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最後の言葉
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帝都の様子を把握するため、スピードを緩めて屋根伝いに移動してた。
でもデネボラの姿が近づくにつれて、勝手に走る速度が落ちてきてる。
遠目からでも確認できるし、この世のものとは思えない位禍々しくて膨大な魔力と存在感をビシビシ感じる。
街の至る所から火の手が上がって燃え盛る帝都。
まだモンスターもあちこちに現れてて、悲鳴や叫び声が響いてる。
「ば、ば、化け物だーー!!!」
「何なんだ、あの巨大なヤツはぁ!!」
「きゃあぁぁ!!来ないでっ!」
「悪魔だっ!!この世の終わりだぁぁ!!」
巨大な魔法陣から現れてたのは、城ほどもある巨大な禍々しい身体にドス黒いオーラが周りから漏れてて、頭にはネジ曲がった二本の角、悪魔のような形相に闇を溶かしたような擦り切れた身体。
遠くでもその巨大さがよく分かる……あれが魔界王デネボラ。
こうして現実で見るとあのアウリガルでの合成獣に似てる。
火の粉を振り切ってデネボラを目の当たりにしながら不安が襲ってくる。
アルファルドはっ!?…アルファルドは大丈夫なの!?
今の状態のアルファルドが闇堕ちしないってわかってるのに、何度も何度もゲームで狂ってる姿を見てたから、元気な姿を確認しないと安心できないよっ!
でも最前線まで急がないと…また、沢山の人が死んじゃう…。
グッと拳を握りしめて風魔法をフルに使って、最高速度でデネボラの所まで向かってた。
その移動中に偶然にも小高い丘の上でアルファルドを見つけた。
これから決められてた戦闘配置に着く途中だったのか、帝都の様子を丘の上から見てた。
アルファルドだっ!!良かった…生きてた…!
涙が出るのを必死で押さえながら、最後の別れをしに丘へと向かった。
アルファルドの立ってたすぐ脇にちょうど大きな木が生えてて、その木の上へと降りた。
「──っ!あなたはっ、…シリウス卿!?」
いきなり空から現れた私に気付いたアルファルドが、驚いた顔をして上を見上げてる。
もう…、きっとこれが最後になる。
会えて良かった。
あなたに逢えて、一緒にいれて、いっぱい愛してもらって…、本当に本当に幸せだった…。
仮面を被ってる頭に手を置いて、ゆっくり仮面をずらして脱いでいく。
「シリウス卿っ!…何…を……」
視界が一気に鮮明になって、アルファルドの顔もよく見えた。
木の下にいるアルファルドに向けて、いつものようにニコッと笑いながら話しかけた。
「よっ、逢いたかったぜ…アルファルド」
「──…」
言葉が出ないアルファルド。
ただ、目を見開いて茫然とした表情で私を見上げてた。
「…あ……う、……ウソ、だ……」
「ごめん、アルファルド。…俺、行かなきゃいけないんだ…」
「…嘘だッ!!」
アルファルドは顔を悲痛そうに歪ませて、今にも泣きそうな表情をして私を見てる。
「…な、ぜ……何故…だ?…何故…お前が、シリウス卿…なん…だ?」
アルファルドの身体が震えてて、現実を受け止められないのか今にも足元が崩れ落ちそう。
「アルファルド。お前に逢えて良かった」
私は木の上から降りて、立ち尽くしてるアルファルドの前に立って微笑んだ。
「──駄目だっ!アトリクス…行くなっ!」
「ハハッ、何言ってんだよ。俺が行かなくて誰が行くんだ?俺は…お前の憧れの英雄だろ?」
もしもの事が起きていきなり私がいなくなったら、アルファルドはきっとすごく悲しむと思うから。
私がシリウスだって事、知らせておかないと…。
「…違うっ…!まさか…お前だとは…、知らなかったっ…」
混乱してるのか動揺してるのか、アルファルドは頭を抱えてて、話す言葉も涙声だった。
もうツラい思いなんてしてほしくなかったけど、最後かもしれないって思うと自分勝手だけど…全部を知っておいて欲しかった。
「ごめんな…時間がないんだ。こうしてる間にも沢山の人の命が危ないんだ。だから、もう行かないと…」
私もアルファルドの前に立ったまま、デネボラが降臨してる皇宮の方に顔を向けた。
「嫌だっ!俺はっ…、お前まで失いたくないっ!!」
辛さを吐き出すみたいにアルファルドは綺麗な顔を歪めて慟哭しながら、目の前にいる私を勢いのままガバっと抱きしめた。
「……俺は死なないよ。この先も…ずっとお前の側にいる」
抱きしめられたアルファルドの背中に片手を添えて、宥めるみたいにポンポンと背中を軽く叩いた。
「…頼むっ、アトリクスっ…行かないでくれっ……」
震えるように絞り出された言葉が胸に痛いよ。泣かないようにグッと涙を堪えた。
私だって、この温もりを離したくない。
「……この戦いが終わったら…その時は、お前に全部話すよ」
無理矢理アルファルドから身体を離して、ニコッと笑ってから持ってたシリウスの仮面を被った。
断腸の思いで風魔法を使って思い切り地面を蹴って、アルファルドがいるその場所から離れた。
「待ってくれっ!…アトリクスー!!」
アルファルドの声が遠ざかって、風を切る音が耳にうるさく響いてる。
トップスピードでデネボラの元へと向かう。
泣いちゃダメだ。
これが、本当に最後だから。今は泣いてる暇なんてない。
平民街の屋根を風のように駆け抜けて、煙突の上に飛び上がってまた一気に皇宮まで跳躍した。
思い残すことは…。
やっぱりアルファルドの事しか思い浮かばなくて…。
本当は行きたくなんかないっ!
