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淑女作法部 2
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「これより殿方を愛でる会改め、殿方達を見守る会を始めさせていただきますわ……」
議長であるモブ令嬢A。
四角いテーブルを挟み、四方に彼女達は座っている。
「では早速、近状報告をしてまいりましょう」
モブ令嬢Aが上座へと座り、静かに議会が進んでいく。
「はい、議長! レグルス殿下とルリオン様の報告からですわ!」
「えぇ、どうぞ」
モブ令嬢Aがモブ令嬢Bに話しを促す。
モブ令嬢Bが席から立ち上がり、テーブルの上の紙を見ながら報告していく。
「最近のレグルス殿下はポラリス様と共にいることが多く、ルリオン様が大変お可哀想で……お二人の邪魔をなさらないよう、わざわざ自らが身を引く形でスッと席を外す様が大変痛々しかったですわ。ルリオン様も近頃はマイア様と仲がよろしいようで……レグルス様との距離よりも近く感じましたわ……」
モブ令嬢Bはハンカチを取り出し、目元の涙を拭っていく。
「確かにそうですわね……殿下とルリオン様は主従関係ですもの。今後のお二人に期待致しますわ」
「おっしゃるとおりですわ! 引き続き観察しますわ!」
「えぇ、お願い致しますわ。では次の方」
モブ令嬢Bが座り、次に挙手したのはモブ令嬢C。
「はい。こちらはアケルナー様とリゲル様の報告ですわ」
「えぇ。続けてくださる?」
モブ令嬢Cが静かに立ち上がる。
「近状では校外実技演習にてリゲル様がアケルナー様への愛を思わず零してしまう場面が見受けられましたわ」
「…それは! えぇ、わたくしもその場におりましたわ!」
モブ令嬢Cが頷きながら言葉を続ける。
「リゲル様がアトリクス君にキツく当たってらしたのは、アケルナー様を取られたくない一心だったのですわ!あのお言葉を聞いたわたくしは、感動のあまり涙が止まりませんでしたわ!!」
モブ令嬢Cが語尾を強めて力説する。
モブ令嬢Aも頷き、ほぅ……と頬を染める。
「わかりますわ……あれは衝撃的でしたもの。お二人の愛を感じさせるとても尊い出来事でしたわね……」
「えぇ、感無量でしたわ。リゲル様の態度は愛情の裏返しだったのですわ! アケルナー様も怒ったリゲル様を宥めつつ、満更でもなさそうなご様子でしたわ……」
モブ令嬢A、Cがその時の状況を思い出し、二人で頬に手を当て目を閉じている。
「はい! 議長!!」
ここで手を挙げたのはモブ令嬢D。
「ハッ! コホン……次の方、どうぞ……」
モブ令嬢Aが促すと、モブ令嬢Dが勢いよく立ち上がった。
「最近のアトリクス君とドラコニス公爵の愛が止まりませんわ!!」
「え、えぇ……。あの平民と公爵ですわね……」
「ついに公爵もアトリクス君に陥落されたのか、親しげに名前で呼んでおりますわ! しかも……お二人の戯れと言ったらっ!!」
モブ令嬢Dが興奮のあまり拳を握りだす。
モブ令嬢Aが慌てて嗜める。
「お気持ちはわかりますが、ここは淑女作法部ですのよ」
鼻息まで荒くなりそうなモブ令嬢Dはハッとして、咳払いをする。
「コホン、失礼致しましたわ。最近では公爵の方が積極的に触れ合いを求める場面が多々見受けられますわ! 互いの頬に触れ合う行為もさることながら、重ねられる手にうっとりと瞳を閉じるアトリクス君が大変麗しくて……更に実技演習終了後では、アトリクス君が公爵一筋だと……公爵以外はご興味がないと公言されましたわ!!」
