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番外編
二人の結婚式 後編(完)
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リブラの外れにある教会までやってきて、馬車から降りてアルファルドにエスコートされながら中へと向かっていく。
教会の中には沢山の人がいて、アウリガル国王やリリーとパステル宰相にカストル陛下もいたし、アヴィオール学長やエルナト先生、グランドマスターのタラゼドにベクルックス辺境伯夫婦まで来てくれてた。
この人たち全員をアルファルドが招待状書いて呼んでくれたのかと思ったら、まためちゃくちゃ泣きそうになってきちゃった。
でもグッと堪えてたら、入口付近の脇から誰か出てきた。
――――え……?
「ミラ……綺麗だぞっ……」
「ッ!……お……と、う、さま……?」
そこには真っ白なタキシードを着た父がいた。
久しぶりに近くで見た父は最後に見た時より老けてて、当たり前なのに……それに驚きを隠せなかった。
「ほら、行くぞ」
「え……?」
「腕を取れ」
「え? あ……」
あまりに突然なことに、頭が追いつかなくて……状況を把握できない。
父は私の手を自分の腕に持っていって、混乱してる私をよそにゆっくり歩き出した。
「アルファルド君がな……、タウリを連れて家まで訪ねて来てくれたんだ」
「は……?」
バージンロードを歩いてる両脇から、みんなが立って拍手を贈ってくれてる。
でも私は理由がわからなくて、隣の父を見ながら、話してる言葉に耳を傾けてた。
「お前の結婚式に、どうしても両親を呼びたいとな。身の安全は保証するからぜひ来てくれと」
「アル、ファルド、が……」
「ミラがこれまで、自分のために様々なものを犠牲にしてきたから、少しでも取り戻したいと……頭まで下げていた」
「っ、な、んで……」
「お前を、幸せにしてやりたいって」
「――ッ!!」
父と二人で歩きながら、もう私の涙腺は決壊しちゃって……
祭壇の前でアルファルドが待ってるのに、涙で全く見えない。
グズグズしながら、アルファルドの前までやってきて、私の背中を父がグッと押して、アルファルドの側まで寄せた。
「ミラ、結婚おめでとう! アルファルド君も、感謝してるぞ……ありがとう!」
「…こちらこそ、出席していただき、感謝いたします」
アルファルドの言葉に頷いた父は、泣いてる私の肩にポンと手を乗せた。
「幸せになるんだぞ、ミラ」
「ひっく……っ、は、い。っく……お父、様っ……」
父はそのまま前列の椅子まで下って、ハンカチで涙を拭ってる。
「…ミラ、行くぞ」
「う、ん……」
アルファルドが私の腰に手を回して、祭壇の前まで何とか歩いた。
泣きながら誓いの言葉とキスを交わして、私とアルファルドは教会の外へ出た。
「アトリクス! 大公様! おめでとうございますわ! アトリクスを見ていたら、わたくしも思わず泣いてしまいましたっ!!」
リリーも安定期に入ったから旦那様のパステル宰相と一緒に来てくれたみたい。
「公王よ! この素晴らしき晴れの日の招待、感謝するぞ! そしてシリウスよ、たとえ公妃になろうとも貴殿はアウリガル王国の恩人であり英雄だ。外交とは言わず、気軽に遊びに来るといい」
アウリガル国王は今だに私の爵位を残してくれてる。もう冒険者でもなくなったし、全部返納するって言ったのに、それだけは譲ってくれなかった。
「公王にシリウスよ。国の代表としてではなく、親族として祝辞を贈ろう。そなた達には言葉に表せぬほど感謝をしている。公王……、いや、アルファルドよ……良かったな」
アルファルドがポルックス公爵を呼んだのにはびっくりした。私もポルックス公爵にはお世話になったし、一応この人が皇帝でいる間は、大公国と帝国は友好関係にあるからね。
でも、皇族が大っきらいなアルファルドが招待するとは思わなくて……
アルファルドの中でも色んな心境の変化があったのかな?
