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ドラコニス公爵家救済計画 11

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 聖夜祭も無事に終わって、自分の気持ち……いや欲望に限界が見えてきてるし、アルファルドを幸せに導く為に一番大事な取り引きを成功させないとね!

 公爵家の救済計画も最終段階。

 ここから一気に畳み掛けていくよ~!!
 ケイドに手紙も送っていつでも準備オッケー。ようやく勝負をかける時が来たね!
 

 ◇ 


 いつものサークル活動中で、長机の上でアルファルド、私、オクタンと3人並んで作業してる。
 狭いサークル部屋で一通り回復薬も作り終えて、鍋やら棒やらの片付けをしてた。

「あっ、アルファルド。これから公爵邸にお邪魔してもいいか?」
「…あぁ、俺は構わない」
「良かった! 今日こそ用事が済んだらすぐ帰るからな」 
 
 オクタンは最後の仕上げをしてて、漏斗じょうごつかって鍋からお玉みたいなので小瓶に移してる最中。
 アルファルドと私は長机で作業してて、袋にできた回復薬を並んで詰めてる途中だった。

「…なぜだ。泊まっていけばいいだろ?」

 手に持った小瓶を片手に、アルファルドは当たり前みたいに話してる。
 私は言われたその言葉にひどく動揺しちゃう。
 私も同じく小瓶を袋に詰めてたんだけど、その手がピタッと止まった。

 すっごく嬉しいけど、それは無理だよ。
 公爵邸で泊まると、絶っ対アルファルドと寝る羽目になるからっ!

 度重なる出来事ですっかり懲りた私は、お泊りは二度と無理だと確信した。

 次こそは絶対アルファルドを襲う。
 なりふり構わず女に戻って、無理矢理組み敷いて犯しちゃう自信があるって。

 てかさー……、ついこの前あんなことがあったのに、アルファルドは平気なの?
 ミラの時は女神様で誤魔化したけど、アトリクスの時でも際どい感じになってたし。
 完全に友達の域を超えてると思うんだけどなぁ……

 そんな本心は言えないから、笑いながら答えを返した。
 
「ありがとな! 気持ちはすげぇ嬉しいけど、本当にすぐ済む事だし、それに次の日朝一で用事があるんだ」
「…うちから行けばいい」
「あ? いや、朝早くから迷惑掛けるのは嫌なんだ」
「…朝早いくらい、俺はなんともない」

 隣で話してたアルファルドは、珍しく食い下がってきてる。

 ど、どうして引き下がってくれないの?!
 あんなことがあったのに、率先して泊まってほしいみたいな感じで言われちゃうと、余計に歯止めが効かなくなっちゃうよ!!

「あ……っと、もしかして……俺に泊まってほしいのか?」

 返答に困ってあえて突っ込んだ言い方をしてみた。こう言えば諦めてくれるかなって。
 
「……」

 隣で詰め終わったアルファルドは、私の方を向いたまま動きが止まる。
 
 う~ん? ちょっと意地悪な言い方だったかな……?
 わかってるけど、私もアルファルドを守るために仕方なく言ってるわけであって……
 一番危険な私と隣で寝るなんて、今度こそアルファルドの貞操の危機になっちゃうよ。

「アルファルド?」

 アルファルドは小瓶が詰まった袋を机に置いて、しばらく考えたあと口を開いた。

「…だな」
「へ?」
「…そうだな。お前と、一緒にいたい……」
「――ッッ!!」

 隣にいるアルファルドの顔見ながら、雷が頭に落ちたくらいの衝撃を受けてる。

 驚きで目と口を開けたまま、私の時間が完全に止まっちゃった。

 アルファルドはやっぱり顔だけそっぽ向いてて、髪から出てる耳がほんのり赤くて照れ臭そうな感じで……

 あ、あ……、アルファルドがデレたっ?!!
 ちょっと! いや、ちょっと待って! 私に泊まって欲しいって、一緒にいたいって言ってくれたのぉ!?
 めちゃくちゃ嬉しいのにそれって私にとってはもう、一線超えて良いって言ってるのと同じだよ!?
 同意だよ、同意っ!!

「わ、わわっ! と、んと……んと……ごめんっ!」

 急にオクタンが謝ってきて、後ろ振り返ったら小瓶の中身がこぼれてて、慌てて布巾で拭いてる。

 オクタンの顔が赤くていつも以上にアワアワしてる。
 たぶんさっきのアルファルドの返事に動揺して、手元が狂ったみたいだね。

「だっ……大丈夫か? オクタン……」
「ん、うん……少し、んと……だった、から……」

 私もかなり動揺してて、オクタンには悪いけどその失敗でちょっと冷静になれた。
 
 ふぅー……、落ち着け……ミラ。

 勝手に心の中で変な方向に解釈しちゃったけど、アルファルドにとって私は友達で……、そう、唯一の友達なんだよ!
 せっかく出来た友達を自分の家に呼んで、泊まって、一緒に寝て、朝まで二人で楽しみた……違う違うっ!お喋りしたりして楽しく過ごしたいんだよね。

 心の中で友達、友情……と自分に言い聞かせて、ヒートアップした心を冷静に保つよう努めた。

 精一杯友達の顔を作り、申し訳なさそうにアルファルドの方を向いた。
 
「お前に甘えてばっかで、嫌じゃないのか?」
「…嫌なら言わない」
「そう……だな。そうだよな……」

 私がアルファルドの考えを知りたいって言ってから、わりと素直に気持ちを伝えてくれる。すごく嬉しいのに、なぜか困った結果になってる。
 アルファルドもこっちに向き直して、私を見ながら返事を待ってる。
 
 ハァ……頑張ろう……、アルファルドとの友情の為にも……

 疚しい気持ちを悟られないように、ニコッと笑ってアルファルドに返事を返す。

「じゃあお言葉に甘えてもいいか? お前の気が変わったら、いつでも……すぐにでも断ってくれていいし」
「? 変わらないから安心しろ」
「――そ……っかぁ……」

 いや、変わってくれてもいいよ?

 笑顔を浮かべつつも、心の中はかなり複雑で……
 ちょっとお邪魔して、用事が終わったら帰ろうと思ってたのに。どうしても公爵家に行くと、泊まらなきゃいけないみたいになっちゃってるよ。

「荷物取って来るから、悪いけどまた正門の前で待っててくれ」
「…あぁ。あと、いつも一緒に寝るのに、枕や布団は必要ない」
「――っ! あ、……あー……、うん。わかった……」

 いや、オクタンいるのにその発言て大丈夫なの?!
 せっかくオクタンには匂わせるくらいで適当に濁してうやむやにしてたのに、はっきり毎回一緒に寝てるって思いっ切りバラしてるし!!

 カッツーン!

「わっ! っと! んと、またっ、ご、ごめんっ!」

 一緒に寝てる宣言に動揺したオクタンは、今度は拭いてた漏斗を下に落として派手な音を立ててる。

「……いや……、気にすんな、オクタン」

 ハァ……嬉しいのに。すっごく嬉しいのにぃ!!
 また自分の忍耐力を試さなきゃいけないのが、とっても辛いよぉー!!

 またまた予想外のお泊りに、喜んでいいのか悪いのか……
 アルファルド(の貞操)を守る為、さらなる強い自制心で自分を戒めることになってる。
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