上 下
192 / 392

アルファルドがイケメンだった件 3

しおりを挟む
'

 ハァ……って、盛大にため息を吐いて、頭をガリガリと掻いた。
 
「…気に入らなかったか?」
「へ……?」
「…お前の様子も……、周りの目もなんだかおかしいからな。…何年か振りにまともに顔を出して……正直、色々と落ち着かん」

 片手で顔を抑えて、そっぽを向いちゃったアルファルド。 
 
 確かに……そうだよね。
 アルファルドって多分、ご両親が亡くなって以来、ずっとあの姿から変わってないと思う。
 私も幼い頃のアルファルドはそこまで知らないから断言できないけど、あの鬱陶しい髪をここまでバッサリ切ったのは相当勇気のいることだったと思う。

 それを私の為にやってくれたなんて……
 そう考えたら、胸の奥がジーンと熱くなった。

「いや……悪い。お前が……美形過ぎて、どんな反応していいか戸惑っただけだ……」
「…びけい?」
「そうだよ! アルファルドがこんなにカッコいいって知ってたら、あんなこと言わなかったのにっ!」

 私の言葉にやっぱりまだ首を傾げてるアルファルド。
 自分の外見とか気にしないから、何言われてるのかわからないんだろうな。

「…よくわからんが、嫌だったのか?」
「嫌なわけないだろ!? お前の顔なんてもう国宝級いや、もう秘宝級だぞ?! そんなの周りの女がほっとくわけ……」
 
 ――ない。
 そうだよ。周りの女子たちがこんなイケメンほっとかないよ。
 しかもこれから公爵家はポーション収益で莫大な財産が舞い込んでくる。
 皇室との確執はまだ払拭してないけど、貴族にも皇室派もいれば反皇室派もいる。
 今まで全然相手にされなかったアルファルドだけど、この先レグルス様に次ぐ有力株になることは間違いない。
 しかもアルファルドは皇位継承権第三位。
 取り入りたい貴族で溢れ返るよね。
 これはある意味、アルファルドにとってチャンスだから。
 今は後ろ盾も権力も財力も全くない公爵家だけど、これから入る莫大な財産があれば話は変わってくる。

 反皇室派貴族がアルファルドとの繋がりを求めて、自分の家の娘と婚姻関係を結ばせようと躍起になるはず。

 そしたらアルファルドは――――

「…アトリクス? …どうした?」

 下向いて考えに浸ってたけど、声を掛けられてアルファルドの方を見た。

 そうじゃなくても、これだけの美貌があれば……今まで相手にしなかった貴族もご令嬢も、きっとアルファルドに惚れちゃうよね。
 この前の星夜祭で多少は女慣れしたと思うから、良いタイミングだったのかな。
 アルファルドだって公爵家存続の為に、どこかの家門と繋がりをもって跡継ぎだって残さないと……

「…おい、アトリクスっ」
「えっ?」

 立ってアルファルド見たままずっと考えてたら、いつの間にか離れてたアルファルドが、私の側まできてた。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...