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アトリクスとオクタン
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今日はオクタンとお買い物に来てる。
アカデミアの貴族って基本は休日に自分の屋敷に帰るし、社交シーズンとかにもいない。
この世界って四季の変化が少ないから冬支度とかもいらないし、一年中同じような気温だと過ごしやすいよね。
大昔はちゃんとした四季があったみたいだけど、何の影響なのか今みたいな曖昧な気候に変化したらしいね。
「なぁオクタン。どこに向かってるんだ?」
今歩いてるのは貴族街。
私の行動範囲って大体が平民街だから貴族街ってほぼ行かないんだ。
特に用事もないしね。
「あ…んと、確かこっち…」
平民街に比べて皇宮に近い貴族街は、街並みも綺麗に整備されてる。
露店もないし道端で座ってる人もいない。
馬車も通るからレンガも綺麗に敷き詰められてて歩きやすいよね。
アカデミアに向かう道くらいしか通ったことなかったし、気分転換するにはちょうどいいのかも。
一応貴族街って事もあっていつものラフな格好じゃなく、それなりに見えるジャケットとかパリッとしたズボンとか貴族服っぽいのを着てる。
これがまた私に良く似合うんだよねー。いいトコの坊っちゃんみたいでさ。
オクタンも同じような服着てるのに、何だか可愛くて並んで歩いてると兄弟みたいに見えてるかも。
「あ、あった!んと、あそこ…」
「んー?」
貴族街の端にある平民街との境目くらいの場所。
大通りから少し脇に入ったお店。
「へぇー…魔道具専門店…」
古びた趣きのあるお店。木造造りでちょっとした平屋みたい。
帝都の貴族街にしてはみすぼらしい感じの珍しいお店だよね。
貴族街の建物って景観も気にしてるのか、わりと綺羅びやかなものが多いし…。
「ん?…んと、こんなトコだったかな??」
「え?違うのか?思いっ切り魔道具って書いてあるぞ」
「うん…なんか、違う…」
「何が違うんだよ?この辺だとここしか魔道具店なさそうだぞ?」
少し入ると平民街で民家ばっかり並んでて、反対側は宝石商やブティックみたいな建物しかない。
思ってた場所と違ったのかお店の前で慌てだすオクタン。
こんなとこで右往左往してるのも良くないよね。
「とりあえず入って見ようぜ?欲しい物がなかったら出ればいいんだしさ…」
「んと、そうだね…」
オクタンの背中を叩いて入店を促す。
私はお店の扉を押して中へと入っていった。
──チリーンッ
ドアベルがなって店内に入ると、中ももちろん木造造りで真ん中には不思議な道具が置かれ、壁際にも棚があって何個も見たことのない魔道具が並べてあった。
「わぁ、すごいな。俺、魔道具の店って初めて入った」
キョロキョロと店内を見渡す私。
いつもなら闇市でしか魔道具購入しないから、こういう正規の魔道具店に入った事がなかった。
「ん…なんか…んと、不気味だね…」
オクタンは怯えた様に私の隣にピタッとくっついて周りを伺ってる。
「おい、見ろよオクタン!これ、お前にピッタリじゃないか?」
真ん中に無造作に陳列されてたのは木箱に入った魔法の杖。武器屋でもないのに置いてあるなんて珍しいな。
しかもこれ、杖の上部に高純度の宝石が付いてて魔法付与効果のあるものだ。
「ん、うわあ~、持ちやすいね。ちょうど、手に合う…」
杖の長さもオクタンの身長にピッタリで、漆塗りみたいなちなツヤツヤの木の杖で宝石の埋まってる上部だけ特殊な金属で固められてる。
「お探しの物は見つかりましたかな?」
「─!」
「ヒィッ!!」
急に背後から声を掛けられた。バッと後ろを振り向くと背の低い白髪のご老人が杖ついて立ってる。
顎にも白髭を蓄えて、その髭を触りながら私達に向かって話しかける。
気配を感じなかった……この人、何者?
