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エルナト先生との旅路 6
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私にとってエルナト先生って、年の離れたお兄さんて感覚しかないんだよ。11歳も離れてるし、結婚相手とか恋愛対象とかってのじゃないんだよなぁ。
でも、今すぐ答えを出さなくて良いのは助かる。
正直いくら先生でもすぐに断らないといけないのは嫌だし。卒業するまで待ってもらえれば………。
いやいやいやいや、ちょっと待てっ!!
卒業した後だったら、エルナト先生との結婚を考えるってこと!?私はアルファルドのことが好きなのに?!
たとえアルファルドと結ばれなくても、じゃあエルナト先生でいいや、ってそんな事私にはできないよ!
私の心にはもうずっと前からアルファルドしかいなくて、最近それが恋心に変化しちゃって、アルファルド以外は考えられないんだよ!
アルファルドと一緒になることはできないけど…こんな気持ちのまま他の誰かとなんて絶対無理だ。
とりあえずゲームの結末を見届けるまでは、結婚なんてまだまだ考えられないよ……。
「ご期待に添えられないと思いますが、それでも宜しいのでしたら…」
一応やんわりと自分の気持ちを伝えつつ、先生に振ってみる。
「私は構いません。私の入り込む余地はまだありそうですからね。ハッキリした答えが出たなら、その時に教えて下さい」
馬車に座りながらこっちを向いて優雅に微笑んでる先生は余裕な感じで構えてる。
うーん、わからない。いつも通りな感じなんだよね。
先生にとってそこまで重要じゃないのかな…。
とりあえず条件の良い相手にアプローチしたくらいの感覚??
貴族の結婚て家同士の結びつきみたいなものだから、恋愛結婚するほうが珍しいし、お互い顔もわからないで結婚する人も珍しくないからなぁ。
男性側の意見は良くわからないから難しいや。
「では、この話はここまでにして…ここからは仕事の話しに切り替えましょう」
「へ?…は、はぁ……」
さっきと打って代わり仕事モードに切り替わったエルナト先生。
いや~、この潔さ…切り替え早すぎだよ。
でも、この方がエルナト先生らしくて私としてもホッとして移動できた。
◇
馬車に揺られること2時間程。
ようやく着きました。
降りた先は森の中で、周りには村とか集落すらないような場所。
シダみたいな植物が周りには群生してて、かなり背の高い木々があちこちに生えてる。
その中にツタみたいな草に覆い尽くされてる石碑や、崩れかけた石段や相当前の古びた建物らしき物が何箇所か固まって置かれてた。
さらに奥に石でできた洞窟のような大きな建物もあって、それだけは形を留めてて中にも入れそうな感じだった。
その建物前には見張りの騎士が立ってて、隣には小さなテントみたいなのが張ってあった。
「これは、インテルクルース准子爵様ですね!どうぞ中へお入り下さい!遺跡の中は魔物など危険な生物は存在していないのでご安心下さい!お気を付けて!!」
「ご苦労さまです。では、失礼します」
騎士に通されて私達も遺跡の中へと入っていく。
外回りの遺跡はもう風化しちゃってボロボロだね。
足を踏み入れるけど、苔とかツタが絡みついてスゴイことになってる。
崩れた岩や石が地面にたくさん落ちてて踏み込む度にジャリジャリと音を立ててる。
「問題の遺跡はあの建物の中だそうです。さて…行ってみましょう!」
すごく楽しそうに建物を指差して笑って話す先生。
本当に少年みたいだよねー。
こういうトコは可愛く見えちゃうから困るなぁ。
「先生…足元には気を付けて下さいよ」
「えぇ、わかってます。ワクワクしますね!」
先陣きって中へと突入していく先生。
一応気配を探ったけど、確かにこの空間には生物らしいものは存在してない。
中は一定間隔に燭台が配置されてて結構見やすい。
手に松明も借りて持ってきてたけど、必要ないかもしれない。
一応それも持ちつつ、薄暗い建物の中を進んで行く。
四角い廊下みたいな道が続いて、しばらく歩いてると広い空間に出た。
「…これが石碑ですかね?」
天井が結構高くて、周りも教室くらいの広さで円形に造られてる部屋。
その壁側の真ん中に例の石碑が建ってた。
「この建物って、この空間で終わりですか?他に続き部屋みたいなのは無いんですか?」
キョロキョロと部屋の中を見るけど、扉みたいなのも見当たらない。
