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ドラコニス公爵家救済計画 1

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 ポーション作りもいよいよ最終段階に入ってきた。
 これから私は次の計画へと移行していくんだ。
 まずはアヴィオール学長との対決! 
 いや、販売許可の申請が最大の難関!
  

 アカデミアが休みの日。
 休みの日は大体の貴族が帝都にある自分のお屋敷へと帰る。だからオクタンも休みの日はいない。

 私は寮の自分のベッドで、またミティストのメモ帳を読み返してた。
 アヴィオール学長、アヴィオール学長……ゲームではそこまで出てこない。

 この人に弱みみたいなものは見つからない。
 でもたしか何か……探してたんだよね……
 長い間見つからなくて……、でもゲームの終盤で見つかったもの。
 
「……あっ! 思い出した!」
 
 ベッドから勢いよく起き上がったら、また二段ベッドの上に頭をぶつけちゃった。

「イテッ!」

 頭を手で擦りながらベッドから降りて立ち上がる。
 忘れないように急いで自分の机に向かって、メモ帳に書き足した。
 紙にも一つにまとめて書いて制服の内ポケットへと入れた。

 できればこれを使わないようにしたいなぁ。
 なんで私が知ってるのか詮索されるのも面倒だし。取り引き材料としてはどうしようもない時の最終手段だな……


 ◇


 この日、サークル活動。

 アルファルドも自発的に参加してくれてて、早速アヴィオール学長との全面対決へと繰り出すことに。

 いつもならポーション作りに精を出してるんだけど、今日はちょっと違う。

 窓際に立ってたアルファルドに歩み寄った。

「アルファルド。……話がある」
「………なんだ」

 自分が緊張してるのもあるけど、何時になく真剣な様子の私を前に、アルファルドが驚いた様子をしてた。

「これからアヴィオール学長に販売許可を貰いにいく。悪いけど、お前にもついて来てほしい」
「…あぁ、それか」
 
 前々から言ってたことだったから、アルファルドもすぐに納得してくれた。

「あ…んと、僕……は?」
「オクタンは留守番だ。ここからは心理戦になる。あの学長は手に余るからな」
「ん……うん。んと、僕…待ってるね」

 椅子に座って私を見てたオクタンは、その言葉にホッしてるみたいに見えた。

「じゃあ、行こうぜ」
「…あぁ」

 サークル部屋から出ると、アヴィオール学長のいる教授塔の最上階へ向かって歩いてく。

 エルナト先生には話をつけてあって、これから向かうって説明してある。
 先生とも相談したけど、許可が得られるのはかなり難しいみたいな感じだったなぁ。
 
 ポーション作りに成功したことを、どこまでアカデミア側が容認するか。
 一応私しか作れないし、ドラコニス公爵家の秘匿だと念押しして伝えてある。
 ただ、作ってたのも完成したのがサークル活動でのことだし、薬草自体もアカデミアの温室から取ってたから……難しいなぁ。

 色んなことを頭の中で考えながら足を進めてた。

「…クス、……アトリクス!」
「――え?」
「…ぶつかるぞ」

 あまりにも自分の考えに没頭してて、周りが見えてなかった。
 廊下の柱に突っ込んで行きそうなところを、アルファルドが腕を引いて止めてくれた。

「あ……、悪い……」
「…大丈夫か? 様子がおかしい」
「いや……、ちょっと待ってくれ」

 柄にもなく緊張してる。スー、ハーと大きく深呼吸する。 
 
「待たせたな。……よし、行こうぜ」
「…お前でも、緊張するんだな」
 
 私の様子にアルファルドが意外そうな感じで聞いてくる。
 アルファルドの中で私は、相当図太い神経の持ち主になってるみたいだからね。

「…ハハッ、まぁな。相手が相手だしな」
「………俺もいる」
「へ?」
「…俺もついている。…だから心配するな」

 アルファルドの言葉に、私は口を開いたまま目をまん丸くしてぱちくりさせた。

 あのアルファルドが……こんなに包容力のある嬉しい言葉をかけてくれるなんて!
 
 もうそれだけで緊張なんてどこかへいっちゃったよ。
 なんとなく気恥ずかしそうにしてるアルファルドに、喜びの笑顔を向けた。

「ありがとな……、アルファルド」

 めちゃくちゃ嬉しくて、綻ぶように微笑みながら心からお礼を言った。

 アルファルドはそっぽを向いて腕組んでるけど、照れ隠しだってわかってるからそれさえも微笑ましく見える。

 うん。やっぱりアルファルドが好きだ。

 さっきまでとは打って変わって、私の心に温かくて穏やかな気持ちが溢れてきた。
 
「お前がいてくれて、良かった。すごく頼りにしてる」

 にっこり笑って言った言葉に、アルファルドはくるりと背を向けて私の腕を取った。

「……ほら、行くぞ」
「うん!」

 アルファルドはそのまま腕を引いて歩いてる。耳が少し赤くなってるのが見えてて、また嬉しくなった。

 手を繋ぐわけでもないのに、その行動が私に何より勇気を与えてくれた。
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