187 / 392
ドラコニス公爵家救済計画 20
しおりを挟む
'
ソファーから立ち上がって、アルファルドの部屋に置いてあった自分の荷物から魔法誓約書の写しを取り出した。
「ほら。お前も知ってた方がいいから、ちゃんと読んでおいてくれ」
またアルファルドの隣に座って、私が渡した誓約書の写しを黙って読んでる。
「――…ちょっと待て、アトリクス! 一体どういうつもりだ!?」
しばらく読んでたアルファルドが急に声を荒げて、ガシッと肩を掴まれて、隣りに座ってる私を問い詰めてる。
「なんのことだ?」
「ポーションの収益だ! 何故公爵家が受取人になる?! あれはお前が作ったものだっ!?」
「え? 何言ってるんだ?? あれはドラコニス公爵家の秘匿だろ? 俺はただ真似して作っただけだぞ。お前だってアヴィオール学長に散々言ってただろ? 全ての権限は公爵家にあるって……だから全て正式な公爵家の収益になるんだ」
私がポーション販売するって時点で気付いてるのかと思ってた。あえて聞かないのかと思って、私もいちいち言わなかったし。
「…あれは、学長を説得するために言っただけであって、お前の努力を無視して言った訳じゃない……」
「ありがとな、アルファルド。でも、俺は全く気にしてないぞ? ポーション製造を実現できたのもアルファルドに借りた本のおかげだし、俺としてはなんの問題もない」
「問題は大いにある! この誓約だと、お前にはなんの利益もない!!」
んー、確かにそうなんだけど……
全ての収益がアルファルドの物になるって魔法誓約してあるから、私にはビタ一文入ってこない。
私はもう使い切れないくらいお金あるし……、間接的にだけど私にもポーションの収益の一部が入るから本当に問題ないんだよ。説明できないのが歯痒いんだけどさ。
「前にも言ったけど俺、お金に興味がないんだ。それに俺の目的はポーションの常備化だから、収益とかはいらないし。だから公爵家が復興するくらい資金が貯まったら、もっとポーションの相場価格を落として、平民でも買えるくらい普及させてほしい……」
アルファルドに向かって微笑んで、アルファルドは切羽詰まったみたいな声を上げて私を呼んでる。
「……アトリクスっ……」
肩を掴んでたアルファルドはそのまま私を抱きしめて、苦しいくらい力を込めてくる。
「アルファルド……?」
「…俺は、何を返せばいい?」
「は?」
「…俺がお前に返せるものが、何もない。お前は……何をすれば納得するんだ……?」
苦しいくらい抱きしめてた腕の力を緩めて、私の肩にアルファルドの顔を乗せてる。
「なに寝ぼけたこと言ってんだよ。俺はもうたくさんもらってるぞ?」
「…なんの話だ」
「お前と一緒にいる毎日がすごく楽しくて幸せで……、それだけで俺は十分満足なんだ。お前も知ってるだろ?」
「……そんなことで満足なのか?」
「お前、ふざけんなっ! 俺がどれだけ苦労してお前の親友の座を手に入れたと思ってんだよ!! それに比べたらポーション作りなんて苦労でもなんでもないわっ」
私が怒って話してたら、アルファルドはまた力を入れて抱き寄せてきた。
「アルファルド……お前に受け取ってほしい。今まで辛い思いをしてきた対価だと思ってくれていい。お前は十分過ぎるくらい苦しんできただろ……?」
フッと笑って私もアルファルドの背中に手を回した。
「…これまでの全ての出来事はお前のせいじゃない。……お前は被害者で……何も悪くないんだ」
アルファルドの匂いと、抱きしめられてる腕の力強さと、耳元で肩越しに聞こえる息遣い……全部独り占めできてる感覚に密かな優越感を感じる。
「だからさ、何も考えずに受け取れよ。お前にはその権利がある。それに……幸せにするって約束しただろ?」
「――っ」
アルファルドが震えながら、私にぎゅうっと抱きついてる。
痛いくらい抱きしめたまま、私の腕をギュウっと手で掴まれて、その手も震えてて私の心が満足感で満たされた。
ときたま嗚咽のようなすすり泣く声も聞こえて……私は何も言わずに、ただひたすら背中を擦りながらアルファルドを慰めてた。
ソファーから立ち上がって、アルファルドの部屋に置いてあった自分の荷物から魔法誓約書の写しを取り出した。
「ほら。お前も知ってた方がいいから、ちゃんと読んでおいてくれ」
またアルファルドの隣に座って、私が渡した誓約書の写しを黙って読んでる。
「――…ちょっと待て、アトリクス! 一体どういうつもりだ!?」
しばらく読んでたアルファルドが急に声を荒げて、ガシッと肩を掴まれて、隣りに座ってる私を問い詰めてる。
