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ドラコニス公爵家 7

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 アルファルドに必要なのって恋愛でも友情でも何でもいいから、絶対に自分を裏切らない不変のものなんだと思う。
 
 ポラリスに簡単に恋したのもきっと、疲弊した心の拠り所が欲しかったから。
 幼い頃に両親を亡くして愛情も得られなくて、周囲からは責められ、信じてた人達からは裏切られて…もう人間不信だよね。
 でも立場もあるからずっと自分の殻に閉じ籠もってるわけにもいかないし。
 頼れる人も信頼できる人もいなくて、ずっとここの使用人の2人以外には心を許してこなかった。


「───…お前は馬鹿みたいに、素直で真っ直ぐだ」
「ハハッ、俺の取り柄ってそれしかないし」

「………アトリクス」

「──え?」

 今、もしかして名前で呼んでくれた。
 パッとアルファルドの方を見ると、手が伸びてきてそのまま腕を引き寄せられた。
 そのままベッドに二人で倒れ込む。

「─っ!?」

 うまく状況が飲み込めない。

 寝てるアルファルドの上に、私が倒れ込むように乗ってる状態。

 アルファルドが私の背中に両腕を回して抱きしめられてて、隙間もないくらい密着してる身体の感触が生々しい。

 あと耳元で聞こえる息遣いとか、お風呂上がりのお互いの同じ石鹸の匂いとか……もう自分の中の全部がアルファルドでいっぱいになってる。

 え…?
 え…!えぇっ!?
 ま、ま、ま、待ってぇ!!急にどうしたの!?展開が早すぎてついていけない!!

「…どんな気分だ?」

 パニック状態の私に、アルファルドが平然と質問してきてる。
 どんなってそんなの、ドキドキし過ぎて考えられるわけないよっ!!

「え……あ…、し、心臓が、壊れそう…」

 アルファルドの心臓の音よりも、遥かに早く動いてる私の音。ペタッとアルファルドの胸元ににくっついてるから、嫌でもよく分かるわかる。

「…はっ、…あぁ、本当に速い」

 思ったことそのまま言ったのに、なぜかアルファルドは笑ってて…もうちょっと意味がわからない。

 私はこんなに余裕ないのに!!

「アルファルド…俺で遊んでるだろ…」
「……遊んでない」
「…っ」
 
 アルファルドにこんな事されたら、また鼻血が出てきちゃいそう。
 ゲームだとガリガリのひょろひょろで…守ってあげたくなるくらいか弱い男の子だったのに、今のアルファルドはスゴく逞しくて胸板も厚くて…触っても触らなくてもすぐわかるくらいしっかりした体つきだ。

 どうしようもないくらいドキドキして動揺して落ち着かない。駄目だってわかってるのに、離れたくないって気持ちもめちゃくちゃあって…。

 いやいやちょっとダメだよっ!真面目にBL路線を逸らさないと!

「い、言っとくけど、俺は不毛な関係は望んでないからな」
「…不毛?」
「俺は人としてお前が好きなんだ。だから、これは友情なんだ」
「……そうか」

 友情だって言ってるのに、いつまで経っても離してくれない。

 ものすごく嬉しいけど、これって友情なの?
 男子達は友達の家に遊びに行くと、こんな風に一緒に寝てるの??
 男同士の友情ってよくわからない…。

 相変わらず横になったままアルファルドは私の背中に腕を回してて、私は真っ赤になりながらアルファルドの胸にべったりくっついてる状態。

「なぁ…アルファルド…も…離してくれよ。俺…おかしくなる…」
「……友情なら、問題ないだろう」
   
 あるよ!大ありだよっ!こんなの駄目なのにぃ!!

 何かもう意味分かんないけどアルファルドが積極的過ぎて、どうしていいのかわからないよ!
 見た目通り身体も筋肉質で身長高いから男の私でもピタッと腕の中に収まってて…。
 余計なこと何も考えなきゃ、なんておいしい状況なんだろう。
 
 ふわぁ……アルファルドに抱きしめられてるなんて夢みたい……もし夢なら醒めないでほしい…。
 私が女の姿だったら…もう、思う存分この身体を撫で回して、邪魔なバスローブも全部乱暴にはぎ取って、無理やり……。

 あぁ~!もう邪な考えしか浮かばないよーー!!
 
 落ち着くことなんて全くできないし。もうされるがまま身を任せるしかないな…。
 興奮して身体が熱すぎて感覚がおかしいよ。

「ハァ…、俺もう寝るからな!」
「…あぁ」

 私の心の葛藤なんてまるでわかってないアルファルドは、何でもないみたいに返事を返してる。

 いや、私は全然寝れないからさ!!こんなにドキドキして、どうやって寝ればいいの!?

 密着してる身体を冷やすように、微細な風魔法を起こして私達の体の周りを巡回させる。

「…涼しいな」
「俺、こういう事しか出来ないからさ」
「…十分だ」
「なぁ…重いだろうから、いい加減…」
「…重くない」

 アカデミアだと見向きもしないのに、なんでこんなに態度が違うの?
 
 今日だけでアルファルドのイメージが360度変わったよ。
 これって少しは私に心を許してくれたのかな…じゃなきゃこんなことしないよね?
 でも、まだ決めつけるのは早いのかな。

 相変わらずなぜだか私を離そうとしないアルファルド。これはもう抱き枕に徹するしかないな。

 このままで私、大丈夫かな…?
 私の予定ではアルファルドが色々取り戻す内に、フェイドアウトしていこうと思ってるのに…。

 色々諦めてアルファルドの胸の上で目を閉じる。

 トクン、トクンと聞こえる音が私の耳に届く。

 その音が私には嬉しくて、アルファルドが生きてる印みたいでとても心地良く響いてる。

「…アル…ファルド」

「…なんだ?」

 考え過ぎて疲れたせいなのか厚かましい私は、アルファルドの規則正しい心臓の音を聴きながら段々ウトウトしてきた。

「……お前の…音、…すごく…安心…す…る…」

「………そうか…」


 アルファルドは私の背中に回してた腕をさらに寄せながら、聞こえてる心臓の音も少し早くなる。


 想像してたよりも逞しくて温かい胸に抱かれながら、急に襲ってくる猛烈な睡魔に勝てず私は意識を手放した。







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 いつも読んで頂きありがとうございます!

 恋愛要素も増えてきましたので、作品情報を変更しました。
 カテゴリーも再びファンタジーから恋愛へと変えさせて頂きました!タグも少し変更しましたのでよろしくお願い致しますm(_ _)m
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