上 下
185 / 392

ドラコニス公爵家救済計画 18

しおりを挟む
'


 やった~!! これでようやくポーションを販売できる!!
 本当に長かったー……
 ふぅ~……って息を吐いて、天を仰いだ。

「…アトリクス?」

 魔法誓約が完了して達成感に満ちてた私を、アルファルドが不思議そうに見てた。

「ハハッ、なんでもない。……ではケイドさん、まずは帝国中の支店に各店舗10本ずつポーションを置いてもらいます。先行は貴族側の店舗のみ……おそらくそれだけでは足りないと思いますが、様子見ということで魔法結界を張ったケースでの販売を行なってください」
「各店舗10本……帝国全土ですと、約10店舗で、100本のみの限定販売ということになりますね?」
「えぇ。ちなみにポーション一本50万G。契約書通りこちらの取り分は一本当たり30万G。ですので、この場で即金3000万Gのご用意をお願いいたします」
「…さ、3000万G……」

 アルファルドが金額聞いて驚愕の声を上げてる。これだけで公爵家の借金がほぼ帳消しになるからね。
 
「畏まりました。只今ご用意いたしますので、暫くお待ちください」

 ケイドは立ち上がると部屋から出て行った。
 パタンと扉が閉まったのを確認して、アルファルドが隣で座ってた私に向き合った。

「…アトリクス。こんな大金……一体どうするつもりだ……」
「ん? そんなの決まってるだろ?」

 隣で座ってたアルファルドは、いまだに信じられない様子。椅子から乗り出して私に問い詰めてる。

 それと同時に、トントンと扉を叩く音が聞こえた。

「あ……お話し中大変申し訳ございません。アトリクス様……少しお聞きしたいことがございますので、宜しいでしょうか?」
 
 話してる途中で、扉から顔を出したケイドに呼ばれた。

「あ……はい。行きます! アルファルド、ちょっと待っててくれ」
「………わかった」

 不満そうなアルファルドにニコッと笑って席を立った。
 扉の方まで行って、ケイドと一緒に廊下へ出た。

「……急にお呼びたてして申し訳ございません。ひとまずこちらへお入りください」

「えぇ、わかりました」

 脇にある部屋へと通された。
 ここは特別室とはまた別の部屋。中は棚とかはあるものの、物置みたいな造りになっている。

「アトリクス様……私の思い違いでなければ、貴方は……ミラお嬢様でお間違えないですか? 容姿もさることながら書面の筆跡もそっくりです。そして貴方の決断力と経営に関する知識は、まさにミラお嬢様そのものです」

 真剣な眼差しでケイドに聞かれる。
 ま、あそこまで言っちゃえばバレバレだよね。わざとそう仕向けたのもあるし。

「さぁ? 誰のことだか……俺にはさっぱりわかりませんね。それに俺はれっきとした男ですから」

「……そう……ですか……」

 あからさまに落胆してる様子のケイド。
 完全にバラすわけにもいかないんだよ。
 ごめんね、ケイド。

「ただ言えるのは……貴方の大恩人がしたように、俺はアイツを……ドラコニス公爵を救ってやりたいってことだけです」

 私の言葉にケイドは目を開いて凝視してる。

「――! なるほど……。わかりました。やはりそうなのですね」
「ハハッ、一体なんのことでしょう?」
「いえ、こちらの独り言です。そういうことでしたら、私どもも全面的に協力させていただきます」
「それは助かります。是非よろしくお願いします」
「はい。畏まりました!」
 
 ニッコリ笑った私に、ケイドは深々お辞儀をしてる。

 ありがとう、ケイド。
 まだ全部話すことはできないから、今はこの程度で許してね。
 またミラに戻ったら、その時はちゃんと話すから。


 再び部屋に戻ってきた私とケイドは、またお互い向かい合わせの席に付いた。

「では、こちらが3000万Gです。どうぞ手に取ってお確かめください」

 ケイドが大袋2つに入った現金をテーブルの上に並べてる。
 隣で座ってたアルファルドは、ゴクリと唾を飲み込んでその大金をジッと見てた。
 
「いえ、確認は結構です。こちらも信頼していますから」

 ニッコリ笑って袋を受け取った。持ってきたケースをテーブルの上に開けて、木箱の中身を確認してもらう。
 布に包んで緩衝材変わりにして持ってきたから割れてはないと思う。

「上下50本ずつで、計100本……確かに受け取りました」
「俺の予想ですと、即日完売すると思います。追加をお望みの際は、帝都のドラコニス公爵邸へと足を運んでください。その際にも現金と引き換えでポーションをお渡しいたします」
「畏まりました」
「ただし、一日に引き換えられる数は各店舗10本のみです。それ以上はお受けできません」
「……理由をお聞かせ願えますか?」
「それは闇市への横流しを止める為です。ですので、ポーション購入される顧客には必ず理由を聞き、購入する際のリスクを説明してから販売してください。それも一人に付き一本限りです。魔法誓約書にも書きましたが、ここは徹底して守ってください!」

 これを破ると購入者側に魔法誓約が発生して、罰が与えられちゃうからね。   
 だからこそ店側も、それについての説明もきっちりとしなきゃいけない。
  
 キッとケイドを射竦めるように視線を飛ばした。
 ケイドもビクッとしたあとに、真剣な顔で私に向き直った。

「了承いたしました。肝に銘じます」
 
 また深々と頭を下げてるケイド。

 アルファルドはいまだにテーブルに置いてある大金入った袋を呆然と見てた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!

高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

ヤンチャな御曹司の恋愛事情

星野しずく
恋愛
桑原商事の次期社長である桑原俊介は元教育係で現在は秘書である佐竹優子と他人には言えない関係を続けていた。そんな未来のない関係を断ち切ろうとする優子だが、俊介は優子のことをどうしても諦められない。そんな折、優子のことを忘れられない元カレ伊波が海外から帰国する。禁断の恋の行方は果たして・・・。俊介は「好きな気持ちが止まらない」で岩崎和馬の同僚として登場。スピンオフのはずが、俊介のお話の方が長くなってしまいそうです。最後までお付き合いいただければ幸いです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

【完結】ヤンデレ設定の義弟を手塩にかけたら、シスコン大魔法士に育ちました!?

三月よる
恋愛
14歳の誕生日、ピフラは自分が乙女ゲーム「LOVE/HEART(ラブハート)」通称「ラブハ」の悪役である事に気がついた。シナリオ通りなら、ピフラは義弟ガルムの心を病ませ、ヤンデレ化した彼に殺されてしまう運命。生き残りのため、ピフラはガルムのヤンデレ化を防止すべく、彼を手塩にかけて育てる事を決意する。その後、メイドに命を狙われる事件がありながらも、良好な関係を築いてきた2人。 そして10年後。シスコンに育ったガルムに、ピフラは婚活を邪魔されていた。姉離れのためにガルムを結婚させようと、ピフラは相手のヒロインを探すことに。そんなある日、ピフラは謎の美丈夫ウォラクに出会った。彼はガルムと同じ赤い瞳をしていた。そこで「赤目」と「悪魔と黒魔法士」の秘密の相関関係を聞かされる。その秘密が過去のメイド事件と重なり、ピフラはガルムに疑心を抱き始めた。一方、ピフラを監視していたガルムは自分以外の赤目と接触したピフラを監禁して──?

長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ

藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。 そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした! どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!? えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…? 死にたくない!けど乙女ゲームは見たい! どうしよう! ◯閑話はちょいちょい挟みます ◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください! ◯11/20 名前の表記を少し変更 ◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更

処理中です...