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エルナト先生との旅路 9
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更に次の日。
馬車で遺跡まで移動して、降りてからその辺の草むらでシリウスの格好に着替えた。
他国まで来て、この格好しなきゃいけないのも苦痛だなぁ。
まさかここまで来てシリウスになると思ってもなかったけど、まぁ人命救助の為には仕方ないか…。
シリウスに変身して近くで待ってたエルナトと一緒に遺跡の方へと歩いていく。
「あ、あ、貴方はもしやっ!!帝国の英雄シリウス准伯爵様!世界でも有名なSS級冒険者であるシリウス准伯爵様にお目にかかれるとは…この上ない光栄ですっ!!」
遺跡前の警備をしていた騎士が尊敬の眼差しでこっちを見てくる。
てかさ…シリウスってなんで隣国でも有名なの?友好国とはいえ、他国の冒険者だよ?
確かに世界的にも今の段階でSS級冒険者っていないらしいんだよ。
関係ないと思って知らなかったけど、S級以上はギルドじゃなくて、世界的な基準があって国が認めて決めるらしいから。国で認められたって事は世界的にも認められてるって事なんだって。
でもさ…こんな目を輝かせるくらい憧れられても、どう対応していいのかわからないんだけど。
とりあえず片手だけ挙げて通り過ぎる。
警備の騎士はそれだけで興奮したみたいに深々腰を下げて最敬礼してた。
「い、いってらっしゃいませ!!お気を付けてっ!!」
エルナト先生が含み笑いしてて、見えないけど仮面の中からジロッと睨む。
少し歩いてこの前訪れた遺跡の中に入り、エルナト先生の声が中で響いてる。
「知ってましたか?アウリガルは実力国家で、魔法や剣術に関わらず強い者を敬う傾向がとても強いのです。ですからスタンピードで活躍した私や、国の英雄で冒険者としても高い実力を認められたあなたは、アウリガルの人間にとって憧れの象徴なのですよ」
はぁ…実力国家ねぇ…、なるほど。
だから騎士も門番も私達に熱い視線を送ってたのね。王様が会いたがってたのってそのせいだったのか。
エルナト先生に言われて納得しながら石碑の部屋までやって来た。
私達が解いた部屋の扉も開いてて、数日前に来たままになってる。
「さて、私達も潜ってみますか…」
隠し扉の前で呟いた先生に、片手を出して一旦止める。
「シリウス卿?どうされました?」
不思議そうにしてるエルナト先生。
私は目を閉じて遺跡ダンジョンの奥まで気配探査を広げる。
内部を探ると人間の気配らしきものが感じられた。でも数は少ない…これかな?かなり気配が微弱で生体反応が弱い。
急いだほうがいい。
松明片手に隠し扉の中へと急ぐ。
「見つかりましたか?」
下へと降りる薄暗い石段を下り、その後ろをエルナト先生も着いてくる。一応頷いてゆっくり前へと進む。
中にモンスターの反応はないから、罠に気をつけて進めば問題ないと思うけど。
階段を降り切ると切り立った石を敷き詰めた広い空間が出てきて、またその向こうに扉が見える。
慎重にゆっくり歩いていると突然、頭上から矢のような鋭いものが降り注ぐ。
エルナト先生の腰を引き寄せ、瞬時に前方向へと飛ぶ。
「なっ!!罠…ですか……」
床に無数に刺さったものを見て、驚愕の表情でエルナト先生が呟く。
私が頷くとエルナト先生も警戒レベルあげて次の扉へと向かった。
それからも行く先々に落とし穴や落石、マジックアイテムを使った魔法攻撃など…結構な数の罠が仕掛けられてる。
これは先発隊も無傷ではいられないだろうね…。
「ふぅ…やはりあなたに着いてきて頂いて正解でした。でなければ、今頃私は穴だらけになっていることでしょうね」
冗談交じりに言ってるエルナト先生だけど、結構な数の罠に疲れ気味。
何箇所かの部屋を通り抜けてきたけど、まだ調査チームは見つからない。たぶんもっとずっと下の階にいるんだよね。
僅かに感じる気配からすると落とし穴に落ちたのか、そこの部屋から動いてないし…。
「また石碑ですね。これは…また違う形の古代文字です」
広い空間に出た。
そこにも石碑が立ってて、他の場所へ繋がる扉みたいなのは見当たらない。でもこの部屋嫌な気配が凄くする。
松明を掲げてその古代文字を読む。
ここの文字はエルナト先生も知ってるものらしく、先生が次々読み上げていく。
「“地に手、天に足、四方に広がる悍ましき肢体に畏怖を覚えん。彼の者、冥府の王これより降臨す”……これは一体…」
うーん、文章だけ聞いてると嫌な予感しかしないよね。
読み終えると同時に私達の立ってた床が円形に青白く光り、部屋の床一帯に魔法陣が現れる。
「これはっ!!旧世界時代に使われていた陣形です!何かの召喚式魔法かもしれません!!」
召喚魔法!?
