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異変 3
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リリーの件も落ち着いて私はまたありきたりな日常を過ごしてた。
アルファルドは相変わらずベッタリで、しきりに外泊許可もらって泊まりに来いって誘われるけど…。
さすがにこう何度も外泊許可は取れないからさ。
最近、エルナト先生からの小言も多くなってて、そう思ってた矢先、今度は直接エルナト先生から呼び出しをくらう羽目になる。
サークル活動中で、普段なら訪ねてくる人なんて絶対居ないのに、この日はサークル部屋の扉がノックされた。
一応アヴィオール学長の計らいもあって、私達が活動中は立ち入り禁止になってて…まぁそうじゃなくても誰も来ないんだけど、コンコンと扉を叩く音が響いた。
「あ…んと、誰かな?」
「ん?うん、珍しいな」
「……」
ポーション作りも終わって片付けをしてる時だった。
オクタンは道具を洗ってて、私とアルファルドは小瓶をいつもの袋にしまってる最中のこと。
私は部屋の扉の前まで歩いて、返事だけ返した。
「はい」
「……アトリクス君。私です」
扉の向こう側から掛けられた声はエルナト先生だった。
ガチャリと扉を開けると、相変わらずの美男子なエルナト先生が扉の外に立ってる。
「エルナト先生?どうしました?」
いつもの穏やかな感じじゃなくて、エルナト先生には珍しくどこが焦りの見える表情をしてた。
「アトリクス君、急ですが…しばらく私の助手として、またお手伝いをお願い致します」
「え?…先生…?ずいぶん、突然ですね…」
不思議に思いながらも、その言葉で私も何となく状況を察した。
この場でエルナト先生がわざわざ助手の話を出すって事は、何かが起きた事だって。
「詳しくは…私の部屋で話しましょう」
深刻な顔に私も扉に手を掛けたまま頷いた。
「わかりました。…悪い、アルファルド、オクタン。ちょっと席を外すな」
振り返ってニコッと笑いながら普段通りに話した。
「んと、うん…」
オクタンは不思議そうにしてたけど、それでも何度か先生の助手として居ない時があったから納得してくれた。
小瓶を袋に詰めてたアルファルドが手を止めて私の方へと近づいてきた。
「…アトリクス、またか?」
「ごめんな、アルファルド。少し手伝って来るだけからさっ」
振り返って笑いかけながら話してるけど、アルファルドの表情は晴れてない感じ。
「…お前じゃないと駄目なのか?」
私のすぐ前で立ち止まって、いつもみたいに頬に手を伸ばして触れてくれる。
「えぇ。アトリクス君にしか頼めない用事です。急を要するので宜しいですか?」
いつも温厚なエルナト先生にしてはまた珍しく鋭い視線をアルファルドに向けてて。
まるでアルファルドの手を避けるみたいに私の手を取って自分の方へと引っ張ってる。
「……」
アルファルドも不機嫌なオーラを隠そうともしないでエルナト先生にガン飛ばしてて、私は二人のやり取りにびっくりしてる。
「え?や、ちょっと?!」
私を挟んでアルファルドとエルナト先生が睨み合ってて…どうしてこうなるのか分からないけど慌てて止めに入る。
「せ、先生、早く行きましょう!アルファルドっ、また連絡するから!じゃあなっ」
扉近くにいたエルナト先生の背中を押して催促するように部屋から出ようとする。
「…アトリクスッ……話が終わったら、必ずうちまで来いっ…」
私を見ながらアルファルドが押し殺した声で呻くように話してる。
「う…ん。わかったよ」
明らかに怒りに満ち溢れてて、私は冷や汗を掻きながらアルファルドに何とか返事だけ返した。
「申し訳ありませんが、話しは遅くまで掛かりそうです。なので、公爵邸に向かうのは不可能ですね」
「…っ、貴様…」
私を挟んで、エルナト先生とアルファルドがバチバチッと睨み合ってて、周りで見てるオクタンも急な事態にあわあわしながら青褪めて見守ってる。
「アルファルドっ、やめてくれ!」
エルナト先生から離れてアルファルドに正面から抱きついた。
興奮気味のアルファルドを抑えるように、顔を上げて目線を合わせながら訴える。
「どんなに遅くなっても、後でちゃんとお前のとこまで行くから…待っててくれるか?」
「……」
穏やかに話すけど、アルファルドはまだ納得出来ない様子で。
私も行きたくはないけど、でもエルナト先生の様子から事の緊急性がまざまざとわかる。
「大丈夫だ、急に居なくなったりしない。俺を信じてくれ」
ニコッと笑って話すと、アルファルドも悔しそうな顔してるけど、渋々了承してくれた。
「…わかっ…た…」
「ありがとな、アルファルド。また後でな」
なるべく穏やかに話してアルファルドから離れた。
「では、参りましょう」
「はい」
