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アトリクスとアルファルド 1
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冷ややかな眼でルリオンを見ていると、後ろから手が伸びて私を抱きすくめる。
「…やめろ、アトリクス」
耳元で囁かれる低く通る声。私の身体ごと包み込むように力強く腕が回される。
「アルファルド」
振り返らなくてもわかる。
身体中に纏わせていた殺気が、スッといとも簡単に解けちゃったよ。
「…相手にするな。俺は気にしない」
なんでアルファルドがここにいるのか疑問だけど、こんなことされたら怒る気も失せてしまう。
殺気が解けると、ルリオン様はようやく息を吸えたみたいに腰を曲げて呼吸を整えている。
そんなルリオン様を冷淡に見つめて言葉をかける。
「お前に忠告だ…。これ以上俺に構うな。お前がどれだけ権力を誇示して報復してこようとも、誰一人俺を害することはできない」
「はぁ、はぁ…何、をっ!」
「過ぎた野心は身を滅ぼすぞ。お前の主が平等を唱えているのに、それに背く行為が果たして忠義なのか良く考えろ」
「…っく!痴れ者が!」
悔しそうに顔を歪めてこっちを睨んでるルリオン様。これで少しは堪えてくれるといいんだけど…。
「さっ、行こうぜ。向こうの用事も済んだみたいだしな」
パッと顔を後ろに向けてアルファルドに明るく笑いかける。
「…あぁ」
未だに抱きしめられたままだったから、名残惜しさもあるけど、いい加減戻らないととっくに講義も始まってるし。
体を離したアルファルドが私の隣に並ぶ。
「アトリクスっ!後で後悔しても遅いぞ!」
私達の後ろでルリオン様が叫んでたけど、もう振り返らなかった。
ハァ…面倒なことになったなぁ…。
お願いだから私に構わないで放っといてくれないかな。
どうして関わりたくないメインキャラばっか、こうしてちょっかい出してくるんだろう…。
庭園を校舎に向けて歩いてたんだけど、自分でもよくわからない心のモヤモヤが取れなくて…どうしても講義を受ける気にならない。
庭園の途中で立ち止まった。
「…アトリクス?どうした…?」
隣で歩いてたアルファルドも気づいて一緒に立ち止まった。
「アルファルド…悪いけど、先に戻っててくれ」
「…お前は?」
「忘れ物したの思い出したから、一旦寮に戻って取ってくるわ」
悟られないようにニコッと笑って、なるべく自然に明るく話すように努める。
「………」
「すぐ戻るから!じゃあなっ」
足早にその場を去ろうと、返事も聞かずにアルファルドに背を向けた。
──!?
向けた筈の自分の身体が、腕を引かれてあっという間にまたあの広い胸に抱きしめられた。
「なっ…ど、ど…した?」
サァー…と風が通り過ぎて、庭園に咲いてる花々もそれに合わせてゆらゆら揺れてる。
「…お前が、危険を冒してまで…俺の側にいる事が、良くないとわかっている…」
アルファルドはギュッと両腕を私の背中でクロスさせて、緩やかにでも力強く私の体を締めつける。
「……だが、お前とヤツとの会話を聞いて…喩えようもないくらい、心が…喜びで満たされた……」
私の耳元にすぐアルファルドの顔があって、低く響く声がじかに耳に入ってきて鼓膜を揺らす。
「…お前の言葉は、どうしようもなく俺の心を揺さぶる…」
「…っ」
抱きしめられてる腕の中で、心臓が破裂しそうなくらい早い。
言葉が詰まる程、頭も心も追い付かなくて…。
「…お前の言動も、お前の放つ殺気も…俺には、何よりも心地良い…」
焦燥すら感じるくらい切羽詰まったものを感じる。
私の肩に顔を埋め、さらに引き寄せるみたいに腕に力を込めてる。
「…ぁ…」
「…お前といると、自分にもわからない感情が湧いてきて…こうして触れずにはいられない……」
「……っ!」
「…教えてくれ、アトリクス。このもどかしい程、お前を渇望する気持ちは何だ?」
身体がこれ以上ないくらい喜びで震えて、おかしいくらい気持ちが昂ぶってる。興奮の度合いがすごくて生唾をゴクリと飲み込んだ。
「ア、アル…ファルドっ……」
