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ドラコニス公爵家救済計画 5
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さて、そろそろ本格的に公爵家の復興に向けて動き出すよ。
ポーション製造も順調で、かなりのストックがあるから大量の受注が入っても対応できる。
私も冒険者として活動する時に何本か常備してて凄く便利。やっぱり回復アイテムってすごく重要だって思った。
この日のサークル活動中。
オクタンは用事があって席を外してた。
「アルファルド、ちょっといいか?」
「……なんだ?」
「今ある回復薬の在庫を確認したいんだ。これからで悪いけど公爵邸にお邪魔しても大丈夫か?」
「……」
私は長机の上で薬草分けてるアルファルドに寄って話してたんだけど、アルファルドは薬草片手に私を見たまま止まってる。
「あ……っと、迷惑なら違う日でもいいんだぞ?」
「……」
サークル活動終わった後だともう夕方だから、どうしてもそれからお邪魔するってなるとかなり遅くなる。
相当な数のポーション、ハイポーションがあると思うから、数えるってなるとどうしても時間がかかるからね。
まぁ、アルファルドと手分けして数えればなんとか門限までには間に合うかな。
やっぱり私を見たまま無言のアルファルド。
えーっと? もしかして嫌なのかな?
「お邪魔するのが無理なら、数さえ教えてくれれば――」
「…迷惑じゃない」
急に返事を返してくれて嬉しいんだけど、あの間はなんだったんだろう??
「ホントか? 何か用事があるなら断ってくれていいんだぞ?」
「…いや、問題ない」
ふいっとそっぽ向いたアルファルド。
???
うーん、やっぱりアルファルドって難しいなぁ……
行動の意図が全然わからない。
迷惑そうに感じたんだけど、もしかして遠慮してる?
「邪魔にならないように終わったらすぐ帰るから。変に気を使わないでくれよ?」
「…帰る頃には寮が閉まっている」
「んー? なるべく早く終わらせるし。俺、足速いから大丈夫!」
身体強化使えば数分でアカデミアまで着いちゃうからなんの問題もないね。
笑って言ったのに、やっぱりアルファルドは何か渋ってて、私をジッと見てる。
「…いっそ……泊まればどうだ?」
意外な申し出にビックリする。アルファルドを見たまま今度は私が止まってしまう。
あのアルファルドが泊まってって嘘でしょ!?
めちゃくちゃ嬉しいのに、エルナト先生にバレたらまた長ぁ~い説教が待ってるからな……
「ありがとな! お前から言ってくれるなんてすげぇ嬉しい!! けど、外泊はちょっともう無理そうなんだ……」
そう、エルナト先生から散々怒られてこってり絞られた。いや、私が言わなきゃそれで済むだけの話なんだけど。
「…何故だ」
「エルナト先生に止められてて……」
「…エルナト、教授……?」
ポロッと言った言葉にアルファルドが反応してる。
「…それは、俺だからか……」
「え……?」
「…俺の、…公爵家に来るからかっ……」
そこまで言われてハッとした。
アルファルドは拳を握り締めてて、なんだか変な方向に勘違いしてる。
「違うっ!!」
咄嗟に隣りにいたアルファルドの握り締めた拳を掴む。
「勘違いするな! 原因はお前じゃないっ、俺にあるんだ!」
「…お前の……?」
アルファルドに真摯の目を向けて話した。
「そう……、俺なんだよ……」
握り締めてたアルファルドの拳が解けてダラリとなってる。私は掴んだアルファルドの手を取って両手で包んだ。
「…何故だ」
なぜって……
それはもちろん私が本当は女で、嫁入り前で、それなのにアルファルドみたいな年頃の男とベッドを共にした、っていう大きな問題があるんです。
