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ドラコニス公爵家救済計画 8
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しばらく寄り添った後、晩餐を知らせる鐘がなった。外はもうすっかり日も落ちて、部屋の中も薄暗く映ってる。
私はアルファルドから体を離して向き合った。
「あ……、鐘が鳴ってる。そろそろ行こうぜ?」
「………あぁ」
まだ私の背中に腕を回したままで、アルファルドは私をジッと見てる。
「ん? どうした?」
「………いや」
何か言いたそうなのに、アルファルドはすぐに口を噤む。もっと自分の内に秘めないで、私に話してほしい。それこそが友達だよね。
「なぁ、アルファルド」
「…なんだ」
「今何を思ってるか、もっと話してくれないか?」
「………話す……?」
アルファルドの頬に両手を伸ばして、そっと撫でるように触れた。サラリとした肌が手に心地良く感じる。
「うん。俺、もっとお前のこと知りたい。お前が何を思って、どう感じてるか……少しずつでいいからさ。俺にお前のこと教えてほしい」
アルファルドを見ながら笑顔で話した。
もっともっと知りたい。
アルファルドは圧倒的に言葉数が少ないから。
いくらこれまでの生い立ちや経緯を知ってても、何を考えているかなんて本人にしかわからない。
だからそこから理解することがかなり難しい。表情から読み取ることもできないし。
変に勘違いしたり、傷付けたりしたくないから、思ってることをもっと話してほしい。
「………俺の、思うこと……」
「うん! どんなことでもいいんだ。話してくれるとすごく嬉しい!」
今まで誰かに自分のことなんて言って来なかったんだろうな。言う相手もいなかっただろうし。
ベッテルさんやリタさんは親代わりだけど、あくまで使用人て立場だから、自分の気持ちや弱音みたいなのも言えなかったと思う。
「……お前は、嫌にならないのか?」
「ハハッ、なるわけないだろ。むしろ大歓迎だ!」
私はどんな事でも話せる親友みたいになりたい。
どうしても自分の気持ちが邪魔して邪な考えしか持てないけど、アルファルドのこと思えばいらない感情だよね。
自分の感情をもっとコントロールしないとな。
「………わかった」
今までが今までだから、いきなりなんでも言葉にするのは無理だと思う。
ただアルファルドが自分をもっと出すことができれば、少しは心の負担が減るんじゃないのかな。
人に話すとスッキリすることもあるし。
「じゃ、行こうぜ。腹減ったし!」
「…あぁ」
ニコッと笑ってアルファルドの頬から手を離した。
ずっと私を見てたアルファルドも、私の背中に回してた手を離して隣に並んで部屋を後にした。
◇
「うわあ~! すごいご馳走だぁ!!」
食卓に所狭しと置かれたご馳走を目の前に、私は目をキラキラと輝かせた。
「ふふっ、遠慮なく食べるんだよ! アートが来るの楽しみにしてたんだからね!」
「めちゃくちゃ嬉しい!! リタさん大好き~!!」
「あははっ、アートには敵わないね! 私もあんたみたいな素直で可愛い子は大好きだよ!」
「うん、ありがとうリタさん! ねぇねぇ、食べてもいい?」
「たんとおあがり!」
「わーい! いただきま~す!」
アルファルドも席について、ベッテルさんやリタさんも椅子に座ってみんなで食べ始めた。
「ん~……! やっぱり美味しい~!」
口いっぱいに広がる至福の美味しさ。
もぐもぐ食べてどれも美味しくて、頬が緩んじゃってニコニコしっぱなしだよ。
お腹空いてたし夢中になってナイフとフォークを動かして食べてた。
「そういえばアートも所作がきちんとできてるね。普通の平民てそんな綺麗な食べ方しないよ?」
リタさんの鋭いツッコミに、ギクッとしてしまう。