落ち着きを取り戻したはずのモブ令嬢Dは、話を進めていく内にまたヒートアップしていく。
「それは……わたくしも拝見しておりましたわ。認めたくありませんが、その後のお二人の戯れは目の保養になりましたわ」
モブ令嬢Aもその場面を思い浮かべたのか、
「えぇ!! あれは大変素晴らしかったですわ! 公爵がアトリクス君を背後から親しげに抱きしめて、嫌がる素振りを見せながらも、頬を染めたアトリクス君がすぐ側から公爵の顔を覗いてっ……あぁ!!」
モブ令嬢Dは興奮のあまり机に倒れ込む。
「しっかりなさって! わたくし達は淑女ですのよ!」
机をタンッと叩いてモブ令嬢Aがモブ令嬢Dを叱咤する。
「はぁ、はぁ……失礼致しましたわ……あのお二人が尊過ぎまして……」
「お気持ちはとても良くわかりますわ」
「えぇ、あのお二人は大変距離が近いですものね」
「その通りですわ! もうどちらともなく互いを求め合い、愛し合ってらっしゃるのがまざまざとわかりますわ!!」
モブ令嬢Dの考えに、モブ令嬢BCも共感する。
「静粛にっ! 静粛にー!!」
興奮冷めやらぬモブ令嬢Dをモブ令嬢Aがまたまた叱咤する。
「わたくしとしたことが……取り乱してしまい、申し訳ございませんわ……」
「お気持ちは良くわかりますが、お淑やかに参りましょう」
「えぇ、心得ましたわ!」
モブ令嬢Dが席に座り、ハンカチを出して額の汗を拭っている。
「今回も大変充実した収穫がございましたわ! 引き続き皆様の報告を楽しみにしております。これにて本日の殿方達を見守る会を終了致しますわ!」
パチパチと盛大な拍手が起こり、日々変化を遂げる淑女作法部は閉幕した。
◇
サークル活動中のアトリクスは、急なクシャミと悪寒を覚える。
「っくしゅ! ……ハァ……また誰か噂してるな……」
「あ、んと…、大丈夫?」
「どーせロクでもないことだろ」
「……」
「これより殿方を愛でる会改め、殿方達を見守る会を始めさせていただきますわ……」
議長であるモブ令嬢A。
四角いテーブルを挟み、四方に彼女達は座っている。
「では早速、近状報告をしてまいりましょう」
モブ令嬢Aが上座へと座り、静かに議会が進んでいく。
「はい、議長! レグルス殿下とルリオン様の報告からですわ!」
「えぇ、どうぞ」
モブ令嬢Aがモブ令嬢Bに話しを促す。
モブ令嬢Bが席から立ち上がり、テーブルの上の紙を見ながら報告していく。
「最近のレグルス殿下はポラリス様と共にいることが多く、ルリオン様が大変お可哀想で……お二人の邪魔をなさらないよう、わざわざ自らが身を引く形でスッと席を外す様が大変痛々しかったですわ。ルリオン様も近頃はマイア様と仲がよろしいようで……レグルス様との距離よりも近く感じましたわ……」
モブ令嬢Bはハンカチを取り出し、目元の涙を拭っていく。
「確かにそうですわね……殿下とルリオン様は主従関係ですもの。今後のお二人に期待致しますわ」
「おっしゃるとおりですわ! 引き続き観察しますわ!」
「えぇ、お願い致しますわ。では次の方」
モブ令嬢Bが座り、次に挙手したのはモブ令嬢C。
「はい。こちらはアケルナー様とリゲル様の報告ですわ」
「えぇ。続けてくださる?」
モブ令嬢Cが静かに立ち上がる。
「近状では校外実技演習にてリゲル様がアケルナー様への愛を思わず零してしまう場面が見受けられましたわ」
「…それは! えぇ、わたくしもその場におりましたわ!」
モブ令嬢Cが頷きながら言葉を続ける。
「リゲル様がアトリクス君にキツく当たってらしたのは、アケルナー様を取られたくない一心だったのですわ!あのお言葉を聞いたわたくしは、感動のあまり涙が止まりませんでしたわ!!」
