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異変 10

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 ひとまず出迎えのあと私とアルファルドはいつものように私室までやって来た。

 私はアルファルドの部屋まで来てから持ってきた荷物からあの魔道具を出した。

「アルファルド、これ…」

 二人でベッドに腰掛けて、足元に置いてた荷物から四角い箱を取り出して見せた。

「…これは…、またロストアイテムか」

「いや、正確には違う。でも、ロストアイテムと同等の効果があるマジックアイテムだ」

 これはあの魔道具屋の達人が私に残してくれた物。
 一応試しで使ってみたけど、この箱は広範囲に魔法防御マジックシールドを展開する魔道具だった。
 しかも魔法攻撃や物理攻撃が放たれたと同時に展開される優れもの。
 
「…お前は…、前のロストアイテムといい…一体どこからこういう物を入手してくるんだ?」

「これはたまたま手に入れた物で、防御壁が組み込まれてる。だから公爵邸の屋根にでも乗せといてくれ。魔力さえ込めておけば大抵の攻撃は防いでくれる」
 
 胡散臭そうな顔で見てたアルファルドに押し付けた。

 いやいや、アルファルド。これってたぶん伝説級レジェンドクラスの物だよ。
 あのおじいさんてやっぱり只者じゃないよね。

「…まるでここが攻撃されるような言い方だな」
 
 アルファルドは受け取った箱を無造作にベッドの端に投げてる。

「あっ、ちょっと!丁重に扱えよ。これからどうなるか分からないんだからさ」

 箱に手を伸ばしてベッドに乗り上げたら、アルファルドがその手を取って私をベッドに押し倒した。

「アルファルド…」

 ベッドに押し付けられてアルファルドが、ギシッと音を立てて私の上に乗って来てる。

「…これから?…お前は何を、知っている?」

 私の身体に絡まるみたいにアルファルドの身体が覆い被さって、アルファルドは私の頭の脇に肘をついて私の様子を伺ってる。
 真っ直ぐに見下ろしてくる鋭いオッドアイが問い詰めるように私をジッと見てる。

「っ」
 
 私好みのめちゃくちゃ綺麗な顔。
 イケメンなアルファルドに何度見惚れたかわからないよ。
 両手を伸ばしてアルファルドのシャープな頬にそっと触れた。

「この先…、お前が望んでた世界になるかもしれない…」

 その端正な顔を見ながら、今は不安で歪んだ表情しか作れない。

「…俺が望んだ世界?」

 私の不安そうな様子にアルファルドも困惑気味に聞いてきてる。

「あぁ…。もし、お前が選べるとしたら…どんな未来を選択する?」

「………」

 ジッと私を見下ろしてるアルファルドは無言のまま考え込んでる。
 しばらく考えてたアルファルドが口を開いた。
 
「…お前の言う、俺が望んでいた世界とは…帝国の破滅の事か?」

 アルファルドの問いかけに今度は私が黙った。

 まだアルファルドはこの世の中を恨んでて、破滅に向かうことを願っているのかな?

 アルファルドの頬から手を離して、押し倒されてた身体を逆転させた。

「…アトリクス?」

 今度は私がアルファルドをベッドに押し倒して、腰に跨がって見下ろしてる。
 アルファルドは私の背中に両手を添えて、グイッと自分の方に引き寄せた。

「あ…」
 
 そのままアルファルドの胸に抱きしめられた。

「…お前が何故、そんな話をしてるのかわからないが…今はそんなもの、どうでもいい」

「え?」

 背中に回ってた腕に力が込められて、アルファルドは私の身体をベッドに横にさせた。
 アルファルドの腕に抱きしめられたまま、私は顔だけ上を向けてアルファルドの綺麗な顔を見上げた。

「…卑劣な皇族も、俺を侮辱して見下した貴族達も…憎い気持ちが無くなったわけじゃない。…だが、それより今は…お前とこうしてる時間の方が大事だ」

 すぐ目の前で言われた意外な言葉に、驚きと感動でアルファルド見ながら目がうるうるしてきちゃう。
 
「……アルファルドっ…」

 何かもう…アルファルドの言葉が嬉し過ぎちゃって…、感極まって涙が出てきたよ。

 ゲームのアルファルドはとにかく全てが憎くて、自分を裏切った人間とか見限った人達をものすごく恨んでた。
 みんなから無視されていつも独りで、恋い焦がれたヒロインは自分を裏切った皇子様に取られて…それでアルファルドは命と引き換えに、この世界の終わりを願った。

 アルファルドの腕の中で嗚咽もらしながら泣いてたら、なんでか嬉しそうに笑いながらアルファルドが声を掛けてきた。

「…泣くな、アトリクス」

 私は今までのアルファルドの全部を知ってるから。
 よけいに言われた言葉が心に響いた。

「やっぱり俺、…お前が…すげぇ…好きだ」

 泣きながら言ってたら、まだ笑ってるアルファルドが私の顎を取って自分の方に向かせた。

「…俺もだ」

 すぐにアルファルドの美貌が近づいてきて唇が重なった。

「んッ…」

 アルファルドはあれだけ激しく恨んでた積年の思いより、私と一緒にいる事を選んでくれた。

 それが私には何より嬉しかったんだ。



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