「フォッフォッフォッ! アトリクス君、アルファルド君、おめでとうだのぉ」
「お二人とも、おめでとうございます」
アヴィオール学長とエルナト先生もアカデミアの正装で参列してくれてて、にこにこしながら祝福してくれてる。
「シリウス!! 俺まで呼んでくれて驚いたぞ! しかもだ、大公がA級冒険者だったのにはさらに驚いたんだからなっ!」
遠くまで聞こえそうなくらい大きな声で話しかけてきたのはタラゼド。
余談だけど、冒険者ギルドは大公国にも各所に作った。
それに冒険者は引退したけど、私が持ってるSSS級冒険者ってのは無くならないから、本当にどうにもならないモンスター退治の時だけ依頼を受けてる。
一応気を使ってくれたのか、最後のほうは周りに聞こえないようにボソボソ喋ってたけど、相変わらず声がデカい。
「公王陛下、それにシリウス殿!! 某たちまで呼んでいただき、光栄の極みだ!!」
「公王陛下、シリウス様。この栄誉な席にお呼びいただき、大変感謝申し上げます。お二人の末永い幸せを願っております」
こっちはベクルックス辺境伯夫妻。この人も相変わらず声がデカくて暑苦しい。
妻のセリーナさんはすっかり元気になって、可憐な笑顔で仲良さそうに二人で寄り添ってた。
――そして……
「ミラ、久しぶりね。とても会いたかったわ……」
「お姉様、お久しぶりです!」
「……本当に、ミラお姉様が……あの、シリウス様なの?」
「ミラ、おネエたま! はじめまして! カペラと申します」
お父様の隣にはお母様がいて、さらに隣にミザルとミュー、それから初めて見る妹。
お母様は昔みたいにふんわり笑ってて、ミザルはすっかり大人になっちゃって、ミューはまだやんちゃな感じで、カペラと名乗った初対面の妹は、私に似てスカート広げながら挨拶してた。
「み、んな……来て、くれたの……?」
またポロポロと涙があふれてきて、隣に立ってたアルファルドがハンカチを渡してくれた。
「ふふふっ、アルファルド君が呼んでくれたのよ。わざわざ子爵家まで出向いて下さってね。私たちに大公国で住まないかって」
「え……? 住むっ……て?」
隣に立ったアルファルドを見上げて、お母様が言った言葉の意味を聞いた。
「…勝手だと思ったが、これまでのお前のことをご両親にお話しした。…ミラ、お前が俺を想ってくれるように、俺もお前を想っている。…俺のために、お前の大事なものを捨てる必要はない。…俺は、本当の意味でお前を幸せにしたいんだ」
「アル……ファルド……」
「アルファルド君がな、領地と爵位を用意するから、ぜひ大公国に来てくれと俺たちに頼み込んで来たんだ」
「う、そ……」
「ドルアーガの領地と爵位は親戚に譲って、数日前にこっちに越してきた。使用人も来たい者はみんな来て構わないというから、ほとんどの奴らが着いてきたんだぞ」
豪快に笑いながら話すお父様は、やっぱり昔と変わらない。
「でも……いいの?」
「当たり前だろ! 可愛い娘が突然いなくなって、たった一人であんな苦労して、命の危険までおかして……しかも、知らない内に世界を救ってたんだ! ……それに比べたらこのくらいッ、なんでも、ないだろがっ……!」
「お、父様……」
笑って話してたお父様もいつの間にか泣いてて、隣にいたお母様も静かに涙を流してた。
「ミラ。私たちはアルファルド君に言われたから来たんじゃないのよ? 貴女がずっと心配だったから……。大丈夫だと思っていたけど、貴女を思わない日は一日もなかったわ」
「ふっ……うっ、うぅ……ご、めんなさい……お父、様……お母、様……」
たまらなくなって、二人に駆け寄って抱きついた。
そのまましばらく気の済むまで泣いてた。
「さぁ、そろそろ行くといい。今日の主役はお前だろう? これからいつでも会えるんだ」
「ふふふっ、そうね。積もる話もあるでしょうから、これからゆっくり聞かせてもらうわ」
「ぅ、っく……は、い!」
送り出してくれる二人に笑顔を向けて、私の様子をずっと見てたアルファルドの前まで歩いていった。
「アルファルド、ありがとう! 俺、お前が好きだっ、大好きだっ!!」
涙を拭いて、途中から笑顔で走ってアルファルドに勢いのまま抱きついた。
「…俺もだっ」
アルファルドも私を受け止めてくれて、抱き上げたまま太陽と同じくらい眩しい笑顔を見せてくれた。
完
リブラの外れにある教会までやってきて、馬車から降りてアルファルドにエスコートされながら中へと向かっていく。
教会の中には沢山の人がいて、アウリガル国王やリリーとパステル宰相にカストル陛下もいたし、アヴィオール学長やエルナト先生、グランドマスターのタラゼドにベクルックス辺境伯夫婦まで来てくれてた。
この人たち全員をアルファルドが招待状書いて呼んでくれたのかと思ったら、まためちゃくちゃ泣きそうになってきちゃった。
でもグッと堪えてたら、入口付近の脇から誰か出てきた。
――――え……?
