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二人の想い 3
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「んとね、アート君が休学して、割りとすぐに…入って来たんだ……。ハデットって、国の、お姫様で……名前が、リリー殿下……」
あぁ、ハデットってことはそこまで大きい国じゃないな。
帝国の傘下でもないし、近隣諸国とは中立の立場を貫いてる所で、変な話が影響力もあんまりない小さな国だよね。
うちの商会からも商品卸してるから知ってる。
「で、そのお姫様がなんの理由もなしに、こんな突然編入するのか?」
「それが、んと…交換留学? だって…」
「交換留学!?」
魔法アカデミアにそんな制度あったっけ??
いや、実際あるのかもしれないけど、ゲームでは一度もなかったし。
すっかり目が覚めちゃって、とりあえず布団から出てベッドの端に座り直した。
「ちなみに誰との交換留学なんだ?」
「え? んと、侯爵家のスピカ嬢だよ」
「はぁ!? マジか!? 嘘だろっ?!」
え? え?? この段階でスピカが戦線離脱ぅ~!?
や、確かにレグルス様とポラリスはすでに恋人関係だけど、悪役令嬢が誰もいなくなっちゃったよ??
ミティストは乙ゲーじゃないから、婚約破棄とか断罪とかは関係ないといえばそこまでだけど。
でも、ゲーム内容が私の知ってるものと全然違う形に進んじゃってる。
「アート君…、公爵と、んと、喧嘩でも……したの?」
下向いて考え込んでた私に、正面で立ってたオクタンが心配そうに声をかけてきた。
「ん? アルファルドと喧嘩?? なんでだ?」
「んと、だって、前は…公爵がちょっといないだけで、すごく、心配してたし……、最近、アート君、いないことが多いし……」
もじもじしながら話してるオクタンに言われて、私もハッとした。
オクタンは間近で私のことずっと見てきたから、私がアルファルドに物凄く執着してるってわかってるし、最近私がアルファルドから離れようとしてる変化にも気付いてるのかな。
「もうすぐ卒業だろ? 俺さ、卒業したらアルファルドとは離れる予定だから。今の内に少しずつ距離を空けてるんだ」
上向いてオクタンにニコッと笑顔を向ける。
オクタンに隠しても仕方ないし、これはアトリクスとしての本当の気持ちだからね。
「え!? そ、そうなの?でも、なんで?? そういえば…アート君て、卒業したら……どうするの?」
「どうするも何も、俺は平民だぜ? 公爵のアルファルドと、ずっと一緒にいるのなんて無理だ」
「んと、んと…でもアート君ほど頭良いなら、側近とか、役職とか与えてもらって、公爵の側にいるのかと……」
オクタンて結構鋭いよね。
確かに平民でも能力のある人は上にあがれるし、爵位なんてお金でも買えるから、実際問題身分なんてどうにでもなるんだよ。
「んー……、それはないな。俺、卒業後は帝国から出るから、やっぱり側にはいられないんだ」
意外そうな顔で私を見てるオクタン。
卒業したら誰も私を知らない遠くへ行くんだ。そこでようやくミラとしての人生を満喫する予定だし。
アルファルドの側にいて、他の女の人と一緒にいる姿を隣でずっと見てるのなんて絶対無理。
そんなの耐えられないよ。
「アート君……、そんなに、遠くへ、行っちゃうの……?」
私を見てたオクタンの目に、じわじわと涙が溜まっていってる。
オクタンて、ホンと可愛いなぁ。そんなに私と離れたくないのか。
「ハハッ、泣くなよ。卒業したら皆バラバラだし、オクタンだって魔法師団に入るんだろ?」
「ん…うん……。んと、僕…、魔法しか、できないから……」
涙を拭きながらしょんぼりしてるオクタン。私は立ち上がってオクタンに近づいて、頭にポンと手を置いた。
「お前はもっと自分に自信持てよ。魔法使えるってだけで凄いんだぜ?」
「んと、ありが…とう、アート君……」
ふわっと笑うオクタンがめちゃくちゃ可愛い~。
うーん、オクタンだけでもスカウトして連れて行こうかな……こう見えて実力あるし、一緒にいて楽しいからな。
「でも、いいの? 公爵の事……、あんなに仲良さそう、だったのに……」
「ん? あぁ、俺がアイツを好きすぎるから……。アルファルドの為にも、ずっと側にいないほうがいいんだ……」
オクタンの脇を通り過ぎながら思わず本音が漏れた。
「アート、君……」
「さ、腹減ったし、飯でも食いに行こうぜ!」
振り返ってニッと笑うと、オクタンも戸惑いながら控えめに笑ってる。
「あ…んと、うん」
遠くない未来の話題を避けたくて、オクタンと二人で部屋を出た。
「んとね、アート君が休学して、割りとすぐに…入って来たんだ……。ハデットって、国の、お姫様で……名前が、リリー殿下……」
あぁ、ハデットってことはそこまで大きい国じゃないな。
帝国の傘下でもないし、近隣諸国とは中立の立場を貫いてる所で、変な話が影響力もあんまりない小さな国だよね。
うちの商会からも商品卸してるから知ってる。
「で、そのお姫様がなんの理由もなしに、こんな突然編入するのか?」
「それが、んと…交換留学? だって…」
「交換留学!?」
魔法アカデミアにそんな制度あったっけ??
