冬来りなば、春遠からじ ~親友になった悪役公爵が俺(私)に求愛してくるけど、どうしたらいい…?

ウリ坊

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番外編

断罪 4

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 私とアルファルドはそのまま皇宮に向かった。
 本来なら皇帝陛下に会うのに、様々な手続きしてから謁見しなきゃいけないんだけど、かなり頭にきてる私はその辺をすっ飛ばして強行突破させてもらった。

「貴女は……? シリウス帝督っ! あの……、本日はどのような御用で?」
「只今陛下は執務中にて、面会は取り合っておりません」

 アカデミアの制服でやってきた私とアルファルドを驚いた顔で見張りの騎士二人が見てる。

「陛下に用がある。扉を開けろっ」

 この二人も知ってるから、いつもなら挨拶くらいは交わすけど、今の私にそんな余裕はない。

「し、しかし……」
「どうかなさったのですか?」

 私の剣幕に騎士二人も戸惑った様子で、二人で顔見合わせて疑問の声をあげてる。

「緊急事態だっ! 今すぐ扉を開けろっ!!」

 いつまでも開けない二人をキッと睨んで、声を荒げて命令した。私はこの二人の上官だから立場上、開けざるを得ない。

「ッ! はっ、かしこまりました!」
「すぐにお開けいたしますっ!」

 姿勢をぴしっと正して、慌てて扉を左右に開けてる。

「皇帝陛下っ、シリウス帝督のお越しですっ!!」

「シリウスっ!? 急にどうした?!」
「シリウス帝督。許可もなく、いきなりの謁見を強行されるとは……、困るのですが……」

 私は二人の言葉を無視して、つかつかと勢いよく執務中のポルックス公爵の前まで歩いて、バンッ! と両手で机を叩いた。

「――っ! ……シリウスっ!? 突然、何事だ?! 無礼だぞッ!!」
「陛下に対し、なんと言うっ……!」

 めちゃくちゃ怒ってる私にそんな言葉は届いてない。その場でブワっと殺気を解き放って、キッと二人を睨んだ。

「ッ! し、シリウス……、一体、何があったのだ?!」
「事情を……ご説明、ください……」

 私が相当頭にきてるのを感じとったのか、ポルックス公爵と宰相さんは声のトーンを抑えて話してきてる。
 私は頭に血が上ってて、そんなの気にしてる暇はなかった。
 
「事情……? 俺がなぜ、ここまでの怒りを見せているか……、お二人にもご覧いただこうッ!」

 私の胸元に付いてたアルファルドとお揃いの映像石が付いたタイピンを強引に取って、さっきと同じく今まで起きた映像を二人に見せた。

「……なんと……、愚かな……」
「はぁ……、何故……このようなことを……」

 一通り映像を見せたから、これで私達が悪くないって証明はできたよね。

「これは大公家に対する皇室の宣戦布告と見なすが、それで構わないか確認しにきた。俺達の正当性を見せないと、また理不尽極まりなくこちらが責られることになるからな」
「落ち着けっ、シリウス!」
「ここまで侮辱され、落ち着いていられるとお思いか?」
「そなたの気持ちは良くわかった! 皇太子には余から言って聞かせよう! ここはひとまず……」
「悪いが俺は引き下がる事はしない。いいか……、俺はアルファルドが長い間虐げられていたことですら、許せないんだ……。それをあの皇太子は俺達を下らない計略で罠に嵌め、失脚させようとした……」

 キッと睨んで二人に訴えるけど……

「……っ、皇太子にも何か考えがあって」

 わかってもらえないみたいだね。
 まぁ、期待なんてしてないからどうでもいいけど、それなら私にも考えがある。

「考え? 大公家を陥れる以外、どんな考えがあるというんだ? あぁそうか……、ここの人間には俺の話が通用しないようだ。だとしたらそうだな……、この映像を新聞社や情報ギルドに売るのもいい……。いや、広場に民衆を集めてこの映像を再生させるのも面白いな……あれだけ俺の為に、沢山の民間人が集まってくれたんだ。その人達にこの馬鹿げた映像を見せたら、どんな反応を見せるかな? この前以上の暴動が起きそうで、今から楽しみだ……」

 殺気を緩やかにまとわせて腕を組みながら、私が独り言みたいに淡々と喋って冷淡に笑ってるのを見て、ポルックス公爵と宰相さんは顔色をサッと変えて焦ってる。

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