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アルファルド編
アルファルド視点 10(リブラ聖夜祭後編)
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公爵領の別邸まで来たアトリクスは、湖を見たいと、直ぐに出掛けた。
俺は、自分の書斎で書類整理をしていた。
また…人口が減っている。
整備しなければならない場所も、数え切れない程あるが…、とても予算が追い付かない。
まず、収益になる物がない。領地民の半数以上が高齢で、税すらまともに取り立てられない…。
加えて…あの化け物どもが残した多額借金の、利息すら払い切れていない…。
この先も…、ずっと、こんな苦しみを抱えながら、生きて行かなければならないのか…。
机に向かいながら、気分が悪くなるほど、陰鬱な思いが渦巻く。
気分転換に窓の外を見ていると、そこには湖と…女のアトリクスがいた。
湖の周りの落ち葉や枝が空中に浮いていて、アトリクスは両手を掲げてそれを操っている、ようだった。
陽の光を浴びて輝く湖に、風が巻き起こり…あまりに神秘的な光景に…、しばらく俺は呆然としていた。
そして、目の前で繰り広げられる光景に、昔聞いていた言い伝えを思い出した。
もしかして、こいつは、アトリクスの姿をした…女神なのかもしれない…。
それなら、女のこいつに会った時から感じていた違和感も、馬車での出来事も納得できる。
俺が長い間、湖の周りを汚していたから、言い伝えのように、怒りに来たのか?
焦った俺はすぐにアトリクスへ声を掛けた。
アトリクスはこれを魔法だと言ったが、俺は信じなかった。
俺は言い知れない不安に襲われて、すぐさまアトリクスの元へと走った。
結果的にアトリクスは消えなかった。
ほっとして胸を撫で下ろした。
こいつが、消えなくて良かった…。
アトリクスは笑っていたが、俺はまだ疑いを拭えない。
そもそも女の姿で来る意味もわからない。湖の女神が、管理を怠っている俺に、罰を与えにきたのかもしれない。
疑心暗鬼になりながら、聖夜祭の会場へと向かった。
移動の馬車の中で、ドラコニス公爵領の民族衣装を着たアトリクスは、一層輝いて見えた。
行きの馬車で、散々口うるさく言われていた俺は、ひとまずアトリクスに教えられたようにエスコートをした。
女のアトリクスを連れて歩くと、領民たちや祭りに訪れた人間達が、羨望の眼差しで見ていた。
今まで感じた事のない…不思議な気持ちの高ぶりを感じる。
何故かこいつを、見せびらかしたい。
女のこいつは人目を引く。
男の時でも目立ちはしていたが、女の姿の方が一際輝いて見えた。
言われた通り、細い肩を引き寄せ、領地を管理している重役たちに、アトリクスを紹介していくが…、気分がいい。
俺が相手を連れて来ただけで、古くからの領地民たちが皆、喜んでいた。
いつもの聖夜祭では、ここまで騒ぐ事などなく、静かに終わっていたが…。
例年にない、盛り上がりを見せていた。
お焚き上げも、俺とアトリクスの属性の相性が良いからか、今までになく印象に残る聖夜祭になった。
その後の、重役たちを労う慰労会で、事件が起きる。
あの俺に散々な言葉を投げ掛けていた、ヤツが、会場に現れた。
ある時から突然現れ、嫌そうな顔をしながら結婚しろと迫り…、公爵家の爵位を狙っていた。
鬱陶しく、煩わしい…こんな奴、顔すらまともに覚えていない。いつも俺を汚いモノのように嫌悪しながら見ていた。他の奴らと変わりもしない。
これも、アトリクスが積極的に追い払った。何故かこいつといると、物事が何でも良い方へと向かっていく。
領地の重役たちも、仕切りにアトリクスに感謝し、俺の陰鬱な心が、少し晴れた。
いつものアトリクスが来ると思っていたからか、別の部屋などの用意もなく……。
俺はアトリクスと共に、寝る事になった。
女のアトリクスが女神だと、疑いの晴れない俺は…試す様に問いただしたが…、思い切り笑われた……。
必要以上にくっついて寝るアトリクスに、俺はまた欲望を抑えるよう迫られた。
翌朝。
突如、着替えと称し、寝間着を脱ぎ出したアトリクス。
俺は動揺を隠しきれず…。
とにかく…、目のやり場に困った。
女だという、自覚がないのか…惜しげもなく晒される肢体に…、思わず視線を逸らす。
「ねぇ、触ってみる?」
そうか…こいつは、俺を試しているんだ。
ベッドから見上げたアトリクスの姿は…、俺が思い描いていた、女神そのもので…。
「嫌ならもっと抵抗して?じゃないと、このまま食べられちゃうよ?」
どこまでも柔らかな身体に…、沸き上がる欲望を、抑える事もできず…、初めて他人に触れられる感覚に、堪らず…欲望を解放してしまった…。
「ねぇ…もっと先までしたい?」
耳元で惑わすアトリクスは…、俺の理性を揺さぶるには、十分過ぎる威力があった。
駄目だっ…、俺は…、試されているんだ。
ここで、誘惑に負けてしまえば、こいつは、罰を与え消えてしまうだろう…。
だが、俺の願いも虚しく…、女神は…、女のアトリクスは…湖へと消えてしまった。
最後に残した、唇の感触が、今でも生々しく残っている。
煌めく水面に、落ち葉が舞い散り、ゆらゆらと漂っている。
もう二度と…、会えないのだろうか…。
公爵領の別邸まで来たアトリクスは、湖を見たいと、直ぐに出掛けた。
俺は、自分の書斎で書類整理をしていた。
また…人口が減っている。
整備しなければならない場所も、数え切れない程あるが…、とても予算が追い付かない。
まず、収益になる物がない。領地民の半数以上が高齢で、税すらまともに取り立てられない…。
加えて…あの化け物どもが残した多額借金の、利息すら払い切れていない…。
この先も…、ずっと、こんな苦しみを抱えながら、生きて行かなければならないのか…。
机に向かいながら、気分が悪くなるほど、陰鬱な思いが渦巻く。
気分転換に窓の外を見ていると、そこには湖と…女のアトリクスがいた。
湖の周りの落ち葉や枝が空中に浮いていて、アトリクスは両手を掲げてそれを操っている、ようだった。
陽の光を浴びて輝く湖に、風が巻き起こり…あまりに神秘的な光景に…、しばらく俺は呆然としていた。
そして、目の前で繰り広げられる光景に、昔聞いていた言い伝えを思い出した。
もしかして、こいつは、アトリクスの姿をした…女神なのかもしれない…。
それなら、女のこいつに会った時から感じていた違和感も、馬車での出来事も納得できる。
俺が長い間、湖の周りを汚していたから、言い伝えのように、怒りに来たのか?
