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アルファルド編

アルファルド視点 13(決戦後まで)

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 襲い来る魔物を倒しながら、徒歩で皇宮へと向かっていた。
 馬にも乗れるが、もし途中でミラが居たら、見落としてしまうかもしれない。
 あいつが無事か、心配でたまらない。

 少し寄り道をして、小高い丘の上へ登った。ここなら、帝都を見渡せる。
 あいつは戦闘向きではないが、頭は切れる。しかも、正義感も強い。自らを犠牲にして、無謀な事をしていないか……、心配が尽きない。

 招集の事など忘れ、ミラを探す事に必死になっていた。
 そんな俺の元に、突然……、シリウス卿が現れた。
 
「シリウス卿……?!」

 驚きに上を見上げていた俺に、さらなる驚きが襲う。
 
 シリウス卿が咄嗟に仮面を脱ぎ出した。卿は呪われていて、この黒衣の下は異形だと聞いている。


「よっ、逢いたかったぜ……アルファルド」

「――…」


 ど……ういう……事、だ……?
 ア…アトリクスが……、シリウス卿――?
 混乱し過ぎて……、言葉が……、出ない。
 
 頭が……、情報を……処理出来ない。
 いや、現実を受け入れたく、ない……のか……?
 どうして……、なぜ……、何故だっ……?
 よりによって……、何故アトリクスが……、ミラが、シリウス卿だったんだ……!?

 
「……この戦いが終わったら……その時は、お前に全部話すよ……」
 
 
 一人取り残された丘の上で、俺は……、力が抜けたように、地面に座り込んだ。

 今、目の前で起こった事実が、衝撃的過ぎて……、それを、自分の中で処理するまで。しばらく……、いや、結構な時間…、そうして呆然としていた…。
 
 駄目だ……
 考え過ぎて……、吐き気がするっ。
 頭が、理解することを、拒絶している。
 あいつは……、今まで、ずっと、偽っていたのか……、実力を隠して……、学園に……何故だ?
 なんのために……?
 
(――お前を、救いたかったから……)
 
 ミラの言っていた言葉が突然浮かび……、俺はハッとする。
 

 まさか……、これも……俺のため……か……?
 
 
 あいつは、初めからずっと……俺に、つきまとっていた。
 ずっと……俺の側にいて、俺に――

 顔を上げ、巨大な化け物がそびえる皇宮を見る。
 俺はようやく立ち上がり……、重い足を進めた。
 



 
 また魔物を倒しながら、皇宮に向かう途中、あの巨大な化け物が真っ暗な空間へと消え……、その後、大歓声が響き渡った。
 
 これが……シリウス卿の魔法……、そして実力っ…!
 スゴいっ!!
 この恐ろしい魔法の使い手が、本当に……ミラ、なのか……?!


 あまりの驚異的な光景に、言葉を失い、思わず鳥肌が立つ。 
 今だに信じる事が出来ない俺は、シリウス卿を心の中で称賛していた。

 だが次いで、天使が現れ…、これも敵だと、S級冒険者のベガが叫びながら皇宮へと向かっていった。

 俺が、皇宮にたどり着いた時は、前線部隊は壊滅的になっていた。
 
 叔父上や騎士団長たちは負傷し、レグルスやアカデミアの奴らも戦いながら次々離脱していった。

 シリウス卿は何故か、立ち尽くしていて……、危険を感じた俺は、咄嗟に魔法を放った。

 近づいたシリウス卿は無言だったが…、仮面の中から、微かに嗚咽が聞こえた。

 やはりシリウス卿はミラなのか。

 この時でも俺は、まだ信じられなかった。

 だが、こいつはいつでも……俺の予想を覆し、遥かに上回る奇跡を起こす。

 神々の力を思わせるほど強大で、圧倒的な魔法で天使を倒した。
 周りの人間達が歓喜に沸き上がる中……、ミラがその場で倒れ、俺はすぐさま抱きとめた。
 なぜか、女の姿に戻っている。

 顔色が悪い……、汗も酷く、呼吸が異常なほど早い。俺も経験したからわかる。危険な状態だった。

 俺は、急いで持参していたハイポーションを取り出し、口移しでミラへと飲ませた。
 
「んっ……」

 すぐに様子を確認し、次第に顔色が戻ってきたことにホッとした。
 だが、ミラはまだ目を覚まさない。
 マントを掴み、ミラの体を包んだ。この大衆の中で、女になったこいつを、晒すわけにはいかない。

 ミラを抱き抱えた俺は、急いでその場から離れようとしていたが、シリウス卿をどこへつれていくのかと、周りの連中はうるさく騒いでいた。

 お前らに、ミラを渡すわけがないだろッ!

 周りの静止も振り切り、近くにいた馬に乗り公爵家まで急いだ。
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