162 / 392
エルナト先生との旅路 9
しおりを挟む
‘
更に次の日。
馬車で遺跡まで移動して、降りてからその辺の草むらでシリウスの格好に着替えた。
他国まで来て、この格好しなきゃいけないのも苦痛だなぁ。
まさかここまで来てシリウスになると思ってもなかったけど、まぁ人命救助の為には仕方ないか…。
シリウスに変身して近くで待ってたエルナトと一緒に遺跡の方へと歩いていく。
「あ、あ、貴方はもしやっ!!帝国の英雄シリウス准伯爵様!世界でも有名なSS級冒険者であるシリウス准伯爵様にお目にかかれるとは…この上ない光栄ですっ!!」
遺跡前の警備をしていた騎士が尊敬の眼差しでこっちを見てくる。
てかさ…シリウスってなんで隣国でも有名なの?友好国とはいえ、他国の冒険者だよ?
確かに世界的にも今の段階でSS級冒険者っていないらしいんだよ。
関係ないと思って知らなかったけど、S級以上はギルドじゃなくて、世界的な基準があって国が認めて決めるらしいから。国で認められたって事は世界的にも認められてるって事なんだって。
でもさ…こんな目を輝かせるくらい憧れられても、どう対応していいのかわからないんだけど。
とりあえず片手だけ挙げて通り過ぎる。
警備の騎士はそれだけで興奮したみたいに深々腰を下げて最敬礼してた。
「い、いってらっしゃいませ!!お気を付けてっ!!」
エルナト先生が含み笑いしてて、見えないけど仮面の中からジロッと睨む。
少し歩いてこの前訪れた遺跡の中に入り、エルナト先生の声が中で響いてる。
「知ってましたか?アウリガルは実力国家で、魔法や剣術に関わらず強い者を敬う傾向がとても強いのです。ですからスタンピードで活躍した私や、国の英雄で冒険者としても高い実力を認められたあなたは、アウリガルの人間にとって憧れの象徴なのですよ」
はぁ…実力国家ねぇ…、なるほど。
だから騎士も門番も私達に熱い視線を送ってたのね。王様が会いたがってたのってそのせいだったのか。
エルナト先生に言われて納得しながら石碑の部屋までやって来た。
私達が解いた部屋の扉も開いてて、数日前に来たままになってる。
「さて、私達も潜ってみますか…」
隠し扉の前で呟いた先生に、片手を出して一旦止める。
「シリウス卿?どうされました?」
不思議そうにしてるエルナト先生。
私は目を閉じて遺跡ダンジョンの奥まで気配探査を広げる。
内部を探ると人間の気配らしきものが感じられた。でも数は少ない…これかな?かなり気配が微弱で生体反応が弱い。
急いだほうがいい。
松明片手に隠し扉の中へと急ぐ。
「見つかりましたか?」
下へと降りる薄暗い石段を下り、その後ろをエルナト先生も着いてくる。一応頷いてゆっくり前へと進む。
中にモンスターの反応はないから、罠に気をつけて進めば問題ないと思うけど。
階段を降り切ると切り立った石を敷き詰めた広い空間が出てきて、またその向こうに扉が見える。
慎重にゆっくり歩いていると突然、頭上から矢のような鋭いものが降り注ぐ。
エルナト先生の腰を引き寄せ、瞬時に前方向へと飛ぶ。
「なっ!!罠…ですか……」
床に無数に刺さったものを見て、驚愕の表情でエルナト先生が呟く。
私が頷くとエルナト先生も警戒レベルあげて次の扉へと向かった。
それからも行く先々に落とし穴や落石、マジックアイテムを使った魔法攻撃など…結構な数の罠が仕掛けられてる。
これは先発隊も無傷ではいられないだろうね…。
「ふぅ…やはりあなたに着いてきて頂いて正解でした。でなければ、今頃私は穴だらけになっていることでしょうね」
冗談交じりに言ってるエルナト先生だけど、結構な数の罠に疲れ気味。
何箇所かの部屋を通り抜けてきたけど、まだ調査チームは見つからない。たぶんもっとずっと下の階にいるんだよね。
僅かに感じる気配からすると落とし穴に落ちたのか、そこの部屋から動いてないし…。
「また石碑ですね。これは…また違う形の古代文字です」
広い空間に出た。
そこにも石碑が立ってて、他の場所へ繋がる扉みたいなのは見当たらない。でもこの部屋嫌な気配が凄くする。
松明を掲げてその古代文字を読む。
ここの文字はエルナト先生も知ってるものらしく、先生が次々読み上げていく。
「“地に手、天に足、四方に広がる悍ましき肢体に畏怖を覚えん。彼の者、冥府の王これより降臨す”……これは一体…」
うーん、文章だけ聞いてると嫌な予感しかしないよね。
読み終えると同時に私達の立ってた床が円形に青白く光り、部屋の床一帯に魔法陣が現れる。
「これはっ!!旧世界時代に使われていた陣形です!何かの召喚式魔法かもしれません!!」
召喚魔法!?
