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ポーション作り 6

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「オクタン…」

「でも、んと、魔法使いになれて…だいぶ、周りの態度も…良くなって。んと…だから、…僕、頑張って…魔法、師団に…入るんだ……」

 ソファーでお茶のカップを持ってふんわり微笑んでる。
 逆境でもちゃんと目標を持ってるんだね。 
 偉いよ…オクタン。

 私もカップのお茶を一口飲んで、オクタンに微笑んだ。

「必ず叶うさ…お前ならできるよ」

「ん、うん。…ありがとう…アート、君」 

 ハァ…、やっぱり首突っ込まないと駄目だね。

 私ってばホントお節介だな…。
 もうすぐ始まる校外実技演習。そこでオクタンは大怪我して、魔法使い生命を絶たれてしまう。

 こんなの聞かされちゃったら、傍観者になってられないよね。

「オクタン」
「んと?…なに?」 
「一つ貸しな!」
「え?な、なんの、こと?」
「ハハッ、応援してるぜッ!」

 お菓子を食べながら、頭に?マークをたくさん並べてる。
 その様子が可愛くて、思わず笑っちゃう。
 

 ◇
 


 夕方近くまでオクタンちにいて、私はそのまま寮へと帰った。5日アカデミアへ行って2日休みなのはこの世界でも同じ。
 
 寮のベッドに寝そべって、ミティストのメモ帳を見てた。

 2学年時の郊外実技演習後半…ギェナー山脈の山間で行われる。
 ここで現れるモンスターが確か…ワイバーンだった。
 ドラゴン系の亜種で、姿こそドラゴンに近いけど体格は小さい。
 でも火属性の魔法も使うし、飛び回って空から攻撃もしてくるし厄介で攻撃力もまぁまぁ高い。

 んー…どうやって倒そう。

 ドラゴン系は素材としても高く売れる分、やっぱり強いんだよね。
 校外実技演習はほとんどの生徒が参加するから、その中で人知れず倒すってのはかなり難しいなぁ。
 隠れ蓑にデュランダルを包んで、瞬殺するしかないかなぁ。
 でも正確な出現ポイントとかわからないし…。
 
 メモ帳で顔を挟みながら、ため息をついた。

 私って、このゲームでは異物みたいな存在。内容をめちゃくちゃにして、自分本意で動いてる。
 ただアルファルドを救いたいって思いだけで。

「ハァ……これから、どう変わっていくんだろう…」
 
 まだ見ぬ先の出来事に不安はあるけど、自分が決めた道を切り開くために、犠牲にしなければいけないものもある。
 
 オクタンを助けたことで、またゲームのストーリーと違う展開が進んでいく。
 
 私はどこまで抗えるんだろう?

 メモ帳を顔から外して外の景色を見た。

 もう秋なんだよね…季節が変わるのは早いな。
 あ、そういえば、もう一つやることがあったんだ。

 とりあえず遅いし…次の休みでいいや……。

 



 ◇







 次の休み。

 朝早めに起きたけど、この日は珍しくオクタンも早起きしてた。
 私がいそいそと出掛ける準備してたから騒がしかったのかもしれない。

「オクタン、ちょっと行ってくる」
「んと…うん。どこ…だっけ??」
「んー、寄るとこあるし、知り合いに会ってくるから遅くなる」
「わかった……んと、気をつけてね」
「ん、じゃあなっ」

 オクタンに手を振って寮を出た。
 これから行くのは私が以前住んでたムーリフ。ここで今回タウリと待ち合わせしてる。
 色々面倒だからとりあえず帝都を出てからシリウスの黒装束へと着替え、背中に荷物を背負うとそのまま風魔法を使ってムーリフへと移動する。

 久々のシリウスだなー。アカデミアも始まったし、あの事件以来冒険者活動ほとんどしてなかったからな…。

 風を切りながら森や山を移動して、数十分ほどで到着。
 待ち合わせ場所は元々私が住んでた家。
 一年ちょっと振りかな?
 町外れの山間にある我が家の前に降りてから、軽くノックしてカチャッと扉を開けた。

「あ…おじ…シリウス!久しぶりですなっ!」

 相変わらずの山賊顔で、いつもと変わらないテンションのタウリが待ってた。

 私の家の椅子に腰掛けて待ってたみたい。

 私は周りの気配を確かめて誰もいないことを確認すると、シリウスの仮面を脱いでタウリのいる机の前まで移動した。

「久しぶりだなっ、タウリ!元気そうで良かったぜ!」

 ついでにシリウスの黒装束も着替える為にその場で脱いでいく。

「お嬢ぉ……どんどん言葉使いが男らしくなってきましたな…」
「当たり前だろ?今は男なんだからっ」
「はぁ…これがバレたら旦那様と奥様に顔向けできませんぞ…」
「ハハッ、それは絶対無いから気にすんなっ!」

 もう私もすっかり男に慣れきっちゃって、以前の女として暮らしてた時に戻れないかも…。
 男の方がめちゃくちゃ楽だし。

 シリウスからアトリクスへと変わり、目立たないようにフードを被った。
 
「さて、そろそろ行くぞ。タウリ…これだけは念押しして言うけど、今はアトリクスだ!!絶っ対に間違えるなよっ!」

 立ち上がって私の側まで来てたタウリにズイッ迫り、圧をかける。

 タウリはウッと顔を引きながら、自信なさげな顔してる。

「わ、わかりましたぞ。…アト…アトリ……忘れましたぞ…」
「アートでいいからっ!覚えて!?アート!!」
「うう…アートですな……」

 男の私の方がタウリより少し背が高い。
 その分迫力もあるし、タウリもタジタジだね。このくらい言っとかないとタウリは信用できないからさ。

「よし、じゃあ行くぞ」
「御意…」

 すっかり意気消沈してるタウリ。
 私の後をトボトボついて来てる。後ろからアート、アート…って呟いてる声が聞こえてくるし。


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