凄いっ!!今は召喚魔法なんて存在すらしてないから!
すぐ魔法陣から出て様子を見ていると、光る円陣の中から見たこともないようなモンスターが現れる。
高い天井に付くくらいの巨体で、四肢がすごく長い…姿はなんて表現していいのか…。
異形だよね…合成獣みたいな色んなモノが混ざった感じの生き物。
こんなの生物なの?こんなのが旧世界には存在してたってこと?考えられない…何かの出来損ないみたいな…本当悍ましい形をしてる。
「し、シリウス卿…コレは…何ですか……」
エルナト先生も顔を歪めてそのキメラを見てる。
瞬時に背中からデュランダルを抜いて構える。
本能が呼びかけてる、この生き物はかなり危険だって。鳥肌なのか冷や汗なのか、恐怖すら感じるくらい五感に禍々しい程嫌な気配をビシバシ感じてる。
エルナト先生に松明を渡して、庇うように前へと出た。
口からはヨダレみたいな液体を垂らしてて、人間みたいな身体なのに顔は魔物の顔してて、頭にはぐるぐる巻いた角みたいなモノが左右付いてる。
長過ぎる手足に、締まりのない口からよだれと一緒に長い舌も出ててとにかく不気味。
未知のモンスターなだけに最大限警戒しないと危ない!
「お気を付け下さい!このような魔物は見たことがありません!」
エルナト先生が話し終えるのと同時に長い手が物凄い速さで振り回される。
ビュンッ!!
咄嗟に剣を構えて往なすけど、動きが速くて力もかなり強い。
身体強化を強めて、キメラの手足へ剣を向ける。
懐に入ろうとするけど、長い手足が邪魔するしキメラの身体が大きくて狭い空間だからかなり動きづらい。
攻撃を受け止めるので精一杯だった。
長い手に足を取られてそのまま思い切り壁面へと叩きつけられる。
「あぐッ!!」
「─シリウス卿!」
強化で構えたけど、強い衝撃に口から吐血する。
壁面が陥没して身体がめり込んでから下へと落ちた。凹んだ壁からパラパラと周りの岩が落ちてくる。
くっ……強いし速い!…知能も高いし、身体能力がかなり発達してる。速過ぎて追いつけない!
「ギュプアッ」
地面に横たわってると、キメラが不思議な声を上げた。
キメラが長い手と口元が眩く光り、光線のような魔法を放ってくる。
「っ!危ないっ!!」
『アースウインドバリア』
咄嗟にエルナト先生が合成魔法の上級防御魔法放つけど、全く効いてない。合成魔法が全然効かないなんて!
これはヤバいっ!!
