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冒険者編 10

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「…アトリクス……?」

「お前は危機感がなさすぎだ! 俺が何もしないって見くびってるだろ?!」

 アルファルドの腰の上に跨って乗ってる状態で、両手で上からシャツのボタンを外していく。

 少し脅せばすぐ止めに入ると思ってたのに、意外なくらいアルファルドは無抵抗で私の行動をジッと見てる。

 ちょっと……もう本当に脱がせちゃうよ!? なんで止めないのぉ!?

 自分で始めたことなのに、どうしていいのかわからなくなってる。

 なんで無言で見てるだけなの?! お願いだから止めてよ! じゃないと最後までヤッちゃうよ?!

 それでも今更私の手は止まらなくて、一つ一つゆっくり外してったのに、ついに全部のボタンが外れてアルファルドの前が露わになってる。

 ゴクリと生唾飲み込んで、無抵抗のアルファルドのシャツをバッと開いた。
 やっぱりアルファルドの身体って逞しくて……すごく興奮する。細かな傷もたくさんあるけど、逆にそれが男らしさを感じさせてさらに興奮を助長させてるよ。

 無駄な肉がなくて……、綺麗に腹筋とか大胸筋とか他の筋肉も浮き出ててもう触りたくてうずうずしてきちゃう。

 アルファルドに乗ったまま、欲望の赴くままそっと手を伸ばして、開いて露出した肌に手を伸ばした。
 両手を脇腹に置いて、スーッと上に向けて直接肌を撫でると、アルファルドがピクッと反応してる。

「…っ」
 
 その反応と肌の感触がたまらなくて、確かめるように何度も手を滑らせて上下に動かしてる。

 わぁ……、アルファルドの生肌だ。
 温かくてスベスベで……でも身体が引き締まってて、すごく硬い。
 
 脇腹を撫でてた手が胸元に移動して、心臓はめちゃくちゃドキドキしてて……でも触ってる手は止まらない。

「…アトリクス……」
 
 アルファルドの口から、色を含んだ艶めいた声で名前を呼ばれる。
 私の手が際どい場所を触る度にアルファルドは小さく反応してて、それがまた私を楽しませてくれて歯止めが効かなくなってる。

 あぁ……、キスしたいな……
 首筋にも吸い付いて、いっぱい痕とかつけたい。もっと体中撫で回して、体中にキスして舐めて、服も全部取っ払って裸にひん剥いて、アルファルドの全部を味わいたい……

 もう、私の頭の中ではアルファルドが裸になってて、言葉に出せないような卑猥な妄想しか浮かんでこないよ!
 うわぁーー!!
 駄目だよ!! 駄目なの!!! 私はBLボーイズラブしたいわけじゃないのっ!!
 寝そべってるアルファルドはこっちを見てるだけで、やっぱり抵抗する素振りも見せないんだもん!

「…アルファルドっ……! なんで、止めないんだよ!」

 まだアルファルドに乗ったままで、手も変わらず体を触ってるんだけど。
 これ以上何も言われないとズボンにも手が出ちゃうし、女に戻ってでも強制的に襲いそうだよ。

「…止める理由がない」
「なっ! ……ど、どうゆう意味だよ、それ!」

 アルファルドはベッドから上半身を起こして、その状態のまま顔を近づけてきてる。
 まだアルファルドに跨がったままの状態だから、距離がめちゃくちゃ近い。
 
 うわうわっ! な、何っ!?

 思わず目をギュッと瞑ると、アルファルドの顔が私の首元に埋められてて、くすぐったさに身体がビクッと跳ねた。
 しかも両手が私の腰に回ってて、もう……軽く抱きしめられてる。

「…そのままの意味だ。…お前に襲われるのは、悪くない」
「っ!!」
 
 も……、待って! 待ってぇ~!! ちょっ、ちょっとそれ! どういう意味ぃー!!??
 ねぇそれって友情なの?!絶対違うよねっ!!?

