357 / 392
アルファルド編
アルファルド視点 14(終末を終えて)
しおりを挟む
‘
至急公爵家に戻り、ミラを部屋に寝かせた。
顔色も悪くない…呼吸も穏やかだが…、何度呼びかけても目を覚まさない…。
念の為、もう一本ハイポーションを飲ませた。
『旦那様、化け物はどうなったんだい!?』
『先程の方は…』
リタとベッテルにもある程度、事情を説明した。
あまりの驚きに、二人とも困惑していた。
『どういう事だい?!し、シリウス様が、アートだって…』
『そ…、それはっ…一体……』
ひとまず、このままシリウス卿を療養させると言って、俺はすぐ部屋へ戻った。
一時でもミラから離れたくなかった。
ベッドに横たわるミラを確認し、ほっとする。
先程より、さらに穏やかな顔になった。
汗で張り付いた亜麻色の髪を撫でた。
シリウス卿の黒衣も、ボロボロで…あの天使と戦った時にやられたのか、切られた箇所が数えきれない程あった…。
ミラ…、お前は、こんなに…、傷ついてまでッ……。
こんな世界なんて、どうでもいいっ…!お前が無事で…、本当に…良かったッ…!
ミラの手を取り、両手で握り締めた。込み上げてきた涙が、シーツを濡らす。
俺はしばらく…、ミラから離れられなかった。
気持ちが、落ち着きを取り戻した頃には、随分時間が経っていた。
汗に濡れた黒衣を脱がせ、マントに包み、抱き抱えながら共に湯に浸かった。
体に傷は…ない。ポーションのおかげか…だが、まだ目を覚まさない…。
お前の笑顔が見たい…、俺に向かって、嬉しそうに笑いかける、ミラの顔が見たい…。
早く目覚めて…、その瞳に、俺を映してくれッ…!
湯に浸かったまま、ミラの体を抱きしめた。
湯浴みを終え、女物の着替えもないから、ミラに自分のシャツを着せた。
部屋に寝かせ、じっと静かに眠るミラを眺めていた。
ベッテルやリタが部屋を訪ねてきたが…、俺が出ることはなかった。
食事も取らないまま、夜を迎え…ミラを抱きしめたまま、同じベッドで横になった。
呼吸はしている、心臓も動いてる…、温かい…。
だが、意識が戻らない…。
不安が、押し寄せる。
いや…、明日には、目を覚ますはずだ…。
俺はミラの温もりを感じながら、眠りについた。
次の日。
まだ…ミラは目覚めなかった。
穏やかな寝顔に、すぐにでも目覚めそうだが…。
また、ハイポーションを口移して飲ませた。
この日も俺は部屋から出なかった。
リタもベッテルも、何度も部屋に来たが…、俺はミラの側から離れなかった。
いつ目を覚ますかもわからないミラの隣で、ずっと手を握っていた。
そしてまた、目覚めないまま…、夜を迎えた。
湯浴みを終えると、部屋の前に食事が置いてあった。他の使用人は、立ち入りを禁じていたから、おそらくベッテルが運んでくれたのだろう…。
ありがたいが…、とても、食べる気になれない…。
そのまま、ミラと共に部屋へと戻った。
ベッドへ横たえ…、意識の戻らないミラを見て…、俺は、言い知れない不安に襲われてきた。
このまま…ずっと、ミラの意識が戻らなかったら…?
ずっと眠ったままで、二度と目を覚ます事が、なかったら……。
瞳を閉じたまま、眠っているミラを眺め…、あまりの恐怖にゾッとした。
俺に向けられる熱い視線も…、俺を好きだと囁く声も…、俺だけに見せる嬉しそうなあの笑顔も……。
もう、二度と…見れなくなってしまったら……。
サァー…と血の気が引き、体中の力が抜けた。呼吸が荒くなり、胸元を抑え、どうにか気を沈めた……。
幼い頃、感じた以上の恐怖と絶望が襲ってくる。
漠然とした恐怖に、急いでベッドに捲り、ミラの体を抱きしめた。
「…ミラ…、ミラッ……、頼むから…早く…、目を…覚ましてくれっ!……頼むっ…、お願いだっ……」
何度呼んでもやはり返答は無く…、部屋に俺の声だけが、虚しく響いた…。
次の日。
俺は、怖くて…ほとんど寝れなかった…。
もしかしたら、このまま、ミラが死んでしまうのではないか、と…。
ハイポーションも、何度も飲ませているのに、今だに目を覚まさない。
寝ている間に、容態が急変したらと思うと、怖くなり…寝ることが出来なかった。
部屋の外から、ノックや、食事を置いていく音がするが…、全て無視した。
そしてまた…夜が、やってきた…。
湯浴みを終え、部屋へと戻り…、ミラをベッドへ寝かせた。
しばらく側にいた後、少しの間、自分の部屋へ戻っていた。
戻ると、ベッドにいるはずのミラがいない。
ミラっ!?先ほどまで確かにいたのに…、一体どこへ行ったっ!!
部屋を見渡すと、窓際のカーテンが風に揺られていた。
窓が…開いてる?
俺は、開けてない…。まさか、外に…出たのか?いや、もしや…、誰かに攫われてしまったのかッ!?
