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ギルド依頼 9

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 アケルナー父と対峙するってなると面倒だけど、味方として一緒に戦ってくれるとかなり心強いね。
 蜘蛛の変異種も動き回ってるけどまだ倒れそうにない。魔法騎士団の人達も一斉に魔法攻撃してるけど、あんまり効いてる感じじゃないんだよね。
 
「スパイダー系は火属性に弱い筈だが……、耐性が強いのか効きませんね」

 やっぱりこのモンスターもスタンピードの時と一緒で、話しを出来るモンスターって格段に強い。
 これだけの魔法騎士が集まって殲滅できないってことは、最上位種並みのモンスターってことだよね。
 この中で攻撃魔法は使えないから、ここは剣技で倒すしかないかな。
 攻撃魔法を連発してる中、悪いけど冷静に分析させてもらってる。
 そしたら庭園のど真ん中にいる変異種に、アケルナー父が炎が揺らめく魔法剣マジックソードで立ち向かってる。

「いざっ!」

 魔法剣構えながら駆け足で変異種へ向かって、踏み込んで炎の魔法剣を横一閃に振るうと、変異種の足の一本が切り離された。

「ガュア!!」

 変異種は足から体液流しながらまた暴れてる。

 わぁ~! スゴいね、アケルナー父!!
 私の魔法剣だと見た目に全く変化がないからつまんないけど、やっぱり火属性の魔法剣だとかっこいいな~!

「敵は怯んでいるっ! さらに追い込むぞぉぉっ!!」

 アケルナー父が周りを囲んでる魔法騎士団に手を掲げて号令を出してる。

 魔法騎士団もぐるっと隊列組んで一斉にまた魔法と、剣を構えてアケルナー父に着いて変異種に向かってる。

 う~ん、これは私の出番無いね。いや、もう全然倒してもらって構わないんだけどさ。
 どっちかって言うと私がやっつけたって結果よりも、帝国魔法騎士団の面々が倒したって方がこの人達の面目も立つだろうし、ここは傍観者にならせてもらおうかな。
 
 足に強化をかけて庭園の地面を一気に蹴る。上空に飛び上がって、庭園の脇に生えてる高い木の枝の上で見学することにした。

 私の依頼はモンスター退治じゃないし、皇帝陛下も助けたし、十分やったよね。

 木の下ではまだ変異種との戦いが続いてる。アケルナー父を先頭に変異種の周りを取り囲んで攻撃してるから時間の問題だね。

 て、鑑賞してる間に呆気なく倒しちゃった。
 
 私も木の上から降りて、敵を倒して歓喜に湧いてる魔法騎士団に近づく。

「シリウス卿、手柄を横取りしてしまいましたね」

 得意気な顔でアケルナー父が手を差し出して話しかけてきた。
 悪いとも思ってないくせに、何だかアケルナー見てるみたいでイラッとするけど、結果的に私はほとんど手を出してないからね。

 呪われた私に握手を求めるなんていい度胸だと思うけど、私も手を伸ばして健闘を称えた。

「――がッ」

 え――?

 笑顔で握手を交わしてたのに、アケルナー父の腹から蜘蛛の足が突き出た。

「うわあぁぁ!! 魔物が、魔物がまたっ!!」

 アケルナー父の口元から血が垂れてる。
 私は仮面の下で目を見開いた。 
 
 な……に……、何が……?

 握手したままアケルナー父は地面に倒れた。

「団長ぉぉ!!」

「なぜだ!! 倒したはずだぞっ!!」

 倒れた蜘蛛の更に上から違う顔がボコッと出て、糸を吐きながら周りを威嚇してる。
 寸前でアケルナー父を抱きとめて、庭園の地面に横たえる。

「……ぐっ……、私と、した……ことが……不ろ…覚……」
 
 腰のベルトからハイポーションを取り出して有無を言わさず寝てるアケルナー父の口に突っ込んだ。

「んぐっ……」

 皇宮の人間はドラコニス公爵家で製造されたポーションを頑なな程購入せず、使うことすら拒絶してると聞いてる。
 ま、しょうがないと思うよ。皇室と公爵家の確執のせいだもんね。

 でもさ、それで人の命が失われるなんて馬鹿げてる。
 そんなのは私が許さないから!

「ゲホッゲホッ、……シリ……ウス……卿……」

 ハイポーションのおかげかアケルナー父の傷が一気に回復する。

 そのままアケルナー父を横たえて、デュランダルを背中から抜くと足に強化をあけて新たに変異したモンスターへと向かった。
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