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星たちの行方 21

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「シリウス卿、見事だったぞ」
「えぇ、大変素晴らしい演説でした!感動で胸がいっぱいです!卿は主導者としての手腕もおありですね」

 ここで現れたのがアンキロス公爵とアケルナー父。
 帝国騎士団と魔法騎士団の団長服を身にまとって、私とアルファルドの方へと向かってきた。

「アンキロス帝国騎士団長殿、コールサック魔法騎士団長殿…」

 思わずアルファルドの腰にぎゅっと抱きついた。アルファルドは私の肩を抱き寄せて、庇うように前に出てくれた。

「…騎士団長が揃いも揃って、何の用だ…」

 威嚇するように強い口調で言い放ってる。
 それが私にはすごく嬉しく感じる。
 アルファルドが…、あのアルファルドが騎士団長相手にここまで頼もしく対峙してくれるなんて…。

「我らは皇帝陛下の命により、卿を迎えに来ただけだ」

「陛下がお呼びです。シリウス卿…、参りましょう」

 騎士団長達の後部にはそれぞれの騎士団の騎士達も整列してて、あっちも威圧的に私達を出迎えてる。

「…アトリクス」
「大丈夫。とりあえず行こうぜっ?」
「…しかし」
「心配するな。いざとなれば、お前の望んでた世界を実現させてやるさっ」

 ある程度こっちが優位だってことを示しとかないとね。舐められる訳にはいかないから。
 殺気も込めて悪い顔して笑いながら、騎士団の面々と向かい合ってる。

「何も案ずることなどない。貴殿たちに危害を加えるなど、愚か者のする事だ。我らに他意はない」

「公爵閣下の仰る通りです。それ以上の警戒は心外です。私達は案内役ですから」

 本当に心外そうに話してる。
 でも、油断はしないから。
 ここはある意味敵陣で、私が信じてるのはアルファルドしかいない。

「随分と大袈裟な出迎えだなっ。俺はこいつと一緒じゃなければ、どこにも行かないが?」

 隣にいたアルファルドに見ながら言ったら、アンキロス公爵もアケルナー父もわかったような顔して話し出した。

「むろん、ドラコニス公爵にも同行してもらう」
「えぇ。お二人はご夫婦ですので」

 気は進まないしこれが本心なのかはわからないけど、とりあえず結末を聞かないとね。

「…行くぞ、アトリクス。…お前は俺が守る」
 
「っ」

 私の肩を抱き寄せて、頼もしい事言ってくれるアルファルドがホントにカッコよくて、もうそれだけで胸がキュンとしちゃう!

「うん。お前に従うよっ」

 私達の意志を汲み取ったのか、騎士団長達は踵を返して皇宮へと歩いてる。

 わたしとアルファルドもその後に続くように、皇宮へと入っていった。






 案内されたのは玉座の間だった。

 これってもう、正式な発表の場だよね。
 ポルックス公爵の腹はもう決まったってことかな?ま、私がそれを容認するかは別だけど…。

 玉座に腰掛けたポルックス公爵の前まで歩いて、ひとまず腰を折った。

「シリウスよ、顔を上げよ。此度の鎮圧、誠に見事であった。これにより、再三の出動要請を無視した事には目を瞑ろう…」
 
 うーん、穏やかに話してるけど、これはポルックス公爵も中々ご立腹のようだったね。でも、こんなカマかけに負けるような私じゃないから。
 左胸に手を当てて、敬意を示してから淡々と話し出した。

「身に余るお言葉、真にありがたく存じます。先の会議での心労がたたり、皇帝陛下のご要望を叶える事が難しい状況におりました。ですが、我が夫の献身なる看護と説得により、ようやく日の目を見る事が出来た次第でございます」

 要するに、あんたらがしっかり管理統率してないから、あんな事になっちゃって今まで無視してたんだ。でも、アルファルドが何度も私を説得したから仕方なく来てやったんだよ。
 ってのが正しい訳だね。

「そうか…、ドラコニス公爵には感謝せねばならんな」

 この意味を理解したのか、ポルックス公爵は眉をピクピクさせて、顔を引き攣らせてる。

「えぇ、陛下の仰る通りです。加えて言わせて頂けるのならば、暴動を鎮圧できたのは私ではなく、我が夫のおかげです。のは、夫をおいて他にはおりませんから」

 ニッと笑ってポルックス公爵に断言した。これも牽制だよね。貴方がたには従わないよっていうさ。

「ほぅ…、それは余に対して言っておるのか?」

「私如きが陛下に意見するなど、恐れ多い事でございます。ただ、事実を申し上げているだけです」

 喧嘩売ってる訳じゃないけど、勘違いされても困るからはっきりと肯定しとく。
 しれっと話してる私と、ポルックス公爵がバチバチッと睨み合ってる隣で宰相さんが慌てたように口を挟んできた。

「えー、コホンっ!お話はそこまでにして、時間もございませんので、早速本題に入らせて頂きますっ!!」

 有能な宰相さんが切りの良いとこで話を切り替えてきてくれた。やっぱりこの人って、デキる人だよね。


 
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