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二人の想い 18
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「…覚悟は、していたが……まさか、お前が……女だとは思わなくて…」
頭の上から聞こえるアルファルドはやっぱり少し震えてて、声も戸惑ってる感じだった。
「…すまない。正直、動揺した……。お前の言う覚悟が、足りなかったみたいだ……」
それでも拒絶しないで抱きしめてくれることが私には嬉しかった。
「ハハッ、仕方ないよ。誰だって驚くし、責められても仕方ないと思ってた……」
「……」
「知らない方が良いこともある。だから……お前を傷つけないように、卒業と同時に離れようとしてたんだ。お前にとって友達のままさ…」
私を抱きしめてるアルファルドの腕を自分の手でそっと触れた。
「ずっとお前を騙してることが心苦しかった。でも……それでも、お前の側に居たかったんだ……」
「…アトリクス……」
アルファルドの腕の中で身体を反転させて、アルファルドと向き合った。
「っ」
下からジッとアルファルドを見上げて、真剣な顔で見つめた。
「アルファルド……改めて答えを聞かせてくれ。俺の本来の姿を知っても……まだ、私との未来を考えることができる?」
心臓がバクバク早く動いてる。
答えを聞くのが怖い。
アルファルドは私を見て止まったまま、口を閉ざしてる。
「……」
部屋の中はシーンと静まり返ってて、遠くから聞こえる周りで作業してる人の声とか、外の鳥の囀りとかが響いてる。
しばらくそれが続いて、そんなに長い時間でもなかったのに、私にはもの凄く長く感じた。
もう気持ち的に半分諦めてたら、アルファルドがようやく口を開いてくれた。
「…俺が……お前を、受け入れなかったら……お前は、どうするんだ?」
アルファルドのその言葉を聞いて、ああやっぱり無理なんだなって思った。
でも、無理やり笑った。
「どうもしないさ。今まで通りお前の側にいるよ? ……友達に戻るだけだ。卒業まではな……」
笑って平気なフリしてないと直ぐにでも泣いちゃいそうだから。
「…卒業したら……お前は……俺の側から、いなくなるのか?」
「うん。元々その予定だったし。どのみち、卒業後まで男でいるつもりはないからさ……」
「――ッ」
まぁ正直、この先どうなるかわからないけど……
結局どう転んでもアルファルドと一緒に歩むことはできないし、悲しいけど……ここではっきり言ってもらったほうが私としては踏ん切りもつく。
それなのにアルファルドのほうが泣きそうな顔してて、すごく苦しそうに私を抱き寄せた。
「アルファルド……?」
抱きしめてるアルファルドの身体が震えてる。
そんなにショックだったのかな……やっぱり、女だなんて言うべきじゃなかった……
こんなふうにアルファルドを悲しませたくなかったのに!
「ごめん! ごめんな……アルファルド。騙してて……本当にごめん! ……お前が嫌なら、直ぐにでもお前から離れるから……」
「違うッ!!」
「――!」
急に耳元で大きな声出されて、身体がビクッと跳ねた。
「…違う……、性別なんて……どうでもいいっ」
「っ」
グッと腕に力が籠もって、押し付けられた胸元からアルファルドの鼓動が聞こえてくる。
「…前にも……言ったはずだ。男でも女でも……俺の気持ちは変わらないと……」
「え……?」
アルファルドに言われて、確かにそんなこと言われたな……って思い出す。
でもそんなの結構前の話で……
もしかして、あの時からアルファルドって私のこと好きでいてくれてたの?
私はてっきり、どっちにしろ親友でしかないんだって思って、ショックだった記憶があるのに。
「…お前が、女だったことには驚いたが……ただそれだけだ。そうじゃなく……、お前が……今まで、そこまでして……」
アルファルドの声が震えて、その後の言葉が続いてなかった。
「アルファルド……、怒ってないのか? 俺……お前のこと、ずっと……騙してたのに……」
押し付けられた胸元から顔を少し上げてアルファルドを見るけど、アルファルドの表情までは見えない。
「…お前は騙すという言葉の意味をまるで解っていない。お前の場合、ただ性別を偽っていただけだろ? ……俺が受けてきた裏切りとは全く違う…」
意外なほどアルファルドは穏やかな口調で話してて、私はちょっと拍子抜けしちゃってる。
アルファルドが怒ってないのにはすごく安心したのに、こんなに平和的に解決すると思ってなかっただけに、腑に落ちない気持ちになっちゃうよ。
「えっ……と、でも……私、平民でもないし……」
自分の正体を小出しにしつつ、アルファルドの反応を探っていく。
「…お前は結局誰なんだ? 平民じゃないなら、貴族なんだろ?」
「ん? う~ん……、確かに元々はそうなんだけど…ろ」
これって話しちゃっていいのかな……?
私がすごく話しづらそうにモゴモゴしてたら、アルファルドが身体を離して綺麗な顔を近づけてきてる。
「あ、あ……な……に……?」
かぁーと顔が赤くなった。
女の私が苦手なはずのアルファルドが、こんなに風に近づいてくることに戸惑いを覚えるよ。
間近で止まったアルファルドの顔は真剣で、誤魔化すことを許さないみたいにロイヤルパープルと黄金色の瞳が私をジッと見てた。
「…お前の事ならなんでも知りたい。ちゃんと俺に話してくれ…」
「っ!」
アルファルドって、絶対私がこの顔に弱いって分かっててやってるよね!