凄いっ!!今は召喚魔法なんて存在すらしてないから!
すぐ魔法陣から出て様子を見ていると、光る円陣の中から見たこともないようなモンスターが現れる。
高い天井に付くくらいの巨体で、四肢がすごく長い…姿はなんて表現していいのか…。
異形だよね…合成獣みたいな色んなモノが混ざった感じの生き物。
こんなの生物なの?こんなのが旧世界には存在してたってこと?考えられない…何かの出来損ないみたいな…本当悍ましい形をしてる。
「し、シリウス卿…コレは…何ですか……」
エルナト先生も顔を歪めてそのキメラを見てる。
瞬時に背中からデュランダルを抜いて構える。
本能が呼びかけてる、この生き物はかなり危険だって。鳥肌なのか冷や汗なのか、恐怖すら感じるくらい五感に禍々しい程嫌な気配をビシバシ感じてる。
エルナト先生に松明を渡して、庇うように前へと出た。
口からはヨダレみたいな液体を垂らしてて、人間みたいな身体なのに顔は魔物の顔してて、頭にはぐるぐる巻いた角みたいなモノが左右付いてる。
長過ぎる手足に、締まりのない口からよだれと一緒に長い舌も出ててとにかく不気味。
未知のモンスターなだけに最大限警戒しないと危ない!
「お気を付け下さい!このような魔物は見たことがありません!」
エルナト先生が話し終えるのと同時に長い手が物凄い速さで振り回される。
ビュンッ!!
咄嗟に剣を構えて往なすけど、動きが速くて力もかなり強い。
身体強化を強めて、キメラの手足へ剣を向ける。
懐に入ろうとするけど、長い手足が邪魔するしキメラの身体が大きくて狭い空間だからかなり動きづらい。
攻撃を受け止めるので精一杯だった。
長い手に足を取られてそのまま思い切り壁面へと叩きつけられる。
「あぐッ!!」
「─シリウス卿!」
強化で構えたけど、強い衝撃に口から吐血する。
壁面が陥没して身体がめり込んでから下へと落ちた。凹んだ壁からパラパラと周りの岩が落ちてくる。
くっ……強いし速い!…知能も高いし、身体能力がかなり発達してる。速過ぎて追いつけない!
「ギュプアッ」
地面に横たわってると、キメラが不思議な声を上げた。
キメラが長い手と口元が眩く光り、光線のような魔法を放ってくる。
「っ!危ないっ!!」
『アースウインドバリア』
咄嗟にエルナト先生が合成魔法の上級防御魔法放つけど、全く効いてない。合成魔法が全然効かないなんて!
これはヤバいっ!!