いや、実際あるのかもしれないけど、ゲームでは一度もなかったし。
すっかり目が覚めちゃって、とりあえず布団から出てベッドの端に座り直した。
「ちなみに誰との交換留学なんだ?」
「え? んと、侯爵家のスピカ嬢だよ」
「はぁ!? マジか!? 嘘だろっ?!」
え? え?? この段階でスピカが戦線離脱ぅ~!?
や、確かにレグルス様とポラリスはすでに恋人関係だけど、悪役令嬢が誰もいなくなっちゃったよ??
ミティストは乙ゲーじゃないから、婚約破棄とか断罪とかは関係ないといえばそこまでだけど。
でも、ゲーム内容が私の知ってるものと全然違う形に進んじゃってる。
「アート君…、公爵と、んと、喧嘩でも……したの?」
下向いて考え込んでた私に、正面で立ってたオクタンが心配そうに声をかけてきた。
「ん? アルファルドと喧嘩?? なんでだ?」
「んと、だって、前は…公爵がちょっといないだけで、すごく、心配してたし……、最近、アート君、いないことが多いし……」
もじもじしながら話してるオクタンに言われて、私もハッとした。
オクタンは間近で私のことずっと見てきたから、私がアルファルドに物凄く執着してるってわかってるし、最近私がアルファルドから離れようとしてる変化にも気付いてるのかな。
「もうすぐ卒業だろ? 俺さ、卒業したらアルファルドとは離れる予定だから。今の内に少しずつ距離を空けてるんだ」
上向いてオクタンにニコッと笑顔を向ける。
オクタンに隠しても仕方ないし、これはアトリクスとしての本当の気持ちだからね。
「え!? そ、そうなの?でも、なんで?? そういえば…アート君て、卒業したら……どうするの?」
「どうするも何も、俺は平民だぜ? 公爵のアルファルドと、ずっと一緒にいるのなんて無理だ」
「んと、んと…でもアート君ほど頭良いなら、側近とか、役職とか与えてもらって、公爵の側にいるのかと……」
オクタンて結構鋭いよね。
確かに平民でも能力のある人は上にあがれるし、爵位なんてお金でも買えるから、実際問題身分なんてどうにでもなるんだよ。
「んー……、それはないな。俺、卒業後は帝国から出るから、やっぱり側にはいられないんだ」
意外そうな顔で私を見てるオクタン。
卒業したら誰も私を知らない遠くへ行くんだ。そこでようやくミラとしての人生を満喫する予定だし。
アルファルドの側にいて、他の女の人と一緒にいる姿を隣でずっと見てるのなんて絶対無理。
そんなの耐えられないよ。
「アート君……、そんなに、遠くへ、行っちゃうの……?」
私を見てたオクタンの目に、じわじわと涙が溜まっていってる。
オクタンて、ホンと可愛いなぁ。そんなに私と離れたくないのか。
「ハハッ、泣くなよ。卒業したら皆バラバラだし、オクタンだって魔法師団に入るんだろ?」
「ん…うん……。んと、僕…、魔法しか、できないから……」
涙を拭きながらしょんぼりしてるオクタン。私は立ち上がってオクタンに近づいて、頭にポンと手を置いた。
「お前はもっと自分に自信持てよ。魔法使えるってだけで凄いんだぜ?」
「んと、ありが…とう、アート君……」
ふわっと笑うオクタンがめちゃくちゃ可愛い~。
うーん、オクタンだけでもスカウトして連れて行こうかな……こう見えて実力あるし、一緒にいて楽しいからな。
「でも、いいの? 公爵の事……、あんなに仲良さそう、だったのに……」
「ん? あぁ、俺がアイツを好きすぎるから……。アルファルドの為にも、ずっと側にいないほうがいいんだ……」
オクタンの脇を通り過ぎながら思わず本音が漏れた。
「アート、君……」
「さ、腹減ったし、飯でも食いに行こうぜ!」
振り返ってニッと笑うと、オクタンも戸惑いながら控えめに笑ってる。
「あ…んと、うん」
遠くない未来の話題を避けたくて、オクタンと二人で部屋を出た。
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