冬来りなば、春遠からじ ~親友になった悪役公爵が俺(私)に求愛してくるけど、どうしたらいい…?

ウリ坊

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星たちの行方 5

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「コールサック魔法騎士団長殿」

 私が突然呼んだ事に驚いたのか、勢いよく席を立って返事を返してくれた。

「はいっ?私ですか…?如何されました?」
 
 何で自分が呼ばれたのかも判らないみたいで、戸惑いに満ちた表情で私を見てた。

 私は帯剣してたデュランダルを鞘から抜いて、アケルナー父にその剣を向けた。

「魔法騎士団長殿なら、この剣に見覚えがあるでしょう。この剣は私の愛刀です」

「…近くで、拝見しても?」

「えぇ、もちろんです」

 にっこり笑って、私の近くまで歩いて来たアケルナー父。両手を差し出されたから、そのままアケルナー父にデュランダルを渡した。
 青白い光を放ってたデュランダルは、私の手を離れた途端その輝きを失って、石みたいに灰色に変わってしまった。

「──ッ!!これはッ!間違いありませんっ!この剣は紛れもなく、シリウス卿の物です!!」

 会場内に響き渡るようにアケルナー父が声を上げた。

「コールサック卿!どういうことだ?!説明せよっ!!」

 ざわついた会議場内を制止するように、ポルックス公爵の声が響く。

「失礼致しました。…陛下、このシリウス卿の剣は、伝説級レジェンドクラスのロストアイテムで、今では加工不可能なオメガニウム合金製でできている超一流の業物です。こういった剣の特徴といたしまして、剣自らが持ち主を選ぶと言われております」
「……剣が、持ち主を選ぶ…?」
「はい。先程光を放っていたこの剣が、私の手に渡った瞬間、輝きを失ってしまいました。これはこの剣が持ち主の手元から離れた事を意味しております。……シリウス卿…、こちらを」

 そう言ってアケルナー父は、両手でうやうやしく私にデュランダルを返してくれた。

 私が受け取った瞬間、デュランダルはまた青白い光を放って、本来の輝きを取り戻してる。

「おぉっ!!…し、信じられん…」
「本当だっ。剣が…、光り出したっ…!」
「こんな事が…」
 
 前の皇宮での依頼で不本意にも、アケルナー父にデュランダルを認識させたことがこんな事に繋がるとはね。
 思い付きで言ってみたけど、アケルナー父って嘘付くような人じゃないし、魔法騎士団の団長でめちゃくちゃエリートだから、自分の発言にも責任持ってるからね。

「剣は決して嘘をつきません!この剣があるじと認めたこの方こそっ、間違いなく本物のシリウス卿ですッ!!」

 はっきりと断言したアケルナー父に、またまた会議場内がざわつき出した。
 もう、話し合いどころじゃないよね。
 こうなることなんて想定内だけど、早めに話を進めたいんだよね。
 魔界王戦の時みたいに、信じてもらう事にまず時間が掛かるからなぁ。

「まことかっ!コールサック魔法騎士団長っ!!」
「えぇ。我が家門の名誉にかけましても、真実だと断言いたしますッ!!」

 ポルックス公爵に向かって胸に手を当てながら、深々と礼をして言い切ってくれた。

「「「「──ッ!!」」」」

 一同騒然としてる。

 アケルナー父、ありがとうね。ちゃんと事実だから、貴方の首が飛ぶことはないよ。

「では…、本当に、貴殿が…あの、シリウス…なのか?」

 ポルックス公爵は頭を下げてるアケルナー父から私へと視線を移して、それでも信じられない呆然とした顔でこっちを見てる。

「えぇ。信じて頂けましたか?陛下」

 手に持ったデュランダルを腰に収めて、にこりと笑った。

「ここまで言われては、信じざるを得んだろう……。いや、まさかシリウスが…こんな美しい女性だったとは…」

 ポルックス公爵の呟きが、シーンとした会議場内に響いてる。
 突然降って湧いたシリウスの本来の姿に、皆んなが戸惑いを隠せてない。
 
「では、本題に入らせていただいてよろしいですか?今回私がここへ呼ばれた理由は、ですが?」

 その沈黙を破るように声をかけた。

「あ、あぁ。そうだな。そなたの本来の姿に驚きを隠せなんだ…。では、そなたをシリウス准伯爵と認めようッ!!」

 ようやくポルックス公爵が私をシリウスだと認めてくれて、ざわつきが少しは治まった。
 いや、まだ煩いけど…認めてもらわない事には話し合いも進まないし。

 私の近くいたポルックス公爵も、上座の方に戻って行って、アケルナー父も立ち上がってた面々も次々席に着いた。

「いや、疑ってしまったな…真偽を確かめる為には必要な事であった…許せ。…シリウス、そして、ドラコニス公爵よ。そちらへ掛けてくれ」

 一悶着の後、ようやく席に着く事が出来た。


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