どっかで見たことあるような気もするけど。
「はあ、ビックリした…」
「驚かせてしまったな。それに目を付けるとは中々のものだ」
オクタンは胸を撫で下ろして言われた杖を見てる。
「あ…んと、これって、効果とかありますか?」
おずおずと杖を握ってお爺さんに聞いてる。
「ああ、あるぞ。その上の宝石に魔法を込めると、付与効果を発揮できる優れものだ」
「え?え?んと、付与効果??」
私は立ってこっちを見てるお爺さんを隈なく観察する。
気配は普通で見たところなんの変哲もなさそうなお爺さんだけど…ドコか違和感がある。
しかも魔法付与って旧プレアデス帝国でしかできなかったもの。ここにプレアデス人でもいない限り事実上不可能なのに。
「どうやってその宝石に魔法を込めるんですか?」
杖ついて立ってるお爺さんに、私が何気なく聞いてみる。
お爺さんは髭を何度も撫でながら、不思議そうに首を傾げる。
「なんだ、今時の若者は魔法付与の一つもできんのか?」
いやー…その台詞おかしいから。魔法付与ってこの世界だと旧世界での失われた技術だし。むしろできる方がおかしい。
「その宝石に手を翳して魔力を流してみろ。その時に魔力の種類を体の中で分ける。耐性効果なら魔力種類の防御率を上げ、増幅効果なら攻撃率の強い魔力を流せばいい」
「え??んと、わかんない…です…」
「お前さん、できるだろ?やってみろ」
お爺さんは私の方を向いてまた髭を触ってる。
いや、できないし言ってる事も意味がわからない。そもそも魔力に防御率とか攻撃率とかあるの?
魔法使う感覚とまた違うってこと?
「オクタン、ちょっと貸してみろ」
「ん?うん…」
隣にいたオクタンから杖を借りて、握ってる反対の手を上部についてる宝石に翳した。
いつもやってる魔力の循環を思い浮かべ、そのまま魔力を流してみる。
「バッカモーン!そんなんじゃいつまで経っても付与なんぞ出来んわ!」
いつの間に近くまできたお爺さんの杖で頭をパコッと叩かれる。
「イテッ!」
嘘でしょ!?私が不意打ち食らうなんて…!
この爺さん…できる。
頭を手で擦りながら、後ろで手を組んでるお爺さんがまた説明を始める。
「だ、大丈夫…?アート、君!」
「ん?あぁ、大した事ないさ。しっかし難しいな…」
今度は違うやり方で魔力を流していく。
「まだ違うっ!魔力を細部まで操り、魔力の種類を分けるんだ!お前さんのは混ざり過ぎとるわっ!」
また捲し立てるように言われるけど、そもそも魔力の種類って何?
同じ流れてる魔力を分けるなんて可能なの?
「そんなに言うなら見本見せてくれませんか?」
側にいる爺さんに訝しげな目を向けながら見下ろす。
てか無理だからさー…旧世界の技術だよ?出来るわけないじゃん。
「ふぅー…今時の若者は、困ったもんだ。こんな簡単な事も出来んとわな…」
首を横に振って呆れたように言われた。
「いやー…普通はできないし…」
「全く嘆かわしい限りだ」
爺さんは近くにあった同じような宝石の埋まった腕輪を手に取ると、その宝石に手を翳して魔力を込めていく。
肉眼で魔力が入っていくのがわかる。
しかも魔力の色が複雑なオーロラみたいに綺麗な色をしてる。
「ワッ!わわっ!!な、な、何?!!」
「…っ!……嘘、だろ……」
緩い風みたいな魔力の渦が周りに起きて、そのオーロラみたいな色した魔力が宝石に吸収されていく。
何これ…これこそがチート能力だよ…。こんなの初めて見た。
「ほれ、この通りだ。やってみ」
いやいやいや……いやいやいやいや……おかしいからっ!