確かに元々貴族で、幼い頃から叩き込まれてきたことだから、自然と出ちゃうよね……
「あー……そう? あ、アカデミア入る時に必死で覚えました……」
かなり苦しい言い訳だけど、冷や汗かきながらなんとか笑顔で応える。
「そうなのかい? そりゃあご両親も苦労しただろう」
「俺の両親はスタンピードの時に亡くなってるんです。だから自力で覚えたの」
そう、本物のアトリクスの両親はスタンピードの時に亡くなってる。
私の両親は生きてるけど、もう会うことはないから。
何気なく言った言葉に、周りが途端にシーンと静かになっちゃった。
「…アトリクス……お前も、両親がいないのか……?」
静かに食べてたアルファルドが手を止めて、意外そうに口を開いてる。
うーん、あんまりアトリクスの話題は出したくないんだけど……私のことじゃないし。
嘘ついてるみたいで気が引けるんだよね。
「うん」
「…そう……なのか……」
うぅ……、私じゃなくて、アトリクスがね。
まぁ、実際に私も前世では両親を亡くしてるから、気持ちは痛いほどわかるよ。
アルファルドの態度が明らかにおかしい。そりゃそうだよね、アルファルドも両親を幼い頃に亡くしてる。
そこからアルファルドの不幸人生が始まった訳だから。
「あ……ごめんよ、アート。知らなかったからさ……」
リタさんも申し訳無さそうな、悲しそうな顔して謝ってきた。
「ううん、気にしないで! 俺は大丈夫だからっ」
「……」
「ハハッ、せっかくの食事の時間だから、しんみりするのはやめようよ」
「そうだね。食べようか」
「うん! 俺、リタさんのご飯楽しみにして来たんだから!」
「ありがとうね、アート……」
気を取り直してまた美味しいご馳走を口に運ぶ。
チラッとアルファルドを見ると、アルファルドも私を見ててやっぱり食事の手が止まってる。
「アルファルド?」
私が呼びかけたらハッとしたみたいに正面を向いて、また食べ始めてる。
大丈夫かな……? ご両親を思い出したりしちゃったのかな。
どことなく変な雰囲気が流れ始めたから、話題を変えるべく口を開いた。
「あ、リタさん。あのソファー凄くいいね!」
「あぁ、座ってみたかい?」
「うん!」
「アートが遊びに来るのに、腰掛ける場所がないと大変だろ?」
「え……? 俺の為に用意してくれたの?」
斜め向かいのリタさんの顔見ながら驚きを隠せない。
アルファルド用に準備したのかと思ってたのに、そうじゃないんだ。
「旦那様には怒られちゃったけどさ、あのくらいは置いといても罰は当たらないよ」
リタさんの言葉が嬉しくてジーンと感動しちゃった。
「……ありがとう、リタさん。俺、すごく嬉しいです」
にっこりと笑って微笑むと、リタさんも笑顔を返してくれた。
「ふふっ……わたしゃ可愛い子には甘いんだよ。アートはさ、明るくて素直でとっても良い子だよ。女の子なら嫁に来てもらいたいくらいさっ」
その言葉を聞いてたアルファルドが、またピタッと食事の手を止めてる。
リタさんが私に笑顔で話してくるけど、女の子って言われて冷や汗が出ちゃったよ。
うーん、なんて返答していいのか困っちゃうなぁ。
リタさん、なかなかの爆弾投下してしてくるね。
頭を掻きながら苦笑いを浮かべる。
「そうですね、嬉しいけど……さすがに俺じゃアルファルドが嫌がりますよ」
「そうかい? アートは器量も良いし、男なのに美人さんだからねぇ、旦那様も満更じゃないと思うよ」
「こ、これ、リタ。なんてことを……」
静かに食べてたベッテルさんも思わず口を挟んでる。
リタさんが今度はアルファルドの方を向いて話してるけど、アルファルドは手を止めたままいつもよりさらに低い声でリタさんに話してる。
「…リタ……余計なこと言ってないで、食べるぞ」
「はいよ。ふふっ、怒られちゃったね」