ずっとずっと…アルファルドと一緒にいたいよ!
やっと思いも通じ合って認めてもらえたのにっ!!
風を切りながらまた屋根を飛び上がって最高速でデネボラの元へと向かう。
でも現実から逃げちゃ駄目なんだ…私がやらなきゃ。アルファルドとの未来を掴み取る為にも!
途中街中ではモンスターが溢れてたけど、ちゃんと帝国騎士団や魔法師団の配置がしっかり決まってたからか、まだ逃げ惑ってる人達を入口に誘導しながらモンスターに応戦してた。
帝都のど真ん中で居座ってる、大怪獣みたいなデネボラ。
その周辺を固めるのは、アルタイル帝国騎士団と魔法騎士団の先鋭達、サジタリア魔法アカデミアの教授達とレグルス様とポラリス率いるアカデミアの生徒達、ベガを先頭に集まったA級以上の冒険者達。
帝国の誇る最高峰の戦力で迎え討つ。
帝都の様子を把握するため、スピードを緩めて屋根伝いに移動してた。
でもデネボラの姿が近づくにつれて、勝手に走る速度が落ちてきてる。
遠目からでも確認できるし、この世のものとは思えない位禍々しくて膨大な魔力と存在感をビシビシ感じる。
街の至る所から火の手が上がって燃え盛る帝都。
まだモンスターもあちこちに現れてて、悲鳴や叫び声が響いてる。
「ば、ば、化け物だーー!!!」
「何なんだ、あの巨大なヤツはぁ!!」
「きゃあぁぁ!!来ないでっ!」
「悪魔だっ!!この世の終わりだぁぁ!!」
巨大な魔法陣から現れてたのは、城ほどもある巨大な禍々しい身体にドス黒いオーラが周りから漏れてて、頭にはネジ曲がった二本の角、悪魔のような形相に闇を溶かしたような擦り切れた身体。
遠くでもその巨大さがよく分かる……あれが魔界王デネボラ。
こうして現実で見るとあのアウリガルでの合成獣に似てる。
火の粉を振り切ってデネボラを目の当たりにしながら不安が襲ってくる。
アルファルドはっ!?…アルファルドは大丈夫なの!?
今の状態のアルファルドが闇堕ちしないってわかってるのに、何度も何度もゲームで狂ってる姿を見てたから、元気な姿を確認しないと安心できないよっ!
でも最前線まで急がないと…また、沢山の人が死んじゃう…。
グッと拳を握りしめて風魔法をフルに使って、最高速度でデネボラの所まで向かってた。
その移動中に偶然にも小高い丘の上でアルファルドを見つけた。
これから決められてた戦闘配置に着く途中だったのか、帝都の様子を丘の上から見てた。
アルファルドだっ!!良かった…生きてた…!
