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校外実技演習 4

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「さて、全員揃ったな。これより実技演習を始める! 各チームごとに隊を組んで森の中へと進むぞ。私たち教員も周りで援護しているから安心して討伐してくれ!」
 
 ピーコック教授とリラ副教授、他にあと3名ほどの教員が引率してくれてる。
 
 この辺の森は低級モンスターだし、ここにいる生徒達のレベルも上がってるから全く問題ないね。

 みんなチームごとに集まって森の中へと進んでいく。
 私達も荷物背負って1番後ろからあとに着いていく。
 
「まだいたのか平民!」

 ここでいちゃもんつけてきたのはリゲル。

 森に入る入口辺りで絡まれて、本当に勘弁してほしい。 
 その少し前にはアケルナーとマイアがいて、武器片手にこっちを見てる。ちなみに人数の関係でこのチームは3人で組んでる。
 それでもかなり強いチームだよね。

「何か用か? 暇じゃないから後にしてくれよ」
「またお前は……! 生意気な奴だな!」
「ハァ……、もう実技演習始まってんだからさ、早く行けよ」
「おい、勝負しようぜ」
「はぁ?」
 
 未だに立ちふさがってるリゲルがホント面倒くさい。なんで私に因縁つけてくるのか謎なんだけどさ。

「俺たちのチームとお前らのチーム……どっちが多く魔物を倒せるか」

 腕を組んで偉そうな態度のリゲル。ま、この中だとアルファルドの次に地位が高いのかな。もう少しまともなキャラにしてほしかったよ。

「そんなのやるわけないだろ。さ、行こうぜ」
「……」
「ん、んと…」
「は、はい」

 リゲルの横を通り過ぎようとしてまた前に立ち塞がる。リゲルの方が背が低いから私が見下ろす形になる。

「勝負するのが怖いのか? まぁお前の魔法なんてカスみたいなもんだしなっ! ちょっとばかし頭が良いだけで、アカデミアにいる意味もないからなっ!」

 腕を組みながらたぶん挑発してるんだと思うけど……なんかさ、次元が低すぎてよしよしってしたくなっちゃう。
 私がハイって言うまでこのやり取りが続くんだろうなー。もう他のチームもいないし、早く行きたいからなぁ。

「ハァ……じゃ、受けてやるよ。……その代わり、うちのチームが勝ったら、金輪際俺にちょっかいかけてくるなよ!」

 ズイッと顔をリゲルに寄せて、低い声で脅しをかけた。
 いや、本当に迷惑だからさ。
 この美少女顔も、いい加減憎らしくなるよ。

「いいぜ! じゃあうちが勝ったらお前、俺の下僕になれよ!」
「はぁ?」
「決定なっ。ズルはナシだぞ!」
「リゲル、いい加減にしなさい」
「うっ……、アケルナーには関係ないだろ!?」

 離れた場所で見てたアケルナーも痺れを切らしたのか、リゲルの方までやってきた。
 入口付近でいつまでこんなやり取りしてないといけないわけ……?
 
「リゲル様、先に参りますわ」

 しばらく待ってたマイアも、くるりと身体を翻して先に行ってしまった。
 おいおい、リゲル大丈夫なの?
 マイアも呆れちゃってるよ~。

 あれ以来マイアも、なんとなく疑いつつ接触をしてこなくなった。とりあえず気が済んだのかな?

「マイア嬢、俺も行く! じゃあわかったなっ、平民!」

 マイアの後ろを追いかけて、走っていくリゲルは振り返りながら私に向かって念押ししてそのまま消えて行った。

「申し訳ありません。彼は多少、自分本意なところがあるものですから……」
「……多少ね」
「しかし、君と勝負するのは悪くない。この前の鬱憤を晴らさせてもらいます」

 そう言ってアケルナーも森へと歩いて行く。
 あとに残された私達って、もう負けたも同然じゃない。森のあちこちで討伐の音聞こえてるし。

 入口で頭をかきながら理不尽な要求に辟易する。

「…あんな奴に構うな。勝負なんて、どうでもいい」
「ん? わかってるんだけどさ。アイツって本当しつこくて。良い機会だし、わからせてやろうぜ?」
「んと…、わから、せる?」

 口の端の口角を上げて、悪い笑顔を故意に作ってみた。

「あぁ……俺達が圧勝すれば、もう関わることもないだろうからな。完膚なきまで叩きのめせば、ぐうの音も出ないだろう……」

 私に勝負吹っかけて来るなんて、百万年早いよ。返り討ちにしてやるから。

「あ…、んと…怖い…」
「うぅ……、寒気が……」

 オクタンとアンカが怯えてるし。こんな見え透いたやっすい挑発に乗っちゃうなんて、自分もまだまだだよね。
 思わず苦笑しちゃう。

「…アトリクス」
「心配すんなよ! 大丈夫だって」
「…すまない」
「なんでお前が謝るんだ?! アルファルドは何もしてないだろ?」
「…俺が、どうにかできればいいんだが……」

 公爵なのに権威も何もないから、アルファルドは歯がゆいんだろうな。
 高い身分なのに、自分の一言で黙らすこともできないってのは辛いよね。

「馬鹿だな……お前はいてくれるだけでいいんだ。余計なことは気にすんな」

 安心させるように微笑んでたら、アルファルドの手が伸びてきた。それからさっき私がしたみたいに、私の顔を両手で包み込んでくれる。
 大きな手が温かくて、私もその手の甲に自分の手を重ねた。
 さっきもだけどさ、アルファルドって人前だと絶対こんなことしなかったのに……

 あぁ……でも、すごく安心する。
 こんな時だけど、アルファルドが触れてくれるなんて嬉し過ぎる!
 もう実技演習とかどうでもいいかも。

「あ、あの…、そろそろ…んと、行かないと……」

 すごく言いにくそうに、オクタンがボソボソと話し掛けてきた。
 隣にいたアンカは頬を赤く染めて、両手を握り締めながらこっちを見てた。

「あっ…と、悪ぃな。じゃあ進もうか!」

 パッとアルファルドから手を外して離れると、地べたに置いておいた籠を背中に背負った。

「う……うん。んと…今からで…大丈夫?」
「えぇ……、かなり遅れを取ってますわ」

 オクタンとアンカは不安そうな顔してこっちを見てた。
 ニコッと笑って自分の胸に拳をトンッと当てる。

「ま、俺に任せとけって!」
 
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