受け取った腕輪には確かに魔法付与が施されてる。
宝石から魔力を感じるし。魔石みたいになってるよ。
オクタンも見よう見真似で手を翳して杖の宝石に魔力込めてるけど、周りから漏れてて全く入っていってない。
近くあった箱型の魔道具に魔力を込めていく。
普通に魔力を流すだけじゃ駄目なんだ…もっと魔力を一定に絞って…方向性を一貫して……。
防御型を思い浮かべて…魔法を使うみたいな…無力化を流し込むように宝石に込めて……。
さっき、お爺さんがやったみたいに緩い風が吹いて、魔力が宝石に吸い込まれていく。
「え、え、ええ!!んと…うわあ~!?」
「うむ、なかなかだな…」
無色透明の魔力が高純度の宝石に吸収されていく。
風も止み、無力化魔法の籠もった魔道具が完成した。
「お前さん筋がいいな。その調子でこっちにも付与してやれ。一度込めると魔力さえ流せば何度でも使えるぞ」
「え?…あぁ…オクタン、貸してみろ」
「あ、んと…はい…」
隣にいたオクタンの杖にも魔法付与していく。
今度は魔力の種類を分けるイメージで攻撃系の魔力を込めていく。
「うん。出来たぞ」
「え?え、嘘!?でしょ!」
今度はすんなりできた。
一度コツを掴むと結構簡単かも…。
「その感覚を忘れるな」
オクタンに杖を渡して、さっき魔力を込めた魔道具を手に取る。
本当付与出来てる…信じられない。
旧世界にしか存在しない、プレアデス帝国の人間にしかできない技術だったのに…。
習得しちゃったけど、どうすればいいの?
さっきお爺さんの魔法付与した腕輪と、自分の魔法付与した箱型の魔道具を比較する。
「歴史は繰り返す…失われた時を今取り戻すのだ」
「──え?」
お爺さんの言葉が耳に響いた後、気付くと貴族街の路地いた。
両手にはさっきの魔道具が残ってる。
オクタンも狐につままれたみたいに、手に持ってる杖を不思議そうに見てる。
「あ?ん?んと…なん…で…?」
魔道具店があった場所は全然違う建物が建ってて……。
高級感あふれる魔道具の店は、様々な人が出入りしてた。
「マジか…」
この魔道具って、たぶん伝説級のマジックアイテムだよ。まさに旧世界の失われた魔道具。
それを自分で作ってしまった…。
「あ、あ、あ、…アート君…んと、んと、今のは……」
後ろを振り返り…そしてまた魔道具を見る。
──今、思い出した。
あのお爺さん……ミティスト終盤で出てきた、魔力操作を教えてた達人だ……。
今日はオクタンとお買い物に来てる。
アカデミアの貴族って基本は休日に自分の屋敷に帰るし、社交シーズンとかにもいない。
この世界って四季の変化が少ないから冬支度とかもいらないし、一年中同じような気温だと過ごしやすいよね。
大昔はちゃんとした四季があったみたいだけど、何の影響なのか今みたいな曖昧な気候に変化したらしいね。
「なぁオクタン。どこに向かってるんだ?」
今歩いてるのは貴族街。
私の行動範囲って大体が平民街だから貴族街ってほぼ行かないんだ。
特に用事もないしね。
「あ…んと、確かこっち…」
平民街に比べて皇宮に近い貴族街は、街並みも綺麗に整備されてる。
露店もないし道端で座ってる人もいない。
馬車も通るからレンガも綺麗に敷き詰められてて歩きやすいよね。
アカデミアに向かう道くらいしか通ったことなかったし、気分転換するにはちょうどいいのかも。
一応貴族街って事もあっていつものラフな格好じゃなく、それなりに見えるジャケットとかパリッとしたズボンとか貴族服っぽいのを着てる。
これがまた私に良く似合うんだよねー。いいトコの坊っちゃんみたいでさ。
オクタンも同じような服着てるのに、何だか可愛くて並んで歩いてると兄弟みたいに見えてるかも。
「あ、あった!んと、あそこ…」
「んー?」
貴族街の端にある平民街との境目くらいの場所。
大通りから少し脇に入ったお店。
「へぇー…魔道具専門店…」
古びた趣きのあるお店。木造造りでちょっとした平屋みたい。
帝都の貴族街にしてはみすぼらしい感じの珍しいお店だよね。
貴族街の建物って景観も気にしてるのか、わりと綺羅びやかなものが多いし…。
