81 / 392
入学式編 2
しおりを挟む
'
入学式といえば一面の桜の木…なんだけど、もちろんこの世界にそんなものはない。
アカデミアの正門をくぐって、まずはじめに手入れされた庭園が左右に広がってる。ど真ん中には噴水があって、その両脇にアカデミアへと続くレンガが入り口まで続いてるんだ。
桜の変わりにまず様々な花が咲き乱れているこの庭園が出迎えてくれる。
ああ~!ついにこの場面!!
徒歩通学の私が1番最後かな?
正門を通って学内に入ったのに、生徒らしい人が誰もいなかった。
ただ正門前には沢山の馬車が停まってて、もう他の生徒はみんな中の会場に着いてるっぽい。
まだ時間あるし、庭園の周りの花々を愛でながらゆっくりと歩いて景色を楽しんだ。
いやぁ、楽しかったなあ。
女の子からきゃあきゃあ言われるのって新鮮だし、めちゃくちゃ自尊心が満たされる。
レグルス様とかルリオン様ってこの優越感が当たり前になっちゃってるのか、周りからスゴく騒がれて注目の的なのにいつも涼しい顔してるんだよね。
生まれながらにしてイケメンで権力者はやっぱり違うわ。
ゆっくりした足取りで庭園横の噴水を通り過ぎて、アカデミアの入り口までやってきた。
大きな両面開き戸だけど、今日は入学式だからか全面に大きく開いてる。
この前荒んだ気分で合格発表見に来た時は、ここまで楽しむ余裕がなかったからなぁ。
入り口から構内に入ると、受け付けの案内役の教員がいて、大魔導ホールまで案内してくれる。
光が燦々と当たる回廊からは中心部にある中庭が見えてて、そこも花々が咲き乱れてベンチやガゼボがあちこちに配置されてた。
そこを抜けて出てくるのが魔法アカデミアでよく登場していた大魔導ホール。
会場前に長机が置いてあってたぶんそこで入学許可証とか出すんだろうけど、その受付には新入生と思われる生徒達が回廊の方まで列を作って沢山並んでた。
私もズラーッと並んでる列の最後尾に移動して皆の様子を伺う。
同じアカデミアの制服着てるんだけど、やっぱりすごくいい!!
女の子の黒い詰め襟姿もめっちゃ可愛いい!あぁ、私も女子の制服着たかったなー…。女子はフードがダボッとしてて、それがまた可愛くていいね~。
列の先を見ながら思わずニヤニヤしてしまう。
ヤバい…これじゃあただの変態だよ。
咳払いしてキッと顔を引き締めた。
会場前の列に並んで入学許可書とかを受付に提出する仕組み。そうすると赤い薔薇の花を一輪貰って、それを胸ポケットに入れる。これが新入生の証になるんだ!
