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アトリクスとレグルス 1

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 季節はまた春。

 また寒さも残ってるけど日差しも暖かくて気持ち良い小春日和が続いてる。

 もうまもなく二学年。
 早いなー……もう一年経つのか。
 イベントの少ない一学年より、二学年になるとどんどん展開が進んで一気にイベントが多くなってくる。
 レグルス様とポラリスの仲もグッと深まって、物語りはいよいよ最終段階まで進んでいく。
 
 もうすぐで郊外実技演習も始まるし、まさにここからだよね! 恋愛RPGの醍醐味!!

 
 ◇◆◇


 二学年になると寮も上に上がるんだけど、なぜか私達はそのままの配置でってことで収まった。
 まぁ私がアカデミア唯一の平民てこともあるし、色んな意見を取り入れてそうなったみたいだね。
 エルナト先生からも申し訳無さそうに言われたけど、いちいち荷持の移動とかしなくていいから、私は全く気にしてない。

「オクタン、またよろしくな!」
「ん、んと…よろしく、アート君」

 オクタンとももう1年間一緒だね。
 まさかここまで仲良くなると思わなかったなぁ。アルファルドよりオクタンの方が簡単に仲良くなれたし、ある意味親友だよね。
 私も癒やし系のオクタン大好きだし、友達って意味ではわたし的にオクタンなんだよね。
 アルファルドはもう恋愛対象みたいになってるからな……

「これからの郊外実技演習も頑張ろうな」
「うん。んと…頑張ろう!」

 寮の部屋の自分の椅子に座って、両手の拳を握ってるオクタンて可愛い~。
 二段ベッドの下に座ってニコニコしながらオクタン観察してる。
 
「お前って癒やし系だよなー……」
「いやし…?? んと…なに?」
「んー……、ペットみたいな感じ?」
「ぺ、ペット…んと…ど、動物!??」
「おぅ、まんま動物だよなー。日々の疲れが癒されるぜ……」

 オクタンはかなり複雑そうな顔して私を見てる。
 私としては最高の褒め言葉なんだけどな。

「あ…んと…うん、明日から頑張ろう……」

 諦めたように話題を変えてくるオクタン。

「ハハッ、そうだな」

 いよいよ二学年。
 これから更にイベントが濃厚になっていく。その先駆けが郊外実技演習。
 ポラリスとレグルス様の仲もこれで一気に深まる。特に後半のペア実戦講習なんかは、ゲームで見ててもすごくドキドキしたし!

 さて、これからどうなっていくかな?


 ◇


「やぁ、アトリクス」

 オクタンと二人で回廊を歩いてると後ろから声を掛けられた。聞き慣れない声に後ろを振り返った。

 そしたら、後ろにはまさかのレグルス様がっ!!

 神々しい光を放つ銀髪に、高貴さを漂わせるロイヤルパープルの瞳。朝日を浴びながら教材を片手に抱えて歩いている様は、まさに皇族のオーラそのもの。

 えっ!? 今、私のこと呼んだよね??

 思わず周りをキョロキョロと見渡しちゃったよ。

「え? 俺?」
「あぁ、君だ。二学年も共に精進しよう」
「あ? ……あぁ、そうだ……な」

 彫りの深い精悍な顔立ち、切れ長の瞳を細めてめちゃくちゃ爽やかな笑顔を私に向けてるレグルス様。
 
 やっぱりレグルス様って、イケメンだなー……
 顔だけならミティストで1番好み。
 
 身長は男の私より少し高いくらいかな?
 育ちの良さが滲み出てるよね。
 なんか無駄にキラキラオーラが出まくってて、見る者全てを魅了しちゃうくらいの超美形男子。

「殿下、参りましょう」

 後ろから来たルリオン様が睨みを利かせて私を見てる。
 相変わらず嫌われてるよね。
 ルリオン様もカッコいいけど、私の好みじゃないんだよな~。

「リオ、先に行っててくれ。私はアトリクスと話しがある」

 え!!? は、はなし!!??
 
 周りで聞き耳立ててた生徒達も、時が止まったみたいに私とレグルス様に注目してる。

「で、殿下? その平民に、なんのご用が……」
「こら、リオ。アカデミアでは皆平等だ。正しく名で呼ぶんだ」
「いや、しかし……それは……」

 振り返って話してるレグルス様に、ルリオン様はかなり驚いた顔をしてる。

「アトリクス。少し時間くれないか?」

 今度はこっちに向き直ったレグルス様が私に問いかける。レグルス様に名前で呼ばれるのっていいね~。

 しっかし、この公衆面前で皇太子殿下の誘いを断れるやつなんているのかね。こんなの断れる訳ないじゃん。

「あー……、ここじゃだめか?」
「ここでは目立ちすぎる……」

 チラリと周りを見てるレグルス様。確かに周りの生徒も集まってきてて、みんな私達のやり取りを興味深そうに見てる。
 じゃあやめましょうや! とは、言えず。

「あちらで話そう。悪いがついてきてくれ」

 そう言うとレグルス様は爽やかな笑顔で身を翻して、回廊を横切って歩いていく。

 なんだろう……、何を話すつもり?
 レグルス様と関わるつもりはないんだけどなぁ……

「ハァ……オクタンも先に行っててくれ」
「あ…、んと…うん…だ、だ、大丈夫??」

 隣でアワアワしながら聞いてたオクタンが心配する声をかけてくれる。

「わからん。とりあえず行ってくる……」
「ん、んと…、頑張って、アート、君」
「……おぅ。ったく……なんだかなぁ~……」

 頭を掻きながら、振り返って待ってるレグルス様の元へと足を進めた。

「おい、貴様。殿下に粗相のないようになっ」

 近くにいたルリオン様が、若草色の瞳で睨みながら私に釘を差してくる。
 レグルス様には聞こえないように……、でも強い口調で話してきた。
 やっぱり嫌われてるよねー。
 まぁ、全く気にしてないけどさ。
 むしろルリオン様の反応が正しいんだよ。レグルス様はなんで私に構うのかわからない。
 わざと敵対するように牽制したつもりなんだけどなぁ。

 私が着いてきてるのを確認できたからか、レグルス様が人気の少ない裏庭の方へと移動していく。

 呼び出し食らってるみたいでいい気分じゃないよね。
 しばらく歩いて見慣れた針葉樹の通りまでやってきた。

「こんな所まですまない。アトリクス、君と話がしたかった」
「……それで、なんの用だ? 皇子様……」

 木々がざわめく緑とレグルス様の銀髪が風に揺れて、見ててすごく絵になる。
 うーん、やっぱりレグルス様って美形だなぁ。

「レグルスとは呼んでくれないんだな……」
「あー……悪いが、それは無理だな。とりあえず用件だけ言ってくれ」

 ごめんなさい、レグルス様! 貴方と馴れ合うつもりはないんです……
 
 男主人公を冷たく突き放したくはないけど、私にはアルファルドがいるから……敵対関係にあるレグルス様と一緒にいたくないんだよね。

 一瞬顔を曇らせて、でもすぐ取り直してレグルス様は私を見て話し始めた。

「アトリクス。率直に聞こう。君はなぜアルと……ドラコニス公爵と共にいるんだ?」
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