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入学式編 2

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 入学式といえば一面の桜の木…なんだけど、もちろんこの世界にそんなものはない。
 アカデミアの正門をくぐって、まずはじめに手入れされた庭園が左右に広がってる。ど真ん中には噴水があって、その両脇にアカデミアへと続くレンガが入り口まで続いてるんだ。
 桜の変わりにまず様々な花が咲き乱れているこの庭園が出迎えてくれる。

 ああ~!ついにこの場面!!

 徒歩通学の私が1番最後かな?
 正門を通って学内に入ったのに、生徒らしい人が誰もいなかった。

 ただ正門前には沢山の馬車が停まってて、もう他の生徒はみんな中の会場に着いてるっぽい。
 まだ時間あるし、庭園の周りの花々を愛でながらゆっくりと歩いて景色を楽しんだ。

 いやぁ、楽しかったなあ。
 女の子からきゃあきゃあ言われるのって新鮮だし、めちゃくちゃ自尊心が満たされる。

 レグルス様とかルリオン様ってこの優越感が当たり前になっちゃってるのか、周りからスゴく騒がれて注目の的なのにいつも涼しい顔してるんだよね。
 生まれながらにしてイケメンで権力者はやっぱり違うわ。
 
 ゆっくりした足取りで庭園横の噴水を通り過ぎて、アカデミアの入り口までやってきた。
 大きな両面開き戸だけど、今日は入学式だからか全面に大きく開いてる。

 この前荒んだ気分で合格発表見に来た時は、ここまで楽しむ余裕がなかったからなぁ。

 入り口から構内に入ると、受け付けの案内役の教員がいて、大魔導ホールまで案内してくれる。
 光が燦々と当たる回廊からは中心部にある中庭が見えてて、そこも花々が咲き乱れてベンチやガゼボがあちこちに配置されてた。
 そこを抜けて出てくるのが魔法アカデミアでよく登場していた大魔導ホール。

 会場前に長机が置いてあってたぶんそこで入学許可証とか出すんだろうけど、その受付には新入生と思われる生徒達が回廊の方まで列を作って沢山並んでた。

 私もズラーッと並んでる列の最後尾に移動して皆の様子を伺う。

 同じアカデミアの制服着てるんだけど、やっぱりすごくいい!!
 女の子の黒い詰め襟姿もめっちゃ可愛いい!あぁ、私も女子の制服着たかったなー…。女子はフードがダボッとしてて、それがまた可愛くていいね~。
 列の先を見ながら思わずニヤニヤしてしまう。

 ヤバい…これじゃあただの変態だよ。
 咳払いしてキッと顔を引き締めた。
 
 会場前の列に並んで入学許可書とかを受付に提出する仕組み。そうすると赤い薔薇の花を一輪貰って、それを胸ポケットに入れる。これが新入生の証になるんだ!

「あ…アート君」

 声をかけられて後ろを振り返ると、制服に身を包んだオクタンがいた。
 私が1番最後だと思ってたけど、オクタンが1番最後みたい。
 赤髪に眼鏡姿で背が低いから、黒い制服にローブがなんだか可愛い。
 並びながら私の肩くらいの身長のオクタンを見下ろすとニコッと笑う。

「よっ、オクタン!久しぶりだな。お互い合格できて良かったな!」
「う、うん。ありがとう…んと、アート君の…試験結果、凄かったね」
「俺の?あぁ、まぁな。実技は最下位ランクで散々だったけどな」
「だけど、筆記が総合点以上…なんて、んと…初めてだって…すごく、噂になってたよ」

 並んでいた列がどんどん前へ進む中、前後に並んでるオクタンとの会話も弾んでく。

「そういえばオクタンは何位だったんだ?」
「んと…僕は、全体で、15位だったよ」
「え?すげーじゃんっ!」
「や…、そんな…アート君ほどじゃ…」

 そうやって話してる間に順番が来た。入学許可書を渡して薔薇を一輪もらって胸に差す。

 来た順から一人ずつ順に席に座って行く。ほとんどの席がに生徒がいて、前の方から半分以上はもう埋まってた。

 教会みたいな長い椅子が左右に配置されてて、真ん中に通り道がある。
 正面には講壇あって、ここでアヴィオール学長が挨拶するはず。その後ろには星々の神であるアステライアを中心に、色鮮やかなステンドガラスが嵌め込まれて光を浴びて荘厳な雰囲気を醸し出してた。
 大魔導ホール自体は魔法使いの数が少ないせいか、それほど広さはない。

 とりあえず目立たないように一番後ろの空いてる場所に座った。
 少し遅れて会場に入ってきたオクタンも、キョロキョロしたあとこっちに寄ってきて隣に座ってる。
 
「なぁ、オクタン。あんま俺と居ないほうがいいぞ?」
「え…んと、迷惑?」
「違うって!あー…俺、平民だろ?俺と居ると、お前まで悪く言われるぞ」

 一応善意で言ってるんだ。オクタンは可愛くていいんだけど、私といると周りの貴族は良く思わないからさ。

「……ふふっ、アート君…やっぱり、優しいね」
「いや、だからさぁ…」
「んと、…大丈夫だよ。アカデミアは、身分とか…関係ないから…」

 ふんわりと笑うオクタンが可愛すぎて、胸にキューンと矢が刺さった。

 あー、ダメだ。この子はやっぱ可愛くて素直で好きだ。
 なるべく誰とも関わらないように、わざわざ平民を選んだのに…。

 意外な伏兵に心が折られそう。

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