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アルファルド編
アルファルド視点 1(プロローグ)
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俺はずっと、暗闇の中にいた。
あの…雨の日の山道。
あの日に、俺の全てが…崩壊した。
『なぜ…、こんな事がっ…』
『信じられん…。まさか…かのドラコニス公爵と公爵夫人が……』
『どうやら、お二方ともご子息を守るように…自らを犠牲をなさったとか…』
『何てことだっ』
『馬車はバラバラだったのに、生きてるのが不思議なほど、ご子息は無傷だったんですって…』
両親の死から葬儀の日まで、涙の一滴も出なかった。
現実を受け止めきれない僕は、ただ俯いて、周りの声を聞いていた。
目の前の、両親の墓碑に花を添える時も、ただ虚ろな目で見ている事しかできなかった。
『お前がッ…!お前のせいでっ、妹がッ……!何故こいつが生き残ったのだっ!!お前さえ居なければッ…!!』
『陛下っ!落ち着いて下さいっ…』
『落ち着いてなどいられるかッ!!』
『し…、しかし……』
『許さんぞッ!二度と余の前に姿を晒すなッ!!お前の顔などっ、金輪際見たくもないわッ!!』
両親の墓の前で、他の貴族達も見ている中、皇帝は態度を一変させた。
『アル。失望したよ…。君とは、友達でも親戚でもない。もう俺に話し掛けるな』
一番信頼して仲の良かったレグルスも、呆気ないほど簡単に僕を見放した。
それから地獄のような日々が始まった。
周りの態度も一変し…、僕が当たり前だと思っていた日常が、あまりに脆く崩れていった。
何が悪いのか…、自分の何が悪かったのか…、僕の気持ちが追い付かない内に、物事が進み過ぎて…、僕は一人取り残されて行った。
僕がまだ幼いという理由で爵位を親戚に奪われて、そいつらが公爵家をめちゃくちゃにした。
あれだけの栄華を誇っていたドラコニス公爵家は、瞬く間に地の底まで落ちた。
『チッ、もうこれだけしか財産が残ってないのか?』
『これも全部、アイツのせいだッ!あの疫病神さえいなければ、他との取引もまだ続けられたのにっ』
『皇帝陛下があれだけ毛嫌いされるなんて、本当…不幸な子だわっ』
『ははっ、けどさ…あいつのおかげで俺達が、ドラコニス公爵家の金で贅沢三昧できてるんだけどなっ!』
『えぇそうね。親戚だというのに、先代の公爵夫妻はわたくし達を疎ましくしておられたから』
『ふんっ、罰が当たったのさっ。死んで当然だッ!』
親戚に引き取られたが、コイツらは人間じゃなかった。財産と権威を食いものにする、ただの化け物だった。
コイツらのせいで公爵家にいた騎士団、使用人、家の物でさえも…、全て消えていった。
残ったのは執事と乳母だけだった。僕は、この二人と共に公爵家の隅にある別館に追いやられた。
そんな時だった。
僕の元に一通の手紙が届いた。
度重なる苦労にやつれてしまったリタやベッテルが珍しく嬉しそうにそれを渡してきた。
手紙はすでに開けられていた。誹謗や中傷の手紙や、絶縁状などの類しか来なくなって、僕に気を遣った二人が事前に内容を確認していたからだ。
『アルファルド坊っちゃま、どうぞお読み下さい』
『えぇ。ぜひ坊っちゃんに読んで頂きたくてっ』
ベッテルもリタも僕が手紙を受け取ると、側に控えて見ていた。
渡されたのは宛名も何もない、誰なのかもわからない手紙。
けど、この二人が渡して来たということは、悪いものではないのだろうと読み始めた。
しばらく読んで、僕はその手紙をびりびりに破り捨てた。
『あ…、アルファルド坊っちゃまっ!』
『まぁ!坊っちゃん…』
二人共、僕の行動に驚いていた。
僕は机に向かったまま、見る影もないくらい細かく千切った。
手紙の主はおそらく僕と同じ位の女の子供だった。
内容はほぼ全て、僕を慰めるようなものだった。
僕は何も悪くない、今はツラいけど気を落とさないで、いつか必ず自分が迎えに行くから、それまで待っててほしい…、そんな事が書かれていた。
「…ふざけるなッ…!」
全部バラバラにした後、激しい憤りに涙が込み上げてきた。
両親がいなくなって以来、初めて声を上げて泣いた。
だったら、今すぐ来いよっ!
今すぐ僕を、この生き地獄から救ってよっ!いつかなんて…、もう、待ってられないんだっ…!!