涙が出るのを必死で押さえながら、最後の別れをしに丘へと向かった。
アルファルドの立ってたすぐ脇にちょうど大きな木が生えてて、その木の上へと降りた。
「──っ!あなたはっ、…シリウス卿!?」
いきなり空から現れた私に気付いたアルファルドが、驚いた顔をして上を見上げてる。
もう…、きっとこれが最後になる。
会えて良かった。
あなたに逢えて、一緒にいれて、いっぱい愛してもらって…、本当に本当に幸せだった…。
仮面を被ってる頭に手を置いて、ゆっくり仮面をずらして脱いでいく。
「シリウス卿っ!…何…を……」
視界が一気に鮮明になって、アルファルドの顔もよく見えた。
木の下にいるアルファルドに向けて、いつものようにニコッと笑いながら話しかけた。
「よっ、逢いたかったぜ…アルファルド」
「──…」
言葉が出ないアルファルド。
ただ、目を見開いて茫然とした表情で私を見上げてた。
「…あ……う、……ウソ、だ……」
「ごめん、アルファルド。…俺、行かなきゃいけないんだ…」
「…嘘だッ!!」
アルファルドは顔を悲痛そうに歪ませて、今にも泣きそうな表情をして私を見てる。
「…な、ぜ……何故…だ?…何故…お前が、シリウス卿…なん…だ?」
アルファルドの身体が震えてて、現実を受け止められないのか今にも足元が崩れ落ちそう。
「アルファルド。お前に逢えて良かった」
私は木の上から降りて、立ち尽くしてるアルファルドの前に立って微笑んだ。
「──駄目だっ!アトリクス…行くなっ!」
「ハハッ、何言ってんだよ。俺が行かなくて誰が行くんだ?俺は…お前の憧れの英雄だろ?」
もしもの事が起きていきなり私がいなくなったら、アルファルドはきっとすごく悲しむと思うから。
私がシリウスだって事、知らせておかないと…。
「…違うっ…!まさか…お前だとは…、知らなかったっ…」
混乱してるのか動揺してるのか、アルファルドは頭を抱えてて、話す言葉も涙声だった。
もうツラい思いなんてしてほしくなかったけど、最後かもしれないって思うと自分勝手だけど…全部を知っておいて欲しかった。
「ごめんな…時間がないんだ。こうしてる間にも沢山の人の命が危ないんだ。だから、もう行かないと…」
私もアルファルドの前に立ったまま、デネボラが降臨してる皇宮の方に顔を向けた。
「嫌だっ!俺はっ…、お前まで失いたくないっ!!」
辛さを吐き出すみたいにアルファルドは綺麗な顔を歪めて慟哭しながら、目の前にいる私を勢いのままガバっと抱きしめた。
「……俺は死なないよ。この先も…ずっとお前の側にいる」
抱きしめられたアルファルドの背中に片手を添えて、宥めるみたいにポンポンと背中を軽く叩いた。
「…頼むっ、アトリクスっ…行かないでくれっ……」
震えるように絞り出された言葉が胸に痛いよ。泣かないようにグッと涙を堪えた。
私だって、この温もりを離したくない。
「……この戦いが終わったら…その時は、お前に全部話すよ」
無理矢理アルファルドから身体を離して、ニコッと笑ってから持ってたシリウスの仮面を被った。
断腸の思いで風魔法を使って思い切り地面を蹴って、アルファルドがいるその場所から離れた。
「待ってくれっ!…アトリクスー!!」
アルファルドの声が遠ざかって、風を切る音が耳にうるさく響いてる。
トップスピードでデネボラの元へと向かう。
泣いちゃダメだ。
これが、本当に最後だから。今は泣いてる暇なんてない。
平民街の屋根を風のように駆け抜けて、煙突の上に飛び上がってまた一気に皇宮まで跳躍した。
思い残すことは…。
やっぱりアルファルドの事しか思い浮かばなくて…。
本当は行きたくなんかないっ!
ずっとずっと…アルファルドと一緒にいたいよ!
やっと思いも通じ合って認めてもらえたのにっ!!
風を切りながらまた屋根を飛び上がって最高速でデネボラの元へと向かう。
でも現実から逃げちゃ駄目なんだ…私がやらなきゃ。アルファルドとの未来を掴み取る為にも!
途中街中ではモンスターが溢れてたけど、ちゃんと帝国騎士団や魔法師団の配置がしっかり決まってたからか、まだ逃げ惑ってる人達を入口に誘導しながらモンスターに応戦してた。
帝都のど真ん中で居座ってる、大怪獣みたいなデネボラ。
その周辺を固めるのは、アルタイル帝国騎士団と魔法騎士団の先鋭達、サジタリア魔法アカデミアの教授達とレグルス様とポラリス率いるアカデミアの生徒達、ベガを先頭に集まったA級以上の冒険者達。
帝国の誇る最高峰の戦力で迎え討つ。
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