『魔法無力化!』
咄嗟に立ち上がって手を挙げる。
範囲を広げて私とエルナト先生にも届くように無力化魔法を展開する。
四方に放たれた光線が瞬く間に消えていく。
「はぁ…はぁ…」
今の無力化魔法でかなりの魔力を消費した。
光線みたいな魔法が放たれた周りの壁が、線状に熔けてマグマみたいに床に滴ってる。
「こ、この魔法は…、いや、魔法…なのですか……?」
エルナト先生が周りの状況を見て冷や汗を流してる。
魔法の定義から逸脱しすぎて、疑問が出るくらい次元のかけ離れてるものだった。
また再び長い手足が伸びてくる。
『エアロエッジ!』
エルナト先生が風魔法最上級攻撃魔法を放つ。鎌鼬のような、目に見えない鋭い真空の風がキメラの手足を傷付けると、怒ったように不気味な咆哮をあげて瞬く間に手が伸びエルナト先生の体を掴んだ。
「カゴュオオオーー!!」
「なっ!!」
物凄い勢いでキメラの口元まで引き寄せられ、大口開けて食べようとでもしてるみたい。
「先生ぇぇっ!!」
すぐ足に強化をかけ一瞬でキメラの手元まで移動し、エルナト先生に気を取られてるキメラの手をデュランダルで切り裂く。
「ゴギュッ!」
少し緩んだ隙きにエルナト先生の体を抜いて抱えると、トップスピードでまた部屋の隅まで移動する。
「……っ……はぁ、…すみ…ま………」
壁際に寄せた先生の顔色が物凄く悪い。蒼白になってて身体も震えてる。
そりゃそうだよね、今まさに喰われようとしてたんだから。
先生を壁際に座らせて、キメラの方を向く。
これ以上長引く戦闘は不利でしかない。
デュランダルを背中の鞘に仕舞い、キメラに向かい手を掲げる。
『暗黒異次元!』
キメラの背後にブラックホールのような暗黒空間が現れ、物凄い引力でキメラが吸い込まれていく。
「ガゴュアアァー!!」
暗黒空間を抜け出そうと長い手足を出して壁を掴み、物凄い抵抗をして強引に体を引き出そうとしてる。
私は咄嗟に達人に教えてもらった事を思い出し、さらに攻撃系の魔力を身体の中で強め魔法を強化させた。
「─くっ!いけぇぇっ!!」
「ガッ!ゴキャッ──」
叫び声と共に、キメラが掴んでた壁ごとブラックホールに吸い込まれていく。
最後に長い手足が宙を掴むように暴れ回ってたけど、為す術もなく暗闇へと消えていく。
そしてキメラが居なくなると暗黒空間も消え、辺りが一気にシーンと静まり返った。
更に次の日。
馬車で遺跡まで移動して、降りてからその辺の草むらでシリウスの格好に着替えた。
他国まで来て、この格好しなきゃいけないのも苦痛だなぁ。
まさかここまで来てシリウスになると思ってもなかったけど、まぁ人命救助の為には仕方ないか…。
シリウスに変身して近くで待ってたエルナトと一緒に遺跡の方へと歩いていく。
「あ、あ、貴方はもしやっ!!帝国の英雄シリウス准伯爵様!世界でも有名なSS級冒険者であるシリウス准伯爵様にお目にかかれるとは…この上ない光栄ですっ!!」
遺跡前の警備をしていた騎士が尊敬の眼差しでこっちを見てくる。
てかさ…シリウスってなんで隣国でも有名なの?友好国とはいえ、他国の冒険者だよ?