「ミラ……綺麗だぞっ……」
「ッ!……お……と、う、さま……?」
そこには真っ白なタキシードを着た父がいた。
久しぶりに近くで見た父は最後に見た時より老けてて、当たり前なのに……それに驚きを隠せなかった。
「ほら、行くぞ」
「え……?」
「腕を取れ」
「え? あ……」
あまりに突然なことに、頭が追いつかなくて……状況を把握できない。
父は私の手を自分の腕に持っていって、混乱してる私をよそにゆっくり歩き出した。
「アルファルド君がな……、タウリを連れて家まで訪ねて来てくれたんだ」
「は……?」
バージンロードを歩いてる両脇から、みんなが立って拍手を贈ってくれてる。
でも私は理由がわからなくて、隣の父を見ながら、話してる言葉に耳を傾けてた。
「お前の結婚式に、どうしても両親を呼びたいとな。身の安全は保証するからぜひ来てくれと」
「アル、ファルド、が……」
「ミラがこれまで、自分のために様々なものを犠牲にしてきたから、少しでも取り戻したいと……頭まで下げていた」
「っ、な、んで……」
「お前を、幸せにしてやりたいって」
「――ッ!!」
父と二人で歩きながら、もう私の涙腺は決壊しちゃって……
祭壇の前でアルファルドが待ってるのに、涙で全く見えない。
グズグズしながら、アルファルドの前までやってきて、私の背中を父がグッと押して、アルファルドの側まで寄せた。
「ミラ、結婚おめでとう! アルファルド君も、感謝してるぞ……ありがとう!」
「…こちらこそ、出席していただき、感謝いたします」
アルファルドの言葉に頷いた父は、泣いてる私の肩にポンと手を乗せた。
「幸せになるんだぞ、ミラ」
「ひっく……っ、は、い。っく……お父、様っ……」
父はそのまま前列の椅子まで下って、ハンカチで涙を拭ってる。
「…ミラ、行くぞ」
「う、ん……」
アルファルドが私の腰に手を回して、祭壇の前まで何とか歩いた。
泣きながら誓いの言葉とキスを交わして、私とアルファルドは教会の外へ出た。
「アトリクス! 大公様! おめでとうございますわ! アトリクスを見ていたら、わたくしも思わず泣いてしまいましたっ!!」
リリーも安定期に入ったから旦那様のパステル宰相と一緒に来てくれたみたい。
「公王よ! この素晴らしき晴れの日の招待、感謝するぞ! そしてシリウスよ、たとえ公妃になろうとも貴殿はアウリガル王国の恩人であり英雄だ。外交とは言わず、気軽に遊びに来るといい」
アウリガル国王は今だに私の爵位を残してくれてる。もう冒険者でもなくなったし、全部返納するって言ったのに、それだけは譲ってくれなかった。
「公王にシリウスよ。国の代表としてではなく、親族として祝辞を贈ろう。そなた達には言葉に表せぬほど感謝をしている。公王……、いや、アルファルドよ……良かったな」
アルファルドがポルックス公爵を呼んだのにはびっくりした。私もポルックス公爵にはお世話になったし、一応この人が皇帝でいる間は、大公国と帝国は友好関係にあるからね。
でも、皇族が大っきらいなアルファルドが招待するとは思わなくて……
アルファルドの中でも色んな心境の変化があったのかな?