『魔法無力化!』
咄嗟に立ち上がって手を挙げる。
範囲を広げて私とエルナト先生にも届くように無力化魔法を展開する。
四方に放たれた光線が瞬く間に消えていく。
「はぁ…はぁ…」
今の無力化魔法でかなりの魔力を消費した。
光線みたいな魔法が放たれた周りの壁が、線状に熔けてマグマみたいに床に滴ってる。
「こ、この魔法は…、いや、魔法…なのですか……?」
エルナト先生が周りの状況を見て冷や汗を流してる。
魔法の定義から逸脱しすぎて、疑問が出るくらい次元のかけ離れてるものだった。
また再び長い手足が伸びてくる。
『エアロエッジ!』
エルナト先生が風魔法最上級攻撃魔法を放つ。鎌鼬のような、目に見えない鋭い真空の風がキメラの手足を傷付けると、怒ったように不気味な咆哮をあげて瞬く間に手が伸びエルナト先生の体を掴んだ。
「カゴュオオオーー!!」
「なっ!!」
物凄い勢いでキメラの口元まで引き寄せられ、大口開けて食べようとでもしてるみたい。
「先生ぇぇっ!!」
すぐ足に強化をかけ一瞬でキメラの手元まで移動し、エルナト先生に気を取られてるキメラの手をデュランダルで切り裂く。
「ゴギュッ!」
少し緩んだ隙きにエルナト先生の体を抜いて抱えると、トップスピードでまた部屋の隅まで移動する。
「……っ……はぁ、…すみ…ま………」
壁際に寄せた先生の顔色が物凄く悪い。蒼白になってて身体も震えてる。
そりゃそうだよね、今まさに喰われようとしてたんだから。
先生を壁際に座らせて、キメラの方を向く。
これ以上長引く戦闘は不利でしかない。
デュランダルを背中の鞘に仕舞い、キメラに向かい手を掲げる。
『暗黒異次元!』
キメラの背後にブラックホールのような暗黒空間が現れ、物凄い引力でキメラが吸い込まれていく。
「ガゴュアアァー!!」
暗黒空間を抜け出そうと長い手足を出して壁を掴み、物凄い抵抗をして強引に体を引き出そうとしてる。
私は咄嗟に達人に教えてもらった事を思い出し、さらに攻撃系の魔力を身体の中で強め魔法を強化させた。
「─くっ!いけぇぇっ!!」
「ガッ!ゴキャッ──」
叫び声と共に、キメラが掴んでた壁ごとブラックホールに吸い込まれていく。
最後に長い手足が宙を掴むように暴れ回ってたけど、為す術もなく暗闇へと消えていく。
そしてキメラが居なくなると暗黒空間も消え、辺りが一気にシーンと静まり返った。
更に次の日。
馬車で遺跡まで移動して、降りてからその辺の草むらでシリウスの格好に着替えた。
他国まで来て、この格好しなきゃいけないのも苦痛だなぁ。
まさかここまで来てシリウスになると思ってもなかったけど、まぁ人命救助の為には仕方ないか…。
シリウスに変身して近くで待ってたエルナトと一緒に遺跡の方へと歩いていく。
「あ、あ、貴方はもしやっ!!帝国の英雄シリウス准伯爵様!世界でも有名なSS級冒険者であるシリウス准伯爵様にお目にかかれるとは…この上ない光栄ですっ!!」
遺跡前の警備をしていた騎士が尊敬の眼差しでこっちを見てくる。
てかさ…シリウスってなんで隣国でも有名なの?友好国とはいえ、他国の冒険者だよ?
