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校外実技演習 5
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ようやく私達も森の中へと入っていった。
一応範囲も決まっててこの森の中一帯、魔物を狩った数も成績として残るらしく、特別なアイテムを一人一台ずつ持ってる。
それを持ってると倒したモンスターに勝手に印が付いて数をカウントしてくれる優れもの。
終了時は魔法を使って合図される。どこにいてもわかるようになってるんだ。ちなみに各場所に教員たちが配置されてるから、何かあった時は近くにいる教員に助けを求める仕組み。
緩やかな坂道が続く。
この入り口近辺はもうモンスターはいないなぁ。
アルファルドを先頭に私、アンカ、オクタンで列を組んだ。
周りに生徒もいなくて、みんな散り散りに討伐してるみたい。
目を閉じて気配探査を森一帯まで広げる。
うーん、モンスターが沢山いそうな場所で他のチームが居ない穴場は……
「よし、あった……」
森の東側。まだ誰もいないけど、モンスターの反応が多い。
「アルファルド、こっちに進むぞ」
「…わかった」
東側を指差すと、アルファルドは道から逸れて、獣道のような草木をかきわけて進んでいく。
こういう時に『ウインドカッター』とかでスパスパっと道作りながら行けるといいんだけど。
さすがに補助魔法ではそこまでできないからなぁ。
途中、一角ウサギやグリーンスライムが森の茂みから襲いかかってきた。
『ファイアボール』
先頭のアルファルドが手をかざして、進みながら初級魔法でどんどん倒していく。
「アルファルドって、魔力操作が上手いから発動までの時間も早いな」
「…まぁな」
ズンズン進んでいくんだけど、私の後ろにいるアンカとオクタンは結構着いて来るのがツラそうで、体力の差を感じる。
普段からそんなに歩いたり走ったりしないから、当たり前だよね。
「アンカ、オクタン、大丈夫か? アルファルド、もう少し速度落としてくれ」
結構な早足で進んでたから、アルファルドに減速を求める。
「はぁ……、すみ、ません……」
「んと…、はぁ、はぁ……」
もう少しで目的地まで着くけど、一旦休憩かな。
倒す前にへばっちゃったら意味ないからね。
倒れた倒木に座ってアンカとオクタンは休憩。水分取ったりして、一息ついてる。
アルファルドも近くの木に寄りかかって腕を組んでる。
私はというと――
あ、あった! うんうん、やっぱり沢山ある!
「…お前、また薬草採取か?」
「うん! 俺の目的ってこっちだしなっ」
「アート、君…元気、だね……」
「羨ましいですわ……」
皆が休憩してる場所から離れた場所に、ポーションの材料になる薬草の群生場所があったから、どんどん積んで背負った籠へと入れていく。
一通り取り付くして満足。
ん? 後ろから一匹こっちに向かってくるなぁ。
「アルファルド、俺に向けて初級魔法打ってくれ」
「…何を!」
「いいから早く」
私が平気そうな顔して言うと、躊躇してたアルファルドが私に手を翳してる。
アルファルドはかなり迷ってたけど、私に向かって魔法を放った。
「…アトリクス、避けろ!」
「アート、君っ」
「あ、危ないですわ!」
火の玉が私に向かって来て素早く横に飛ぶと、ちょうど後ろからアタックして来たグリーンスライムに命中。
「…なっ……!」
「あ…んと…」
「うそっ……」
飛んだ反動でズレた籠を背負い直した。スライムは燃えて蒸発しちゃった。
「さぁ、そろそろ出発だな! 気合い入れ直せよ」
3人に向かってニコッと微笑むと、あ然とした表情でこっちを見ていた。
更に森の奥に進むと、モンスターがいるわいるわ。
低級モンスターばかりだから、このメンバーでも大丈夫でしょう。
野原の周りに岩場が広がってて、近くにはほら穴みたいな巣があった。
うじゃうじゃにいたのはハンドスパイダーとアンプスネイク。ここだけでも軽く百は超えてるね。
「ひぃっ……! く、蜘蛛と、蛇……」
アンカはやっぱり苦手なのか、かなり怯えてて青褪めた顔してた。
「アルファルドは前衛に出て、オクタンとアンカは少し下がって左右を固めてくれ。俺は後ろから指示を出す」
チームだから配置決めないといけないし、これってホントRPGの戦闘シーンっぽくて、一人でウキウキしちゃってる。
「…あぁ」
「んと…了解」
「わかりましたわ」
うんうん、いいね!
