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帝国重臣会議 1

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 それから何日かは目まぐるしいくらい多忙な日が続いてた。

 大体はタウリと一緒に行動して、説明も面倒だから皇宮でもギルドでもタウリ経由で通訳してもらってた。

 まず信じてもらうのが大変でさー…。
 もうタウリと一緒に融通の利かない貴族や国の重役たちにブチ切れ寸前で、何度怒鳴りそうになったかわからないよ。
 でも私が説明してたダンジョンの消失から次に起こる、魔物達の凶暴化が始まり出して本格的に焦り出したみたいだね。
 ギルド経由で皇宮にも報告が上がるから、帝国各地で凶暴化し始めた魔物の対応に冒険者総出で当たってるって。
 ここまで来てようやく信じる気になったのか、遅すぎるくらいだけどこの人達が動かないと何も進展しないからさ。




「では、国境封鎖はどう致しますか?」
「各領土の貴族からの徴兵は!?」
「光属性のアイテムに関しては神殿に確認を取らねばなりますまいっ!!」
「帝国騎士団、魔法騎士団共に各々配置を決めて置かないといざという事態に混乱を招きます!」
「今からでも流通を止め、帝都への出入りを抑制しましょう!」
「サジタリア魔法アカデミアからも優秀な人材を選出し、教授達と共に前線へ参加させましょう」

 ここは皇宮の会議場。

 中には皇帝陛下はもちろん傍らにはレグルス様とルリオン様、宰相や国の重臣、各騎士団の最高責任者2名と補佐2名、帝国内の最高位貴族3名等など…長いテーブルに座りながらもう何時間も議論を続けてる。

 私もその場に居るけど、とりあえずテーブルには掛けないで、広い会議場の隅の壁に凭れて腕組んでその光景を眺めてる。
 いやだって喋れないし、口挟めないし、話せたとしてもこいつ等相手に喋りたくないしさ…。
 今日はタウリもギルドに行ってていないから、よけいに傍観者として見守ってる。

 意見出し合うのは良いけど、全く纏まってない。
 皇帝陛下も席で座ってるけど、かなり気怠そう。噂だとまだ前のモンスターに襲われた時の状態が回復してないみたいだね。

 ここから見た感じでもかなり酷くなってる。

 上座で重厚な椅子に座りながら、肩肘ついてるけど…薄っすら汗掻いてるから体調もかなり悪そう。
 どうやらポラリスも皇宮に出入りしてて、皇帝の回復に努めてるらしいけど…何故か一向に良くならないらしい。
 ドラコニス公爵家のポーションかハイポーションでも試せばいいのに、頑なに飲もうとしないらしいからどうにもならない。
 まぁでもポラリスの光魔法でも駄目なら、相当酷い状態なのかも。むしろ万能薬でもないと無理かもしれないね。
 
「そなたらの意見は心得た…」

 黙って聞いてた皇帝が静かに口を開いた。
 他の人にはわからないと思うけど…声に覇気が感じられないし、隠してるけど血色も悪くてやつれてる。
 前に見た時と全然違って、何て言うか存在自体が薄くなってる状態。
 身体的な問題じゃなく、違う病気とかが原因なのかもね。

 上座の斜め後ろで立ってる宰相なんかも心配そうに皇帝の様子を見てる。

「ここからの帝国に置ける全指揮権は、ここにいるレグルスへと譲渡する。レグルスの意向は余と同義だ」

 この言葉に会場内がざわついた。
 
 これってさ、要するにもうレグルス様に政権を一任するって事で…ある意味皇帝はここで退くって意味も込められてる。
 
 ま、レグルス様って次期皇帝だし、言ってる事はさほど驚く事でもないけど。
 この未曾有の事態で皇帝が指揮権を譲るってのは、もう先が長くないのかもしれない。
 しかも国の重役たちの前で公言してるんだから、8割は私の予想で当たってるね。

「帝国の光輝く太陽であられる皇帝陛下。私は陛下の意志を受け継ぎ、この混乱を必ずや収め悪しき脅威を排除し、帝国に更なる繁栄と安寧を齎す事をここに宣言致します!!」
 
 その場でレグルス様がバッと立ち上がり、周りにいた重役たちも皆同じく立ち上がって拍手が響き渡った。

「さすがは皇太子殿下!我らの大いなる希望です!」
「帝国の小さき太陽よ!光り輝かん事をっ」
「なんと力強いお言葉。レグルス殿下がいらっしゃれば、悪しき者など簡単に退きますぞ!!」

 パチパチと鳴り止まない拍手と称賛の声。

 その中で一人だけ座ったまま沈黙してるのは、他でもないドラコニス公爵。
 アルファルドだけは特に何の感情も顔に表さないまま、無表情で座ってる。
 
 私としても太鼓持ちの茶番にしか見えないんだけど、こういう時仮面被ってるとすごく楽。
 このうんざりそうに眺めてる顔を見られなくて済むから。
 
 他の人達はどうでもいいけど、やっぱりしっかりと正装してピシッと決めてるアルファルドってカッコいいなぁ…。
 アカデミアの制服もすごく良く似合ってるけど、こうしてちゃんとした上等な服着て公爵家の家紋の入ったマント付けてると本当王子様みたい。

 こんな不気味な格好で腕組んで壁に寄りかかってる私が、まさかこんな事考えてるなんて誰も思わないだろうなぁ。

 本物の皇子様のレグルス様ももちろん素敵だけど、私からしたらアルファルドには敵わないよ。
 アルファルドも皇族だし身分が違うだけで皇子様には違いないんだけどさ。

「ここにお一人、非協力的なお方もいらっしゃいますが…」

 ボケーっと眺めてた私は、一人の重役の声で現実に戻された。
 
「そういえば回復薬の事業で大変成功されたとか」
「えぇ、そうでしたなぁ。ポーションを専売商品としてかなりの収益を得られているようですな」
「非常時ですからね。是非ともその収益と持て余してる回復薬を、帝国の為に献上されては如何でしょうな?」

 周りにいた他の重役も頷きながら賛同してる。

 は…?
 何言ってんの?コイツら…。

 興味なさげに壁に寄りかかってた私も、その言葉で思わず身体が動いたよ。
 
「それは良い提案ですなっ!これから未曾有の事態が起こり得るのですから、出し惜しみせず回復薬を提供すればいい!」
「仮にも帝国の公爵なのですから…そのくらいは容易な事でしょうぞ」

 会議場のテーブルに座りながら、下卑た笑いと共にアルファルドを見下すような言い方してる重役の面々に、黙って聞いてたアルファルドの眉間にも深いシワが寄ってる。

 誰もアルファルドを庇う人なんていないよね。
 それが当たり前みたいに、ここぞとばかりにアルファルドの全てを搾取しようとして!

 私のアルファルドにこんな扱いするなんて…許せない!


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