アルファルドはちゃんと戻ってきてくれた。
 良かった……
 レグルス様が何するかわからなかったから……アルファルドが無事ならそれでいいんだ。
 安心したよ。
 
 ホッとした私は、アルファルドをじっと見つめてキスをせがんだ。アルファルドも気付いたのか、両手を頬に添えて深く唇を重ねてくれる。

「んっ」

 重なった唇が心地良くて、アルファルドに抱きついたまま、私もされるがまま唇を貪った。

「ふっ、……はぁ……」
「…心配するなと、言っただろう」
「うん……」
「…俺が、信用できないか?」
「違うよ! 信用してるけどさ……、やっぱりお前が無事かどうか、心配になっちゃうんだ……」

 間近で鋭く見つめられるオッドアイが、まだ苛立ちを含んでる。
 レグルス様と何かあったんだと思うけど……きっとアルファルドは何も言わないんだろうな……
 周りには結構な数の野次馬がいて、抱き合ってる私達を赤い顔して見てるんだけど、アルファルドってこういう時に限って、人前で見せつけたがるんだよね。

「お前が無事ならそれでいいんだ。そろそろ戻ろうぜ?」

 気を取り直して、説明は後で聞こうとアルファルドを促した。でもアルファルドは、何故か私の頬に手を添えたまま動こうとしない。

「…アトリクス」
「ん? なんだ?」
「…確かに俺は、幸運の持ち主だ。…こうしてお前を、手に入れることができたのだからな……」
「……へ? なんの話?? どうし――んッ!!」

 私が話し終える前にまた深く唇が重なって、舌も入ってきて……苛立ちをぶつけるような激しいキスに翻弄される。
 皇宮で、こんな人目の多い場所で、ダメだって思うのに……アルファルドにキスされちゃうと、私はどうでも良くなっちゃうんだ。

「んっ……、ぁ……、はぁ……!」

 アルファルドのキスが上手すぎて、胸に縋りついたまま拒絶する気も起きなくてそのまま受け入れちゃう。
 何度も何度も唇が重なって、また離れていく。

「はっ……、あッ」

 その内立ってる事もツラくなって、唇が離れてからクタッと体をアルファルドに預けた。
 周りから息を飲む声とか音とか聞こえて、遠くでキャーキャー騒いでる声も、物を落とす音とかも聞こえてたけど、気にならないくらい、全部がアルファルドでいっぱいになってた。

「…歩けるか?」
「ん。……む、り……」
「…そうか」

 赤い顔して息を乱してる私を即座に抱え上げて、アルファルドは外に向かってすたすた歩き出した。
 
「あ、アルファルド……」
「…安心しろ。今後、俺があいつと関わることは、もうない」
「え?」
「…あんな奴など知らん! 勝手にすればいいッ」
「えぇ?」

 ここまで感情を見せてるアルファルドも珍しいな。
 相当レグルス様と言い合ってきたのかな?
 アルファルドって基本的に感情を見せないし、どうでいい人間は無視するからなぁ……

「むぅ~! なんだか妬けるっ!」
「……は? なぜだ?」
「えー、だってさぁ……今、お前の頭の中は、皇太子の事でいっぱいなんだろ?」
「……」
「それが、羨ましいと思っただけ」
「…………全く、わからん……」
「ハハッ、だろうなっ!」
  
 アルファルドの関心を引くのは、すっごく難しいからね。
 私だって認識してもらうまでに、だいぶかかったからなー……

 でもアルファルドは私を抱えたまま、まだわからない顔してて。
 私はそれが面白くてアルファルドの腕の中で笑ってた。
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