確かに世界的にも今の段階でSS級冒険者っていないらしいんだよ。
関係ないと思って知らなかったけど、S級以上はギルドじゃなくて、世界的な基準があって国が認めて決めるらしいから。国で認められたって事は世界的にも認められてるって事なんだって。
でもさ…こんな目を輝かせるくらい憧れられても、どう対応していいのかわからないんだけど。
とりあえず片手だけ挙げて通り過ぎる。
警備の騎士はそれだけで興奮したみたいに深々腰を下げて最敬礼してた。
「い、いってらっしゃいませ!!お気を付けてっ!!」
エルナト先生が含み笑いしてて、見えないけど仮面の中からジロッと睨む。
少し歩いてこの前訪れた遺跡の中に入り、エルナト先生の声が中で響いてる。
「知ってましたか?アウリガルは実力国家で、魔法や剣術に関わらず強い者を敬う傾向がとても強いのです。ですからスタンピードで活躍した私や、国の英雄で冒険者としても高い実力を認められたあなたは、アウリガルの人間にとって憧れの象徴なのですよ」
はぁ…実力国家ねぇ…、なるほど。
だから騎士も門番も私達に熱い視線を送ってたのね。王様が会いたがってたのってそのせいだったのか。
エルナト先生に言われて納得しながら石碑の部屋までやって来た。
私達が解いた部屋の扉も開いてて、数日前に来たままになってる。
「さて、私達も潜ってみますか…」
隠し扉の前で呟いた先生に、片手を出して一旦止める。
「シリウス卿?どうされました?」
不思議そうにしてるエルナト先生。
私は目を閉じて遺跡ダンジョンの奥まで気配探査を広げる。
内部を探ると人間の気配らしきものが感じられた。でも数は少ない…これかな?かなり気配が微弱で生体反応が弱い。
急いだほうがいい。
松明片手に隠し扉の中へと急ぐ。
「見つかりましたか?」
下へと降りる薄暗い石段を下り、その後ろをエルナト先生も着いてくる。一応頷いてゆっくり前へと進む。
中にモンスターの反応はないから、罠に気をつけて進めば問題ないと思うけど。
階段を降り切ると切り立った石を敷き詰めた広い空間が出てきて、またその向こうに扉が見える。
慎重にゆっくり歩いていると突然、頭上から矢のような鋭いものが降り注ぐ。
エルナト先生の腰を引き寄せ、瞬時に前方向へと飛ぶ。
「なっ!!罠…ですか……」
床に無数に刺さったものを見て、驚愕の表情でエルナト先生が呟く。
私が頷くとエルナト先生も警戒レベルあげて次の扉へと向かった。
それからも行く先々に落とし穴や落石、マジックアイテムを使った魔法攻撃など…結構な数の罠が仕掛けられてる。
これは先発隊も無傷ではいられないだろうね…。
「ふぅ…やはりあなたに着いてきて頂いて正解でした。でなければ、今頃私は穴だらけになっていることでしょうね」
冗談交じりに言ってるエルナト先生だけど、結構な数の罠に疲れ気味。
何箇所かの部屋を通り抜けてきたけど、まだ調査チームは見つからない。たぶんもっとずっと下の階にいるんだよね。
僅かに感じる気配からすると落とし穴に落ちたのか、そこの部屋から動いてないし…。
「また石碑ですね。これは…また違う形の古代文字です」
広い空間に出た。
そこにも石碑が立ってて、他の場所へ繋がる扉みたいなのは見当たらない。でもこの部屋嫌な気配が凄くする。
松明を掲げてその古代文字を読む。
ここの文字はエルナト先生も知ってるものらしく、先生が次々読み上げていく。
「“地に手、天に足、四方に広がる悍ましき肢体に畏怖を覚えん。彼の者、冥府の王これより降臨す”……これは一体…」
うーん、文章だけ聞いてると嫌な予感しかしないよね。
読み終えると同時に私達の立ってた床が円形に青白く光り、部屋の床一帯に魔法陣が現れる。
「これはっ!!旧世界時代に使われていた陣形です!何かの召喚式魔法かもしれません!!」
召喚魔法!?
凄いっ!!今は召喚魔法なんて存在すらしてないから!
すぐ魔法陣から出て様子を見ていると、光る円陣の中から見たこともないようなモンスターが現れる。
高い天井に付くくらいの巨体で、四肢がすごく長い…姿はなんて表現していいのか…。
異形だよね…合成獣みたいな色んなモノが混ざった感じの生き物。
こんなの生物なの?こんなのが旧世界には存在してたってこと?考えられない…何かの出来損ないみたいな…本当悍ましい形をしてる。
「し、シリウス卿…コレは…何ですか……」
エルナト先生も顔を歪めてそのキメラを見てる。
瞬時に背中からデュランダルを抜いて構える。
本能が呼びかけてる、この生き物はかなり危険だって。鳥肌なのか冷や汗なのか、恐怖すら感じるくらい五感に禍々しい程嫌な気配をビシバシ感じてる。
エルナト先生に松明を渡して、庇うように前へと出た。
口からはヨダレみたいな液体を垂らしてて、人間みたいな身体なのに顔は魔物の顔してて、頭にはぐるぐる巻いた角みたいなモノが左右付いてる。
長過ぎる手足に、締まりのない口からよだれと一緒に長い舌も出ててとにかく不気味。
未知のモンスターなだけに最大限警戒しないと危ない!