焦った俺はすぐにアトリクスへ声を掛けた。
アトリクスはこれを魔法だと言ったが、俺は信じなかった。
俺は言い知れない不安に襲われて、すぐさまアトリクスの元へと走った。
結果的にアトリクスは消えなかった。
ほっとして胸を撫で下ろした。
こいつが、消えなくて良かった…。
アトリクスは笑っていたが、俺はまだ疑いを拭えない。
そもそも女の姿で来る意味もわからない。湖の女神が、管理を怠っている俺に、罰を与えにきたのかもしれない。
疑心暗鬼になりながら、聖夜祭の会場へと向かった。
移動の馬車の中で、ドラコニス公爵領の民族衣装を着たアトリクスは、一層輝いて見えた。
行きの馬車で、散々口うるさく言われていた俺は、ひとまずアトリクスに教えられたようにエスコートをした。
女のアトリクスを連れて歩くと、領民たちや祭りに訪れた人間達が、羨望の眼差しで見ていた。
今まで感じた事のない…不思議な気持ちの高ぶりを感じる。
何故かこいつを、見せびらかしたい。
女のこいつは人目を引く。
男の時でも目立ちはしていたが、女の姿の方が一際輝いて見えた。
言われた通り、細い肩を引き寄せ、領地を管理している重役たちに、アトリクスを紹介していくが…、気分がいい。
俺が相手を連れて来ただけで、古くからの領地民たちが皆、喜んでいた。
いつもの聖夜祭では、ここまで騒ぐ事などなく、静かに終わっていたが…。
例年にない、盛り上がりを見せていた。
お焚き上げも、俺とアトリクスの属性の相性が良いからか、今までになく印象に残る聖夜祭になった。
その後の、重役たちを労う慰労会で、事件が起きる。
あの俺に散々な言葉を投げ掛けていた、ヤツが、会場に現れた。
ある時から突然現れ、嫌そうな顔をしながら結婚しろと迫り…、公爵家の爵位を狙っていた。
鬱陶しく、煩わしい…こんな奴、顔すらまともに覚えていない。いつも俺を汚いモノのように嫌悪しながら見ていた。他の奴らと変わりもしない。
これも、アトリクスが積極的に追い払った。何故かこいつといると、物事が何でも良い方へと向かっていく。
領地の重役たちも、仕切りにアトリクスに感謝し、俺の陰鬱な心が、少し晴れた。
いつものアトリクスが来ると思っていたからか、別の部屋などの用意もなく……。
俺はアトリクスと共に、寝る事になった。
女のアトリクスが女神だと、疑いの晴れない俺は…試す様に問いただしたが…、思い切り笑われた……。
必要以上にくっついて寝るアトリクスに、俺はまた欲望を抑えるよう迫られた。
翌朝。
突如、着替えと称し、寝間着を脱ぎ出したアトリクス。
俺は動揺を隠しきれず…。
とにかく…、目のやり場に困った。
女だという、自覚がないのか…惜しげもなく晒される肢体に…、思わず視線を逸らす。
「ねぇ、触ってみる?」
そうか…こいつは、俺を試しているんだ。
ベッドから見上げたアトリクスの姿は…、俺が思い描いていた、女神そのもので…。
「嫌ならもっと抵抗して?じゃないと、このまま食べられちゃうよ?」
どこまでも柔らかな身体に…、沸き上がる欲望を、抑える事もできず…、初めて他人に触れられる感覚に、堪らず…欲望を解放してしまった…。
「ねぇ…もっと先までしたい?」
耳元で惑わすアトリクスは…、俺の理性を揺さぶるには、十分過ぎる威力があった。
駄目だっ…、俺は…、試されているんだ。
ここで、誘惑に負けてしまえば、こいつは、罰を与え消えてしまうだろう…。
だが、俺の願いも虚しく…、女神は…、女のアトリクスは…湖へと消えてしまった。
最後に残した、唇の感触が、今でも生々しく残っている。
煌めく水面に、落ち葉が舞い散り、ゆらゆらと漂っている。
もう二度と…、会えないのだろうか…。
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