「ん?…んと、こんなトコだったかな??」
「え?違うのか?思いっ切り魔道具って書いてあるぞ」
「うん…なんか、違う…」
「何が違うんだよ?この辺だとここしか魔道具店なさそうだぞ?」
少し入ると平民街で民家ばっかり並んでて、反対側は宝石商やブティックみたいな建物しかない。
思ってた場所と違ったのかお店の前で慌てだすオクタン。
こんなとこで右往左往してるのも良くないよね。
「とりあえず入って見ようぜ?欲しい物がなかったら出ればいいんだしさ…」
「んと、そうだね…」
オクタンの背中を叩いて入店を促す。
私はお店の扉を押して中へと入っていった。
──チリーンッ
ドアベルがなって店内に入ると、中ももちろん木造造りで真ん中には不思議な道具が置かれ、壁際にも棚があって何個も見たことのない魔道具が並べてあった。
「わぁ、すごいな。俺、魔道具の店って初めて入った」
キョロキョロと店内を見渡す私。
いつもなら闇市でしか魔道具購入しないから、こういう正規の魔道具店に入った事がなかった。
「ん…なんか…んと、不気味だね…」
オクタンは怯えた様に私の隣にピタッとくっついて周りを伺ってる。
「おい、見ろよオクタン!これ、お前にピッタリじゃないか?」
真ん中に無造作に陳列されてたのは木箱に入った魔法の杖。武器屋でもないのに置いてあるなんて珍しいな。
しかもこれ、杖の上部に高純度の宝石が付いてて魔法付与効果のあるものだ。
「ん、うわあ~、持ちやすいね。ちょうど、手に合う…」
杖の長さもオクタンの身長にピッタリで、漆塗りみたいなちなツヤツヤの木の杖で宝石の埋まってる上部だけ特殊な金属で固められてる。
「お探しの物は見つかりましたかな?」
「─!」
「ヒィッ!!」
急に背後から声を掛けられた。バッと後ろを振り向くと背の低い白髪のご老人が杖ついて立ってる。
顎にも白髭を蓄えて、その髭を触りながら私達に向かって話しかける。
気配を感じなかった……この人、何者?
どっかで見たことあるような気もするけど。
「はあ、ビックリした…」
「驚かせてしまったな。それに目を付けるとは中々のものだ」
オクタンは胸を撫で下ろして言われた杖を見てる。
「あ…んと、これって、効果とかありますか?」
おずおずと杖を握ってお爺さんに聞いてる。
「ああ、あるぞ。その上の宝石に魔法を込めると、付与効果を発揮できる優れものだ」
「え?え?んと、付与効果??」
私は立ってこっちを見てるお爺さんを隈なく観察する。
気配は普通で見たところなんの変哲もなさそうなお爺さんだけど…ドコか違和感がある。
しかも魔法付与って旧プレアデス帝国でしかできなかったもの。ここにプレアデス人でもいない限り事実上不可能なのに。
「どうやってその宝石に魔法を込めるんですか?」
杖ついて立ってるお爺さんに、私が何気なく聞いてみる。
お爺さんは髭を何度も撫でながら、不思議そうに首を傾げる。
「なんだ、今時の若者は魔法付与の一つもできんのか?」
いやー…その台詞おかしいから。魔法付与ってこの世界だと旧世界での失われた技術だし。むしろできる方がおかしい。
「その宝石に手を翳して魔力を流してみろ。その時に魔力の種類を体の中で分ける。耐性効果なら魔力種類の防御率を上げ、増幅効果なら攻撃率の強い魔力を流せばいい」
「え??んと、わかんない…です…」
「お前さん、できるだろ?やってみろ」
お爺さんは私の方を向いてまた髭を触ってる。
いや、できないし言ってる事も意味がわからない。そもそも魔力に防御率とか攻撃率とかあるの?
魔法使う感覚とまた違うってこと?
「オクタン、ちょっと貸してみろ」
「ん?うん…」
隣にいたオクタンから杖を借りて、握ってる反対の手を上部についてる宝石に翳した。
いつもやってる魔力の循環を思い浮かべ、そのまま魔力を流してみる。
「バッカモーン!そんなんじゃいつまで経っても付与なんぞ出来んわ!」
いつの間に近くまできたお爺さんの杖で頭をパコッと叩かれる。
「イテッ!」
嘘でしょ!?私が不意打ち食らうなんて…!