振り返ると待ち構えてたエルナト先生と一緒に部屋から出た。
リリーの件も落ち着いて私はまたありきたりな日常を過ごしてた。
アルファルドは相変わらずベッタリで、しきりに外泊許可もらって泊まりに来いって誘われるけど…。
さすがにこう何度も外泊許可は取れないからさ。
最近、エルナト先生からの小言も多くなってて、そう思ってた矢先、今度は直接エルナト先生から呼び出しをくらう羽目になる。
サークル活動中で、普段なら訪ねてくる人なんて絶対居ないのに、この日はサークル部屋の扉がノックされた。
一応アヴィオール学長の計らいもあって、私達が活動中は立ち入り禁止になってて…まぁそうじゃなくても誰も来ないんだけど、コンコンと扉を叩く音が響いた。
「あ…んと、誰かな?」
「ん?うん、珍しいな」
「……」
ポーション作りも終わって片付けをしてる時だった。
オクタンは道具を洗ってて、私とアルファルドは小瓶をいつもの袋にしまってる最中のこと。
私は部屋の扉の前まで歩いて、返事だけ返した。
「はい」
「……アトリクス君。私です」
扉の向こう側から掛けられた声はエルナト先生だった。
ガチャリと扉を開けると、相変わらずの美男子なエルナト先生が扉の外に立ってる。
「エルナト先生?どうしました?」
いつもの穏やかな感じじゃなくて、エルナト先生には珍しくどこが焦りの見える表情をしてた。
「アトリクス君、急ですが…しばらく私の助手として、またお手伝いをお願い致します」
「え?…先生…?ずいぶん、突然ですね…」
不思議に思いながらも、その言葉で私も何となく状況を察した。
この場でエルナト先生がわざわざ助手の話を出すって事は、何かが起きた事だって。
「詳しくは…私の部屋で話しましょう」
深刻な顔に私も扉に手を掛けたまま頷いた。
「わかりました。…悪い、アルファルド、オクタン。ちょっと席を外すな」
振り返ってニコッと笑いながら普段通りに話した。
「んと、うん…」
オクタンは不思議そうにしてたけど、それでも何度か先生の助手として居ない時があったから納得してくれた。
小瓶を袋に詰めてたアルファルドが手を止めて私の方へと近づいてきた。
「…アトリクス、またか?」
「ごめんな、アルファルド。少し手伝って来るだけからさっ」
振り返って笑いかけながら話してるけど、アルファルドの表情は晴れてない感じ。
「…お前じゃないと駄目なのか?」
私のすぐ前で立ち止まって、いつもみたいに頬に手を伸ばして触れてくれる。
「えぇ。アトリクス君にしか頼めない用事です。急を要するので宜しいですか?」
いつも温厚なエルナト先生にしてはまた珍しく鋭い視線をアルファルドに向けてて。
まるでアルファルドの手を避けるみたいに私の手を取って自分の方へと引っ張ってる。
「……」
アルファルドも不機嫌なオーラを隠そうともしないでエルナト先生にガン飛ばしてて、私は二人のやり取りにびっくりしてる。
「え?や、ちょっと?!」
私を挟んでアルファルドとエルナト先生が睨み合ってて…どうしてこうなるのか分からないけど慌てて止めに入る。
「せ、先生、早く行きましょう!アルファルドっ、また連絡するから!じゃあなっ」
扉近くにいたエルナト先生の背中を押して催促するように部屋から出ようとする。
「…アトリクスッ……話が終わったら、必ずうちまで来いっ…」
私を見ながらアルファルドが押し殺した声で呻くように話してる。
「う…ん。わかったよ」
明らかに怒りに満ち溢れてて、私は冷や汗を掻きながらアルファルドに何とか返事だけ返した。
「申し訳ありませんが、話しは遅くまで掛かりそうです。なので、公爵邸に向かうのは不可能ですね」
「…っ、貴様…」
私を挟んで、エルナト先生とアルファルドがバチバチッと睨み合ってて、周りで見てるオクタンも急な事態にあわあわしながら青褪めて見守ってる。
「アルファルドっ、やめてくれ!」
エルナト先生から離れてアルファルドに正面から抱きついた。
興奮気味のアルファルドを抑えるように、顔を上げて目線を合わせながら訴える。
「どんなに遅くなっても、後でちゃんとお前のとこまで行くから…待っててくれるか?」
「……」
穏やかに話すけど、アルファルドはまだ納得出来ない様子で。
私も行きたくはないけど、でもエルナト先生の様子から事の緊急性がまざまざとわかる。
「大丈夫だ、急に居なくなったりしない。俺を信じてくれ」
ニコッと笑って話すと、アルファルドも悔しそうな顔してるけど、渋々了承してくれた。
「…わかっ…た…」
「ありがとな、アルファルド。また後でな」
なるべく穏やかに話してアルファルドから離れた。
「では、参りましょう」
「はい」
振り返ると待ち構えてたエルナト先生と一緒に部屋から出た。
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