確かに世界的にも今の段階でSS級冒険者っていないらしいんだよ。
関係ないと思って知らなかったけど、S級以上はギルドじゃなくて、世界的な基準があって国が認めて決めるらしいから。国で認められたって事は世界的にも認められてるって事なんだって。
でもさ…こんな目を輝かせるくらい憧れられても、どう対応していいのかわからないんだけど。
とりあえず片手だけ挙げて通り過ぎる。
警備の騎士はそれだけで興奮したみたいに深々腰を下げて最敬礼してた。
「い、いってらっしゃいませ!!お気を付けてっ!!」
エルナト先生が含み笑いしてて、見えないけど仮面の中からジロッと睨む。
少し歩いてこの前訪れた遺跡の中に入り、エルナト先生の声が中で響いてる。
「知ってましたか?アウリガルは実力国家で、魔法や剣術に関わらず強い者を敬う傾向がとても強いのです。ですからスタンピードで活躍した私や、国の英雄で冒険者としても高い実力を認められたあなたは、アウリガルの人間にとって憧れの象徴なのですよ」
はぁ…実力国家ねぇ…、なるほど。
だから騎士も門番も私達に熱い視線を送ってたのね。王様が会いたがってたのってそのせいだったのか。
エルナト先生に言われて納得しながら石碑の部屋までやって来た。
私達が解いた部屋の扉も開いてて、数日前に来たままになってる。
「さて、私達も潜ってみますか…」
隠し扉の前で呟いた先生に、片手を出して一旦止める。
「シリウス卿?どうされました?」
不思議そうにしてるエルナト先生。
私は目を閉じて遺跡ダンジョンの奥まで気配探査を広げる。
内部を探ると人間の気配らしきものが感じられた。でも数は少ない…これかな?かなり気配が微弱で生体反応が弱い。
急いだほうがいい。
松明片手に隠し扉の中へと急ぐ。
「見つかりましたか?」
下へと降りる薄暗い石段を下り、その後ろをエルナト先生も着いてくる。一応頷いてゆっくり前へと進む。
中にモンスターの反応はないから、罠に気をつけて進めば問題ないと思うけど。
階段を降り切ると切り立った石を敷き詰めた広い空間が出てきて、またその向こうに扉が見える。
慎重にゆっくり歩いていると突然、頭上から矢のような鋭いものが降り注ぐ。
エルナト先生の腰を引き寄せ、瞬時に前方向へと飛ぶ。
「なっ!!罠…ですか……」
床に無数に刺さったものを見て、驚愕の表情でエルナト先生が呟く。
私が頷くとエルナト先生も警戒レベルあげて次の扉へと向かった。
それからも行く先々に落とし穴や落石、マジックアイテムを使った魔法攻撃など…結構な数の罠が仕掛けられてる。
これは先発隊も無傷ではいられないだろうね…。
「ふぅ…やはりあなたに着いてきて頂いて正解でした。でなければ、今頃私は穴だらけになっていることでしょうね」
冗談交じりに言ってるエルナト先生だけど、結構な数の罠に疲れ気味。
何箇所かの部屋を通り抜けてきたけど、まだ調査チームは見つからない。たぶんもっとずっと下の階にいるんだよね。
僅かに感じる気配からすると落とし穴に落ちたのか、そこの部屋から動いてないし…。
「また石碑ですね。これは…また違う形の古代文字です」
広い空間に出た。
そこにも石碑が立ってて、他の場所へ繋がる扉みたいなのは見当たらない。でもこの部屋嫌な気配が凄くする。
松明を掲げてその古代文字を読む。
ここの文字はエルナト先生も知ってるものらしく、先生が次々読み上げていく。
「“地に手、天に足、四方に広がる悍ましき肢体に畏怖を覚えん。彼の者、冥府の王これより降臨す”……これは一体…」
うーん、文章だけ聞いてると嫌な予感しかしないよね。
読み終えると同時に私達の立ってた床が円形に青白く光り、部屋の床一帯に魔法陣が現れる。
「これはっ!!旧世界時代に使われていた陣形です!何かの召喚式魔法かもしれません!!」
召喚魔法!?
凄いっ!!今は召喚魔法なんて存在すらしてないから!
すぐ魔法陣から出て様子を見ていると、光る円陣の中から見たこともないようなモンスターが現れる。
高い天井に付くくらいの巨体で、四肢がすごく長い…姿はなんて表現していいのか…。
異形だよね…合成獣みたいな色んなモノが混ざった感じの生き物。
こんなの生物なの?こんなのが旧世界には存在してたってこと?考えられない…何かの出来損ないみたいな…本当悍ましい形をしてる。
「し、シリウス卿…コレは…何ですか……」
エルナト先生も顔を歪めてそのキメラを見てる。
瞬時に背中からデュランダルを抜いて構える。
本能が呼びかけてる、この生き物はかなり危険だって。鳥肌なのか冷や汗なのか、恐怖すら感じるくらい五感に禍々しい程嫌な気配をビシバシ感じてる。
エルナト先生に松明を渡して、庇うように前へと出た。
口からはヨダレみたいな液体を垂らしてて、人間みたいな身体なのに顔は魔物の顔してて、頭にはぐるぐる巻いた角みたいなモノが左右付いてる。
長過ぎる手足に、締まりのない口からよだれと一緒に長い舌も出ててとにかく不気味。
未知のモンスターなだけに最大限警戒しないと危ない!