この爺さん…できる。
頭を手で擦りながら、後ろで手を組んでるお爺さんがまた説明を始める。
「だ、大丈夫…?アート、君!」
「ん?あぁ、大した事ないさ。しっかし難しいな…」
今度は違うやり方で魔力を流していく。
「まだ違うっ!魔力を細部まで操り、魔力の種類を分けるんだ!お前さんのは混ざり過ぎとるわっ!」
また捲し立てるように言われるけど、そもそも魔力の種類って何?
同じ流れてる魔力を分けるなんて可能なの?
「そんなに言うなら見本見せてくれませんか?」
側にいる爺さんに訝しげな目を向けながら見下ろす。
てか無理だからさー…旧世界の技術だよ?出来るわけないじゃん。
「ふぅー…今時の若者は、困ったもんだ。こんな簡単な事も出来んとわな…」
首を横に振って呆れたように言われた。
「いやー…普通はできないし…」
「全く嘆かわしい限りだ」
爺さんは近くにあった同じような宝石の埋まった腕輪を手に取ると、その宝石に手を翳して魔力を込めていく。
肉眼で魔力が入っていくのがわかる。
しかも魔力の色が複雑なオーロラみたいに綺麗な色をしてる。
「ワッ!わわっ!!な、な、何?!!」
「…っ!……嘘、だろ……」
緩い風みたいな魔力の渦が周りに起きて、そのオーロラみたいな色した魔力が宝石に吸収されていく。
何これ…これこそがチート能力だよ…。こんなの初めて見た。
「ほれ、この通りだ。やってみ」
いやいやいや……いやいやいやいや……おかしいからっ!
受け取った腕輪には確かに魔法付与が施されてる。
宝石から魔力を感じるし。魔石みたいになってるよ。
オクタンも見よう見真似で手を翳して杖の宝石に魔力込めてるけど、周りから漏れてて全く入っていってない。
近くあった箱型の魔道具に魔力を込めていく。
普通に魔力を流すだけじゃ駄目なんだ…もっと魔力を一定に絞って…方向性を一貫して……。
防御型を思い浮かべて…魔法を使うみたいな…無力化を流し込むように宝石に込めて……。
さっき、お爺さんがやったみたいに緩い風が吹いて、魔力が宝石に吸い込まれていく。
「え、え、ええ!!んと…うわあ~!?」
「うむ、なかなかだな…」
無色透明の魔力が高純度の宝石に吸収されていく。
風も止み、無力化魔法の籠もった魔道具が完成した。
「お前さん筋がいいな。その調子でこっちにも付与してやれ。一度込めると魔力さえ流せば何度でも使えるぞ」
「え?…あぁ…オクタン、貸してみろ」
「あ、んと…はい…」
隣にいたオクタンの杖にも魔法付与していく。
今度は魔力の種類を分けるイメージで攻撃系の魔力を込めていく。
「うん。出来たぞ」
「え?え、嘘!?でしょ!」
今度はすんなりできた。
一度コツを掴むと結構簡単かも…。
「その感覚を忘れるな」
オクタンに杖を渡して、さっき魔力を込めた魔道具を手に取る。
本当付与出来てる…信じられない。
旧世界にしか存在しない、プレアデス帝国の人間にしかできない技術だったのに…。
習得しちゃったけど、どうすればいいの?
さっきお爺さんの魔法付与した腕輪と、自分の魔法付与した箱型の魔道具を比較する。
「歴史は繰り返す…失われた時を今取り戻すのだ」
「──え?」
お爺さんの言葉が耳に響いた後、気付くと貴族街の路地いた。
両手にはさっきの魔道具が残ってる。
オクタンも狐につままれたみたいに、手に持ってる杖を不思議そうに見てる。
「あ?ん?んと…なん…で…?」
魔道具店があった場所は全然違う建物が建ってて……。
高級感あふれる魔道具の店は、様々な人が出入りしてた。
「マジか…」
この魔道具って、たぶん伝説級のマジックアイテムだよ。まさに旧世界の失われた魔道具。
それを自分で作ってしまった…。
「あ、あ、あ、…アート君…んと、んと、今のは……」
後ろを振り返り…そしてまた魔道具を見る。
──今、思い出した。
あのお爺さん……ミティスト終盤で出てきた、魔力操作を教えてた達人だ……。
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