悔しさなのか何なのかわからないまま、堰を切ったように泣いた。
全てが嫌になり、腑抜けみたいになってた僕は、怒りをその手紙の主にぶつけるように、思い切り罵って気の済むまで泣いた。
泣いたら僅かだけど、心のつかえが取れた気がした。
俺はずっと、暗闇の中にいた。
あの…雨の日の山道。
あの日に、俺の全てが…崩壊した。
『なぜ…、こんな事がっ…』
『信じられん…。まさか…かのドラコニス公爵と公爵夫人が……』
『どうやら、お二方ともご子息を守るように…自らを犠牲をなさったとか…』
『何てことだっ』
『馬車はバラバラだったのに、生きてるのが不思議なほど、ご子息は無傷だったんですって…』
両親の死から葬儀の日まで、涙の一滴も出なかった。
現実を受け止めきれない僕は、ただ俯いて、周りの声を聞いていた。
目の前の、両親の墓碑に花を添える時も、ただ虚ろな目で見ている事しかできなかった。
『お前がッ…!お前のせいでっ、妹がッ……!何故こいつが生き残ったのだっ!!お前さえ居なければッ…!!』
『陛下っ!落ち着いて下さいっ…』
『落ち着いてなどいられるかッ!!』
『し…、しかし……』
『許さんぞッ!二度と余の前に姿を晒すなッ!!お前の顔などっ、金輪際見たくもないわッ!!』
両親の墓の前で、他の貴族達も見ている中、皇帝は態度を一変させた。
『アル。失望したよ…。君とは、友達でも親戚でもない。もう俺に話し掛けるな』
一番信頼して仲の良かったレグルスも、呆気ないほど簡単に僕を見放した。
それから地獄のような日々が始まった。
周りの態度も一変し…、僕が当たり前だと思っていた日常が、あまりに脆く崩れていった。
何が悪いのか…、自分の何が悪かったのか…、僕の気持ちが追い付かない内に、物事が進み過ぎて…、僕は一人取り残されて行った。
僕がまだ幼いという理由で爵位を親戚に奪われて、そいつらが公爵家をめちゃくちゃにした。
あれだけの栄華を誇っていたドラコニス公爵家は、瞬く間に地の底まで落ちた。
『チッ、もうこれだけしか財産が残ってないのか?』
『これも全部、アイツのせいだッ!あの疫病神さえいなければ、他との取引もまだ続けられたのにっ』
『皇帝陛下があれだけ毛嫌いされるなんて、本当…不幸な子だわっ』
『ははっ、けどさ…あいつのおかげで俺達が、ドラコニス公爵家の金で贅沢三昧できてるんだけどなっ!』
『えぇそうね。親戚だというのに、先代の公爵夫妻はわたくし達を疎ましくしておられたから』
『ふんっ、罰が当たったのさっ。死んで当然だッ!』
親戚に引き取られたが、コイツらは人間じゃなかった。財産と権威を食いものにする、ただの化け物だった。
コイツらのせいで公爵家にいた騎士団、使用人、家の物でさえも…、全て消えていった。
残ったのは執事と乳母だけだった。僕は、この二人と共に公爵家の隅にある別館に追いやられた。
そんな時だった。
僕の元に一通の手紙が届いた。
度重なる苦労にやつれてしまったリタやベッテルが珍しく嬉しそうにそれを渡してきた。
手紙はすでに開けられていた。誹謗や中傷の手紙や、絶縁状などの類しか来なくなって、僕に気を遣った二人が事前に内容を確認していたからだ。
『アルファルド坊っちゃま、どうぞお読み下さい』
『えぇ。ぜひ坊っちゃんに読んで頂きたくてっ』
ベッテルもリタも僕が手紙を受け取ると、側に控えて見ていた。
渡されたのは宛名も何もない、誰なのかもわからない手紙。
けど、この二人が渡して来たということは、悪いものではないのだろうと読み始めた。
しばらく読んで、僕はその手紙をびりびりに破り捨てた。
『あ…、アルファルド坊っちゃまっ!』
『まぁ!坊っちゃん…』
二人共、僕の行動に驚いていた。
僕は机に向かったまま、見る影もないくらい細かく千切った。
手紙の主はおそらく僕と同じ位の女の子供だった。
内容はほぼ全て、僕を慰めるようなものだった。
僕は何も悪くない、今はツラいけど気を落とさないで、いつか必ず自分が迎えに行くから、それまで待っててほしい…、そんな事が書かれていた。
「…ふざけるなッ…!」
全部バラバラにした後、激しい憤りに涙が込み上げてきた。
両親がいなくなって以来、初めて声を上げて泣いた。
だったら、今すぐ来いよっ!
今すぐ僕を、この生き地獄から救ってよっ!いつかなんて…、もう、待ってられないんだっ…!!
悔しさなのか何なのかわからないまま、堰を切ったように泣いた。
全てが嫌になり、腑抜けみたいになってた僕は、怒りをその手紙の主にぶつけるように、思い切り罵って気の済むまで泣いた。
泣いたら僅かだけど、心のつかえが取れた気がした。
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