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ドラコニス公爵家救済計画 14

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 食事も終わってお風呂も入って恒例の就寝タイム。先にお風呂をいただいた私は、アルファルドが上がって来るまで部屋で待ってた。
 もう色々諦めて、許可をもらって初めからアルファルドのベッドで横になってる。
 初めて泊まった時に貸してもらった公爵家に伝わる古い文献をまた貸してもらって、改めて頭に情報として入れていく。
 
 うーん、万能薬を一回だけ作ってみようかな。
 材料が希少でかなり手に入りにくいけど、私なら集められそうだし……

 ベッドの脇に本を置いて、ゴロゴロしながら考えてた。

 あ、今ならベッドに潜り込んでアルファルドの匂いを堪能できるじゃん!! 本人がいるトコではさすがに出来ないから、今がチャーンスッ!!

 有言実行で、早速ベッドに潜り込んでいつも使ってるアルファルドの布団を被って思いっ切り匂いを吸い込んでる!

 ふぁ~……、アルファルドの匂いだ……幸せすぎ……!

 アルファルドに包まれてるみたいで、思わず溜息が漏れちゃう。

 傍から見たらただの変態だよね……でもさ、毎日アルファルドが寝起きしてるベッドでこんなことできるのなんて今しかないからさ。


「……アトリクス? 何をしてる……」

「――!!」

 ギクッとして、布団の中で丸まったまま止まった。

 し、しまったー!! 匂い嗅ぐのに夢中になってて、気配探るの忘れてた……!

 布団から顔だけ出すと、ベッドの前でガウン着て仁王立ちしてるアルファルドが見える。

「あ……。アルファルド……早いな……」
「…あぁ。…お前は、布団の中で何してるんだ?」
「え? えー……っと」

 まさかアルファルドの匂いを堪能してました。とは言えないよね。

「いや、ちょっと考え事してて。……さ、寒かったから、布団に包まってたんだ……」

 もう春の終わりだけど、夜は意外と冷えるから苦しい言い訳も少しは説得力あるかな……

 アルファルドは燭台を消してベッドに座って、布団から顔だけ出してる私の隣まで移動してきてる。

「…ほら、こっちに来い」
「え……?」
「…寒いんだろ? 一緒に入った方が暖まる」
「えっ!?」

 うぅ……、アルファルドの優しさが胸に痛いよ。
 布団の中で匂いを堪能してた自分が恥ずかしいな……
 
 アルファルドはこっち向いてて、別段変わりない。そうだよね……親友だもんね。
 邪な事考えてるのは自分だけで、アルファルドは純粋に友達として言ってくれてるんだもんね。

 布団を掛けて二人で並んでベッドで横になってる。
 アルファルドは身体を横向けて、正面向いて寝てる私の方にくっつけてくれてる。
 確かに温かいんだけど、それだけで嬉しいのに、なんだかもうすごく申し訳ない気持ちでいっぱいになっちゃう。

「ありがとな……アルファルド。もう平気だ」
「…気にしないで、そのまま寝ればいい」
「え? あ……、いや…………」
 
 アルファルドの優しさが、さらに私を苦しめる。

 私はこんなに大好きで、近くで一緒にいて凄くドキドキして……もっと貴方が欲しいって欲望が、口から出ちゃいそうなのに――

 お互いの気持ちに落差があり過ぎてしんどいな。

 目を閉じてため息をついた。
 側にいてドキドキする気持ちと、こんなの駄目だっていうズキズキと痛む心と……せめぎ合う心の変化に苦しめられてる。

「アルファルド……」
「…なんだ」
「もし、さ……もし、俺が女なら……お前は何か変わったか?」
「…変わる?」
「俺に対する……気持ちとか……」
「………」

 ドキドキしながら答えを待つけど、怖くて仕方ない。なんでこんな質問したのか自分にもわからないよ。
 でも、ずっと思ってたから、直接アルファルドの気持ちを聞いて見たかった。
 
 アルファルドはしばらく無言で、なんだか真剣に考えてくれてるみたい。

「…お前が……女なら……」
「うん」
「…いや……女でも、変わらないだろうな」
「え……?」
「…男でも女でも……俺の気持ちは同じだ」

 わかってたはずなのに……

「――…」

 本人の口から直接聞くと、やっぱり堪えるな。

 結局女の私でも変わらないか……当たり前だよね。
 アルファルドの中で私は、親友以上の存在にはなれないってことだよね。
 親友ってだけで十分過ぎるくらい、アルファルドは心を許してくれてるのに、私ってホント欲張りだな。   

 ドキドキしてた気持ちから、一変してズキズキと心が痛んで、泣きそうな気持ちを抑えるのに布団の中で胸元をギュウッと握り締めた。
 アルファルドがこうして胸を押さえてた気持ちが、今は良く解る。胸の痛みと苦しさに押し潰されそう。

「…アトリクス?」
「――そっか……。そう……だよな……。変な質問して、悪かったな。……寝ようぜ」
「…? あぁ……」

 前の学長とやり合った後に無視されたのと同じ感覚だ。こんなにすぐ近くにいるのに、すごく遠くに感じる。
 心の距離が離れすぎて、近くにある温もりさえも虚しく感じてしまう。
 でも暴走しそうな心に、歯止めをかけてくれて良かったのかもしれない。
 近頃距離が近すぎて感覚もおかしくなってたから、このくらいでちょうどいいんだよね……

 隣にアルファルドの温もりを感じながら、静かに目を閉じた。


 ◇


「ん……、んー……?」
  
 苦しくて意識が浮上した。
 なんだろう……重いものが乗ってるみたいな……

 薄っすら目を開けるとアルファルドが、私に覆いかぶさるように寄ってきてる。
 半分体預けてるようなもんだからかなり重い。
 手でアルファルドの身体を押して、離れた位置へと戻す。
 意外と寝相悪いな。
 
 動かしても横向きのまま、寝息立ててまだ寝てる。
 
 ふふっ……、可愛いー……
 布団から手を出して前髪から出てる綺麗な顎のラインに触わってる。

 はぁ……、キスしたいなぁ。
 この前したけど……もっともっと濃厚なヤツがしたいよ。

 私を誘惑するように、アルファルドの唇が目に入ってきてる。

 うー……、寝てるし、ちょっとだけ触れるだけならいいかな?
 でも、せっかく親友にまでなれたのに、ここでバレてまた一からやり直すのも嫌だしな。
 ようやくここまで来たんだし、我慢するしかないか……

 やっぱり考え直して名残惜しいけど、触ってた手も離した。
 こうしていられるのもあともう少しだから。
 自分の欲望を極力抑えよう。
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