モブ令嬢Cが語尾を強めて力説する。
モブ令嬢Aも頷き、ほぅ……と頬を染める。
「わかりますわ……あれは衝撃的でしたもの。お二人の愛を感じさせるとても尊い出来事でしたわね……」
「えぇ、感無量でしたわ。リゲル様の態度は愛情の裏返しだったのですわ! アケルナー様も怒ったリゲル様を宥めつつ、満更でもなさそうなご様子でしたわ……」
モブ令嬢A、Cがその時の状況を思い出し、二人で頬に手を当て目を閉じている。
「はい! 議長!!」
ここで手を挙げたのはモブ令嬢D。
「ハッ! コホン……次の方、どうぞ……」
モブ令嬢Aが促すと、モブ令嬢Dが勢いよく立ち上がった。
「最近のアトリクス君とドラコニス公爵の愛が止まりませんわ!!」
「え、えぇ……。あの平民と公爵ですわね……」
「ついに公爵もアトリクス君に陥落されたのか、親しげに名前で呼んでおりますわ! しかも……お二人の戯れと言ったらっ!!」
モブ令嬢Dが興奮のあまり拳を握りだす。
モブ令嬢Aが慌てて嗜める。
「お気持ちはわかりますが、ここは淑女作法部ですのよ」
鼻息まで荒くなりそうなモブ令嬢Dはハッとして、咳払いをする。
「コホン、失礼致しましたわ。最近では公爵の方が積極的に触れ合いを求める場面が多々見受けられますわ! 互いの頬に触れ合う行為もさることながら、重ねられる手にうっとりと瞳を閉じるアトリクス君が大変麗しくて……更に実技演習終了後では、アトリクス君が公爵一筋だと……公爵以外はご興味がないと公言されましたわ!!」
落ち着きを取り戻したはずのモブ令嬢Dは、話を進めていく内にまたヒートアップしていく。
「それは……わたくしも拝見しておりましたわ。認めたくありませんが、その後のお二人の戯れは目の保養になりましたわ」
モブ令嬢Aもその場面を思い浮かべたのか、
「えぇ!! あれは大変素晴らしかったですわ! 公爵がアトリクス君を背後から親しげに抱きしめて、嫌がる素振りを見せながらも、頬を染めたアトリクス君がすぐ側から公爵の顔を覗いてっ……あぁ!!」
モブ令嬢Dは興奮のあまり机に倒れ込む。
「しっかりなさって! わたくし達は淑女ですのよ!」
机をタンッと叩いてモブ令嬢Aがモブ令嬢Dを叱咤する。
「はぁ、はぁ……失礼致しましたわ……あのお二人が尊過ぎまして……」
「お気持ちはとても良くわかりますわ」
「えぇ、あのお二人は大変距離が近いですものね」
「その通りですわ! もうどちらともなく互いを求め合い、愛し合ってらっしゃるのがまざまざとわかりますわ!!」
モブ令嬢Dの考えに、モブ令嬢BCも共感する。
「静粛にっ! 静粛にー!!」
興奮冷めやらぬモブ令嬢Dをモブ令嬢Aがまたまた叱咤する。
「わたくしとしたことが……取り乱してしまい、申し訳ございませんわ……」
「お気持ちは良くわかりますが、お淑やかに参りましょう」
「えぇ、心得ましたわ!」
モブ令嬢Dが席に座り、ハンカチを出して額の汗を拭っている。
「今回も大変充実した収穫がございましたわ! 引き続き皆様の報告を楽しみにしております。これにて本日の殿方達を見守る会を終了致しますわ!」
パチパチと盛大な拍手が起こり、日々変化を遂げる淑女作法部は閉幕した。
◇
サークル活動中のアトリクスは、急なクシャミと悪寒を覚える。
「っくしゅ! ……ハァ……また誰か噂してるな……」
「あ、んと…、大丈夫?」
「どーせロクでもないことだろ」
「……」
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