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校外実技演習 6
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途中出会い頭のモンスターも結構な数倒しつつ、私達は次のポイントへと移動した。
こっちは森の袂にある川辺りで、はぐれリザードとウォーターフロッグの大群。
ここもかなり数を稼げそう!
こっちは低級~中級モンスターだから、ちょっと気合い入れないとね。
さっきと同じく陣形を組んで、私は後ろから指示出しをする。
「アルファルド、敵周辺を囲むようにファイアウォールを展開してくれ」
「…あぁ」
アルファルドが中級防御魔法ファイアウォールを唱え、襲ってきた大群の退路を塞ぐように火の壁がモンスター達を囲む。
火属性に弱いはぐれリザードとウオーターフロッグ達は、鳴き声あげて火の無い真ん中へと集まってきた。
「オクタン、前方中心部に向かってアクアストリーム」
「んと、了解!」
水属性の上級攻撃魔法。
竜巻のような渦巻き状の水がモンスター達を巻き込んでいく。敵も水属性だから耐性があってそれだけじゃ倒れない。
「アンカ、上部にアースプリズンを展開してくれ」
「はいっ」
これは中級防御魔法。固く閉ざされた格子状の檻がモンスター達を閉じ込める。
「アルファルド、目標に向けてインフェルノを」
火属性上級攻撃魔法。
手をかざしたアルファルドの手から炎の渦が巻き起こり、紅蓮の炎が土の檻に囲まれたモンスター達を焼き尽くす。
殲滅完了。
こっちは中級だけあって、ちょっと時間かかっちゃった。
でもさ、これってめちゃくちゃ楽しいよ! 指示出し。
なんかさ、ゲームのキャラ動かして戦ってるみたいで、すっごくワクワクする!
「んと…なんだか…すごい、ね。僕、信じ…られない……」
「え、えぇ……私って、こんなにできるんですね……」
「いや、お前らって相当な戦力だぞ。もっと自信持てよ!」
オクタンもアンカも成果を確認しながら、信じられない感じで自分の手を握ったり閉じたりしてる。
一気に広範囲攻撃して倒してるから、相当な数のモンスターを短時間で仕留めてる。
ただ広範囲魔法は魔力消費も激しいから、各自のレベルも考えて組み立てないといけないね。
後方で指示してた私の元にアルファルドが歩いてくる。
私もアルファルドの元に駆け寄っま。
「アルファルド、お疲れさま。お前ってやっぱすげぇ強いんだな! インフェルノまで使えるなんてさ、俺感動しちゃったよ!」
「…お前の方が驚いた」
「ん……俺か? 偉そうに支持してるだけで、大したことしてないし」
すぐ前に立ってるアルファルドが、私を見下ろして片手を伸ばしてまたまた頬に触れてくる。
「…アトリクス」
「っ! なん、だよ……」
触れられた頬が熱くて、親指でスッと撫でられると擽ったくて、思わず目を細めた。
「…謙遜するな」
「アルファルド……」
もう、こんな状況なのにドキドキしちゃって……どうしたんだろう。
水辺でモンスターの残骸も無惨に散らかって、焦げた匂いとかも結構酷い場所なのに。
周りに誰もいなかったら、きっと思いっきり抱きついてるよ。
最近アルファルドが積極的で、人目も憚らずこうしてくれて、困るんだけど嬉しく思ってる自分がいる。
「あ…んと、…あの、合図……」
「え、えぇ……本当ですね。これで終了みたいです」
森全体に空砲みたいな音が鳴り響く。
「さてと、そろそろ戻ろうぜ!」
アルファルドに笑顔を向けると、私の頬から手を離す。
「…あぁ」
こうして私達は集合場所へと移動を開始した。
◇
「よし、皆無事に戻ってきたな! では討伐した魔物の数を集計する。アイテムを回収してくれっ!」
ピーコック教授の指示で手に嵌めてたアイテムを教員に回収される。
森入り口の広場に生徒達全員が集まってて、私達とは離れた場所にリゲルもいた。
すごく得意そうな感じで腕組んでて……
まぁあそこのチームってかなり戦闘に特化してるから、相当倒しただろうね。
私もゲームでの戦闘はアケルナーとマイアは絶対使ってたし。