顔が熱くて、鏡で見なくても真っ赤になってるのがよくわかるよ。
冷ややかな眼でルリオンを見ていると、後ろから手が伸びて私を抱きすくめる。
「…やめろ、アトリクス」
耳元で囁かれる低く通る声。私の身体ごと包み込むように力強く腕が回される。
「アルファルド」
振り返らなくてもわかる。
身体中に纏わせていた殺気が、スッといとも簡単に解けちゃったよ。
「…相手にするな。俺は気にしない」
なんでアルファルドがここにいるのか疑問だけど、こんなことされたら怒る気も失せてしまう。
殺気が解けると、ルリオン様はようやく息を吸えたみたいに腰を曲げて呼吸を整えている。
そんなルリオン様を冷淡に見つめて言葉をかける。
「お前に忠告だ…。これ以上俺に構うな。お前がどれだけ権力を誇示して報復してこようとも、誰一人俺を害することはできない」
「はぁ、はぁ…何、をっ!」
「過ぎた野心は身を滅ぼすぞ。お前の主が平等を唱えているのに、それに背く行為が果たして忠義なのか良く考えろ」
「…っく!痴れ者が!」
悔しそうに顔を歪めてこっちを睨んでるルリオン様。これで少しは堪えてくれるといいんだけど…。
「さっ、行こうぜ。向こうの用事も済んだみたいだしな」
パッと顔を後ろに向けてアルファルドに明るく笑いかける。
「…あぁ」
未だに抱きしめられたままだったから、名残惜しさもあるけど、いい加減戻らないととっくに講義も始まってるし。
体を離したアルファルドが私の隣に並ぶ。
「アトリクスっ!後で後悔しても遅いぞ!」
私達の後ろでルリオン様が叫んでたけど、もう振り返らなかった。
ハァ…面倒なことになったなぁ…。
お願いだから私に構わないで放っといてくれないかな。
どうして関わりたくないメインキャラばっか、こうしてちょっかい出してくるんだろう…。
庭園を校舎に向けて歩いてたんだけど、自分でもよくわからない心のモヤモヤが取れなくて…どうしても講義を受ける気にならない。
庭園の途中で立ち止まった。
「…アトリクス?どうした…?」
隣で歩いてたアルファルドも気づいて一緒に立ち止まった。
「アルファルド…悪いけど、先に戻っててくれ」
「…お前は?」
「忘れ物したの思い出したから、一旦寮に戻って取ってくるわ」
悟られないようにニコッと笑って、なるべく自然に明るく話すように努める。
「………」
「すぐ戻るから!じゃあなっ」
足早にその場を去ろうと、返事も聞かずにアルファルドに背を向けた。
──!?
向けた筈の自分の身体が、腕を引かれてあっという間にまたあの広い胸に抱きしめられた。
「なっ…ど、ど…した?」
サァー…と風が通り過ぎて、庭園に咲いてる花々もそれに合わせてゆらゆら揺れてる。
「…お前が、危険を冒してまで…俺の側にいる事が、良くないとわかっている…」
アルファルドはギュッと両腕を私の背中でクロスさせて、緩やかにでも力強く私の体を締めつける。
「……だが、お前とヤツとの会話を聞いて…喩えようもないくらい、心が…喜びで満たされた……」
私の耳元にすぐアルファルドの顔があって、低く響く声がじかに耳に入ってきて鼓膜を揺らす。
「…お前の言葉は、どうしようもなく俺の心を揺さぶる…」
「…っ」
抱きしめられてる腕の中で、心臓が破裂しそうなくらい早い。
言葉が詰まる程、頭も心も追い付かなくて…。
「…お前の言動も、お前の放つ殺気も…俺には、何よりも心地良い…」
焦燥すら感じるくらい切羽詰まったものを感じる。
私の肩に顔を埋め、さらに引き寄せるみたいに腕に力を込めてる。
「…ぁ…」
「…お前といると、自分にもわからない感情が湧いてきて…こうして触れずにはいられない……」
「……っ!」
「…教えてくれ、アトリクス。このもどかしい程、お前を渇望する気持ちは何だ?」
身体がこれ以上ないくらい喜びで震えて、おかしいくらい気持ちが昂ぶってる。興奮の度合いがすごくて生唾をゴクリと飲み込んだ。
「ア、アル…ファルドっ……」
顔が熱くて、鏡で見なくても真っ赤になってるのがよくわかるよ。
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