「……この報告書によると、この部屋しかないようですよ?この部屋にある石碑の解読を任されましたから…」
探査能力で探るけど、まだまだこの建物は全然広い。奥行きが結構ある。しかも奥に行けば行くほど、何かの気配を感じる。
「どうかしましたか?」
目を閉じて黙ってる私を見て、不思議そうに呟く。
「俺の見立てだと、まだまだ別の部屋が複数あります。恐らくその石碑に、他の部屋へと繋がるヒントみたいなものが書いてあると思いますよ?」
ミティスト系のダンジョンとかイベントなら必ずそうなる筈。
「別の隠し部屋ですか……それは素晴らしい!早速石碑を解読してみましょう!」
興奮した感じのエルナト先生が石碑に近づき、彫ってある古代文字を上から見ている。
えー、なになに。
“汝、天仰げば陽、地落ちれば陰。対極に有るものいずれは沈む”
ふ~ん、てことはこっちだね。簡単簡単。
「これはかなり古い古代文字ですね…。どこの文明からきてるものか判別が難しいですが…」
「先生、こっちに何かあるって書いてあります」
「……はい?」
やっぱり先生でも難しいんだ。
石碑に近づいて見てた先生が、唖然とした顔で私を見てた。
「いや、ですから西側に何かあるってことですよ」
「ちょっとお待ち下さい。まず、これを読んでみて頂けますか?」
エルナト先生が怖い笑顔で迫ってくる。
「“汝、天仰げば陽、地落ちれば陰。対極に有るものいずれは沈む”と書いてあります。…陰陽は月と太陽のことですから、それが沈む場所となると西になります。天仰げば陽なので、今立ってる位置から上を南として、西側はこっちということですね」
「………」
右側の壁へと移動を促してるのに、先生は動かない。
「エルナト先生?」
「アトリクス君。もう少し詳しくお聞かせ願えますか?」
「あ…はい」
またまた怖い笑顔でズイッと迫られて、とりあえず上から説明していく。
先生は頷きながら石碑の文字と、翻訳したものを用紙に記入していってる。
「ふむ…ここの文字はこう読むのですね…」
石碑と紙を見比べて納得したように呟いてる。
「みたいですね。何だか先生に教えてるなんて変な感覚です」
「…あなたは何故、このような複雑な古代文字が読めるようになったのでしょうか?私が教えていた時は初歩の古代文字ですら苦戦していたと記憶してますが…」
紙を見てた先生は顔を上げて今度は私に視線を送ってる。
うーん…それは私も知りたい。
いつの間にか読めるようになったってのが一番合ってる。どうしてかなんてわからないんだよね…。
先生がこっちを見て疑問を投げかけるけど、私にもさっぱりわからないから肩をすくめる。
「さぁ?俺にも何故だかわかりません。まぁとりあえず謎が解けたから、次に進みましょう」
「…えぇ。納得いきませんが、ご本人にもわからないようなので仕方ないですね。一先ず解けた通りに進んでみますか」
ようやく石碑の前から右側の壁の辺りに移動した。
岩肌が続いてる壁面を手で探りながら触っていく。
その一部に凹みがありそれを押してみるとやっぱり隠し扉が潜んでた。
扉が開くと、真っ暗な長四角の空間に下に続く階段のような石段が見える。
ただこの奥は、何か禍々しい気配を感じるなぁ。
「正解でしたね。どうします?このまま進みますか?」
「うむ…そうですね。まさか遺跡がダンジョンのようになってるとは思ってませんでしたから…一度戻りましょう。ここは帝国ではありませんから、この先の判断は国王陛下に委ねなくてはなりません」
隠し扉の前で顎に手を当てて考えてた先生。
確かにそうだよね。気になるところではあるけど、何もわからない遺跡ダンジョンに進むには軽装備すぎるし…。
「それが良さそうです。この奥はかなり広いし、嫌な気配もします…」
「何か感じますか?」
「えぇ…先生の仰る通り、ここはダンジョンです。このまま進むには危険過ぎます」
「……そうですか。我々の依頼である解読には成功し、謎解きまでしたのですから、事実上任務は完了です」
私も先生の判断に賛成する。
一先ず私達は遺跡の外へと出た。
私にとってエルナト先生って、年の離れたお兄さんて感覚しかないんだよ。11歳も離れてるし、結婚相手とか恋愛対象とかってのじゃないんだよなぁ。
でも、今すぐ答えを出さなくて良いのは助かる。
正直いくら先生でもすぐに断らないといけないのは嫌だし。卒業するまで待ってもらえれば………。
いやいやいやいや、ちょっと待てっ!!