とは言えないんだよね。
うぅ……、身から出た錆。どうにか誤魔化さないと。
「エルナト先生には良くしてもらってるんだ。でも俺って平民だろ? それが貴族のお宅に泊まるなんてって怒られたんだ……」
「………俺は気にしない」
「でもさ、普通に考えたらあり得ないことだろ? 先生は常識人だからそういう事にはうるさいんだ」
ふぅ……どうにか誤魔化せたかな? アトリクスが平民でホント良かった。
いや、油断したよ。私って馬鹿だな…もっと気を張らないと。アルファルドはそういったことに敏感なんだからさ。
ハァ……、めちゃくちゃ焦った……
「俺ってガサツだしうるさいから、迷惑かけてないか心配されてるんだ。さすがに俺もちょっと反省したし……」
「……」
アルファルドをジッと見ながら、包むように触れてたアルファルドの手をぎゅっと握る。
「ごめんな、紛らわしい言い方して」
「………いや」
「いくらエルナト先生でも、お前を悪く言うなら俺は怒るぞ!」
「………そうか」
「うん!」
ニコッと笑ってアルファルドを見て頷いた。
わかってくれたみたいで、ようやく普段通りに戻ってくれた。
「じゃあさ、もし門限に間に合わなかったら泊まってもいいか?」
「…面倒だから泊まれ。リタもお前に会いたがってた」
「え? リタさんが?」
「…あぁ、毎日のように聞いてくる」
「そうなのか? そっか……そう言って貰えると嬉しいな! アルファルドは迷惑じゃないのか?」
「…迷惑なら言わない」
まぁ、確かに。アルファルドってその辺ははっきりしてるから。
初めて泊まる時はアルファルドがゴネてたのが懐かしいくらい、今では泊まっていけって言ってくれるなんて。
これはエルナト先生にバレないように気を付けないと。
「じゃあ、悪いけどまた正門で待っててもらっていいか?」
「…あぁ」
「荷物取ってきたらすぐ行くからさ」
「…枕はいらない」
「え……と、うーん。わかった」
初めは躊躇してる感じだったのに、今じゃ泊まれって言ってくれて……嬉しいのに疑問が残るんだよね。
アルファルドとの仲もかなり良くなって、もう友達だって公言していいくらいなのに、たまに良くわからない。
とりあえずこの日のサークル活動は終了。
道具を片付けて元の位置に戻してる。
少し席を外してたオクタンが途中で戻ってきてて、私のとこにトコトコ寄ってきた。
「んと…アート君、お泊り??」
「んー……、うん。あ、オクタン内緒だぞ! エルナト先生にバレたらまたお説教が長いからさ」
チラッとアルファルドを見るけど、普段と変わりないように見える。
なんか彼氏の家に泊まるのに、友達に口裏合わせてもらってるみたいでやだなぁ……
でも、こうでもしないと後々かなり面倒なんだよ。
「ん…うん…、んと…わかった! 大丈夫……」
私を見上げてニコッと笑うオクタンに癒やされる。
オクタンてホント癒やしだなー。
ふわふわの赤毛も丸メガネも小柄なのも、やっぱり小動物みたいで可愛い。
オクタンの髪に手を伸ばして、ワシャワシャと髪を撫でた。
「わっ? わっ、なに?! あ、アート君??」
「ハハッ、お前って本当カワイイよな~」
「え? え? んと…僕??」
「うんっ」
ふわっとした髪が気持ちよくて、じゃれるみたいに頭に手を添えて撫でてたら、後ろから撫でてた腕を掴まれて背中に何か当たった。
「……アルファルド?」
当たったのはアルファルドの体で、首を後ろに捻ったらアルファルドが私の腕を掴んで無言で立ってる。
「どーした?」
「…遊んでないで帰るぞ」
「あ、ごめん。帰ろうぜ」
なんとなく機嫌がまた悪そうなアルファルド。
オクタンはぐしゃぐしゃに乱れた髪を手櫛で直してた。
私がオクタンの髪から手を離したら、アルファルドも私の腕を掴んでた手をパッと離した。
