上 下
181 / 392

ドラコニス公爵家救済計画 14

しおりを挟む
'

 食事も終わってお風呂も入って恒例の就寝タイム。先にお風呂をいただいた私は、アルファルドが上がって来るまで部屋で待ってた。
 もう色々諦めて、許可をもらって初めからアルファルドのベッドで横になってる。
 初めて泊まった時に貸してもらった公爵家に伝わる古い文献をまた貸してもらって、改めて頭に情報として入れていく。
 
 うーん、万能薬を一回だけ作ってみようかな。
 材料が希少でかなり手に入りにくいけど、私なら集められそうだし……

 ベッドの脇に本を置いて、ゴロゴロしながら考えてた。

 あ、今ならベッドに潜り込んでアルファルドの匂いを堪能できるじゃん!! 本人がいるトコではさすがに出来ないから、今がチャーンスッ!!

 有言実行で、早速ベッドに潜り込んでいつも使ってるアルファルドの布団を被って思いっ切り匂いを吸い込んでる!

 ふぁ~……、アルファルドの匂いだ……幸せすぎ……!

 アルファルドに包まれてるみたいで、思わず溜息が漏れちゃう。

 傍から見たらただの変態だよね……でもさ、毎日アルファルドが寝起きしてるベッドでこんなことできるのなんて今しかないからさ。


「……アトリクス? 何をしてる……」

「――!!」

 ギクッとして、布団の中で丸まったまま止まった。

 し、しまったー!! 匂い嗅ぐのに夢中になってて、気配探るの忘れてた……!

 布団から顔だけ出すと、ベッドの前でガウン着て仁王立ちしてるアルファルドが見える。

「あ……。アルファルド……早いな……」
「…あぁ。…お前は、布団の中で何してるんだ?」
「え? えー……っと」

 まさかアルファルドの匂いを堪能してました。とは言えないよね。

「いや、ちょっと考え事してて。……さ、寒かったから、布団に包まってたんだ……」

 もう春の終わりだけど、夜は意外と冷えるから苦しい言い訳も少しは説得力あるかな……

 アルファルドは燭台を消してベッドに座って、布団から顔だけ出してる私の隣まで移動してきてる。

「…ほら、こっちに来い」
「え……?」
「…寒いんだろ? 一緒に入った方が暖まる」
「えっ!?」

 うぅ……、アルファルドの優しさが胸に痛いよ。
 布団の中で匂いを堪能してた自分が恥ずかしいな……
 
 アルファルドはこっち向いてて、別段変わりない。そうだよね……親友だもんね。
 邪な事考えてるのは自分だけで、アルファルドは純粋に友達として言ってくれてるんだもんね。

 布団を掛けて二人で並んでベッドで横になってる。
 アルファルドは身体を横向けて、正面向いて寝てる私の方にくっつけてくれてる。
 確かに温かいんだけど、それだけで嬉しいのに、なんだかもうすごく申し訳ない気持ちでいっぱいになっちゃう。

「ありがとな……アルファルド。もう平気だ」
「…気にしないで、そのまま寝ればいい」
「え? あ……、いや…………」
 
 アルファルドの優しさが、さらに私を苦しめる。

 私はこんなに大好きで、近くで一緒にいて凄くドキドキして……もっと貴方が欲しいって欲望が、口から出ちゃいそうなのに――

 お互いの気持ちに落差があり過ぎてしんどいな。

 目を閉じてため息をついた。
 側にいてドキドキする気持ちと、こんなの駄目だっていうズキズキと痛む心と……せめぎ合う心の変化に苦しめられてる。

「アルファルド……」
「…なんだ」
「もし、さ……もし、俺が女なら……お前は何か変わったか?」
「…変わる?」
「俺に対する……気持ちとか……」
「………」

 ドキドキしながら答えを待つけど、怖くて仕方ない。なんでこんな質問したのか自分にもわからないよ。
 でも、ずっと思ってたから、直接アルファルドの気持ちを聞いて見たかった。
 
 アルファルドはしばらく無言で、なんだか真剣に考えてくれてるみたい。

「…お前が……女なら……」
「うん」
「…いや……女でも、変わらないだろうな」
「え……?」
「…男でも女でも……俺の気持ちは同じだ」

 わかってたはずなのに……

「――…」

 本人の口から直接聞くと、やっぱり堪えるな。

 結局女の私でも変わらないか……当たり前だよね。
 アルファルドの中で私は、親友以上の存在にはなれないってことだよね。
 親友ってだけで十分過ぎるくらい、アルファルドは心を許してくれてるのに、私ってホント欲張りだな。   

 ドキドキしてた気持ちから、一変してズキズキと心が痛んで、泣きそうな気持ちを抑えるのに布団の中で胸元をギュウッと握り締めた。
 アルファルドがこうして胸を押さえてた気持ちが、今は良く解る。胸の痛みと苦しさに押し潰されそう。

「…アトリクス?」
「――そっか……。そう……だよな……。変な質問して、悪かったな。……寝ようぜ」
「…? あぁ……」

 前の学長とやり合った後に無視されたのと同じ感覚だ。こんなにすぐ近くにいるのに、すごく遠くに感じる。
 心の距離が離れすぎて、近くにある温もりさえも虚しく感じてしまう。
 でも暴走しそうな心に、歯止めをかけてくれて良かったのかもしれない。
 近頃距離が近すぎて感覚もおかしくなってたから、このくらいでちょうどいいんだよね……

 隣にアルファルドの温もりを感じながら、静かに目を閉じた。


 ◇


「ん……、んー……?」
  
 苦しくて意識が浮上した。
 なんだろう……重いものが乗ってるみたいな……

 薄っすら目を開けるとアルファルドが、私に覆いかぶさるように寄ってきてる。
 半分体預けてるようなもんだからかなり重い。
 手でアルファルドの身体を押して、離れた位置へと戻す。
 意外と寝相悪いな。
 
 動かしても横向きのまま、寝息立ててまだ寝てる。
 
 ふふっ……、可愛いー……
 布団から手を出して前髪から出てる綺麗な顎のラインに触わってる。

 はぁ……、キスしたいなぁ。
 この前したけど……もっともっと濃厚なヤツがしたいよ。

 私を誘惑するように、アルファルドの唇が目に入ってきてる。

 うー……、寝てるし、ちょっとだけ触れるだけならいいかな?
 でも、せっかく親友にまでなれたのに、ここでバレてまた一からやり直すのも嫌だしな。
 ようやくここまで来たんだし、我慢するしかないか……

 やっぱり考え直して名残惜しいけど、触ってた手も離した。
 こうしていられるのもあともう少しだから。
 自分の欲望を極力抑えよう。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...