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ドラコニス公爵家 4
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とりあえずアルファルドの部屋から出て、広さだけは十分ある公爵家を案内してもらった。
「…こっちはもうほぼ使っていない。…向こう側も同様だ」
外はもう真っ暗でしかもドラコニス公爵家は燭台も一台しかないから、先程同様アルファルドが手から火を出して案内してくれてる。
ガランとした長ぁーい廊下を二人で並んでる歩いてるんだけど、何もないから私達の歩く音もすごく反響してる。
「アルファルドって魔力操作が上手いよなぁ」
「…魔法使いは需要がある。…こうして極めていけば、様々な場面で活躍できるし便利だ」
「なんか、切実だな…」
「…仕方ないだろ。…使えるものは何でも利用しないと」
アルファルドは歩きながら説明してくれる。
色んな部屋があったけど、開けても何もなかった。
ほとんどの部屋が空き部屋で、ホコリや蜘蛛の巣がかかってる所まであって、年老いた二人だけの使用人じゃ手が行き届かないんだろうと思って、また切なくなってきちゃったよ。
「あれ?この部屋は?」
また違う部屋の扉があって、ここはかなり豪華な造りだった。
とりあえずどこ開けても何んにも言われなかったから、その部屋もドアノブに手を掛けてガチャッと開けた。
「…待て、その部屋はっ」
「…え?」
珍しく慌てたアルファルドが止めに入ってたけど、もう開けちゃったし。
「──!!」
中を開けると何もない部屋を想像していたのに、その部屋だけは違った。
「なッ!な、…な、んだ……これ……」
そこには壁一面に見慣れた仮面が、所狭しとギッシリ飾られてた!
「はぁ……だから開けるなと言った」
私はドアノブを掴んだ状態のまま固まってる。
いや…、だってこれさっ!
商店の店先とか扉とかに飾られてた、魔除け用のシリウスの仮面飾りだよ!?
ここだけ別の空間みたいに不気味さが漂ってて、しかも唯一置いてある暖炉の上には、シリウスに関する新聞記事とか何か紙みたいなのが額縁の中に大事そうに飾られてた。
固まってる私の脇からアルファルドかスッと部屋の中へと入って、壁の端から端まで…ずらりと並んでる仮面の前に立ってそれを眺めてる。
「あ、アルファルド……これって…」
「…帝国を救った英雄、シリウス卿の仮面飾りだ」
いや、そんなのわかってるよ!でもさ、この量はおかしいって!絶対呪われちゃうよ!?
どうしてこんなことになってるのか疑問しかない私も、恐る恐る中に入って暖炉の前に立ってるアルファルドの隣にとりあえず並んだ。
暗闇の中、炎の光に照らされた仮面飾りはさらに不気味に揺らめいて映ってる。
「なぁ、この数は…ちょっと異常じゃないか……」
「…シリウス卿は…俺にとって恩人であり、目標でもある人なんだ」
「………は?」
一面の仮面飾りを見ながら、アルファルドにしては珍しくスラスラと話してる。
「…理由はわからないが…あのスタンピードで活躍した英雄が、定期的に俺の為に食材を送ってくれている」
アルファルドはまるで神様でも拝むように、仮面の前で頭を下げてた。
「…そのおかげで今、こうしていられる。一度しか会っていないのに、借金に苦しんで食べる物すらなかった窮地から、あの人は救い出してくれた…」
「そっかぁ…良かったな」
「…あぁ、俺にとって神より偉大な人だ」
アルファルドが感謝してくれてるのはとっても嬉しいんだけど、何だかちょっぴり複雑な気分。
エルナト先生がシリウスの熱狂的な信者がいるって言ってたけど、もしかしてアルファルドの事言ってるのかな…?
