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星たちの行方 20

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「俺の為に集まってくれてありがとうっ!」
 
 静まった広場に向けて訴えるように気持ちを伝えていく。

「俺は…、爵位も報奨もいらない。だから、みんなの気持ちはすごくありがたいけど、俺は今のままでいいんだ!」

 胸に手を当てて、なるべく穏やかに切実に遠くまで聞こえるように声を出した。

「このまま行くと皇室と衝突してしまう。そしたらまた、たくさんの人が傷付く…。俺はみんなが傷付くのを見るのは嫌なんだ!!」

 風魔法も使って声の流れを集まっている方に拡散するように流していく。

「こうして俺を思って集まってくれた…、それだけでどんな報奨より、俺はすごく嬉しいし感動してる!」

 みんなが静かに聞いてくれてるから、私の声が広場の奥まで響いてた。

「俺は大丈夫だから、速やかに解散してくれ。これ以上の抗議活動を俺は望まない。助かった命をもっと大事にしてほしいっ!ここにいるみんなが元気でいてくれる事こそが、俺にとって最高の報奨なんだっ!!」

 一通り喋り終わっても、まだ静かだった。

「うぅ…、なんて、素晴らしい言葉だッ…」
「俺、感動でっ…」
「ちくしょうっ…、涙が…止まらないぜっ!」
「シリウス様…」
「女神だっ!!シリウスよっ、あんたは星の女神アストライアの化身だっ!!」
「うおぉぉ~!女神様~!!」
「ありがたや~、ありがたや~!」
「神よっ、感謝致しますっ!!我らに最高の慈悲を与えて下さったっ!!」
「シリウス様~!!どこまでも着いていきますっ!!」

 今度はわぁーわぁー盛り上がりが最高潮までいって、違う意味で収集がつかなくなってる。

 もう、みんな熱狂しちゃって、神様を崇めるみたいに手を合わせたり、絶叫したり、泣いてたり……。
 騎士団の面々も私を見上げながら、感動したみたいな眼差しを向けて動こうとしない。

 いやー…、どうしたもんかな…。
 
「…アトリクスっ」

 ようやくアルファルドが辿り着いたのか、門の下から私を見上げてる。

「アルファルドっ!」

 ぴょんっと門の上から飛び降りて、下にいたアルファルドのとこにダイブした。
 アルファルドは手を広げて私を受け止めようとしてくれてるから、風魔法使ってゆっくり降下してアルファルドの腕の中に収まった。
 
「アルファルド、大丈夫だった?」
「…あぁ、俺は何ともない」
「そっか、良かった!」

 ぎゅっとアルファルドの体に抱きついた。大役終えてホッとしたよ。

「…アトリクス…」
「ん?」

 抱きしめてたアルファルドの両手が私の頬に添えられて、ロイヤルパープルと黄金色の神秘的な瞳が私を見下ろしてる。

「どうした…?」

 アルファルドの綺麗な顔が近づいてきて、顔の角度をずらしながら目を閉じてる。何しようとしてるのか気付いたんだけど、こうなっちゃうとどうにもならないんだよね。
 
「んッ…」

 アルファルドってやっぱり読めないな…。
 一瞬、ここがどこかなんて忘れるくらい、激しく唇を奪われた。被ってた帽子が外れて下に落ちたけど、そんなの気にしてる余裕は私になかった。

「きゃっ!!キャーキャー!!お二人がくち、口付けをッ!!」
「はぁぁ…、ステキっ…」
「羨ましいわぁ…」
「お二人とも、本当に愛し合ってらっしゃるのね…」
「良いもん見せてもらったよっ」

 アルファルドってば、公衆面前で舌まで入れるなんて信じらんないっ!
 相変わらず人前でキスするのに抵抗ないっていうか…、まるで見せつけてる感じで絶対わざとやってるよね。
 
「はっ…ぁ…」

 長過ぎるキスが終わって、唇が離れてすぐアルファルドに抱きついた。真っ赤になった顔を隠すようにアルファルドの胸元に埋めた。

 は、恥ずかし過ぎるっ…!
 私の事、淫らだとか卑猥だとか言うけど、アルファルドも大概だと思うよッ!?

「「「ドラコニス公爵家バンザーイッ!!」」」

 ここでよくわからないけど万歳コールが起きて、私達を囲むようにみんなが祝福してくれてる。

「お幸せにー!!」
「公爵様っ!シリウス様ぁ~!!」
「シリウスっ!良かったな!幸せになっ!!」
「よぉしっ、これで明日から安心して働けるぞっ!」
「さぁ、解散だ、解散っ!!」
「おーい!撤収しろーっ!!」
 
 みんなの気が済んだのか、あんなに人だらけだった広場が瞬く間にすっきりしちゃった。

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