私の方向いて笑ってて全然反省してない様子のリタさん。
うん、さすが長年アルファルドと一緒にいるだけあるね。肝が据わってるよ。
しばらく寄り添った後、晩餐を知らせる鐘がなった。外はもうすっかり日も落ちて、部屋の中も薄暗く映ってる。
私はアルファルドから体を離して向き合った。
「あ……、鐘が鳴ってる。そろそろ行こうぜ?」
「………あぁ」
まだ私の背中に腕を回したままで、アルファルドは私をジッと見てる。
「ん? どうした?」
「………いや」
何か言いたそうなのに、アルファルドはすぐに口を噤む。もっと自分の内に秘めないで、私に話してほしい。それこそが友達だよね。
「なぁ、アルファルド」
「…なんだ」
「今何を思ってるか、もっと話してくれないか?」
「………話す……?」
アルファルドの頬に両手を伸ばして、そっと撫でるように触れた。サラリとした肌が手に心地良く感じる。
「うん。俺、もっとお前のこと知りたい。お前が何を思って、どう感じてるか……少しずつでいいからさ。俺にお前のこと教えてほしい」
アルファルドを見ながら笑顔で話した。
もっともっと知りたい。
アルファルドは圧倒的に言葉数が少ないから。
いくらこれまでの生い立ちや経緯を知ってても、何を考えているかなんて本人にしかわからない。
だからそこから理解することがかなり難しい。表情から読み取ることもできないし。
変に勘違いしたり、傷付けたりしたくないから、思ってることをもっと話してほしい。
「………俺の、思うこと……」
「うん! どんなことでもいいんだ。話してくれるとすごく嬉しい!」
今まで誰かに自分のことなんて言って来なかったんだろうな。言う相手もいなかっただろうし。
ベッテルさんやリタさんは親代わりだけど、あくまで使用人て立場だから、自分の気持ちや弱音みたいなのも言えなかったと思う。
「……お前は、嫌にならないのか?」
「ハハッ、なるわけないだろ。むしろ大歓迎だ!」
私はどんな事でも話せる親友みたいになりたい。
どうしても自分の気持ちが邪魔して邪な考えしか持てないけど、アルファルドのこと思えばいらない感情だよね。
自分の感情をもっとコントロールしないとな。
「………わかった」
今までが今までだから、いきなりなんでも言葉にするのは無理だと思う。
ただアルファルドが自分をもっと出すことができれば、少しは心の負担が減るんじゃないのかな。
人に話すとスッキリすることもあるし。
「じゃ、行こうぜ。腹減ったし!」
「…あぁ」
ニコッと笑ってアルファルドの頬から手を離した。
ずっと私を見てたアルファルドも、私の背中に回してた手を離して隣に並んで部屋を後にした。
◇
「うわあ~! すごいご馳走だぁ!!」
食卓に所狭しと置かれたご馳走を目の前に、私は目をキラキラと輝かせた。
「ふふっ、遠慮なく食べるんだよ! アートが来るの楽しみにしてたんだからね!」
「めちゃくちゃ嬉しい!! リタさん大好き~!!」
「あははっ、アートには敵わないね! 私もあんたみたいな素直で可愛い子は大好きだよ!」
「うん、ありがとうリタさん! ねぇねぇ、食べてもいい?」
「たんとおあがり!」
「わーい! いただきま~す!」
アルファルドも席について、ベッテルさんやリタさんも椅子に座ってみんなで食べ始めた。
「ん~……! やっぱり美味しい~!」
口いっぱいに広がる至福の美味しさ。
もぐもぐ食べてどれも美味しくて、頬が緩んじゃってニコニコしっぱなしだよ。
お腹空いてたし夢中になってナイフとフォークを動かして食べてた。
「そういえばアートも所作がきちんとできてるね。普通の平民てそんな綺麗な食べ方しないよ?」
リタさんの鋭いツッコミに、ギクッとしてしまう。
確かに元々貴族で、幼い頃から叩き込まれてきたことだから、自然と出ちゃうよね……
「あー……そう? あ、アカデミア入る時に必死で覚えました……」