「そ…そう…なのか……」
心中複雑な私は、なんて返していいのかわからない。
まぁ、アルファルドが喜んでくれてたのは良かったよね?まさかこんな風に思われてたなんて…知らなかったな。
「ん?この紙は?」
ご丁寧に額縁に飾ってある紙の切れ端。よっぽど大事なのかこれだけ中心部に置いてある。
「…凱旋授与式で初めてシリウス卿にお会いした時、自ら俺に渡してくれたものだ」
あー…そういえば初めてアルファルドに会えて、興奮しすぎて鼻血出した時のやつか…。
私としてはあまり思い出したくない記憶なんだけど。
メモには、『マケるな、ツヨくなれ』って汚い字で書いてある。
その時に思った事殴り書きして、自分で何書いたかも忘れてたのに、アルファルドはこんなに大事にしてくれてたんだ。
「…シリウス卿と出会ってから、俺の人生は激変した。この言葉を胸に刻み、この世の全てを恨んでいた自分と決別した。食べれるようになってからは、身体も鍛えて魔法も使えるよう訓練した」
相変わらず壁一面の仮面飾りの前で独白してるアルファルド。
なるほどねー…。
だからアルファルドの体格がここまで大幅に変わっちゃったのか。たぶん“強くなれ”って肉体的にって事じゃなくて、精神的にって意味で書いたと思うけど…、アルファルドはそういう風にとったんだね。
逆に良かったよ、アルファルドが逞しく育ってくれて。
そう考えると、もしかして友達っていらなかったかなぁ?ここまで恩人に心酔して変わってくれてたなら、それだけでもシナリオが変わったはず…。
でも、ポラリスに会って恋しちゃったらそこでまた元に戻るかもしれないし…。
隣で色々と考えを巡らせている私をよそに、アルファルドの話はなかなか止まらない。
「…シリウス卿はあの皇帝が与えた褒美を突き返し、全てを国民の救済に当ててくれと進言されたんだ!あの方はご自身の利益より、苦しんでいる民を優先されて…余りの衝撃に感動して言葉もなかった…」
え…まだ続くの?
私的に黒歴史を羅列されてるみたいで、めちゃくちゃ恥ずかしいし勘弁してほしいんだけど。
「わかった!お前のシリウスに対する熱意は十分伝わったよ!」
「…まだまだ話し足りないが…」
「もう腹減ったから行こうぜ!さっきから鐘がなってるぞ!」
「…あぁ、悪い。シリウス卿のことになると、止まらなくなる」
「ハァ…」
こんなことってある?
アルファルドがいっぱい話してくれるのは嬉しいけど、お願いだからシリウスの話はやめてほしい。
とりあえずアルファルドの部屋から出て、広さだけは十分ある公爵家を案内してもらった。
「…こっちはもうほぼ使っていない。…向こう側も同様だ」
外はもう真っ暗でしかもドラコニス公爵家は燭台も一台しかないから、先程同様アルファルドが手から火を出して案内してくれてる。
ガランとした長ぁーい廊下を二人で並んでる歩いてるんだけど、何もないから私達の歩く音もすごく反響してる。
「アルファルドって魔力操作が上手いよなぁ」
「…魔法使いは需要がある。…こうして極めていけば、様々な場面で活躍できるし便利だ」
「なんか、切実だな…」
「…仕方ないだろ。…使えるものは何でも利用しないと」
アルファルドは歩きながら説明してくれる。
色んな部屋があったけど、開けても何もなかった。
ほとんどの部屋が空き部屋で、ホコリや蜘蛛の巣がかかってる所まであって、年老いた二人だけの使用人じゃ手が行き届かないんだろうと思って、また切なくなってきちゃったよ。
「あれ?この部屋は?」
また違う部屋の扉があって、ここはかなり豪華な造りだった。
とりあえずどこ開けても何んにも言われなかったから、その部屋もドアノブに手を掛けてガチャッと開けた。
「…待て、その部屋はっ」
「…え?」
珍しく慌てたアルファルドが止めに入ってたけど、もう開けちゃったし。
「──!!」
中を開けると何もない部屋を想像していたのに、その部屋だけは違った。
「なッ!な、…な、んだ……これ……」
そこには壁一面に見慣れた仮面が、所狭しとギッシリ飾られてた!
「はぁ……だから開けるなと言った」
私はドアノブを掴んだ状態のまま固まってる。
いや…、だってこれさっ!
商店の店先とか扉とかに飾られてた、魔除け用のシリウスの仮面飾りだよ!?