「あ…アート君」
声をかけられて後ろを振り返ると、制服に身を包んだオクタンがいた。
私が1番最後だと思ってたけど、オクタンが1番最後みたい。
赤髪に眼鏡姿で背が低いから、黒い制服にローブがなんだか可愛い。
並びながら私の肩くらいの身長のオクタンを見下ろすとニコッと笑う。
「よっ、オクタン!久しぶりだな。お互い合格できて良かったな!」
「う、うん。ありがとう…んと、アート君の…試験結果、凄かったね」
「俺の?あぁ、まぁな。実技は最下位ランクで散々だったけどな」
「だけど、筆記が総合点以上…なんて、んと…初めてだって…すごく、噂になってたよ」
並んでいた列がどんどん前へ進む中、前後に並んでるオクタンとの会話も弾んでく。
「そういえばオクタンは何位だったんだ?」
「んと…僕は、全体で、15位だったよ」
「え?すげーじゃんっ!」
「や…、そんな…アート君ほどじゃ…」
そうやって話してる間に順番が来た。入学許可書を渡して薔薇を一輪もらって胸に差す。
来た順から一人ずつ順に席に座って行く。ほとんどの席がに生徒がいて、前の方から半分以上はもう埋まってた。
教会みたいな長い椅子が左右に配置されてて、真ん中に通り道がある。
正面には講壇あって、ここでアヴィオール学長が挨拶するはず。その後ろには星々の神であるアステライアを中心に、色鮮やかなステンドガラスが嵌め込まれて光を浴びて荘厳な雰囲気を醸し出してた。
大魔導ホール自体は魔法使いの数が少ないせいか、それほど広さはない。
とりあえず目立たないように一番後ろの空いてる場所に座った。
少し遅れて会場に入ってきたオクタンも、キョロキョロしたあとこっちに寄ってきて隣に座ってる。
「なぁ、オクタン。あんま俺と居ないほうがいいぞ?」
「え…んと、迷惑?」
「違うって!あー…俺、平民だろ?俺と居ると、お前まで悪く言われるぞ」
一応善意で言ってるんだ。オクタンは可愛くていいんだけど、私といると周りの貴族は良く思わないからさ。
「……ふふっ、アート君…やっぱり、優しいね」
「いや、だからさぁ…」
「んと、…大丈夫だよ。アカデミアは、身分とか…関係ないから…」
ふんわりと笑うオクタンが可愛すぎて、胸にキューンと矢が刺さった。
あー、ダメだ。この子はやっぱ可愛くて素直で好きだ。
なるべく誰とも関わらないように、わざわざ平民を選んだのに…。
意外な伏兵に心が折られそう。
入学式といえば一面の桜の木…なんだけど、もちろんこの世界にそんなものはない。
アカデミアの正門をくぐって、まずはじめに手入れされた庭園が左右に広がってる。ど真ん中には噴水があって、その両脇にアカデミアへと続くレンガが入り口まで続いてるんだ。
桜の変わりにまず様々な花が咲き乱れているこの庭園が出迎えてくれる。
ああ~!ついにこの場面!!
徒歩通学の私が1番最後かな?
正門を通って学内に入ったのに、生徒らしい人が誰もいなかった。
ただ正門前には沢山の馬車が停まってて、もう他の生徒はみんな中の会場に着いてるっぽい。
まだ時間あるし、庭園の周りの花々を愛でながらゆっくりと歩いて景色を楽しんだ。
いやぁ、楽しかったなあ。
女の子からきゃあきゃあ言われるのって新鮮だし、めちゃくちゃ自尊心が満たされる。
レグルス様とかルリオン様ってこの優越感が当たり前になっちゃってるのか、周りからスゴく騒がれて注目の的なのにいつも涼しい顔してるんだよね。
生まれながらにしてイケメンで権力者はやっぱり違うわ。
ゆっくりした足取りで庭園横の噴水を通り過ぎて、アカデミアの入り口までやってきた。
大きな両面開き戸だけど、今日は入学式だからか全面に大きく開いてる。
この前荒んだ気分で合格発表見に来た時は、ここまで楽しむ余裕がなかったからなぁ。
入り口から構内に入ると、受け付けの案内役の教員がいて、大魔導ホールまで案内してくれる。
光が燦々と当たる回廊からは中心部にある中庭が見えてて、そこも花々が咲き乱れてベンチやガゼボがあちこちに配置されてた。
そこを抜けて出てくるのが魔法アカデミアでよく登場していた大魔導ホール。
会場前に長机が置いてあってたぶんそこで入学許可証とか出すんだろうけど、その受付には新入生と思われる生徒達が回廊の方まで列を作って沢山並んでた。
私もズラーッと並んでる列の最後尾に移動して皆の様子を伺う。
同じアカデミアの制服着てるんだけど、やっぱりすごくいい!!