「お気を付け下さい!このような魔物は見たことがありません!」
エルナト先生が話し終えるのと同時に長い手が物凄い速さで振り回される。
ビュンッ!!
咄嗟に剣を構えて往なすけど、動きが速くて力もかなり強い。
身体強化を強めて、キメラの手足へ剣を向ける。
懐に入ろうとするけど、長い手足が邪魔するしキメラの身体が大きくて狭い空間だからかなり動きづらい。
攻撃を受け止めるので精一杯だった。
長い手に足を取られてそのまま思い切り壁面へと叩きつけられる。
「あぐッ!!」
「─シリウス卿!」
強化で構えたけど、強い衝撃に口から吐血する。
壁面が陥没して身体がめり込んでから下へと落ちた。凹んだ壁からパラパラと周りの岩が落ちてくる。
くっ……強いし速い!…知能も高いし、身体能力がかなり発達してる。速過ぎて追いつけない!
「ギュプアッ」
地面に横たわってると、キメラが不思議な声を上げた。
キメラが長い手と口元が眩く光り、光線のような魔法を放ってくる。
「っ!危ないっ!!」
『アースウインドバリア』
咄嗟にエルナト先生が合成魔法の上級防御魔法放つけど、全く効いてない。合成魔法が全然効かないなんて!
これはヤバいっ!!
『魔法無力化!』
咄嗟に立ち上がって手を挙げる。
範囲を広げて私とエルナト先生にも届くように無力化魔法を展開する。
四方に放たれた光線が瞬く間に消えていく。
「はぁ…はぁ…」
今の無力化魔法でかなりの魔力を消費した。
光線みたいな魔法が放たれた周りの壁が、線状に熔けてマグマみたいに床に滴ってる。
「こ、この魔法は…、いや、魔法…なのですか……?」
エルナト先生が周りの状況を見て冷や汗を流してる。
魔法の定義から逸脱しすぎて、疑問が出るくらい次元のかけ離れてるものだった。
また再び長い手足が伸びてくる。
『エアロエッジ!』
エルナト先生が風魔法最上級攻撃魔法を放つ。鎌鼬のような、目に見えない鋭い真空の風がキメラの手足を傷付けると、怒ったように不気味な咆哮をあげて瞬く間に手が伸びエルナト先生の体を掴んだ。
「カゴュオオオーー!!」
「なっ!!」
物凄い勢いでキメラの口元まで引き寄せられ、大口開けて食べようとでもしてるみたい。
「先生ぇぇっ!!」
すぐ足に強化をかけ一瞬でキメラの手元まで移動し、エルナト先生に気を取られてるキメラの手をデュランダルで切り裂く。
「ゴギュッ!」
少し緩んだ隙きにエルナト先生の体を抜いて抱えると、トップスピードでまた部屋の隅まで移動する。
「……っ……はぁ、…すみ…ま………」
壁際に寄せた先生の顔色が物凄く悪い。蒼白になってて身体も震えてる。
そりゃそうだよね、今まさに喰われようとしてたんだから。
先生を壁際に座らせて、キメラの方を向く。
これ以上長引く戦闘は不利でしかない。
デュランダルを背中の鞘に仕舞い、キメラに向かい手を掲げる。
『暗黒異次元!』
キメラの背後にブラックホールのような暗黒空間が現れ、物凄い引力でキメラが吸い込まれていく。
「ガゴュアアァー!!」
暗黒空間を抜け出そうと長い手足を出して壁を掴み、物凄い抵抗をして強引に体を引き出そうとしてる。
私は咄嗟に達人に教えてもらった事を思い出し、さらに攻撃系の魔力を身体の中で強め魔法を強化させた。
「─くっ!いけぇぇっ!!」
「ガッ!ゴキャッ──」
叫び声と共に、キメラが掴んでた壁ごとブラックホールに吸い込まれていく。
最後に長い手足が宙を掴むように暴れ回ってたけど、為す術もなく暗闇へと消えていく。
そしてキメラが居なくなると暗黒空間も消え、辺りが一気にシーンと静まり返った。
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