冬来りなば、春遠からじ ~親友になった悪役公爵が俺(私)に求愛してくるけど、どうしたらいい…?

ウリ坊

文字の大きさ
上 下
116 / 392

ポーション作り 3

しおりを挟む
'

「よしっ、やるぞー!」
「う、うん…んと…頑張ろ」
「……」

 狭いサークルの室内でいつものメンバーで、いつもの作業を始めてる!
 薬草はアカデミアの温室から取ってきた。
 ドーム型のガラス張りの温室は、様々な種類の薬草が植えられてて、許可をもらった私達は必要な薬草を切って持って帰ってきた。

「さぁ、今日こそ成功させるぞ!」
「ん…成功…すると、いいね…」

 もう何度目かもわからないポーション作り。
 失敗した数は計り知れない。
 
 でも、今日の私は今までの私とは違う!

 あのアルファルドに借りた本。
 あれを参考に今までと全く違う作り方をしていく。
 いつになく真剣な顔の私に、オクタンも何だか緊張気味。

「オクタン、水」
「あ、んと…はい」

 オクタンが手を翳して、長机の上にある鍋に水を半分まで魔法で入れていく。
 最近はもうお手の物で、微細な魔力操作も随分上手くなってきた。
 半分まで溜まった水を燭台に乗せ、反対隣にいるアルファルドを見た。
 
「アルファルド、炎を」
「…あぁ」

 パチンと指を鳴らすと、燭台にボッと火が灯る。
 もうアルファルドは遠隔操作で火をつけられるようになっていた。
 
「さぁ…、始めるぞ」

 用意して並べてあった薬草に手を伸ばす。
 まずメキヤ草、ソタオの根、ホヤの実……次々に薬草を皿へと移す。
 手に持ってるその薬草、毒草に向けて魔力を流す。これは属性診断の時と同じ。
 
 そして沸騰した鍋に順々投下して、火を弱めながら魔力を流した状態で棒でかき混ぜていく。
 時間は10分程。
 10分経ったら火を消して、最後にニチワリ草という断崖絶壁にしか自生しない草を投入する。(これは群生地を知ってるから自分で採取してきた)

 仕上げでまた魔力を流しながら混ぜていく。

 しばらくするとドブみたいな色だった鍋の中が、パァー…と光輝いて透き通るような美しい緑色へと変わってる。

「わッ!えっ!?…んと、んと、ええっ!?すご、すごいっ!!」
「……これは!」
「うんっ!きたきたー!!」

 これを目の細かい布で漉して冷ましてから、小さな小瓶へと移した。

 ガラスの小瓶へと移した透明度の高い緑色の液体は、正しくダンジョンで発掘するポーションと同じ色。

「ヤッター!!完成したぞ!!」
「…そんな…嘘…だろ」
「あ、…や、んと…す…ごい…」

 アルファルドとオクタンは言葉も続かないみたいで、ただ呆然と私が作ったポーションを見てた。

 その小瓶を指で挟んで持ち上げ、小窓から漏れる光に透かしてみる。

「不純物、透明度、発色…共に問題ないな。残るは…効果だけだ」

 腕をまくって、薬草を取るのに置いてあったナイフを持って、自分の腕に薄く傷をつけた。
 横にスーっと赤い線が入って、じわっと血が滲んでくる。

「あ、アート、君!?」
「大丈夫だって。まぁ、見てろよ……」
 
 小瓶に口を付け一気に液体を飲み込んだ。
 うん、ポーション独特のホロ苦い味がする。やっぱり一緒だ。薬草を煮出しただけの味とはまた違う。

 アルファルドとオクタンも、黙って私の行動を見守ってる。

 飲み終えると体が熱くなって、細胞が活性化してるのが良くわかるよ。
 腕に付いていた傷もスーッと消えて無くなった。
 布巾で傷のあった部分の血を拭くと、何もなかったように元通りになってる!

「よし、成功だっ!!」
「うわぁ~!んと、んと!すごっ、凄い、よっ!!」
「…信じられん…。まさか、本当にポーションがっ!」

 オクタンはピョンピョン飛び跳ねて、アルファルドは片手で口を押さえながらまだ呆然としてた。

 よっしゃ~!!これで、ようやく実行に移せる…。
 
「皆、協力してくれてありがとな!…だけど、まだ成功したことは絶対秘密だぞ」
「え?え?…んと、なんで??」
「考えて見ろ。歴代の偉大な研究者達でさえ成功しなかったポーション作りを、学生で…しかもただのサークル活動で作ったなんて世間に知れたら、どうなるかなんて目に見えてる」

 不思議そうにしてるオクタンに真剣な顔して言っておく。外部に漏れると色々面倒だからね。

「そ…なの??」
「…まぁ、一理ある」

 オクタンはよくわからないで、アルファルドは納得して腕を組んでこっちに顔を向けてた。

「だろ?しかもたぶん、これは俺にしか作れない」
「あ、アート、君だけ?」
「そう、だから内緒だぞ」
「ん、んと…わかったよ…」

 ごめん、これは嘘。魔法使いで材料さえ揃えば、たぶん誰でも作れると思うよ。

 でも、今はそう言っておくしかないんだ。

 私はこのポーションを使ってあることをしたいからね!


しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

処理中です...