ここだけ別の空間みたいに不気味さが漂ってて、しかも唯一置いてある暖炉の上には、シリウスに関する新聞記事とか何か紙みたいなのが額縁の中に大事そうに飾られてた。
固まってる私の脇からアルファルドかスッと部屋の中へと入って、壁の端から端まで…ずらりと並んでる仮面の前に立ってそれを眺めてる。
「あ、アルファルド……これって…」
「…帝国を救った英雄、シリウス卿の仮面飾りだ」
いや、そんなのわかってるよ!でもさ、この量はおかしいって!絶対呪われちゃうよ!?
どうしてこんなことになってるのか疑問しかない私も、恐る恐る中に入って暖炉の前に立ってるアルファルドの隣にとりあえず並んだ。
暗闇の中、炎の光に照らされた仮面飾りはさらに不気味に揺らめいて映ってる。
「なぁ、この数は…ちょっと異常じゃないか……」
「…シリウス卿は…俺にとって恩人であり、目標でもある人なんだ」
「………は?」
一面の仮面飾りを見ながら、アルファルドにしては珍しくスラスラと話してる。
「…理由はわからないが…あのスタンピードで活躍した英雄が、定期的に俺の為に食材を送ってくれている」
アルファルドはまるで神様でも拝むように、仮面の前で頭を下げてた。
「…そのおかげで今、こうしていられる。一度しか会っていないのに、借金に苦しんで食べる物すらなかった窮地から、あの人は救い出してくれた…」
「そっかぁ…良かったな」
「…あぁ、俺にとって神より偉大な人だ」
アルファルドが感謝してくれてるのはとっても嬉しいんだけど、何だかちょっぴり複雑な気分。
エルナト先生がシリウスの熱狂的な信者がいるって言ってたけど、もしかしてアルファルドの事言ってるのかな…?
「そ…そう…なのか……」
心中複雑な私は、なんて返していいのかわからない。
まぁ、アルファルドが喜んでくれてたのは良かったよね?まさかこんな風に思われてたなんて…知らなかったな。
「ん?この紙は?」
ご丁寧に額縁に飾ってある紙の切れ端。よっぽど大事なのかこれだけ中心部に置いてある。
「…凱旋授与式で初めてシリウス卿にお会いした時、自ら俺に渡してくれたものだ」
あー…そういえば初めてアルファルドに会えて、興奮しすぎて鼻血出した時のやつか…。
私としてはあまり思い出したくない記憶なんだけど。
メモには、『マケるな、ツヨくなれ』って汚い字で書いてある。
その時に思った事殴り書きして、自分で何書いたかも忘れてたのに、アルファルドはこんなに大事にしてくれてたんだ。
「…シリウス卿と出会ってから、俺の人生は激変した。この言葉を胸に刻み、この世の全てを恨んでいた自分と決別した。食べれるようになってからは、身体も鍛えて魔法も使えるよう訓練した」
相変わらず壁一面の仮面飾りの前で独白してるアルファルド。
なるほどねー…。
だからアルファルドの体格がここまで大幅に変わっちゃったのか。たぶん“強くなれ”って肉体的にって事じゃなくて、精神的にって意味で書いたと思うけど…、アルファルドはそういう風にとったんだね。
逆に良かったよ、アルファルドが逞しく育ってくれて。
そう考えると、もしかして友達っていらなかったかなぁ?ここまで恩人に心酔して変わってくれてたなら、それだけでもシナリオが変わったはず…。
でも、ポラリスに会って恋しちゃったらそこでまた元に戻るかもしれないし…。
隣で色々と考えを巡らせている私をよそに、アルファルドの話はなかなか止まらない。
「…シリウス卿はあの皇帝が与えた褒美を突き返し、全てを国民の救済に当ててくれと進言されたんだ!あの方はご自身の利益より、苦しんでいる民を優先されて…余りの衝撃に感動して言葉もなかった…」
え…まだ続くの?
私的に黒歴史を羅列されてるみたいで、めちゃくちゃ恥ずかしいし勘弁してほしいんだけど。
「わかった!お前のシリウスに対する熱意は十分伝わったよ!」
「…まだまだ話し足りないが…」
「もう腹減ったから行こうぜ!さっきから鐘がなってるぞ!」
「…あぁ、悪い。シリウス卿のことになると、止まらなくなる」
「ハァ…」
こんなことってある?
アルファルドがいっぱい話してくれるのは嬉しいけど、お願いだからシリウスの話はやめてほしい。
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