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ラストステージ 10

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 空から燃え盛る巨大な隕石が落ちてきてアヌに激突した。

《ガッ!!》

 もちろんそれだけじゃ倒せてないけど、今ので確実にダメージは与えられた。

 アヌは皇宮前の広場の隅で煙をあげて倒れてる。

 この声。
 この魔法。 
 振り返らなくても誰かわかる。

 突然放たれた特殊火属性魔法に、怪我や魔力枯渇状態で倒れてた周りの騎士達や魔法使い達がざわめき出してる。

「…こ、この魔法は!」
「レグルス殿下やカストル殿下は、倒れてらっしゃるのに…一体誰が…」
「これは、皇族方の魔法ではないか?!」
「おいっ。あ、あれは…」

 そう…、皇族のみが使える特殊火属性最上級魔法。

 これを今、この場で撃つことができるのは一人しかいない。
 広場の真ん中で立ってた私は後ろを振り返った。 


 ──アルファルド。


 振り返った先にいたアルファルドは、剣を片手に持ってて途中で戦ってきたのか身なりも何処か汚れてて、あの見惚れるくらい綺麗な顔にはモンスターの返り血が付いてた。

 正直…、アルファルドは現れないと思ってた。

 アルファルドは、この世の全てを恨んでるから。
 混乱に乗じて、そのまま公爵邸に戻るんだろうなって思ってた。
 例えそうでも私は失望しないし、アルファルドを卑怯だとも思わない。
 むしろそれが当然の行動だと思ったから…。
 
 アルファルドが私の立ってる方に向かって静かに歩いてくる。

 まだ信じられなくて、私はただアルファルドが歩いて向かって来るのを呆然と見てることしか出来なかった。

「……シリウス卿」

 私が突っ立ってる目の前でアルファルドが止まった。
 アルファルドがシリウスの名前を呼んで、アルファルドを見ながら身体がピクッて反応した。
 まだ…シリウスって言ってくれるんだ。当たり前だよね…人前でそう呼ばないと私だってバレちゃうから。

「…俺も戦う。いや…、戦わせてくれ…。俺がお前を守る」
 
 呟くように言われた言葉も、私を見つめてるニ色のオッドアイも、明らかにシリウス英雄として見ていた時と変わってる。
 アルファルドの左手がスッと私に伸びてきて…、でも、途中で戸惑うように降ろされた。 
 その仕草を見てようやく私は気づいた。

 あ……そっか。

 そうだったのか。

 なんでさっきからこんなに訳も分からず、ポラリスやレグルス様や他のみんなに負の感情を抱いてたのか…。


 だってここに、アルファルドがいなかったから。


 自分でも知らない内に苛立ってて、心の何処かで私がやらなきゃいけないって自分を追い込んでたんだ。
 私だって怖くて逃げ出したいのに、戦わなきゃいけないって責任感もあったから。

 でも…アルファルドが来てくれて、もの凄く嬉しくてホッとしてる。

 私にも頼れる人がいるんだっていう安心感が、こんなにも心の負担を取り除いてくれるなんて思わなかった。
 
 仮面越しに見開いてた目の端から、スッと涙が溢れた。
 他のみんなに嫉妬してたみたい。
 自分達は守ってもらえて、庇われて羨ましいって。

 泣いても拭うことなんてできないのに、でも止めることもできなくてそのままポロポロと泣いた。 

《再生》

 広場の隅からアヌの声が聞こえてる。また治癒魔法使って立ち上がって来てた。

《…この…、下等生物共めがっ!!もう我慢ならんっ!跡形もなく消してやるッ!!》

 相当怒ってるのか、立ち上がってドス黒いオーラを放ちながら片翼まで黒く変化しちゃってる。
 アヌもここまで来ると、もうホントの最終局面だね。

 涙は拭けないけどその場で頷いて、背中に収めてたデュランダルを手に取って抜いた。

 まだ終わってない。
 
 くるっとアルファルドに背を向けて、立ち上がったアヌに向かって剣を構えた。

 気を抜く訳にはいかないから、涙を止めてスゥーッと息を吸い込んでまた大きく吐いてから、自分を高ぶらせる為にも身体中に殺気を纏わせた。
 
 アルファルドに思いっ切り甘えたいし、抱きつきたいし、たくさんキスして押し倒したいけど、先ずはラスボスコイツを倒さないとっ!!


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