卒業した後だったら、エルナト先生との結婚を考えるってこと!?私はアルファルドのことが好きなのに?!
たとえアルファルドと結ばれなくても、じゃあエルナト先生でいいや、ってそんな事私にはできないよ!
私の心にはもうずっと前からアルファルドしかいなくて、最近それが恋心に変化しちゃって、アルファルド以外は考えられないんだよ!
アルファルドと一緒になることはできないけど…こんな気持ちのまま他の誰かとなんて絶対無理だ。
とりあえずゲームの結末を見届けるまでは、結婚なんてまだまだ考えられないよ……。
「ご期待に添えられないと思いますが、それでも宜しいのでしたら…」
一応やんわりと自分の気持ちを伝えつつ、先生に振ってみる。
「私は構いません。私の入り込む余地はまだありそうですからね。ハッキリした答えが出たなら、その時に教えて下さい」
馬車に座りながらこっちを向いて優雅に微笑んでる先生は余裕な感じで構えてる。
うーん、わからない。いつも通りな感じなんだよね。
先生にとってそこまで重要じゃないのかな…。
とりあえず条件の良い相手にアプローチしたくらいの感覚??
貴族の結婚て家同士の結びつきみたいなものだから、恋愛結婚するほうが珍しいし、お互い顔もわからないで結婚する人も珍しくないからなぁ。
男性側の意見は良くわからないから難しいや。
「では、この話はここまでにして…ここからは仕事の話しに切り替えましょう」
「へ?…は、はぁ……」
さっきと打って代わり仕事モードに切り替わったエルナト先生。
いや~、この潔さ…切り替え早すぎだよ。
でも、この方がエルナト先生らしくて私としてもホッとして移動できた。
◇
馬車に揺られること2時間程。
ようやく着きました。
降りた先は森の中で、周りには村とか集落すらないような場所。
シダみたいな植物が周りには群生してて、かなり背の高い木々があちこちに生えてる。
その中にツタみたいな草に覆い尽くされてる石碑や、崩れかけた石段や相当前の古びた建物らしき物が何箇所か固まって置かれてた。
さらに奥に石でできた洞窟のような大きな建物もあって、それだけは形を留めてて中にも入れそうな感じだった。
その建物前には見張りの騎士が立ってて、隣には小さなテントみたいなのが張ってあった。
「これは、インテルクルース准子爵様ですね!どうぞ中へお入り下さい!遺跡の中は魔物など危険な生物は存在していないのでご安心下さい!お気を付けて!!」
「ご苦労さまです。では、失礼します」
騎士に通されて私達も遺跡の中へと入っていく。
外回りの遺跡はもう風化しちゃってボロボロだね。
足を踏み入れるけど、苔とかツタが絡みついてスゴイことになってる。
崩れた岩や石が地面にたくさん落ちてて踏み込む度にジャリジャリと音を立ててる。
「問題の遺跡はあの建物の中だそうです。さて…行ってみましょう!」
すごく楽しそうに建物を指差して笑って話す先生。
本当に少年みたいだよねー。
こういうトコは可愛く見えちゃうから困るなぁ。
「先生…足元には気を付けて下さいよ」
「えぇ、わかってます。ワクワクしますね!」
先陣きって中へと突入していく先生。
一応気配を探ったけど、確かにこの空間には生物らしいものは存在してない。
中は一定間隔に燭台が配置されてて結構見やすい。
手に松明も借りて持ってきてたけど、必要ないかもしれない。
一応それも持ちつつ、薄暗い建物の中を進んで行く。
四角い廊下みたいな道が続いて、しばらく歩いてると広い空間に出た。
「…これが石碑ですかね?」
天井が結構高くて、周りも教室くらいの広さで円形に造られてる部屋。
その壁側の真ん中に例の石碑が建ってた。
「この建物って、この空間で終わりですか?他に続き部屋みたいなのは無いんですか?」
キョロキョロと部屋の中を見るけど、扉みたいなのも見当たらない。
「……この報告書によると、この部屋しかないようですよ?この部屋にある石碑の解読を任されましたから…」