「よし、じゃあ始めようか……」
アルファルドは武器類がないけど、オクタンとアンカは杖を持参してる。
魔法を増幅する効果のあるもの。
「アルファルド。正面にファイアストームを打ってくれ」
アルファルドが手をかざして、中級火魔法のファイアストームが展開される。
ハンドスパイダーとアンプスネイクの一部が焼きつくされ、それに怒った他のモンスターがこっちに向かって一気に襲いかかってくる。
「オクタン、前衛手前にアクアシールド」
「んと、はい!」
オクタンが持ってた杖を前へ振ると、私達の前に薄い水の壁が現れる。
こっち向かってきたモンスター達を足止めする。
水の壁に阻まれて、シールドの前にわんさか集まってる。
「アンカ、シールド後方全面にアースホールを」
「了解ですわ」
オクタンの展開したアクアシールド手前の地面が陥没し、集まってたモンスター達が一斉に落ちていく。
「アルファルド、その穴の中にフレイムを放ってくれ」
「…あぁ」
穴の中へと落ちたモンスター達が一瞬にして燃え、数分で討伐完了。
「うん! 初戦はぼちぼちだな。皆、ご苦労さん!」
3人は後ろにいた私の方を振り向いて、あ然としてた。ニコッと笑って3人を労った。
「…アトリクス、お前……」
「アート、君! すごっ、すごい!」
「指示が的確過ぎて、恐ろしいですわ……」
口々に褒められてちょっと照れちゃうね。
「ハハッ、何言ってんだ? 倒したのはお前らだろ?」
ようやく私達も森の中へと入っていった。
一応範囲も決まっててこの森の中一帯、魔物を狩った数も成績として残るらしく、特別なアイテムを一人一台ずつ持ってる。
それを持ってると倒したモンスターに勝手に印が付いて数をカウントしてくれる優れもの。
終了時は魔法を使って合図される。どこにいてもわかるようになってるんだ。ちなみに各場所に教員たちが配置されてるから、何かあった時は近くにいる教員に助けを求める仕組み。
緩やかな坂道が続く。
この入り口近辺はもうモンスターはいないなぁ。
アルファルドを先頭に私、アンカ、オクタンで列を組んだ。
周りに生徒もいなくて、みんな散り散りに討伐してるみたい。
目を閉じて気配探査を森一帯まで広げる。
うーん、モンスターが沢山いそうな場所で他のチームが居ない穴場は……
「よし、あった……」
森の東側。まだ誰もいないけど、モンスターの反応が多い。
「アルファルド、こっちに進むぞ」
「…わかった」
東側を指差すと、アルファルドは道から逸れて、獣道のような草木をかきわけて進んでいく。
こういう時に『ウインドカッター』とかでスパスパっと道作りながら行けるといいんだけど。
さすがに補助魔法ではそこまでできないからなぁ。
途中、一角ウサギやグリーンスライムが森の茂みから襲いかかってきた。
『ファイアボール』
先頭のアルファルドが手をかざして、進みながら初級魔法でどんどん倒していく。
「アルファルドって、魔力操作が上手いから発動までの時間も早いな」
「…まぁな」
ズンズン進んでいくんだけど、私の後ろにいるアンカとオクタンは結構着いて来るのがツラそうで、体力の差を感じる。
普段からそんなに歩いたり走ったりしないから、当たり前だよね。
「アンカ、オクタン、大丈夫か? アルファルド、もう少し速度落としてくれ」
結構な早足で進んでたから、アルファルドに減速を求める。
「はぁ……、すみ、ません……」
「んと…、はぁ、はぁ……」
もう少しで目的地まで着くけど、一旦休憩かな。
倒す前にへばっちゃったら意味ないからね。
倒れた倒木に座ってアンカとオクタンは休憩。水分取ったりして、一息ついてる。
アルファルドも近くの木に寄りかかって腕を組んでる。
私はというと――
あ、あった! うんうん、やっぱり沢山ある!