「お気を付け下さい!このような魔物は見たことがありません!」
エルナト先生が話し終えるのと同時に長い手が物凄い速さで振り回される。
ビュンッ!!
咄嗟に剣を構えて往なすけど、動きが速くて力もかなり強い。
身体強化を強めて、キメラの手足へ剣を向ける。
懐に入ろうとするけど、長い手足が邪魔するしキメラの身体が大きくて狭い空間だからかなり動きづらい。
攻撃を受け止めるので精一杯だった。
長い手に足を取られてそのまま思い切り壁面へと叩きつけられる。
「あぐッ!!」
「─シリウス卿!」
強化で構えたけど、強い衝撃に口から吐血する。
壁面が陥没して身体がめり込んでから下へと落ちた。凹んだ壁からパラパラと周りの岩が落ちてくる。
くっ……強いし速い!…知能も高いし、身体能力がかなり発達してる。速過ぎて追いつけない!
「ギュプアッ」
地面に横たわってると、キメラが不思議な声を上げた。
キメラが長い手と口元が眩く光り、光線のような魔法を放ってくる。
「っ!危ないっ!!」
『アースウインドバリア』
咄嗟にエルナト先生が合成魔法の上級防御魔法放つけど、全く効いてない。合成魔法が全然効かないなんて!
これはヤバいっ!!
『魔法無力化!』
咄嗟に立ち上がって手を挙げる。
範囲を広げて私とエルナト先生にも届くように無力化魔法を展開する。
四方に放たれた光線が瞬く間に消えていく。
「はぁ…はぁ…」
今の無力化魔法でかなりの魔力を消費した。
光線みたいな魔法が放たれた周りの壁が、線状に熔けてマグマみたいに床に滴ってる。
「こ、この魔法は…、いや、魔法…なのですか……?」
エルナト先生が周りの状況を見て冷や汗を流してる。
魔法の定義から逸脱しすぎて、疑問が出るくらい次元のかけ離れてるものだった。
また再び長い手足が伸びてくる。
『エアロエッジ!』
エルナト先生が風魔法最上級攻撃魔法を放つ。鎌鼬のような、目に見えない鋭い真空の風がキメラの手足を傷付けると、怒ったように不気味な咆哮をあげて瞬く間に手が伸びエルナト先生の体を掴んだ。
「カゴュオオオーー!!」
「なっ!!」
物凄い勢いでキメラの口元まで引き寄せられ、大口開けて食べようとでもしてるみたい。
「先生ぇぇっ!!」
すぐ足に強化をかけ一瞬でキメラの手元まで移動し、エルナト先生に気を取られてるキメラの手をデュランダルで切り裂く。
「ゴギュッ!」
少し緩んだ隙きにエルナト先生の体を抜いて抱えると、トップスピードでまた部屋の隅まで移動する。
「……っ……はぁ、…すみ…ま………」
壁際に寄せた先生の顔色が物凄く悪い。蒼白になってて身体も震えてる。
そりゃそうだよね、今まさに喰われようとしてたんだから。
先生を壁際に座らせて、キメラの方を向く。
これ以上長引く戦闘は不利でしかない。
デュランダルを背中の鞘に仕舞い、キメラに向かい手を掲げる。
『暗黒異次元!』
キメラの背後にブラックホールのような暗黒空間が現れ、物凄い引力でキメラが吸い込まれていく。
「ガゴュアアァー!!」
暗黒空間を抜け出そうと長い手足を出して壁を掴み、物凄い抵抗をして強引に体を引き出そうとしてる。
私は咄嗟に達人に教えてもらった事を思い出し、さらに攻撃系の魔力を身体の中で強め魔法を強化させた。
「─くっ!いけぇぇっ!!」
「ガッ!ゴキャッ──」
叫び声と共に、キメラが掴んでた壁ごとブラックホールに吸い込まれていく。
最後に長い手足が宙を掴むように暴れ回ってたけど、為す術もなく暗闇へと消えていく。
そしてキメラが居なくなると暗黒空間も消え、辺りが一気にシーンと静まり返った。
12
お気に入りに追加
324
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる