冬来りなば、春遠からじ ~親友になった悪役公爵が俺(私)に求愛してくるけど、どうしたらいい…?

ウリ坊

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デネボラ復活編 1

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 見上げた空に星が流れたのを見た私の背中に一筋の汗が流れて、冷ややかな戦慄を覚えた。

 まだ薄暗い夕暮れの空にまた一つ星が流れる。

 一つ、また一つ…。
 
「だめっ…」

 立ち尽くしながら思わず言葉が出た。

 次々流れ出す星の色が、次第に黒く変化してる。

 どうしてもその流れを止めたくて、夜空に向かって手を伸ばすけど…、黒い星は次から次へと流れては消えてる。

 あぁ…遂に来たんだ!
 現実に見るまで、実感が全然湧かなかったけど…。
 
 身体がガクガク震えてる。

 スタンピードの時とはまた違う恐怖が襲いかかってくる。

 早く…、急がなきゃ…いけないのに、身体が…動かない…。

 この黒い流星群が流れ終わるとデネボラが地上に召喚される。もうこのシーンはイヤってくらい何度も見た。
 
 まさか現実で目の当たりにするなんて思っても見なかったよ。

 正直…、勝てる気がしない。
 たぶん帝国が誇る全ての戦力が帝都に集結してるけど…、それでもデネボラは次元が違うから。
 
 身体の力が抜けてその場にへたり込んだ。

「はぁ…、はぁ…」

 自分の身体を両手で抱きしめて、過呼吸になりそうな自分をどうにか落ち着かせる。

 落ち着け……ミラ……。
 私がしっかりしなくてどうするんだよ!

 私はこの作戦の最高責任者。
 国の命運は私の手に掛かってる。
 ここで倒さなかったら、世界が滅亡しちゃうんだからっ!

 多少大袈裟に自分に言い聞かせた。
 ぎゅっと強く身体を抱きしめてから、ふぅ…と深く息を吐いた。

 黒い流星群が流れ出して、周りにいたモンスター達も増えてどんどん凶暴化してる。

「グガァァァ!!」
「ギュアァ!」
「ガウッ!!」

 座ってた岩石の周りを囲まれて、一斉に襲いかかって来た。

 震える手で持ってたデュランダルを握りしめて、四方から飛びかかるモンスターの群れから空に向かって一気にその場から跳躍した。

「グァ、グァ!」

 でも上空で待ち構えてたワイバーンの群れも私目掛けて飛行してきて、一匹のワイバーンの背に着地してデュランダルでその背中を思いっ切り突き刺した。

「グァガッ!!」

 一太刀で絶命して事切れたワイバーンが下に落下してく。その次のワイバーンに飛び移って、次々とワイバーンを跳んで交わして避けながらデュランダルで切り裂いて倒してく。

 ハァ…だいぶ倒したけど、これじゃあ埒が明かないな。

暗黒異次元ブラックディメンション!』

 一匹のワイバーンの背に乗りながら、無属性攻撃魔法を群れに向かって放った。
 攻撃系の魔力を強めて、いつもより長く強めに攻撃魔法を使っていく。
 ブラックホールもいつもより広大に広がって、モンスター達を吸い込む力もかなり強くて次々に吸い込まれてく。

 空に舞ってたワイバーン達のほとんどがその魔法一撃で倒すことができた。

 乗ってたワイバーンも右側の核を破壊して、そのまま風魔法と身体強化を使って岩肌にまた着地した。
 今度は地表で待ち構えてた緑竜と飛竜達が一斉にドラゴンブレスを放ってきた。

魔法無力化アンチマジックディスペル

 自分を覆うように無力化魔法を展開して、ドラゴンブレスをどんどん消していく。

「はぁああ!!」
 
 デュランダルを両手に構え直して、足を強化して地面を蹴ってから次々ドラゴン達に向かって倒していく。

 






 ◇








「はぁ、はぁ…」

 仮面被ってなくて正解だったな。

 もう何十匹モンスターを倒したかわからないや。
 デュランダルを岩肌に突き立てて支えにしながら呼吸を整えた
 
 流れ出してくる汗を岩肌に置いてあった荷物の中から手ぬぐいを取り出して拭いた。
 
 ついでにハイポーションを出して減った体力と魔力を全回復させる。

 もう、考えてる暇なんてない!急いで帝都に戻らないとっ!無駄に時間食っちゃったよ。

 でも戦ったおかげか、不安や恐怖心が吹き飛んだかな。

「ふぅ…」

 改めてシリウスの仮面を被って、置いてた荷物を背中に背負った。
 勢いよく流れてた黒い流星群も、いつの間にかその流れを止めてた。

 身体強化と風魔法を使って、一気に立ち入り禁止区域を飛び出して、暗雲の立ち込める帝都へと急いだ。



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