私達は遠くまで討伐に行ってたせいか、一番最後に戻って来てて後ろの方で結果を見ていた。
「これは! ……初日の実技演習で初の新記録が出た……」
教授は生徒達の真ん前に立ってて、集計された紙を見て驚いていた。
ピーコック教授の言葉に、集まってた生徒達がざわざわと顔を見合わせてる。
ここからは男女別で結果を発表していく。
「男子首位の討伐数178体、生徒名……アケルナー・ル・コールサック!」
ざわめきと共に、一気にアケルナーへとみんなが注目してる。
アケルナーは名前呼ばれてもなんでもない顔してて、当然の結果みたいに思ってるのかな。
隣りにいたリゲルもなんだか偉そうに得意げな顔してて、自分の手柄みたいな態度が鼻についた。
「いや素晴らしい。今までの最高記録が118体だ。大幅に上回っての討伐新記録だ! 皆、拍手を!」
周りからは盛大な拍手が巻き起こる。
「しかし、次点でも記録を上回っている! 次点の討伐数163体、生徒名アルファルド・ロー・ドラコニス!」
先ほどとは打って変わって、一気に周りがシーン……と静まり返っちゃった。
「わぁっ! すげぇじゃん、アルファルド!」
「……」
「流石だな!」
私の声だけが響いてて、周りはなんともいえない顔してたけど、ぜーんぜん気にしない。
アルファルドも特に反応も無くて腕組んだまま静かに聞いてた。ちなみに3位はレグルス様だった。こっちは103体。
やっぱりレグルス様はアルファルドの名前が出た時に、手を握り締めて複雑そうな顔してるのが見えた。
それからも上位3名までは男女別で呼び上げられて、アンカは3位に入ってた。
「わ、私が……さ、3番目……」
かなり驚いて体が震えてた。
目立たない子だからもったいないよね。実力はあるのにさ。
女子は首位がマイアだった。さすがだね!
「チームでの得点ではアトリクスチームが首位で568体! 次点は僅差でリゲルチーム559体、3番手にレグルスチーム412体だった! 皆、初日とは思えない素晴らしい討伐結果だ。これからも切磋琢磨して頑張って欲しい!」
ピーコック教授が締め括って、これで校外実技演習はおしまい。
また何回も郊外実技演習はやるし、場所も変わって魔物のレベルもどんどん上がっていくからね。
「そして最後に……、こちらもある意味新記録だ。討伐数0体で最下位。生徒名はアトリクス……」
「……へ? 俺っ!? わっ、それ言う必要ないですよねぇ!?」
「チームは首位なのにリーダーが最下位か……アトリクスはもっと精進した方が良さそうだな。健闘を祈るぞ!では解散!!」
「うぅ……、ひでぇや……」
ニカッと笑ってピーコック教授が締めくくってるけど、案の定馬鹿にした笑い声やあざ笑う声が聞こえてくるし。
「聞いたか? 討伐数0だって……」
「アカデミアの恥晒しだな」
「信じられませんわ……討伐中は何をしてるのかしら?」
「これだから平民は……!」
あの教授めっ! 人を晒し者にするなんてひどいよ。
ガックリ肩を落とした。
結局私自身は薬草採取してただけで、なんにもしてないから仕方ないんだけどさ。
私を馬鹿にできたからか、他の生徒は満足そうに近くの馬車乗り場へと向かっていってる。
籠を背中から降ろして項垂れてると、オクタンが声をかけてくれた。
「あ、アート君…んと…元気、だして。アート君、とっても、スゴかった、よ!」
「そ、そうですわ! チームで首位になれたのも…ろアトリクス君のおかげですもの!」
「……お前ら……」
二人の慰めの言葉がジーンと胸に響いた。
こんな不名誉な記録なんて本当に樹立したくなかったけど、私の補助魔法じゃモンスターは倒せないからさ。
「…結果は気にするな」
突然、後ろから肩に腕を回されてドキッとする。
「っ! アルファルド!」
「…チームでの討伐数がお前の倒した数だ」
少し屈んだアルファルドの顔が耳元にあって、低めの響く声で言われるとゾクゾクしちゃうよ~!
「そ……れは、言いすぎだぞ……」
「…違わないだろう?」
近っ、近いよ! まだ結構人もいるのに、こんなにべたべたしていいの?!
距離が近すぎて顔が赤くなっちゃうから、嬉しいけどもう少し離れてぇ!