かなり苦しい言い訳だけど、冷や汗かきながらなんとか笑顔で応える。
「そうなのかい? そりゃあご両親も苦労しただろう」
「俺の両親はスタンピードの時に亡くなってるんです。だから自力で覚えたの」
そう、本物のアトリクスの両親はスタンピードの時に亡くなってる。
私の両親は生きてるけど、もう会うことはないから。
何気なく言った言葉に、周りが途端にシーンと静かになっちゃった。
「…アトリクス……お前も、両親がいないのか……?」
静かに食べてたアルファルドが手を止めて、意外そうに口を開いてる。
うーん、あんまりアトリクスの話題は出したくないんだけど……私のことじゃないし。
嘘ついてるみたいで気が引けるんだよね。
「うん」
「…そう……なのか……」
うぅ……、私じゃなくて、アトリクスがね。
まぁ、実際に私も前世では両親を亡くしてるから、気持ちは痛いほどわかるよ。
アルファルドの態度が明らかにおかしい。そりゃそうだよね、アルファルドも両親を幼い頃に亡くしてる。
そこからアルファルドの不幸人生が始まった訳だから。
「あ……ごめんよ、アート。知らなかったからさ……」
リタさんも申し訳無さそうな、悲しそうな顔して謝ってきた。
「ううん、気にしないで! 俺は大丈夫だからっ」
「……」
「ハハッ、せっかくの食事の時間だから、しんみりするのはやめようよ」
「そうだね。食べようか」
「うん! 俺、リタさんのご飯楽しみにして来たんだから!」
「ありがとうね、アート……」
気を取り直してまた美味しいご馳走を口に運ぶ。
チラッとアルファルドを見ると、アルファルドも私を見ててやっぱり食事の手が止まってる。
「アルファルド?」
私が呼びかけたらハッとしたみたいに正面を向いて、また食べ始めてる。
大丈夫かな……? ご両親を思い出したりしちゃったのかな。
どことなく変な雰囲気が流れ始めたから、話題を変えるべく口を開いた。
「あ、リタさん。あのソファー凄くいいね!」
「あぁ、座ってみたかい?」
「うん!」
「アートが遊びに来るのに、腰掛ける場所がないと大変だろ?」
「え……? 俺の為に用意してくれたの?」
斜め向かいのリタさんの顔見ながら驚きを隠せない。
アルファルド用に準備したのかと思ってたのに、そうじゃないんだ。
「旦那様には怒られちゃったけどさ、あのくらいは置いといても罰は当たらないよ」
リタさんの言葉が嬉しくてジーンと感動しちゃった。
「……ありがとう、リタさん。俺、すごく嬉しいです」
にっこりと笑って微笑むと、リタさんも笑顔を返してくれた。
「ふふっ……わたしゃ可愛い子には甘いんだよ。アートはさ、明るくて素直でとっても良い子だよ。女の子なら嫁に来てもらいたいくらいさっ」
その言葉を聞いてたアルファルドが、またピタッと食事の手を止めてる。
リタさんが私に笑顔で話してくるけど、女の子って言われて冷や汗が出ちゃったよ。
うーん、なんて返答していいのか困っちゃうなぁ。
リタさん、なかなかの爆弾投下してしてくるね。
頭を掻きながら苦笑いを浮かべる。
「そうですね、嬉しいけど……さすがに俺じゃアルファルドが嫌がりますよ」
「そうかい? アートは器量も良いし、男なのに美人さんだからねぇ、旦那様も満更じゃないと思うよ」
「こ、これ、リタ。なんてことを……」
静かに食べてたベッテルさんも思わず口を挟んでる。
リタさんが今度はアルファルドの方を向いて話してるけど、アルファルドは手を止めたままいつもよりさらに低い声でリタさんに話してる。
「…リタ……余計なこと言ってないで、食べるぞ」
「はいよ。ふふっ、怒られちゃったね」
私の方向いて笑ってて全然反省してない様子のリタさん。
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