「なんのことだ?」
「ポーションの収益だ! 何故公爵家が受取人になる?! あれはお前が作ったものだっ!?」
「え? 何言ってるんだ?? あれはドラコニス公爵家の秘匿だろ? 俺はただ真似して作っただけだぞ。お前だってアヴィオール学長に散々言ってただろ? 全ての権限は公爵家にあるって……だから全て正式な公爵家の収益になるんだ」
私がポーション販売するって時点で気付いてるのかと思ってた。あえて聞かないのかと思って、私もいちいち言わなかったし。
「…あれは、学長を説得するために言っただけであって、お前の努力を無視して言った訳じゃない……」
「ありがとな、アルファルド。でも、俺は全く気にしてないぞ? ポーション製造を実現できたのもアルファルドに借りた本のおかげだし、俺としてはなんの問題もない」
「問題は大いにある! この誓約だと、お前にはなんの利益もない!!」
んー、確かにそうなんだけど……
全ての収益がアルファルドの物になるって魔法誓約してあるから、私にはビタ一文入ってこない。
私はもう使い切れないくらいお金あるし……、間接的にだけど私にもポーションの収益の一部が入るから本当に問題ないんだよ。説明できないのが歯痒いんだけどさ。
「前にも言ったけど俺、お金に興味がないんだ。それに俺の目的はポーションの常備化だから、収益とかはいらないし。だから公爵家が復興するくらい資金が貯まったら、もっとポーションの相場価格を落として、平民でも買えるくらい普及させてほしい……」
アルファルドに向かって微笑んで、アルファルドは切羽詰まったみたいな声を上げて私を呼んでる。
「……アトリクスっ……」
肩を掴んでたアルファルドはそのまま私を抱きしめて、苦しいくらい力を込めてくる。
「アルファルド……?」
「…俺は、何を返せばいい?」
「は?」
「…俺がお前に返せるものが、何もない。お前は……何をすれば納得するんだ……?」
苦しいくらい抱きしめてた腕の力を緩めて、私の肩にアルファルドの顔を乗せてる。
「なに寝ぼけたこと言ってんだよ。俺はもうたくさんもらってるぞ?」
「…なんの話だ」
「お前と一緒にいる毎日がすごく楽しくて幸せで……、それだけで俺は十分満足なんだ。お前も知ってるだろ?」
「……そんなことで満足なのか?」
「お前、ふざけんなっ! 俺がどれだけ苦労してお前の親友の座を手に入れたと思ってんだよ!! それに比べたらポーション作りなんて苦労でもなんでもないわっ」
私が怒って話してたら、アルファルドはまた力を入れて抱き寄せてきた。
「アルファルド……お前に受け取ってほしい。今まで辛い思いをしてきた対価だと思ってくれていい。お前は十分過ぎるくらい苦しんできただろ……?」
フッと笑って私もアルファルドの背中に手を回した。
「…これまでの全ての出来事はお前のせいじゃない。……お前は被害者で……何も悪くないんだ」
アルファルドの匂いと、抱きしめられてる腕の力強さと、耳元で肩越しに聞こえる息遣い……全部独り占めできてる感覚に密かな優越感を感じる。
「だからさ、何も考えずに受け取れよ。お前にはその権利がある。それに……幸せにするって約束しただろ?」
「――っ」
アルファルドが震えながら、私にぎゅうっと抱きついてる。
痛いくらい抱きしめたまま、私の腕をギュウっと手で掴まれて、その手も震えてて私の心が満足感で満たされた。
ときたま嗚咽のようなすすり泣く声も聞こえて……私は何も言わずに、ただひたすら背中を擦りながらアルファルドを慰めてた。
16
お気に入りに追加
323
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
悪役令嬢を拾ったら、可愛すぎたので妹として溺愛します!
平山和人
恋愛
転生者のクロエは諸国を巡りながら冒険者として自由気ままな一人旅を楽しんでいた。 そんなある日、クエストの途中で、トラブルに巻き込まれた一行を発見。助けに入ったクロエが目にしたのは――驚くほど美しい少女だった。
「わたくし、婚約破棄された上に、身に覚えのない罪で王都を追放されたのです」
その言葉に驚くクロエ。しかし、さらに驚いたのは、その少女が前世の記憶に見覚えのある存在だったこと。しかも、話してみるととても良い子で……?
「そういえば、私……前世でこんな妹が欲しかったって思ってたっけ」
美少女との出会いが、クロエの旅と人生を大きく変えることに!?
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる