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二人の想い 13

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 告白タイムも終わって、応接室の扉から廊下へ出るけどそこにリリーはいなかった。
 近くにいた使用人に聞くと、ベッテルさんが屋敷を案内してくれてるらしかった。

 結構時間かかっちゃったからなあ。
 でも、肝心のアルファルドを説得しないとどうにもならないし。
 むしろ私がどんどん追い詰められて捕まっちゃった気もするんだけど。



「お話は済んだかしら?」

 何事もなかったように優雅な笑顔を見せて、扉から入って来たリリー。

「あぁ、悪いな。外してもらって」

「気に為さらなくて結構よ。わたくしも性急過ぎたと反省していましたわ」

 また来たときと同じようにリリーは一人掛けソファーに座って、一緒に入ってきたベッテルさんがお茶を新しく淹れ直してくれた。

 アルファルドもだいぶ落ち着いたのか、リリーと話しててもムスッとしなくなった。
 ほっとしながらようやく話しを進めていく。

「いや、お前からしたら国の命運を背負ってやって来てるんだろうからな。致し方ない事情ってやつだろ? しかも噂だと、コバット王国の要人が危篤だと聞いてるし」

 リリーに向かってニコッと笑った私に、対面でお茶を飲んでたリリーはピタッと動きを止めてた。

「……アトリクス。貴方、なぜそれを……」

「ま、あくまで噂だろ?」

 鋭く私を見ているリリーにあえて笑顔で対応する。
 この場合の要人て国王陛下なんだよね。リリーのお父さん。
 噂なんてもちろん嘘で、これ知ってるのって一部の幹部クラスまでしかいないから。

「貴方って油断ならない人ね……」

「お褒めに預かり光栄だな。だからお前の事情もある程度わかっているんだ……。でも悪いな、コイツは俺のだからさ…少し牽制させてもらおうと思ってな」

 隣で座ってたアルファルド見ながらニッと笑った。

「…アトリクス」

 同じくこっちを見てたアルファルドが驚いた顔してたけど、その後に瞳を潤ませてすごく嬉しそうな顔してる。

 全面には出せないけど、少しはアルファルドに私の嫉妬心を見せとかないとね。私がなんとも思ってないって思われるのは嫌だし。

「牽制する必要なんてあるかしら? 貴方がたの間に割って入れる方などおりませんわ」

 再びお茶を口に運びながら呆れたようにリリーが話してる。

「相手が女とも限らないからな。俺って意外と嫉妬深いんだ。特に……な…」

 含みを込めて視線を合わせながらリリーに笑いかけた。
 
「ふふふ、アトリクス……貴方って不思議な人ね。竜殺しドラゴンスレイヤーと名高い公爵様を自分のもの扱いし、王国の重役しか知らない機密事項を知っている。とても一庶民とは思えないわね?」

 リリーも私をにっこり笑って見ながら静かに釘を差してきてる。

「ハハッ、俺は生まれた時から平民だぞ? 調

 またまたニコッと笑ってリリーの反応を伺う。
 私に興味持たれても面倒だからね。ここはハッキリさせとかないと。

 足組みながら優雅にお茶を啜ってたリリーはカップをテーブルに置いた。

「そうね。興味深いけれど遠慮しておくわ。おそらく、貴方が居なければ私の願いは叶わないと思うもの。それに、疑うわけはないでしょ? 

 リリーの反応を見て大丈夫そうかなと確信した。
 アルファルドは特に口を挟まないで私に任せてくれてるみたい。
 
「じゃあ、その友人にお前の想い人を教えてくれるか?」

 ニヤッとしながらリリーを見ると、途端に顔を赤らめて横を向いちゃった。

「わ、わたくしの想い人を聞いてどうするおつもり? ポーションの流通とは、関係ありませんわっ」

「リリーが望まないなら別にいいんだぜ? こっちは関係ない話だし……ただ、チャンスをモノにしたいなら、逃さない手はないだろ?」
 
 笑ったままリリーを見てると、悔しそうな顔で私をキッと睨んでる。

「…くっ! 痛い所を突いて来るわねっ……。わかったわ……」

 それからもじもじしながら話し出したリリー。
 
 リリーの想い人はなんと王国の宰相様で御年42歳。リリーとはなんと23歳差。親子くらい離れてるし……
 リリーって意外と枯れ専なんだね。
 
 それ聞いてちょっとほっとしちゃった。
 アルファルドはピッチピチに若いから、リリーに狙われる心配はないね。

「うんうん、コバット王国の宰相で侯爵位もある。42年間独身を貫いてると……ダンディなイケオジ系で結婚歴はもちろん離婚歴もなし。年は離れ過ぎているが、相手としては申し分ない身分だな」

 顎に手を当ててブツブツ言いながら、相手の情報を頭に入れていく。
 
「で、脈はありそうなのか?」

「脈……と申しますと?」

「だからさ、その宰相もお前の事好きそうなのかって事。たとえ婚姻は結べたとしても、相手も少なからず思ってないと幸せな結婚はできないぞ。一方的な想いは不幸しか呼ばない。自分が幸せだからって、相手も幸せだとは限らないからな……」

 これは私が今まで生きてきて一番実感してること。
 お互いの想いが噛み合ってないと、二人でいても虚しいだけで終わってしまうから。
 それが迎える結果なんてわかりきってる。

「随分、実感の籠もった発言ね。同い年だと思っていたけれど、貴方の方が年上なのかしら? まるでパステルと話してるみたい」
 
「パステル?」

「えぇ、王国の宰相であるパステル侯爵よ。いつも口うるさくわたくしに言ってくるの……ああでもないこうでもないって。だけれど、一番頼りになって、わたくしを励ましてくれるのも、やはりパステルなのよね……」

 その宰相の事を思い出したのか、リリーは目線を下に逸して切なそうに微笑んでる。

「リリー」

「パステルはわたくしのこと、妹か娘のように思っているのかもしれないわ。好意は感じるけれど、結局わたくしは王女だから。それを特別と思うには判断が難しいわ」
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