うん、やっぱりアルファルドって難しい。
さて、そろそろ本格的に公爵家の復興に向けて動き出すよ。
ポーション製造も順調で、かなりのストックがあるから大量の受注が入っても対応できる。
私も冒険者として活動する時に何本か常備してて凄く便利。やっぱり回復アイテムってすごく重要だって思った。
この日のサークル活動中。
オクタンは用事があって席を外してた。
「アルファルド、ちょっといいか?」
「……なんだ?」
「今ある回復薬の在庫を確認したいんだ。これからで悪いけど公爵邸にお邪魔しても大丈夫か?」
「……」
私は長机の上で薬草分けてるアルファルドに寄って話してたんだけど、アルファルドは薬草片手に私を見たまま止まってる。
「あ……っと、迷惑なら違う日でもいいんだぞ?」
「……」
サークル活動終わった後だともう夕方だから、どうしてもそれからお邪魔するってなるとかなり遅くなる。
相当な数のポーション、ハイポーションがあると思うから、数えるってなるとどうしても時間がかかるからね。
まぁ、アルファルドと手分けして数えればなんとか門限までには間に合うかな。
やっぱり私を見たまま無言のアルファルド。
えーっと? もしかして嫌なのかな?
「お邪魔するのが無理なら、数さえ教えてくれれば――」
「…迷惑じゃない」
急に返事を返してくれて嬉しいんだけど、あの間はなんだったんだろう??
「ホントか? 何か用事があるなら断ってくれていいんだぞ?」
「…いや、問題ない」
ふいっとそっぽ向いたアルファルド。
???
うーん、やっぱりアルファルドって難しいなぁ……
行動の意図が全然わからない。
迷惑そうに感じたんだけど、もしかして遠慮してる?
「邪魔にならないように終わったらすぐ帰るから。変に気を使わないでくれよ?」
「…帰る頃には寮が閉まっている」
「んー? なるべく早く終わらせるし。俺、足速いから大丈夫!」
身体強化使えば数分でアカデミアまで着いちゃうからなんの問題もないね。
笑って言ったのに、やっぱりアルファルドは何か渋ってて、私をジッと見てる。
「…いっそ……泊まればどうだ?」
意外な申し出にビックリする。アルファルドを見たまま今度は私が止まってしまう。
あのアルファルドが泊まってって嘘でしょ!?
めちゃくちゃ嬉しいのに、エルナト先生にバレたらまた長ぁ~い説教が待ってるからな……
「ありがとな! お前から言ってくれるなんてすげぇ嬉しい!! けど、外泊はちょっともう無理そうなんだ……」
そう、エルナト先生から散々怒られてこってり絞られた。いや、私が言わなきゃそれで済むだけの話なんだけど。
「…何故だ」
「エルナト先生に止められてて……」
「…エルナト、教授……?」
ポロッと言った言葉にアルファルドが反応してる。
「…それは、俺だからか……」
「え……?」
「…俺の、…公爵家に来るからかっ……」
そこまで言われてハッとした。
アルファルドは拳を握り締めてて、なんだか変な方向に勘違いしてる。
「違うっ!!」
咄嗟に隣りにいたアルファルドの握り締めた拳を掴む。
「勘違いするな! 原因はお前じゃないっ、俺にあるんだ!」
「…お前の……?」
アルファルドに真摯の目を向けて話した。
「そう……、俺なんだよ……」
握り締めてたアルファルドの拳が解けてダラリとなってる。私は掴んだアルファルドの手を取って両手で包んだ。
「…何故だ」
なぜって……
それはもちろん私が本当は女で、嫁入り前で、それなのにアルファルドみたいな年頃の男とベッドを共にした、っていう大きな問題があるんです。
とは言えないんだよね。
うぅ……、身から出た錆。どうにか誤魔化さないと。
「エルナト先生には良くしてもらってるんだ。でも俺って平民だろ? それが貴族のお宅に泊まるなんてって怒られたんだ……」