女の子の黒い詰め襟姿もめっちゃ可愛いい!あぁ、私も女子の制服着たかったなー…。女子はフードがダボッとしてて、それがまた可愛くていいね~。
列の先を見ながら思わずニヤニヤしてしまう。
ヤバい…これじゃあただの変態だよ。
咳払いしてキッと顔を引き締めた。
会場前の列に並んで入学許可書とかを受付に提出する仕組み。そうすると赤い薔薇の花を一輪貰って、それを胸ポケットに入れる。これが新入生の証になるんだ!
「あ…アート君」
声をかけられて後ろを振り返ると、制服に身を包んだオクタンがいた。
私が1番最後だと思ってたけど、オクタンが1番最後みたい。
赤髪に眼鏡姿で背が低いから、黒い制服にローブがなんだか可愛い。
並びながら私の肩くらいの身長のオクタンを見下ろすとニコッと笑う。
「よっ、オクタン!久しぶりだな。お互い合格できて良かったな!」
「う、うん。ありがとう…んと、アート君の…試験結果、凄かったね」
「俺の?あぁ、まぁな。実技は最下位ランクで散々だったけどな」
「だけど、筆記が総合点以上…なんて、んと…初めてだって…すごく、噂になってたよ」
並んでいた列がどんどん前へ進む中、前後に並んでるオクタンとの会話も弾んでく。
「そういえばオクタンは何位だったんだ?」
「んと…僕は、全体で、15位だったよ」
「え?すげーじゃんっ!」
「や…、そんな…アート君ほどじゃ…」
そうやって話してる間に順番が来た。入学許可書を渡して薔薇を一輪もらって胸に差す。
来た順から一人ずつ順に席に座って行く。ほとんどの席がに生徒がいて、前の方から半分以上はもう埋まってた。
教会みたいな長い椅子が左右に配置されてて、真ん中に通り道がある。
正面には講壇あって、ここでアヴィオール学長が挨拶するはず。その後ろには星々の神であるアステライアを中心に、色鮮やかなステンドガラスが嵌め込まれて光を浴びて荘厳な雰囲気を醸し出してた。
大魔導ホール自体は魔法使いの数が少ないせいか、それほど広さはない。
とりあえず目立たないように一番後ろの空いてる場所に座った。
少し遅れて会場に入ってきたオクタンも、キョロキョロしたあとこっちに寄ってきて隣に座ってる。
「なぁ、オクタン。あんま俺と居ないほうがいいぞ?」
「え…んと、迷惑?」
「違うって!あー…俺、平民だろ?俺と居ると、お前まで悪く言われるぞ」
一応善意で言ってるんだ。オクタンは可愛くていいんだけど、私といると周りの貴族は良く思わないからさ。
「……ふふっ、アート君…やっぱり、優しいね」
「いや、だからさぁ…」
「んと、…大丈夫だよ。アカデミアは、身分とか…関係ないから…」
ふんわりと笑うオクタンが可愛すぎて、胸にキューンと矢が刺さった。
あー、ダメだ。この子はやっぱ可愛くて素直で好きだ。
なるべく誰とも関わらないように、わざわざ平民を選んだのに…。
意外な伏兵に心が折られそう。
12
お気に入りに追加
323
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
悪役令嬢を拾ったら、可愛すぎたので妹として溺愛します!
平山和人
恋愛
転生者のクロエは諸国を巡りながら冒険者として自由気ままな一人旅を楽しんでいた。 そんなある日、クエストの途中で、トラブルに巻き込まれた一行を発見。助けに入ったクロエが目にしたのは――驚くほど美しい少女だった。
「わたくし、婚約破棄された上に、身に覚えのない罪で王都を追放されたのです」
その言葉に驚くクロエ。しかし、さらに驚いたのは、その少女が前世の記憶に見覚えのある存在だったこと。しかも、話してみるととても良い子で……?
「そういえば、私……前世でこんな妹が欲しかったって思ってたっけ」
美少女との出会いが、クロエの旅と人生を大きく変えることに!?
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる