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最推しとの出会い 2
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訓練場前の地面にしゃがんだまま今度は膝を抱えた。
そうだよ…私だよ!
私がシリウスの名前使って、ドラコニス公爵家へ大量の食材送ってたんだ。
忙しくなってからは公爵家の好きなもの頼んで届けてくれって業者にお願いしてたし…。支払いは多めに渡しといてるから。
だからゲームなら小柄でヒョロヒョロのアルファルドが、栄養きちんと取れて成長期にちゃんとしたご飯食べれたから、本来あるべき成長を遂げたんだ。
アルファルドって、本来だったらあんなにしっかりした体型なんだ。
背もすごく高くて手足も長くて…ゲームのアルファルドって、どれだけ食べれてなかったの…。
膝抱えたまま地面を指でイジイジして、アルファルドが消えてった方向を横目で見る。
なんだか色々考えると悲しくなってくるけど、現実のアルファルドをちゃんと成長させることができたんだ。
よしっ、前向きに考えようッ!!
ガバっと起き上がって両手を握り締める。
結果オーライ!
これでゲームのアルファルドとは全然違う。
あとはアルファルドと仲良くなって孤独から脱却させるぞーー!!
気合を入れ直した私は、るんるん気分で寮まで走って帰った。
◇
そしてその日から、私の猛アタックが始まった。
朝食も取り低血圧のオクタンを起こして急かしながらアカデミアへと移動する。
アカデミアの講義は席が決まってないから自由に座れる。
上段から下段に向けて扇状になってて階段みたいな造りの座席になってる。
上と下に出入り口がついてて、大体下の入り口から教授達が出入りしてる。
アルファルドはいつも一番上の後ろの隅っこに座ってた。すぐ脇に窓があって、良くその窓から外の景色見てた場面を覚えてる。
あの鬱陶しい前髪でよく離れた黒板見えるなって思うけど、アルファルドは決まってその席。
周りには誰も近寄らなくて、その周辺だけ空席が目立ってた。
オクタンと一緒に講堂に入ると、もう結構人が集まってた。
前にはレグルス様とかルリオン様、その周辺にスピカ率いる取り巻きがいて、少し離れた真ん中にはマイアが楽しそうにご令嬢達と会話してた。
その反対側にはアケルナーと私に喧嘩売ってきたリゲルも座ってる。
でもさ、メインキャラ達も気にならないくらい、私にはもう1人しか目に入らない。
あっ、いたいたー!!
やっぱり後ろの隅っこに座ってたアルファルドを見つけて、上の入り口から真横一直線にスタスタ歩きながら近づいてく。
「隣いいか?アルファルド」
「………」
すぐ側まで来て、にっこり笑ってすぐ隣の席に教材を置いた。
返事はもちろんはないし、こっちも全く見ないけど気にしない。
後ろから着いてきたオクタンが、面白いくらいわたわたと慌ててた。
周りにいた生徒も何人か驚いた顔でこっちを見てる。
「あ、あの…ア、ア、ア、アート、君?」
「ほら、オクタンも隣座れよ」
「え、んと…で、で、でも…」
アルファルドの隣に普通に座った私にビックリして、オクタンはちょっと離れた場所で立ったまま更に慌ててる。
うーん、予想以上にあわあわしてるのがなんだか面白いなぁ。
オクタンも帝国貴族の子息だし、アルファルドのこと知ってるのかな?うん、この慌てようは知らない感じじゃないな。
一応アルファルドって公爵だし、この中ならレグルス様より身分が高くなるのかな?皇位継承権第三位だからその次くらい?
アルファルドは頬杖ついて、私とは反対方向の窓側を向いてる。
そんな素振りもアルファルドらしくて、めちゃくちゃ嬉しくなってくる。
にこにこしながら席に座ってる私をオクタンは不思議そうに見てて、諦めたみたいに私の隣に座った。
「あ、アート、君……んと…隣は、ド…ドラコニス…公爵じゃ……」
私の方に顔を寄せて、小声でヒソヒソと隣から声を掛けてくるオクタン。
「ん?それがどうしたんだ?」
「んと…あ、あの、……だか…ら、…」
オクタンの方を向いて何でもないように返事をすると、次第にモゴモゴと消え入りそうなくぐもった声で話してる。
そのままオクタンがどんどん小さくなってくような錯覚が起きた。
「ハハッ、気にすんな」
「…あ、んと…んと…」
もうアルファルドと間近でいられることが嬉しすぎて、上機嫌の私。
そうこうしてるうちに、下の入り口から教授が入ってきて講義が始まる。
始めは大体基本的なことで、エルナト先生との授業ですでに学習済み。
つまんなかったから隣で頬杖ついて座ってるアルファルドをじっくり観察してた。
顔色もいいし、顎のラインも綺麗。手も筋張ってて大きい手だった。
うわー…アルファルドってすごく指も長い、…あぁ…触りたいな…。
頬杖ついてた手をじっくり観察してたら、隣のアルファルドがそれに気づいたみたいで頬杖外してこっちをチラッと見た。
「………見るな…」
あ…、また喋った!嬉しい!!
怒り口調で注意されたのに、話してくれたのが嬉しくて思わずニコッと微笑む。
あぁもぅ~!アルファルドが隣に居るだけで幸せ過ぎるぅ~!!
またふいッと反対の窓の方を向いちゃったけど、その反応すら嬉しくて私は終始ニコニコしてた。
講義も終わって、次の講義までの休憩時間。
この時間ていつもならアルファルドは裏庭で本を読みに行ってるんだけど、私が一方的に話して邪魔してる。
「なぁ、アルファルド。お前ってサークルどこに入るか決めたか?」
「……」
「俺さ、新しいサークル作ろうと思うんだ!だからお前も入らないか?」
やっぱり窓の外見てる隣の席からの返答はほぼ無くて、私が勝手に一人で喋ってる状態。
周りの生徒達もひそひそしながらこっちを見て嫌そうな顔してるけど、アルファルドしか目に入らない私には全く気にならなかった。
「あ…の。アート、君…んと…」
「そうそう。ここにいるオクタンも一緒なんだ!お前も一緒にやろうぜ!」
反対隣のオクタンがやっぱり焦ったように私のローブを引っ張ってる。
「なんだよ、オクタン」
「んと…ちょっ、と…外…行こ……」
「どうした?トイレか?」
「え?…や、う、うん」
「しょーがねーな」
教材はそのまま机に置いて、オクタンに引っ張られるまま講堂の外へと出た。
移動する時に前列の席が見えたけど、残ってた生徒が変わらず私達を盗み見てヒソヒソと何かを話してた。
私がアルファルドに近づいてる事に対しての、悪口か陰口かな。
とりあえずオクタンについて廊下まで来た。
訓練場前の地面にしゃがんだまま今度は膝を抱えた。
そうだよ…私だよ!
私がシリウスの名前使って、ドラコニス公爵家へ大量の食材送ってたんだ。
忙しくなってからは公爵家の好きなもの頼んで届けてくれって業者にお願いしてたし…。支払いは多めに渡しといてるから。
だからゲームなら小柄でヒョロヒョロのアルファルドが、栄養きちんと取れて成長期にちゃんとしたご飯食べれたから、本来あるべき成長を遂げたんだ。
アルファルドって、本来だったらあんなにしっかりした体型なんだ。
背もすごく高くて手足も長くて…ゲームのアルファルドって、どれだけ食べれてなかったの…。
膝抱えたまま地面を指でイジイジして、アルファルドが消えてった方向を横目で見る。
なんだか色々考えると悲しくなってくるけど、現実のアルファルドをちゃんと成長させることができたんだ。
よしっ、前向きに考えようッ!!
ガバっと起き上がって両手を握り締める。
結果オーライ!
これでゲームのアルファルドとは全然違う。
あとはアルファルドと仲良くなって孤独から脱却させるぞーー!!
気合を入れ直した私は、るんるん気分で寮まで走って帰った。
◇
そしてその日から、私の猛アタックが始まった。
朝食も取り低血圧のオクタンを起こして急かしながらアカデミアへと移動する。
アカデミアの講義は席が決まってないから自由に座れる。
上段から下段に向けて扇状になってて階段みたいな造りの座席になってる。
上と下に出入り口がついてて、大体下の入り口から教授達が出入りしてる。
アルファルドはいつも一番上の後ろの隅っこに座ってた。すぐ脇に窓があって、良くその窓から外の景色見てた場面を覚えてる。
あの鬱陶しい前髪でよく離れた黒板見えるなって思うけど、アルファルドは決まってその席。
周りには誰も近寄らなくて、その周辺だけ空席が目立ってた。
オクタンと一緒に講堂に入ると、もう結構人が集まってた。
前にはレグルス様とかルリオン様、その周辺にスピカ率いる取り巻きがいて、少し離れた真ん中にはマイアが楽しそうにご令嬢達と会話してた。
その反対側にはアケルナーと私に喧嘩売ってきたリゲルも座ってる。
でもさ、メインキャラ達も気にならないくらい、私にはもう1人しか目に入らない。
あっ、いたいたー!!
やっぱり後ろの隅っこに座ってたアルファルドを見つけて、上の入り口から真横一直線にスタスタ歩きながら近づいてく。
「隣いいか?アルファルド」
「………」
すぐ側まで来て、にっこり笑ってすぐ隣の席に教材を置いた。
返事はもちろんはないし、こっちも全く見ないけど気にしない。
後ろから着いてきたオクタンが、面白いくらいわたわたと慌ててた。
周りにいた生徒も何人か驚いた顔でこっちを見てる。
「あ、あの…ア、ア、ア、アート、君?」
「ほら、オクタンも隣座れよ」
「え、んと…で、で、でも…」
アルファルドの隣に普通に座った私にビックリして、オクタンはちょっと離れた場所で立ったまま更に慌ててる。
うーん、予想以上にあわあわしてるのがなんだか面白いなぁ。
オクタンも帝国貴族の子息だし、アルファルドのこと知ってるのかな?うん、この慌てようは知らない感じじゃないな。
一応アルファルドって公爵だし、この中ならレグルス様より身分が高くなるのかな?皇位継承権第三位だからその次くらい?
アルファルドは頬杖ついて、私とは反対方向の窓側を向いてる。
そんな素振りもアルファルドらしくて、めちゃくちゃ嬉しくなってくる。
にこにこしながら席に座ってる私をオクタンは不思議そうに見てて、諦めたみたいに私の隣に座った。
「あ、アート、君……んと…隣は、ド…ドラコニス…公爵じゃ……」
私の方に顔を寄せて、小声でヒソヒソと隣から声を掛けてくるオクタン。
「ん?それがどうしたんだ?」
「んと…あ、あの、……だか…ら、…」
オクタンの方を向いて何でもないように返事をすると、次第にモゴモゴと消え入りそうなくぐもった声で話してる。
そのままオクタンがどんどん小さくなってくような錯覚が起きた。
「ハハッ、気にすんな」
「…あ、んと…んと…」
もうアルファルドと間近でいられることが嬉しすぎて、上機嫌の私。
そうこうしてるうちに、下の入り口から教授が入ってきて講義が始まる。
始めは大体基本的なことで、エルナト先生との授業ですでに学習済み。
つまんなかったから隣で頬杖ついて座ってるアルファルドをじっくり観察してた。
顔色もいいし、顎のラインも綺麗。手も筋張ってて大きい手だった。
うわー…アルファルドってすごく指も長い、…あぁ…触りたいな…。
頬杖ついてた手をじっくり観察してたら、隣のアルファルドがそれに気づいたみたいで頬杖外してこっちをチラッと見た。
「………見るな…」
あ…、また喋った!嬉しい!!
怒り口調で注意されたのに、話してくれたのが嬉しくて思わずニコッと微笑む。
あぁもぅ~!アルファルドが隣に居るだけで幸せ過ぎるぅ~!!
またふいッと反対の窓の方を向いちゃったけど、その反応すら嬉しくて私は終始ニコニコしてた。
講義も終わって、次の講義までの休憩時間。
この時間ていつもならアルファルドは裏庭で本を読みに行ってるんだけど、私が一方的に話して邪魔してる。
「なぁ、アルファルド。お前ってサークルどこに入るか決めたか?」
「……」
「俺さ、新しいサークル作ろうと思うんだ!だからお前も入らないか?」
やっぱり窓の外見てる隣の席からの返答はほぼ無くて、私が勝手に一人で喋ってる状態。
周りの生徒達もひそひそしながらこっちを見て嫌そうな顔してるけど、アルファルドしか目に入らない私には全く気にならなかった。
「あ…の。アート、君…んと…」
「そうそう。ここにいるオクタンも一緒なんだ!お前も一緒にやろうぜ!」
反対隣のオクタンがやっぱり焦ったように私のローブを引っ張ってる。
「なんだよ、オクタン」
「んと…ちょっ、と…外…行こ……」
「どうした?トイレか?」
「え?…や、う、うん」
「しょーがねーな」
教材はそのまま机に置いて、オクタンに引っ張られるまま講堂の外へと出た。
移動する時に前列の席が見えたけど、残ってた生徒が変わらず私達を盗み見てヒソヒソと何かを話してた。
私がアルファルドに近づいてる事に対しての、悪口か陰口かな。
とりあえずオクタンについて廊下まで来た。
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