外では……特に人前では、極力こうした接触をしてこなかったのに、やっぱりここ最近その壁が薄れてきた気がする。
途中出会い頭のモンスターも結構な数倒しつつ、私達は次のポイントへと移動した。
こっちは森の袂にある川辺りで、はぐれリザードとウォーターフロッグの大群。
ここもかなり数を稼げそう!
こっちは低級~中級モンスターだから、ちょっと気合い入れないとね。
さっきと同じく陣形を組んで、私は後ろから指示出しをする。
「アルファルド、敵周辺を囲むようにファイアウォールを展開してくれ」
「…あぁ」
アルファルドが中級防御魔法ファイアウォールを唱え、襲ってきた大群の退路を塞ぐように火の壁がモンスター達を囲む。
火属性に弱いはぐれリザードとウオーターフロッグ達は、鳴き声あげて火の無い真ん中へと集まってきた。
「オクタン、前方中心部に向かってアクアストリーム」
「んと、了解!」
水属性の上級攻撃魔法。
竜巻のような渦巻き状の水がモンスター達を巻き込んでいく。敵も水属性だから耐性があってそれだけじゃ倒れない。
「アンカ、上部にアースプリズンを展開してくれ」
「はいっ」
これは中級防御魔法。固く閉ざされた格子状の檻がモンスター達を閉じ込める。
「アルファルド、目標に向けてインフェルノを」
火属性上級攻撃魔法。
手をかざしたアルファルドの手から炎の渦が巻き起こり、紅蓮の炎が土の檻に囲まれたモンスター達を焼き尽くす。
殲滅完了。
こっちは中級だけあって、ちょっと時間かかっちゃった。
でもさ、これってめちゃくちゃ楽しいよ! 指示出し。
なんかさ、ゲームのキャラ動かして戦ってるみたいで、すっごくワクワクする!
「んと…なんだか…すごい、ね。僕、信じ…られない……」
「え、えぇ……私って、こんなにできるんですね……」
「いや、お前らって相当な戦力だぞ。もっと自信持てよ!」
オクタンもアンカも成果を確認しながら、信じられない感じで自分の手を握ったり閉じたりしてる。
一気に広範囲攻撃して倒してるから、相当な数のモンスターを短時間で仕留めてる。
ただ広範囲魔法は魔力消費も激しいから、各自のレベルも考えて組み立てないといけないね。
後方で指示してた私の元にアルファルドが歩いてくる。
私もアルファルドの元に駆け寄っま。
「アルファルド、お疲れさま。お前ってやっぱすげぇ強いんだな! インフェルノまで使えるなんてさ、俺感動しちゃったよ!」
「…お前の方が驚いた」
「ん……俺か? 偉そうに支持してるだけで、大したことしてないし」
すぐ前に立ってるアルファルドが、私を見下ろして片手を伸ばしてまたまた頬に触れてくる。
「…アトリクス」
「っ! なん、だよ……」
触れられた頬が熱くて、親指でスッと撫でられると擽ったくて、思わず目を細めた。
「…謙遜するな」
「アルファルド……」
もう、こんな状況なのにドキドキしちゃって……どうしたんだろう。
水辺でモンスターの残骸も無惨に散らかって、焦げた匂いとかも結構酷い場所なのに。
周りに誰もいなかったら、きっと思いっきり抱きついてるよ。
最近アルファルドが積極的で、人目も憚らずこうしてくれて、困るんだけど嬉しく思ってる自分がいる。
「あ…んと、…あの、合図……」
「え、えぇ……本当ですね。これで終了みたいです」
森全体に空砲みたいな音が鳴り響く。
「さてと、そろそろ戻ろうぜ!」
アルファルドに笑顔を向けると、私の頬から手を離す。
「…あぁ」
こうして私達は集合場所へと移動を開始した。
◇
「よし、皆無事に戻ってきたな! では討伐した魔物の数を集計する。アイテムを回収してくれっ!」
ピーコック教授の指示で手に嵌めてたアイテムを教員に回収される。
森入り口の広場に生徒達全員が集まってて、私達とは離れた場所にリゲルもいた。
すごく得意そうな感じで腕組んでて……
まぁあそこのチームってかなり戦闘に特化してるから、相当倒しただろうね。
私もゲームでの戦闘はアケルナーとマイアは絶対使ってたし。
私達は遠くまで討伐に行ってたせいか、一番最後に戻って来てて後ろの方で結果を見ていた。
「これは! ……初日の実技演習で初の新記録が出た……」
教授は生徒達の真ん前に立ってて、集計された紙を見て驚いていた。