 アルファルドの体温と匂いと息づかいを間近に感じて、もう興奮マックス状態。
 情けないことにまたツゥーっと鼻血が出てきて、慌てて鼻を押さえた。

「あ、アルファルドたんまッ! ちょっと退いてくれ、鼻血が!」

 急いでアルファルドから離れてベッドから降りると、荷物から濡れたハンカチを出して慌てて鼻に当てた。
 
 ふぅー……、なんとか間に合った…。良かった、借りた服も汚れてない。

 借りたシャツの胸元を手で伸ばして汚れてないか確認してる。

「…はっ、興奮しすぎだ」

 床で立ったままベッドに目を向けてると、アルファルドが座った状態のまま頬杖ついて笑ってる。
 でも、前が肌蹴てて、それだけでも色っぽさを感じちゃうよ。 

「もぅっ! お前絶対俺をからかって遊んでるだろ!」
「……俺は冗談は言わない」

 う、うぅ……、鼻血が止まらない。
 もう、もうなんなの……? 
 どうすればいいのか教えてほしい。そんな紛らわしい言い方してたら勘違いしちゃうよ……

 顔が熱い。
 きっと見ればわかるくらい赤くなってるんだろうな。
 もうダメだ、誤魔化しきれない。
 アルファルドが好きで好きでたまらないんだよ。
 本気でさ――
 どうして自分の思った通りに進まないんだろう……。こんな予定じゃなかったのに。
 

「…もう寝るぞ。早く来い」 
「……」

 立って鼻を押さえたまま踏み出せないで、その場で立ち尽くしてる。

 ハァ……、完璧に私の選択ミスだな。やっぱり野宿するべきだった……

 ハンカチを離してもう鼻血が出てないことを確認した。
 
「…アトリクス……」

 低く響く声が私の名を呼んで、何もない部屋に反響してる。
 ベッドの上で、再び来いと催促されてる。

 これは、忍耐力を試すいいチャンスだね。

 汚れたハンカチを荷物に突っ込んで、呼ばれるまま一歩ずつゆっくりとベッドへと足を向けてる。
 だいぶ迷ったけど、ベッドに腰掛けてアルファルドと向き合った。

「…そんな顔、するな」

「っ……、どんな……顔だよ」

 手が伸びてきて頬に添えらて、今度は私の身体がピクッと跳ねてる。

「…物欲しそうな顔してる」

 真面目に言われた言葉にかぁーと羞恥が走って、見る見る顔が赤くなるのがわかるよ。

「なっ!? ば、バカヤローっ! 言葉は選んで言えよっ!!」
「…思ったまま、言ったんだが」
「お前は変なとこで素直すぎなんだよっ!」

 噛みつくように抗議してると、アルファルドはまた面白そうに笑ってるし。

 うぅ……、やっぱり胸の鼓動が止まらない。
 好きな人と一緒にいて、一緒に寝るのに何もできないなんて生殺しだよ!
 こんな時女だったらって、都合の良いこと考えちゃう。

「もういいっ。俺……帰る!」
「…どうした? 急に……」

 このままじゃ絶対寝れないし、アルファルドのこと本気でどうにかしちゃいそうだから。

「アルファルドに迷惑だし、寝不足で仕事してたら危ないだろ? 俺がいたらうるさくて寝れないだろうしろ…」

 ベッドから下りようとアルファルドに背を向けて、腰掛けたまま床に足をつけた。
 立ち上がろうとしたら後ろから抱きしめられて、持ち上げられるみたいにベッドにまた戻された。

「――!」

「…帰さない」

「なっ……!」

 アルファルドの腕に抱きしめられたまま、二人で横向きでベッドに寝てる。
 腕枕してもらってるみたいで、近すぎてまた心臓がうるさいくらいバクバクいってるよ。

「あ……、うっ……」

「…下らないこと言ってないで、もう寝るぞ」

 頭の天辺にアルファルドの顎が乗ってるのか、心地良い重みと暖かさを感じてる。
 私が逃げ出さないように、腕の中に閉じ込められてるみたいで……、ドキドキで頭がおかしくなっちゃうよ。

 ハァ……、なけなしの理性が崩壊しそう……

 前世では何人かと付き合ってきて、もっとスゴイことだっていっぱいしてきたけど……
 ここまでもどかしく求めて、焦燥を募らせることなんてなかったな。

 頭のすぐ上で聞こえる声を、腕に込められる力を、息遣いや同じく香る匂いを……狂おしいくらい全部、自分のモノにしたくなってきちゃう。

 これは予想以上に計画を早めないとダメだな……

 もう余計なことは考えず、ただ温もりを感じながら私は諦めたように目を閉じた。
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