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異変 1

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「アート、君…。んと……、な、何かあった……?」
 
 ドラコニス公爵邸から直接、アルファルドと一緒に魔法アカデミアへ向かった。
 オクタンとは教材取りに行くのに寮で会ったんだけど、珍しく私をまじまじと見ながら話してる。

「ん? んー……特に? 俺の顔に何か付いてるか?」

 何かあったと言えば話し切れないくらい沢山のことがあったけど、それをオクタンに全部説明できないし、言うつもりももちろんない。
 
 教材纏めてオクタンと一緒に歩いて、アルファルドが待ってる正門の方まで向かう。

「んと、アート君…、今日は、すごく……」

 赤い顔してもじもじしてるオクタン。
 一応キスマークとか詰め襟から見えてないか確認してきたし、それっぽい痕とか隠れてる筈なんだけどな。
 
「なんだよ? ハッキリ言えよ」

「え、んと…なんて言えばいいのか、わからないけど…… アート君、すごく……キラキラしてる?」

「……は?? きらきら?」

「んと、んと……うん」

 歩きながらオクタンの顔見るけど、オクタンも表現が難しいみたいで、しどろもどろになってる。
 
 え? キラキラって何??
 自分としては浮かれてる部分もあるけど、普段と変わらないつもりなんだけどなぁ。

 寮から出て噴水に向かって歩いて行くと、アルファルドがその前で待ってるのが見える。
 腕組んで不機嫌そうにブスッとした顔してて、なんでかなって周り見てたら女の子達が足止めて遠巻きにアルファルドの事を見てた。
 
 自惚れてるわけじゃないけど、アルファルドにとって私以外はみんな敵みたいな認識だから、憧れや好意を抱いて見てるとしてもいい気はしないんだろうね。
 あれだけ不機嫌そうに仏頂面しててもやっぱりカッコいいし、周りで見てる子の気持ちは良くわかるよ。
 私も友達って立場じゃなきゃ、ずっと遠巻きに眺めていたいもんね。

「アルファルド! 待たせたな」

 ついさっきまでずっと一緒にいたのに、アルファルド見つけただけでやっぱり嬉しくなる。
 噴水の前に立ってるアルファルドに手を振った。

 不機嫌な表情が一辺して、私の声に顔を上げて見せる笑顔がめちゃくちゃカッコいい!!

 もう重症だよね……
 色ボケしてるって言われたとしても否定できないよ。

「…アトリクス……」

 嬉しさと愛しさを混ぜたみたいな笑顔のアルファルドに、ドキッとときめいちゃう。

 周りで見てた生徒もその笑顔に釘付けになってて、立ち止まりながら頬を染めて魅入ってる。
 ホントさー……、アルファルドって無自覚にフェロモン垂れ流してるよね。

「さ、行こうぜ!」

「…あぁ」

 隣に並んでアルファルド、私、オクタンで講堂に向かって歩き出した。





「ご機嫌よう、アルファルド様、アトリクス」

 いつもアルファルドが座ってる隅の席の、一段下で待っていたのはリリーだった。
 
「……」
「よ、リリー」

 立ち上がって挨拶してきたリリー。私達もいつもの席に座った。

「昨日はご迷惑をお掛けいたしましたわ」
「ハハッ、気にすんなよ。それより王国に書簡は送ったのか?」
「えぇ、戻って直ぐに手配したわ。早くても今週には返事が届くのではないかしら?」
「そっか、楽しみだなっ」

 ニコッとリリーに笑いかけると、リリーはなぜか私をジッと凝視してる。
 
「……アトリクス、貴方……何かありまして?」
「へ??」

 またオクタンと同じことを言われてドキッとしながらリリーを見てると、リリーも全体的に私を眺めてて……なんだかすごく居心地が悪い。

 そんなにだらしない顔してるかな? さっきから浮かれないように普段通りにしてるつもりなんだけど。

「今日は随分、華があるわね」
「は、華?」
「男性にその表現は失礼かもしれないけれど、今の貴方にはピッタリの言葉ね」

 後ろを振り返りながら、優雅ににっこり笑って話してるリリー。
 
「そうか? その言葉、そのままお前に返すぜ?」

 私も頬杖付いてニッと笑って、なんの気なしに言った言葉だけどリリーの頬が見る間に赤くなってく。

 隣でやり取り見てたアルファルドが怒ったように、横から私の肩を抱き寄せる。

「っ!? どーした?」
「…お前はっ……! もう少し言葉と態度に気をつけろっ」
「え? なんで??」
「…そういう顔は俺にだけ見せればいいっ」
「なんでそうなるんだ?!」

 ちょっと訳がわからない。
 周りも私達のやり取り見てて、特に女子達なんかはやっぱり頬を赤く染めてる。
 
 えっ……と? 今のは何かまずかった?

「貴方って……やはり魔性だわ……」

 下の段で正面向き直してブツブツ言ってるリリー。
 
 うーん……、口説いた訳じゃないのに、勘違いさせちゃったかな……?

 今、気分が女モードだから加減が難しいや……
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