「フォッフォッフォッ! アトリクス君、アルファルド君、おめでとうだのぉ」
「お二人とも、おめでとうございます」
アヴィオール学長とエルナト先生もアカデミアの正装で参列してくれてて、にこにこしながら祝福してくれてる。
「シリウス!! 俺まで呼んでくれて驚いたぞ! しかもだ、大公がA級冒険者だったのにはさらに驚いたんだからなっ!」
遠くまで聞こえそうなくらい大きな声で話しかけてきたのはタラゼド。
余談だけど、冒険者ギルドは大公国にも各所に作った。
それに冒険者は引退したけど、私が持ってるSSS級冒険者ってのは無くならないから、本当にどうにもならないモンスター退治の時だけ依頼を受けてる。
一応気を使ってくれたのか、最後のほうは周りに聞こえないようにボソボソ喋ってたけど、相変わらず声がデカい。
「公王陛下、それにシリウス殿!! 某たちまで呼んでいただき、光栄の極みだ!!」
「公王陛下、シリウス様。この栄誉な席にお呼びいただき、大変感謝申し上げます。お二人の末永い幸せを願っております」
こっちはベクルックス辺境伯夫妻。この人も相変わらず声がデカくて暑苦しい。
妻のセリーナさんはすっかり元気になって、可憐な笑顔で仲良さそうに二人で寄り添ってた。
――そして……
「ミラ、久しぶりね。とても会いたかったわ……」
「お姉様、お久しぶりです!」
「……本当に、ミラお姉様が……あの、シリウス様なの?」
「ミラ、おネエたま! はじめまして! カペラと申します」
お父様の隣にはお母様がいて、さらに隣にミザルとミュー、それから初めて見る妹。
お母様は昔みたいにふんわり笑ってて、ミザルはすっかり大人になっちゃって、ミューはまだやんちゃな感じで、カペラと名乗った初対面の妹は、私に似てスカート広げながら挨拶してた。
「み、んな……来て、くれたの……?」
またポロポロと涙があふれてきて、隣に立ってたアルファルドがハンカチを渡してくれた。
「ふふふっ、アルファルド君が呼んでくれたのよ。わざわざ子爵家まで出向いて下さってね。私たちに大公国で住まないかって」
「え……? 住むっ……て?」
隣に立ったアルファルドを見上げて、お母様が言った言葉の意味を聞いた。
「…勝手だと思ったが、これまでのお前のことをご両親にお話しした。…ミラ、お前が俺を想ってくれるように、俺もお前を想っている。…俺のために、お前の大事なものを捨てる必要はない。…俺は、本当の意味でお前を幸せにしたいんだ」
「アル……ファルド……」
「アルファルド君がな、領地と爵位を用意するから、ぜひ大公国に来てくれと俺たちに頼み込んで来たんだ」
「う、そ……」
「ドルアーガの領地と爵位は親戚に譲って、数日前にこっちに越してきた。使用人も来たい者はみんな来て構わないというから、ほとんどの奴らが着いてきたんだぞ」
豪快に笑いながら話すお父様は、やっぱり昔と変わらない。
「でも……いいの?」
「当たり前だろ! 可愛い娘が突然いなくなって、たった一人であんな苦労して、命の危険までおかして……しかも、知らない内に世界を救ってたんだ! ……それに比べたらこのくらいッ、なんでも、ないだろがっ……!」
「お、父様……」
笑って話してたお父様もいつの間にか泣いてて、隣にいたお母様も静かに涙を流してた。
「ミラ。私たちはアルファルド君に言われたから来たんじゃないのよ? 貴女がずっと心配だったから……。大丈夫だと思っていたけど、貴女を思わない日は一日もなかったわ」
「ふっ……うっ、うぅ……ご、めんなさい……お父、様……お母、様……」
たまらなくなって、二人に駆け寄って抱きついた。
そのまましばらく気の済むまで泣いてた。
「さぁ、そろそろ行くといい。今日の主役はお前だろう? これからいつでも会えるんだ」
「ふふふっ、そうね。積もる話もあるでしょうから、これからゆっくり聞かせてもらうわ」
「ぅ、っく……は、い!」
送り出してくれる二人に笑顔を向けて、私の様子をずっと見てたアルファルドの前まで歩いていった。
「アルファルド、ありがとう! 俺、お前が好きだっ、大好きだっ!!」
涙を拭いて、途中から笑顔で走ってアルファルドに勢いのまま抱きついた。
「…俺もだっ」
アルファルドも私を受け止めてくれて、抱き上げたまま太陽と同じくらい眩しい笑顔を見せてくれた。
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