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エルナト先生との旅路 3

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 とりあえずエルナト先生と別れて寮へと戻った。
 オクタンにも状況を説明して、しばらく休学することを伝える。

「んと、そんなに…いないの?」
「あぁ。まぁ場合によっちゃ、早めに帰って来るからさ」
「うん…、…んと、気を付けてね…」

 寮の自分の椅子に座って私の方を見てるオクタンはしょんぼりしてる。

「どうした?」
「ん?んと…アート君、いないと、…寂しいね」

 二段ベッドの下で腰掛けてた私は、しょんぼりしてるオクタンにキュンと胸がときめく。

 やっぱりオクタンて可愛すぎー!
 私がいなくて寂しいだなんて…本当に小動物が寂しさに耳垂らして項垂れてるみたいでめちゃくちゃ可愛い!!

「嬉しい事言ってくれるなっ。オクタンの為にも早めに切り上げて戻ってくるさ!」
「ん…うん。あ、でも…んと、無理しないでね…」
「ハハッ、任せとけって!」

 旦那の出張帰りを待つ幼妻みたいだよ。
 よしっ、オクタンのためにも早めに終わらそう!
 頑張るぞー!!

 








 ◇










 翌朝の早朝。

 待ち合わせてたアカデミアの正門前でエルナト先生と合流する。

「おはようございます。早速参りましょう」
「はい。とりあえず帝都から出てから移動しますか」
「えぇ、そのつもりです」

 アカデミアを出て、しばらく歩くと帝都の検問所を通り外へと出る。

 誰もいないのを気配でも確認して、近くの森の茂み辺りまで移動してきた。

「では、行きますよ。しっかり捕まってて下さい!」
「はい。この移動法も久方ぶりですね」

 エルナト先生の手をしっかりとつなぎ、肩も掴んで体から離れないようにしてもらう。

 そこから足を強化して風魔法とともに一気に跳躍する。

「──っく!」

 体にかかる風圧にエルナト先生が声を漏らすけど、手を離す事はしなかった。
 空高く飛び上がると先生の風魔法も使い、かなりの飛距離で移動してる。

「暫く体験しない間に、随分長く跳べるようになりましたね!」

 風の音がびゅうびゅううるさいから、先生も声を張り上げて話し掛けてくる。

「えぇ!一人でならほぼ空を飛んでるのと変わらないですよ!」

 エルナト先生がいる分、やっぱり重さも加わるから速度も落ちるけど、以前と比べれば更に速く移動できるようになったからなぁ。
 コレやるときは先生の体が障害物にぶつからないように気をつけないといけない。
 本当はお姫様抱っこ出来れば一番楽なんだけど、さすがにそれだけはきっぱり断られちゃったし。
 

 そこから数時間。途中町で降りて休憩も挟みながら夕方頃には隣国アウリガル王国の検問所までやってきた。

 近くの森に降り立って、エルナト先生が魔法で降下速度を減速してくれる。
 この移動技ってエルナト先生とじゃないと無理なんだよね。基本風属性の魔法使いがいないと私の補助魔法だけじゃ減速が難しいし、着地するときの速度も二人分はキツい。

 ここはまたベクルックス辺境伯の領地に隣接してる国とは別の国。
 そう、エルナト先生のご実家であるインテルクルース辺境伯家と隣接してる王国なんだよね。

 一応腰のベルトにもハイポーション何本か差してきたけど、飲むほど魔力も体力も減ってないし。

「ふぅ……さすがですね。通常ならば隣国であるアウリガル王国まで、馬車だと7日程かかる所を一日で移動してしまうとは…」
「えぇ、かなりの荒業ですけど」
「あなたにしか出来ませんよ。怪鳥ラーミヤより速いかもしれません」
「いやあ…どうでしょうね」

 一日の移動でも手段が手段だけに、エルナト先生もちょっと疲れ気味。
 身なりを整えて何食わぬ顔で検問所まで歩いていく。

 アウリガル王国からの紹介状とか、エルナト先生の身分証明書とかまぁ色々見せて、慌てたみたいに門番の人達が馬車を用意してくれてた。
 そりゃそうだよね。普通は馬車に乗ってここを通過するはずなのに歩いて来てるんだからさ。どうやって来たんだって話だよね。

「只今ご用意致しますので、今しばらくお待ち下さい!!」

 しかも馬車での移動距離を見事に省いて来てるからね。ビックリだと思うよ。
 でもエルナト先生はそんな事なんておくびにも出さないで余裕の笑顔で対応してる。
 
「我々が早く着きすぎましたから、急がなくて結構ですよ」
 
 検問所の門番もエルナト先生の対応に感動してるのか、表情が輝いて見える。

「あ、あの…アルタイル帝国でのスタンピードでご活躍されたインテルクルース准子爵様ですよね?有名なサジタリア魔法アカデミアの教授で、希少な2属性持ちの魔法使い様にお目にかかれるなんて光栄です!!」

 わりと若めの門番がエルナト先生に話し掛けてる。

 あー…そっか、先生ってそういう意味で隣国でも有名人なんだねー。
 確かに2属性持ちって世界的にも希少だから有名なのは有名なんだろうけど。
 アウリガル王国は今では友好国だから特にその傾向が強いのかも。
 ベクルックス辺境伯の領地に隣接してる隣国は、停戦協定を結んでるけど味方になってる訳じゃないからな。

「それはどうも」

 軽くニコッと笑いかけるだけで若い門番は尊敬の眼差しを向けていた。

「本日はスタンピードの英雄、シリウス卿はご一緒ではないのですね」

 辺りをキョロキョロと見渡して残念そうにしてる若い門番。
 私はシリウスの名前を出されてギクッとしちゃうよ。

「えぇ。シリウス准伯爵殿はご多忙のようですからね…」

 私を見ながら楽しそうに話してるエルナト先生。
 うぅ、絶対面白がってる…。

 横目でジーッと見てたら、ようやく迎えの馬車がやってきた。


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