「………俺は気にしない」
「でもさ、普通に考えたらあり得ないことだろ? 先生は常識人だからそういう事にはうるさいんだ」
ふぅ……どうにか誤魔化せたかな? アトリクスが平民でホント良かった。
いや、油断したよ。私って馬鹿だな…もっと気を張らないと。アルファルドはそういったことに敏感なんだからさ。
ハァ……、めちゃくちゃ焦った……
「俺ってガサツだしうるさいから、迷惑かけてないか心配されてるんだ。さすがに俺もちょっと反省したし……」
「……」
アルファルドをジッと見ながら、包むように触れてたアルファルドの手をぎゅっと握る。
「ごめんな、紛らわしい言い方して」
「………いや」
「いくらエルナト先生でも、お前を悪く言うなら俺は怒るぞ!」
「………そうか」
「うん!」
ニコッと笑ってアルファルドを見て頷いた。
わかってくれたみたいで、ようやく普段通りに戻ってくれた。
「じゃあさ、もし門限に間に合わなかったら泊まってもいいか?」
「…面倒だから泊まれ。リタもお前に会いたがってた」
「え? リタさんが?」
「…あぁ、毎日のように聞いてくる」
「そうなのか? そっか……そう言って貰えると嬉しいな! アルファルドは迷惑じゃないのか?」
「…迷惑なら言わない」
まぁ、確かに。アルファルドってその辺ははっきりしてるから。
初めて泊まる時はアルファルドがゴネてたのが懐かしいくらい、今では泊まっていけって言ってくれるなんて。
これはエルナト先生にバレないように気を付けないと。
「じゃあ、悪いけどまた正門で待っててもらっていいか?」
「…あぁ」
「荷物取ってきたらすぐ行くからさ」
「…枕はいらない」
「え……と、うーん。わかった」
初めは躊躇してる感じだったのに、今じゃ泊まれって言ってくれて……嬉しいのに疑問が残るんだよね。
アルファルドとの仲もかなり良くなって、もう友達だって公言していいくらいなのに、たまに良くわからない。
とりあえずこの日のサークル活動は終了。
道具を片付けて元の位置に戻してる。
少し席を外してたオクタンが途中で戻ってきてて、私のとこにトコトコ寄ってきた。
「んと…アート君、お泊り??」
「んー……、うん。あ、オクタン内緒だぞ! エルナト先生にバレたらまたお説教が長いからさ」
チラッとアルファルドを見るけど、普段と変わりないように見える。
なんか彼氏の家に泊まるのに、友達に口裏合わせてもらってるみたいでやだなぁ……
でも、こうでもしないと後々かなり面倒なんだよ。
「ん…うん…、んと…わかった! 大丈夫……」
私を見上げてニコッと笑うオクタンに癒やされる。
オクタンてホント癒やしだなー。
ふわふわの赤毛も丸メガネも小柄なのも、やっぱり小動物みたいで可愛い。
オクタンの髪に手を伸ばして、ワシャワシャと髪を撫でた。
「わっ? わっ、なに?! あ、アート君??」
「ハハッ、お前って本当カワイイよな~」
「え? え? んと…僕??」
「うんっ」
ふわっとした髪が気持ちよくて、じゃれるみたいに頭に手を添えて撫でてたら、後ろから撫でてた腕を掴まれて背中に何か当たった。
「……アルファルド?」
当たったのはアルファルドの体で、首を後ろに捻ったらアルファルドが私の腕を掴んで無言で立ってる。
「どーした?」
「…遊んでないで帰るぞ」
「あ、ごめん。帰ろうぜ」
なんとなく機嫌がまた悪そうなアルファルド。
オクタンはぐしゃぐしゃに乱れた髪を手櫛で直してた。
私がオクタンの髪から手を離したら、アルファルドも私の腕を掴んでた手をパッと離した。
うん、やっぱりアルファルドって難しい。
応援ありがとうございます!
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