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番外編
断罪 1
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この時、私は冷静さを欠いてたからわからなかったけど、もうこの場面だけでゲームのイベント的な図が出来上がっちゃってた。
私が悪役でポラリスがヒロイン、主人公を虐めてる場面で現れるレグルス様がヒーローみたいなさ。
「これは一体……、何があったんだい?」
地面に座り込んでるポラリスの元へと駆け寄って、支えながらポラリスを起こしてる。
「も、申し訳……ございませんっ……! 私が、私が……悪いんですっ……!」
「大丈夫かい? 制服も汚れて、手も擦りむけて怪我をしてるじゃないか……」
「あ……、いえ……」
レグルス様に肩を抱かれながら立ち上がったポラリスは、ポロポロ泣いてる。
「ポラリスが大公に呼ばれたと聞いたから来てみたが……、どういう事か説明してもらえるか? シリウス名誉教授ッ」
私がポラリス泣かせたみたいに睨んできてるレグルス様。
「言っておくが、お前の婚約者の方が勝手に俺の夫に付いて行ったんだっ! しかもある事ない事言って……、非があるのはそっちの方だ!」
「わた、私……は……、大公様に、ついて来いと……言われて……」
「そんな訳ないだろっ!」
「シリウス名誉教授……、その証拠でもあるのか? 私も周りの生徒からそう聞いているが」
「お前らッ、いい加減に――!」
頭に血が上っててわかんなかったけど、レグルス様のセリフを聞いてハッとした。
もう思い出してから何年も経ってるから、すっかり忘れてたけど、この場面……、ポラリスに付きまとってたアルファルドが、レグルス様に言及されてた時のやつじゃん!
この時にアルファルドが沢山の生徒の中、レグルス様に結構な言われ方されて絶望して……、命と引き換えに魔界王を復活させる最後の引き金になったんだ……
「私の婚約者をこのように泣かせ怪我をさせた上、殺気まで浴びせ恐喝するとは……! これは大公家の皇室に対する反逆行為と見なすぞっ!!」
レグルス様は泣いてるポラリスを抱き寄せて、私とアルファルドを厳しく非難してる。
その場がシーンと静まり返ってる。
そしていつの間にか、周りには野次馬ができ始めてた。
「…すまない……、アトリクスッ……! 俺が気をつけていれば、こんな事にはならなかったッ」
後ろから抱きしめてたアルファルドが、悔しそうに腕に力を込めてる。その腕も震えてて……、私はそれを感じて冷静さを取り戻した。
――――あ…………
また……、アルファルドを不安にさせちゃったのかな?
そうだよね。
アルファルドはこういう場面がすごく苦手で、嫌いだから。
体ごと後ろを振り向いて、アルファルドの頬に両手を伸ばしてそっと包みこんだ。
それから安心させるように、いつも通りアルファルドに向かってニコッと笑いかけた。
「大丈夫だよ、アルファルド。安心して? 私はどんな時でもアルファルドの味方だし、誰よりも信じてるからっ」
「…アトリクス……」
「さっきは怒ったりしてごめんな……。お前は悪くない。だから何も心配するな! 俺に任せろっ」
これって、明らかにアルファルドを罠に嵌めて、私達を断罪するつもりだよね。
やっぱりレグルス様って相当腹黒い。この人って、本当に男主人公なの? ゲームで見てたレグルス様と全然違う!
もっと爽やか系で正義感の強い人だと思っていたけど。
アルファルドが悪役じゃなくなったから、配役が変わったとか?
なんにしても、この状況をどうにかしないとな……
「あ、あのっ……」
突然、野次馬の中から声が上がった。
一人の女生徒が手を挙げて、怯えるように木の茂み辺りから出てきた。
「君は?」
「わ、わたくしはカテリーナ・デルフィーヌスと申します。恐れながら申し上げますっ。大公様は間違ったことを仰っておりません!」
「っ! どういう事だ……?」
「少し前からわたくしもここにおりまして……、大公様の後をヴィルギニス侯爵令嬢が歩いてまして、大公様は確かに、“ついて来るなっ”とはっきり仰っておりましたわ!」
ちょっとぽちゃっとした女の子だったけど、震えながらも勇ましく発言してくれてた。
周りで野次馬になってた生徒達も、顔を見合わせながらざわついてるよ。
いや、ちょっと……私もびっくりした。
この中に私の知り合い以外、味方なんていないと思ってたけど……、この面識もない女の子が、突然アルファルドの正当性を発言する証人になってくれるなんて思っても見なかった。
レグルス様もまさか伏兵がいたとは思わなかったんだろうね。意外な証言者に表情が一気に険しくなってる。
「デルフィーヌス嬢……。君は、自分の発言に責任は取れるのかい? もし、それが虚偽であった場合……、君自身やご家族までも皇室を裏切ることになるが……」
「…っ! そ、そんな……」
脅す感じじゃなくて、諭すように話してるけど……言ってる事は脅迫と同じだよね。
この女生徒も顔色が悪くなって力が拔けたのか、その場にへたり込んじゃってる。
「はっ、ハハハッ……!」
急に笑い出した私に、その場にいたみんなが注目してる。私はアルファルドから離れて、腕くんでレグルス様に皮肉げに笑いかけた。
「随分、余裕がないな? 皇子様……」
「っ」
「ちゃんと証言者がいたぜ? アルファルドは悪くない。そっちの聖女様が俺の旦那に勝手についていったんだっ!」
「違うッ! 私は複数の生徒から聞いている! 虚偽の発言をしているのはこの生徒だっ!」
もうさ……言った言わないってなっちゃうと、どうにもならないよね。
しかも向こうは何人も見てるとか聞いてるとか言ってるし。
この時、私は冷静さを欠いてたからわからなかったけど、もうこの場面だけでゲームのイベント的な図が出来上がっちゃってた。
私が悪役でポラリスがヒロイン、主人公を虐めてる場面で現れるレグルス様がヒーローみたいなさ。
「これは一体……、何があったんだい?」
地面に座り込んでるポラリスの元へと駆け寄って、支えながらポラリスを起こしてる。
「も、申し訳……ございませんっ……! 私が、私が……悪いんですっ……!」
「大丈夫かい? 制服も汚れて、手も擦りむけて怪我をしてるじゃないか……」
「あ……、いえ……」
レグルス様に肩を抱かれながら立ち上がったポラリスは、ポロポロ泣いてる。
「ポラリスが大公に呼ばれたと聞いたから来てみたが……、どういう事か説明してもらえるか? シリウス名誉教授ッ」
私がポラリス泣かせたみたいに睨んできてるレグルス様。
「言っておくが、お前の婚約者の方が勝手に俺の夫に付いて行ったんだっ! しかもある事ない事言って……、非があるのはそっちの方だ!」
「わた、私……は……、大公様に、ついて来いと……言われて……」
「そんな訳ないだろっ!」
「シリウス名誉教授……、その証拠でもあるのか? 私も周りの生徒からそう聞いているが」
「お前らッ、いい加減に――!」
頭に血が上っててわかんなかったけど、レグルス様のセリフを聞いてハッとした。
もう思い出してから何年も経ってるから、すっかり忘れてたけど、この場面……、ポラリスに付きまとってたアルファルドが、レグルス様に言及されてた時のやつじゃん!