「…お前、また薬草採取か?」
「うん! 俺の目的ってこっちだしなっ」
「アート、君…元気、だね……」
「羨ましいですわ……」
皆が休憩してる場所から離れた場所に、ポーションの材料になる薬草の群生場所があったから、どんどん積んで背負った籠へと入れていく。
一通り取り付くして満足。
ん? 後ろから一匹こっちに向かってくるなぁ。
「アルファルド、俺に向けて初級魔法打ってくれ」
「…何を!」
「いいから早く」
私が平気そうな顔して言うと、躊躇してたアルファルドが私に手を翳してる。
アルファルドはかなり迷ってたけど、私に向かって魔法を放った。
「…アトリクス、避けろ!」
「アート、君っ」
「あ、危ないですわ!」
火の玉が私に向かって来て素早く横に飛ぶと、ちょうど後ろからアタックして来たグリーンスライムに命中。
「…なっ……!」
「あ…んと…」
「うそっ……」
飛んだ反動でズレた籠を背負い直した。スライムは燃えて蒸発しちゃった。
「さぁ、そろそろ出発だな! 気合い入れ直せよ」
3人に向かってニコッと微笑むと、あ然とした表情でこっちを見ていた。
更に森の奥に進むと、モンスターがいるわいるわ。
低級モンスターばかりだから、このメンバーでも大丈夫でしょう。
野原の周りに岩場が広がってて、近くにはほら穴みたいな巣があった。
うじゃうじゃにいたのはハンドスパイダーとアンプスネイク。ここだけでも軽く百は超えてるね。
「ひぃっ……! く、蜘蛛と、蛇……」
アンカはやっぱり苦手なのか、かなり怯えてて青褪めた顔してた。
「アルファルドは前衛に出て、オクタンとアンカは少し下がって左右を固めてくれ。俺は後ろから指示を出す」
チームだから配置決めないといけないし、これってホントRPGの戦闘シーンっぽくて、一人でウキウキしちゃってる。
「…あぁ」
「んと…了解」
「わかりましたわ」
うんうん、いいね!
「よし、じゃあ始めようか……」
アルファルドは武器類がないけど、オクタンとアンカは杖を持参してる。
魔法を増幅する効果のあるもの。
「アルファルド。正面にファイアストームを打ってくれ」
アルファルドが手をかざして、中級火魔法のファイアストームが展開される。
ハンドスパイダーとアンプスネイクの一部が焼きつくされ、それに怒った他のモンスターがこっちに向かって一気に襲いかかってくる。
「オクタン、前衛手前にアクアシールド」
「んと、はい!」
オクタンが持ってた杖を前へ振ると、私達の前に薄い水の壁が現れる。
こっち向かってきたモンスター達を足止めする。
水の壁に阻まれて、シールドの前にわんさか集まってる。
「アンカ、シールド後方全面にアースホールを」
「了解ですわ」
オクタンの展開したアクアシールド手前の地面が陥没し、集まってたモンスター達が一斉に落ちていく。
「アルファルド、その穴の中にフレイムを放ってくれ」
「…あぁ」
穴の中へと落ちたモンスター達が一瞬にして燃え、数分で討伐完了。
「うん! 初戦はぼちぼちだな。皆、ご苦労さん!」
3人は後ろにいた私の方を振り向いて、あ然としてた。ニコッと笑って3人を労った。
「…アトリクス、お前……」
「アート、君! すごっ、すごい!」
「指示が的確過ぎて、恐ろしいですわ……」
口々に褒められてちょっと照れちゃうね。
「ハハッ、何言ってんだ? 倒したのはお前らだろ?」
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