探査能力で探るけど、まだまだこの建物は全然広い。奥行きが結構ある。しかも奥に行けば行くほど、何かの気配を感じる。
「どうかしましたか?」
目を閉じて黙ってる私を見て、不思議そうに呟く。
「俺の見立てだと、まだまだ別の部屋が複数あります。恐らくその石碑に、他の部屋へと繋がるヒントみたいなものが書いてあると思いますよ?」
ミティスト系のダンジョンとかイベントなら必ずそうなる筈。
「別の隠し部屋ですか……それは素晴らしい!早速石碑を解読してみましょう!」
興奮した感じのエルナト先生が石碑に近づき、彫ってある古代文字を上から見ている。
えー、なになに。
“汝、天仰げば陽、地落ちれば陰。対極に有るものいずれは沈む”
ふ~ん、てことはこっちだね。簡単簡単。
「これはかなり古い古代文字ですね…。どこの文明からきてるものか判別が難しいですが…」
「先生、こっちに何かあるって書いてあります」
「……はい?」
やっぱり先生でも難しいんだ。
石碑に近づいて見てた先生が、唖然とした顔で私を見てた。
「いや、ですから西側に何かあるってことですよ」
「ちょっとお待ち下さい。まず、これを読んでみて頂けますか?」
エルナト先生が怖い笑顔で迫ってくる。
「“汝、天仰げば陽、地落ちれば陰。対極に有るものいずれは沈む”と書いてあります。…陰陽は月と太陽のことですから、それが沈む場所となると西になります。天仰げば陽なので、今立ってる位置から上を南として、西側はこっちということですね」
「………」
右側の壁へと移動を促してるのに、先生は動かない。
「エルナト先生?」
「アトリクス君。もう少し詳しくお聞かせ願えますか?」
「あ…はい」
またまた怖い笑顔でズイッと迫られて、とりあえず上から説明していく。
先生は頷きながら石碑の文字と、翻訳したものを用紙に記入していってる。
「ふむ…ここの文字はこう読むのですね…」
石碑と紙を見比べて納得したように呟いてる。
「みたいですね。何だか先生に教えてるなんて変な感覚です」
「…あなたは何故、このような複雑な古代文字が読めるようになったのでしょうか?私が教えていた時は初歩の古代文字ですら苦戦していたと記憶してますが…」
紙を見てた先生は顔を上げて今度は私に視線を送ってる。
うーん…それは私も知りたい。
いつの間にか読めるようになったってのが一番合ってる。どうしてかなんてわからないんだよね…。
先生がこっちを見て疑問を投げかけるけど、私にもさっぱりわからないから肩をすくめる。
「さぁ?俺にも何故だかわかりません。まぁとりあえず謎が解けたから、次に進みましょう」
「…えぇ。納得いきませんが、ご本人にもわからないようなので仕方ないですね。一先ず解けた通りに進んでみますか」
ようやく石碑の前から右側の壁の辺りに移動した。
岩肌が続いてる壁面を手で探りながら触っていく。
その一部に凹みがありそれを押してみるとやっぱり隠し扉が潜んでた。
扉が開くと、真っ暗な長四角の空間に下に続く階段のような石段が見える。
ただこの奥は、何か禍々しい気配を感じるなぁ。
「正解でしたね。どうします?このまま進みますか?」
「うむ…そうですね。まさか遺跡がダンジョンのようになってるとは思ってませんでしたから…一度戻りましょう。ここは帝国ではありませんから、この先の判断は国王陛下に委ねなくてはなりません」
隠し扉の前で顎に手を当てて考えてた先生。
確かにそうだよね。気になるところではあるけど、何もわからない遺跡ダンジョンに進むには軽装備すぎるし…。
「それが良さそうです。この奥はかなり広いし、嫌な気配もします…」
「何か感じますか?」
「えぇ…先生の仰る通り、ここはダンジョンです。このまま進むには危険過ぎます」
「……そうですか。我々の依頼である解読には成功し、謎解きまでしたのですから、事実上任務は完了です」
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