ピーコック教授の言葉に、集まってた生徒達がざわざわと顔を見合わせてる。
ここからは男女別で結果を発表していく。
「男子首位の討伐数178体、生徒名……アケルナー・ル・コールサック!」
ざわめきと共に、一気にアケルナーへとみんなが注目してる。
アケルナーは名前呼ばれてもなんでもない顔してて、当然の結果みたいに思ってるのかな。
隣りにいたリゲルもなんだか偉そうに得意げな顔してて、自分の手柄みたいな態度が鼻についた。
「いや素晴らしい。今までの最高記録が118体だ。大幅に上回っての討伐新記録だ! 皆、拍手を!」
周りからは盛大な拍手が巻き起こる。
「しかし、次点でも記録を上回っている! 次点の討伐数163体、生徒名アルファルド・ロー・ドラコニス!」
先ほどとは打って変わって、一気に周りがシーン……と静まり返っちゃった。
「わぁっ! すげぇじゃん、アルファルド!」
「……」
「流石だな!」
私の声だけが響いてて、周りはなんともいえない顔してたけど、ぜーんぜん気にしない。
アルファルドも特に反応も無くて腕組んだまま静かに聞いてた。ちなみに3位はレグルス様だった。こっちは103体。
やっぱりレグルス様はアルファルドの名前が出た時に、手を握り締めて複雑そうな顔してるのが見えた。
それからも上位3名までは男女別で呼び上げられて、アンカは3位に入ってた。
「わ、私が……さ、3番目……」
かなり驚いて体が震えてた。
目立たない子だからもったいないよね。実力はあるのにさ。
女子は首位がマイアだった。さすがだね!
「チームでの得点ではアトリクスチームが首位で568体! 次点は僅差でリゲルチーム559体、3番手にレグルスチーム412体だった! 皆、初日とは思えない素晴らしい討伐結果だ。これからも切磋琢磨して頑張って欲しい!」
ピーコック教授が締め括って、これで校外実技演習はおしまい。
また何回も郊外実技演習はやるし、場所も変わって魔物のレベルもどんどん上がっていくからね。
「そして最後に……、こちらもある意味新記録だ。討伐数0体で最下位。生徒名はアトリクス……」
「……へ? 俺っ!? わっ、それ言う必要ないですよねぇ!?」
「チームは首位なのにリーダーが最下位か……アトリクスはもっと精進した方が良さそうだな。健闘を祈るぞ!では解散!!」
「うぅ……、ひでぇや……」
ニカッと笑ってピーコック教授が締めくくってるけど、案の定馬鹿にした笑い声やあざ笑う声が聞こえてくるし。
「聞いたか? 討伐数0だって……」
「アカデミアの恥晒しだな」
「信じられませんわ……討伐中は何をしてるのかしら?」
「これだから平民は……!」
あの教授めっ! 人を晒し者にするなんてひどいよ。
ガックリ肩を落とした。
結局私自身は薬草採取してただけで、なんにもしてないから仕方ないんだけどさ。
私を馬鹿にできたからか、他の生徒は満足そうに近くの馬車乗り場へと向かっていってる。
籠を背中から降ろして項垂れてると、オクタンが声をかけてくれた。
「あ、アート君…んと…元気、だして。アート君、とっても、スゴかった、よ!」
「そ、そうですわ! チームで首位になれたのも…ろアトリクス君のおかげですもの!」
「……お前ら……」
二人の慰めの言葉がジーンと胸に響いた。
こんな不名誉な記録なんて本当に樹立したくなかったけど、私の補助魔法じゃモンスターは倒せないからさ。
「…結果は気にするな」
突然、後ろから肩に腕を回されてドキッとする。
「っ! アルファルド!」
「…チームでの討伐数がお前の倒した数だ」
少し屈んだアルファルドの顔が耳元にあって、低めの響く声で言われるとゾクゾクしちゃうよ~!
「そ……れは、言いすぎだぞ……」
「…違わないだろう?」
近っ、近いよ! まだ結構人もいるのに、こんなにべたべたしていいの?!
距離が近すぎて顔が赤くなっちゃうから、嬉しいけどもう少し離れてぇ!
外では……特に人前では、極力こうした接触をしてこなかったのに、やっぱりここ最近その壁が薄れてきた気がする。
応援ありがとうございます!
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