「ハァ……、もうっ、わかったよ!」
ちょっと投げやりになりながらふいっと顔を逸した。
「…覚悟は、していたが……まさか、お前が……女だとは思わなくて…」
頭の上から聞こえるアルファルドはやっぱり少し震えてて、声も戸惑ってる感じだった。
「…すまない。正直、動揺した……。お前の言う覚悟が、足りなかったみたいだ……」
それでも拒絶しないで抱きしめてくれることが私には嬉しかった。
「ハハッ、仕方ないよ。誰だって驚くし、責められても仕方ないと思ってた……」
「……」
「知らない方が良いこともある。だから……お前を傷つけないように、卒業と同時に離れようとしてたんだ。お前にとって友達のままさ…」
私を抱きしめてるアルファルドの腕を自分の手でそっと触れた。
「ずっとお前を騙してることが心苦しかった。でも……それでも、お前の側に居たかったんだ……」
「…アトリクス……」
アルファルドの腕の中で身体を反転させて、アルファルドと向き合った。
「っ」
下からジッとアルファルドを見上げて、真剣な顔で見つめた。
「アルファルド……改めて答えを聞かせてくれ。俺の本来の姿を知っても……まだ、私との未来を考えることができる?」
心臓がバクバク早く動いてる。
答えを聞くのが怖い。
アルファルドは私を見て止まったまま、口を閉ざしてる。
「……」
部屋の中はシーンと静まり返ってて、遠くから聞こえる周りで作業してる人の声とか、外の鳥の囀りとかが響いてる。
しばらくそれが続いて、そんなに長い時間でもなかったのに、私にはもの凄く長く感じた。
もう気持ち的に半分諦めてたら、アルファルドがようやく口を開いてくれた。
「…俺が……お前を、受け入れなかったら……お前は、どうするんだ?」
アルファルドのその言葉を聞いて、ああやっぱり無理なんだなって思った。
でも、無理やり笑った。
「どうもしないさ。今まで通りお前の側にいるよ? ……友達に戻るだけだ。卒業まではな……」
笑って平気なフリしてないと直ぐにでも泣いちゃいそうだから。
「…卒業したら……お前は……俺の側から、いなくなるのか?」
「うん。元々その予定だったし。どのみち、卒業後まで男でいるつもりはないからさ……」
「――ッ」
まぁ正直、この先どうなるかわからないけど……
結局どう転んでもアルファルドと一緒に歩むことはできないし、悲しいけど……ここではっきり言ってもらったほうが私としては踏ん切りもつく。
それなのにアルファルドのほうが泣きそうな顔してて、すごく苦しそうに私を抱き寄せた。
「アルファルド……?」
抱きしめてるアルファルドの身体が震えてる。
そんなにショックだったのかな……やっぱり、女だなんて言うべきじゃなかった……
こんなふうにアルファルドを悲しませたくなかったのに!
「ごめん! ごめんな……アルファルド。騙してて……本当にごめん! ……お前が嫌なら、直ぐにでもお前から離れるから……」
「違うッ!!」
「――!」
急に耳元で大きな声出されて、身体がビクッと跳ねた。
「…違う……、性別なんて……どうでもいいっ」
「っ」
グッと腕に力が籠もって、押し付けられた胸元からアルファルドの鼓動が聞こえてくる。
「…前にも……言ったはずだ。男でも女でも……俺の気持ちは変わらないと……」
「え……?」
アルファルドに言われて、確かにそんなこと言われたな……って思い出す。
でもそんなの結構前の話で……
もしかして、あの時からアルファルドって私のこと好きでいてくれてたの?
私はてっきり、どっちにしろ親友でしかないんだって思って、ショックだった記憶があるのに。
「…お前が、女だったことには驚いたが……ただそれだけだ。そうじゃなく……、お前が……今まで、そこまでして……」
アルファルドの声が震えて、その後の言葉が続いてなかった。
「アルファルド……、怒ってないのか? 俺……お前のこと、ずっと……騙してたのに……」
押し付けられた胸元から顔を少し上げてアルファルドを見るけど、アルファルドの表情までは見えない。
「…お前は騙すという言葉の意味をまるで解っていない。お前の場合、ただ性別を偽っていただけだろ? ……俺が受けてきた裏切りとは全く違う…」
意外なほどアルファルドは穏やかな口調で話してて、私はちょっと拍子抜けしちゃってる。
アルファルドが怒ってないのにはすごく安心したのに、こんなに平和的に解決すると思ってなかっただけに、腑に落ちない気持ちになっちゃうよ。
「えっ……と、でも……私、平民でもないし……」
自分の正体を小出しにしつつ、アルファルドの反応を探っていく。
「…お前は結局誰なんだ? 平民じゃないなら、貴族なんだろ?」
「ん? う~ん……、確かに元々はそうなんだけど…ろ」
これって話しちゃっていいのかな……?
私がすごく話しづらそうにモゴモゴしてたら、アルファルドが身体を離して綺麗な顔を近づけてきてる。
「あ、あ……な……に……?」
かぁーと顔が赤くなった。
女の私が苦手なはずのアルファルドが、こんなに風に近づいてくることに戸惑いを覚えるよ。
間近で止まったアルファルドの顔は真剣で、誤魔化すことを許さないみたいにロイヤルパープルと黄金色の瞳が私をジッと見てた。
「…お前の事ならなんでも知りたい。ちゃんと俺に話してくれ…」
「っ!」
アルファルドって、絶対私がこの顔に弱いって分かっててやってるよね!
「ハァ……、もうっ、わかったよ!」
ちょっと投げやりになりながらふいっと顔を逸した。
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