不安と焦りが一気に襲う。
すぐにカーテンを潜り、ベランダへ続く窓の外へと出た。
そこには、月明かりに照らされた、ミラの姿があった。
至急公爵家に戻り、ミラを部屋に寝かせた。
顔色も悪くない…呼吸も穏やかだが…、何度呼びかけても目を覚まさない…。
念の為、もう一本ハイポーションを飲ませた。
『旦那様、化け物はどうなったんだい!?』
『先程の方は…』
リタとベッテルにもある程度、事情を説明した。
あまりの驚きに、二人とも困惑していた。
『どういう事だい?!し、シリウス様が、アートだって…』
『そ…、それはっ…一体……』
ひとまず、このままシリウス卿を療養させると言って、俺はすぐ部屋へ戻った。
一時でもミラから離れたくなかった。
ベッドに横たわるミラを確認し、ほっとする。
先程より、さらに穏やかな顔になった。
汗で張り付いた亜麻色の髪を撫でた。
シリウス卿の黒衣も、ボロボロで…あの天使と戦った時にやられたのか、切られた箇所が数えきれない程あった…。
ミラ…、お前は、こんなに…、傷ついてまでッ……。
こんな世界なんて、どうでもいいっ…!お前が無事で…、本当に…良かったッ…!
ミラの手を取り、両手で握り締めた。込み上げてきた涙が、シーツを濡らす。
俺はしばらく…、ミラから離れられなかった。
気持ちが、落ち着きを取り戻した頃には、随分時間が経っていた。
汗に濡れた黒衣を脱がせ、マントに包み、抱き抱えながら共に湯に浸かった。
体に傷は…ない。ポーションのおかげか…だが、まだ目を覚まさない…。
お前の笑顔が見たい…、俺に向かって、嬉しそうに笑いかける、ミラの顔が見たい…。
早く目覚めて…、その瞳に、俺を映してくれッ…!
湯に浸かったまま、ミラの体を抱きしめた。
湯浴みを終え、女物の着替えもないから、ミラに自分のシャツを着せた。
部屋に寝かせ、じっと静かに眠るミラを眺めていた。
ベッテルやリタが部屋を訪ねてきたが…、俺が出ることはなかった。
食事も取らないまま、夜を迎え…ミラを抱きしめたまま、同じベッドで横になった。
呼吸はしている、心臓も動いてる…、温かい…。
だが、意識が戻らない…。
不安が、押し寄せる。
いや…、明日には、目を覚ますはずだ…。
俺はミラの温もりを感じながら、眠りについた。
次の日。
まだ…ミラは目覚めなかった。
穏やかな寝顔に、すぐにでも目覚めそうだが…。
また、ハイポーションを口移して飲ませた。
この日も俺は部屋から出なかった。
リタもベッテルも、何度も部屋に来たが…、俺はミラの側から離れなかった。
いつ目を覚ますかもわからないミラの隣で、ずっと手を握っていた。
そしてまた、目覚めないまま…、夜を迎えた。
湯浴みを終えると、部屋の前に食事が置いてあった。他の使用人は、立ち入りを禁じていたから、おそらくベッテルが運んでくれたのだろう…。
ありがたいが…、とても、食べる気になれない…。
そのまま、ミラと共に部屋へと戻った。
ベッドへ横たえ…、意識の戻らないミラを見て…、俺は、言い知れない不安に襲われてきた。
このまま…ずっと、ミラの意識が戻らなかったら…?
ずっと眠ったままで、二度と目を覚ます事が、なかったら……。
瞳を閉じたまま、眠っているミラを眺め…、あまりの恐怖にゾッとした。
俺に向けられる熱い視線も…、俺を好きだと囁く声も…、俺だけに見せる嬉しそうなあの笑顔も……。
もう、二度と…見れなくなってしまったら……。
サァー…と血の気が引き、体中の力が抜けた。呼吸が荒くなり、胸元を抑え、どうにか気を沈めた……。
幼い頃、感じた以上の恐怖と絶望が襲ってくる。
漠然とした恐怖に、急いでベッドに捲り、ミラの体を抱きしめた。
「…ミラ…、ミラッ……、頼むから…早く…、目を…覚ましてくれっ!……頼むっ…、お願いだっ……」
何度呼んでもやはり返答は無く…、部屋に俺の声だけが、虚しく響いた…。
次の日。
俺は、怖くて…ほとんど寝れなかった…。
もしかしたら、このまま、ミラが死んでしまうのではないか、と…。
ハイポーションも、何度も飲ませているのに、今だに目を覚まさない。
寝ている間に、容態が急変したらと思うと、怖くなり…寝ることが出来なかった。
部屋の外から、ノックや、食事を置いていく音がするが…、全て無視した。
そしてまた…夜が、やってきた…。
湯浴みを終え、部屋へと戻り…、ミラをベッドへ寝かせた。
しばらく側にいた後、少しの間、自分の部屋へ戻っていた。
戻ると、ベッドにいるはずのミラがいない。
ミラっ!?先ほどまで確かにいたのに…、一体どこへ行ったっ!!
部屋を見渡すと、窓際のカーテンが風に揺られていた。
窓が…開いてる?
俺は、開けてない…。まさか、外に…出たのか?いや、もしや…、誰かに攫われてしまったのかッ!?
不安と焦りが一気に襲う。
すぐにカーテンを潜り、ベランダへ続く窓の外へと出た。
そこには、月明かりに照らされた、ミラの姿があった。
3
お気に入りに追加
323
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
悪役令嬢を拾ったら、可愛すぎたので妹として溺愛します!
平山和人
恋愛
転生者のクロエは諸国を巡りながら冒険者として自由気ままな一人旅を楽しんでいた。 そんなある日、クエストの途中で、トラブルに巻き込まれた一行を発見。助けに入ったクロエが目にしたのは――驚くほど美しい少女だった。
「わたくし、婚約破棄された上に、身に覚えのない罪で王都を追放されたのです」
その言葉に驚くクロエ。しかし、さらに驚いたのは、その少女が前世の記憶に見覚えのある存在だったこと。しかも、話してみるととても良い子で……?
「そういえば、私……前世でこんな妹が欲しかったって思ってたっけ」
美少女との出会いが、クロエの旅と人生を大きく変えることに!?
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる