冬来りなば、春遠からじ ~親友になった悪役公爵が俺(私)に求愛してくるけど、どうしたらいい…?

ウリ坊

文字の大きさ
上 下
371 / 392
番外編

断罪 2

しおりを挟む


「ハァ……、今の発言……お前こそ責任持てよッ! アルファルドをたばかり、俺を怒らせた罪はお前が思う以上に重いぞッ!!」

 アルファルドから離れて、レグルス様と対峙しながら、殺気を解き放って威嚇してる。
 私もいい加減怒ったから! もう容赦しないよっ!!

「――ッ! 私に、脅しは通用しない……。たとえアカデミアであろうとも関係ない。私の婚約者を勝手に呼び出し、泣かせた罪は皇太子である私自身に危害を加える事と同義。そちらこそ責任を取ってもらおうッ」

 レグルス様も結構めちゃくちゃ言って来るね。この人って腹黒だと思ってたけど、ここまで馬鹿だとは思わなかったよ。
 ゲームだと正義感が強くて理性的で慎重派だったのに。どうしてこんな風に変わっちゃったかなぁ。

「今の言葉、後悔するなよ……」

 腕くんだままレグルス様に向かって目を見据えた。
 レグルス様は少し怯んだけど、そこはやっぱり皇族なのか冷静に受け止めてた。

「後悔などしない。君こそ自分の発言に気をつけるべきだ!」

 結構強気で言ってるね。
 その余裕がいつまで持つか見ものだね。
 
 私は振り返ってアルファルドの胸元に付けてあったタイピンに手を伸ばした。

「…アトリクス?」
「ん、ちょっとじっとしてて」
「…本当に、大丈夫なのか…?」
「うんっ」

 アルファルドがまだ心配そうにしてたから、笑いながら元気良く返事しといた。
 結構小さいやつで、普通に付けてたら装飾品にしか見えないよね。
 そのタイピンをアルファルドの胸元から外して、レグルス様の前に見せつけた。

「これが何よりの証拠だ」
「それは……ただの装飾品じゃないかっ」
「いや? これは映像石だ。高純度の宝石に魔力を込めて造り上げた最新鋭の魔道具」

 摘んだタイピンには高純度のペリドットが埋め込まれてる。
 私の言葉に、レグルス様は驚きを隠せないみたい焦ってる。

「映像石……? まさかッ、そんなもの造れる筈はないっ! 失われた魔道具ロストアイテムでも、そのような形の物は存在しないんだ」
「ハハッ、当たり前だろ? これは俺が造ったマジックアイテムだ」

 そもそも失われた魔道具ロストアイテムの映像石って、占いで使う水晶くらいの大きさでめちゃくちゃデカいから。

「……アトリクス。そんなはったりが信じられるとでも思っているのか?」
「こんなにコンパクトで、しかも身に付けられる映像石なんてある訳ないだろ?」
「いくら窮地に立たされたからと、そのような嘘をつくとは!」
「まぁ、黙れよ皇子様。この映像石は通常の魔力ならば半日分の過去の映像を記録できる。もちろん魔力がなければ使えないが、俺がたっぷり魔力込めといたから丸一日は映像がとれるぜ」

 アルファルドが付けてたタイピンが映像石になってるなんて、誰もわからないよね。
 これってさ、皇室の諜報機関か有名な情報ギルドくらいしか持ってないから。そのくらい希少で数が少ないんだ。
 その超レアなアイテムを私が造ってアルファルドが身に付けてたなんて、誰も想像できないと思うよ。
 万が一浮気防止の為に付けといたんだけど、思わぬトコで役に立ったよ。

「そんなこと、可能なわけがない」
「へぇ……? 俺を疑うのか? じゃあ、証拠を見せてやるよ」

 私はそう言って映像石を起動させた。
 空中に浮かび上がる映像。

「――なっ!!」

 それを間近で見上げたレグルス様は、目を見開いて驚いてる。

 そこにはポラリスが遠くに映ってる。
 もちろん、アルファルドが身に着けてるから、アルファルドの姿は映ってない。でも、声は一番良く聞こえる。

『大公様……』
『…お前に用はない。…俺に、話しかけるな』
『お願いします、私の話を聞いてくださいっ』
『……』

 おそらく講堂の中。
 周りにはちらほら生徒も映ってる。
 うんうん、良く撮れてるね。音質もバッチリ! これならアルファ商会でも高値で売れるね!
 これ作るのに本っ当、めちゃくちゃ苦労したからっ。何個も高い宝石ダメにしちゃったし……

『レグルス様は……大公様との修繕を求めておいでです』
『……』
『お二人が力を合わせれば、さらなる帝国の繁栄へと繋がる事でしょう』
『…俺には、関係ない……』

 くるっとポラリスに背を向けて歩き出したのか、講堂から廊下に出る景色が映ってる。

『お待ち下さいっ』
『…ついて来るなっ、目障りだ……』
『レグルス様が歩み寄りを見せてくださっているのに、どうして拒絶されるのですか?!』
『…黙れっ!』

 そのまま二人は庭園を抜けて、今いる針葉樹のトコまで歩いてる。

『…ついて来るなと言っている……』
『どうして話を聞いてくれないのですか?』
『…しつこいッ!』

 で、さっき私が見たポラリスがアルファルドに縋りつこうとして、自分で転んだ場面まで映像を再生させた。

 もうここまで見せれば十分でしょ? 
 そこでとりあえず映像を切った。
 
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。 両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。 だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって…… 覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして? 理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの? ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で… 嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

処理中です...