この時にアルファルドが沢山の生徒の中、レグルス様に結構な言われ方されて絶望して……、命と引き換えに魔界王を復活させる最後の引き金になったんだ……
「私の婚約者をこのように泣かせ怪我をさせた上、殺気まで浴びせ恐喝するとは……! これは大公家の皇室に対する反逆行為と見なすぞっ!!」
レグルス様は泣いてるポラリスを抱き寄せて、私とアルファルドを厳しく非難してる。
その場がシーンと静まり返ってる。
そしていつの間にか、周りには野次馬ができ始めてた。
「…すまない……、アトリクスッ……! 俺が気をつけていれば、こんな事にはならなかったッ」
後ろから抱きしめてたアルファルドが、悔しそうに腕に力を込めてる。その腕も震えてて……、私はそれを感じて冷静さを取り戻した。
――――あ…………
また……、アルファルドを不安にさせちゃったのかな?
そうだよね。
アルファルドはこういう場面がすごく苦手で、嫌いだから。
体ごと後ろを振り向いて、アルファルドの頬に両手を伸ばしてそっと包みこんだ。
それから安心させるように、いつも通りアルファルドに向かってニコッと笑いかけた。
「大丈夫だよ、アルファルド。安心して? 私はどんな時でもアルファルドの味方だし、誰よりも信じてるからっ」
「…アトリクス……」
「さっきは怒ったりしてごめんな……。お前は悪くない。だから何も心配するな! 俺に任せろっ」
これって、明らかにアルファルドを罠に嵌めて、私達を断罪するつもりだよね。
やっぱりレグルス様って相当腹黒い。この人って、本当に男主人公なの? ゲームで見てたレグルス様と全然違う!
もっと爽やか系で正義感の強い人だと思っていたけど。
アルファルドが悪役じゃなくなったから、配役が変わったとか?
なんにしても、この状況をどうにかしないとな……
「あ、あのっ……」
突然、野次馬の中から声が上がった。
一人の女生徒が手を挙げて、怯えるように木の茂み辺りから出てきた。
「君は?」
「わ、わたくしはカテリーナ・デルフィーヌスと申します。恐れながら申し上げますっ。大公様は間違ったことを仰っておりません!」
「っ! どういう事だ……?」
「少し前からわたくしもここにおりまして……、大公様の後をヴィルギニス侯爵令嬢が歩いてまして、大公様は確かに、“ついて来るなっ”とはっきり仰っておりましたわ!」
ちょっとぽちゃっとした女の子だったけど、震えながらも勇ましく発言してくれてた。
周りで野次馬になってた生徒達も、顔を見合わせながらざわついてるよ。
いや、ちょっと……私もびっくりした。
この中に私の知り合い以外、味方なんていないと思ってたけど……、この面識もない女の子が、突然アルファルドの正当性を発言する証人になってくれるなんて思っても見なかった。
レグルス様もまさか伏兵がいたとは思わなかったんだろうね。意外な証言者に表情が一気に険しくなってる。
「デルフィーヌス嬢……。君は、自分の発言に責任は取れるのかい? もし、それが虚偽であった場合……、君自身やご家族までも皇室を裏切ることになるが……」
「…っ! そ、そんな……」
脅す感じじゃなくて、諭すように話してるけど……言ってる事は脅迫と同じだよね。
この女生徒も顔色が悪くなって力が拔けたのか、その場にへたり込んじゃってる。
「はっ、ハハハッ……!」
急に笑い出した私に、その場にいたみんなが注目してる。私はアルファルドから離れて、腕くんでレグルス様に皮肉げに笑いかけた。
「随分、余裕がないな? 皇子様……」
「っ」
「ちゃんと証言者がいたぜ? アルファルドは悪くない。そっちの聖女様が俺の旦那に勝手についていったんだっ!」
「違うッ! 私は複数の生徒から聞いている! 虚偽の発言をしているのはこの生徒だっ!」
もうさ……言った言わないってなっちゃうと、どうにもならないよね。
しかも向こうは何人も見てるとか聞いてるとか言ってるし。
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