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校外実技演習 3

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 やってきました、校外実技演習。二学年上がってすぐに始まるのがこのイベント!
 ここは帝都から少し離れたとこで、ディブル山脈という山々がそびえる緑豊かな場所。
 
 アカデミアから馬車で1時間で着く。
 朝早くからの移動だから早起きになれてない貴族には、一番先にくる試練だね。

 チームごとでの移動なんだけど、アンカは女の子だから対面の反対側で一人で座ってもらって、私達3人は狭いけど詰めて座ってる。
 オクタンなんて馬車に寄りかかって寝てるし。
 アルファルドは結構揺れてるのに本読んでて、私はアンカが緊張してるみたいだから、途中で隣に座り直してお喋りしてた。
 女の子とのトークが久々だから、なんだか楽しくなってくる。

「なぁ、アンカはどこ出身なんだ?」
「わ、私ですか? は、はい。私はコルンバの出身です」
「ふーん。……コルンバってことは山岳地帯だし、あの辺りはまだ採掘未開拓な鉱山も眠ってるから、土属性だと何かと便利だな」
「よく……ご存知ですね……」
「俺、そういうの調べるの好きなんだ!」
「さすが、筆記学年首位ですわ」

 エルナト先生との授業で帝国全域の勉強はしたし、私自身ミティスト関連の事はなんでも知りたかったから色んな事を覚えた。
 先生の教え方も上手だったしね。

 お喋りしてたらあっという間で、久々の女子トークが楽しかった。
 アンカは子爵家だからうちと同じだけど、ドルアーガはその中でもお金持ちだしわりと地位が高い。
 
「んん~……! ハァ……俺、馬車嫌いだ……。体が、痛い……」
「んと…、大丈夫?」

 ようやく目的地に着いて早速大きく伸びをする。
 オクタン、私……と馬車から降りる。

「オクタン……、お前はぐーすかとよく寝れるな」
「あ、んと…スッキリ」
「緊張感ないなぁ。……あっ」

 馬車から降りようとするアンカに、馬車の出口にいた私はニコッと笑いながら手を差し伸べた。

「足元に気をつけて、アンカ」
「あ……ありがとう、ございます……」

 差し出した私の掌に手を重ねて、ポッと頬を染めたアンカ。

 いや~、これ一回やってみたかったんだよねー。紳士みたいなエスコート。
 
 アンカを外に降ろした途端、珍しくアルファルドが声をかけてきた。

「…アトリクス」

 手を離して後ろを振り向くと、すぐ真後ろに立っててびっくりした。

「わっ……、アルファルド?!」

 表情はわからないけど、なんとなくちょっといつもと様子が違う。
 向かい合ってアルファルドを見るけど、こっちを見てるだけで何も言ってこない。
 
「……」
「どうしたんだ?」
「……」
「アルファルド……? もしかして具合が悪いのか?」

 相変わらず長い前髪が邪魔してるから、表情からは読みにくい。
 あ、もしかしてずっと本読んでたから、気持ち悪くなったのかも……だから喋れないのかな?

「…大丈夫か? 少し休もうか?」

 心配になったから眉尻を下げて両手を伸ばして、アルファルドの頬を包むように触れた。

 サラッとした肌触りで髪にも触れてるけど、特に文句は言われなかった。
 人前だから絶対嫌がられるのも覚悟してたのに、アルファルドは驚くほど普通に受け入れてくれた。

 はぁ……、やっぱりアルファルドの頬ってすごくスベスベだな。
 輪郭も綺麗でもっと触ってたい。
 
「アルファルド?」

 見た感じ顔色はそんなに悪そうじゃないから、大丈夫だとは思うけど。
 心配そうに声をかけたら、私に触られるがまま立っていたアルファルドがようやく口を開いてくれた。
 
「…なんともない」
「本当か?」
「……あぁ」
「良かった……。あんま心配させんなよ」
「…心配したか?」
「当たり前だろ!」
  
 キッと怒り口調で言い返したら、アルファルドの口角が少しだけ上がったように感じた。
 
「何かあったらちゃんと言えよ」
「…あぁ」
 
 安心した私は、アルファルドの顔を挟むようにしてた手を離す。念押ししていうと返事をしてくれたから一安心。 
 様子がおかしかったのも戻ったみたいだし良かった。

 振り返ってみんなの方を向いたら、まだ馬車の近くにいたオクタンやアンカが赤い顔してこっちを見てる。
 しかも数メートル離れた集合場所にいた女生徒数名も、口元を押さえてこっちを見て止まってた。
 
「どうしたんだ?」

 よくわからなくて首を傾げて二人に聞いてみる。

「あ…んと、あの…」
「い、いえ……、何も、見てませんわ」

 二人とも妙によそよそしくて、なんだか様子がおかしい。

「……? さ、行こうぜ?」
 
 不思議に思いながら、私の後ろから着いてきてるアルファルドと一緒にみんなで集合場所へと向かった。
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